2012年2月13日/編集部・良
今回のカンディハウスの新作コレクションは、ケルン国際家具見本市2012で出店したドイツ人デザイナー、ペーター・マリー氏のデザインによる6つの無垢のダイニングテーブルが目玉だ。彼はこれまでも、ローボードに省電力で長寿命なLEDを仕込むなど、新しいテクノロジーも取り込みながら充分な機能性を持たせる手法で数々の製品を生み出してきた。
今回の6つとは、HAKAMA、SLED、MADO、CANYON、BRANCH、SPLIT。いずれもナラ材とウォールナット材の無垢を使用し、オイル仕上げとなっている。
HAKAMA(ハカマ ダイニング)は、武士の袴、あるいは末広がりの書をイメージしたものだという。脚部のラインは合板ではなく、袴の折り目をイメージした溝を彫り込んだもの。フォルム同様、末広がりに太くなっている。天板も下に向けてテーパードされている。巾は2100mmと2400mmで、価格は378,000円から
SLED(スレッド ダイニング)は、その名の由来であるソリを、逆台形に曲げ加工したステンレスの脚部で表現している。天板にブックマッチ(見開き)と呼ばれる左右対称の木目が揃うタイプを用意し、耳のように左右対照にグラマラスな曲線を描くさまを楽しめるのがいい。巾は1800mmから用意し、ブックマッチタイプで525000円から(4枚以上のつなぎ合せたタイプはスクエアな仕上げで480,900円から)
MADO(マド ダイニング)は、SLEDと同様にステンレスの脚を備えるが、太さと巾を変えたコーナーの出窓のような意匠がユニーク。車窓から望む工業団地の複数の煙突のように、視点を変えることで、テーブル自身の表情や、「マド」越しに見える景色も移ろうさまを楽しむことができる。巾は1800mmからで、ブックマッチタイプで497,700円から(スクエアタイプで453,600円から)
CANYON(キャニオン ダイニング)は、ブックマッチを逆向きに合わせて創ったテーブルの渓谷がその名の由来。そこにはステンレスの板が張られ、水面をイメージさせる。天板は脚部との間をステンレスで浮かせ、広くテーパードされた処理と共に天板を得する見せることに成功している。横長のペンダント照明を低い位置に下げれば、あたかも間接照明が仕込まれたかのように、渓谷の水面に日の光が反射するのではないだろうか。注目は287,700円からという価格。ちなみに、中央をキャニオンでなくシンプルなストライプにしたタイプも選べることから、実は今回のラインナップ中ではいちばん「お買い得」といえるのではないだろうか。
BRANCH(ブランチ ダイニング)は、その名の通り枝で力強く天板を支える。二本の脚を渡しているバーの部分は、小口なのでオイルがよく染みんで濃く見え、アクセントになっている。巾1800mmからで317,100円から。共通の衣装をまとったチェアーも用意されている(52,080円から)。
SPLIT(スプリット ダイニング)は、脚が分割されていることをモチーフにしている。よく見ると、割り箸のように単純に角材をふたつずらして組んでいるのではなく、まさに木材を斧で割いていく過程のよう。天板の中央にあしらわれた鉄のプレートは、地元旭川の臼井鋳鉄工業製。ずらすとコードを通せる使用となっており、鉄のプレートを外して橋渡しすることで、鍋を設置するといった使いこなしも想像させる。巾1800mmからで346,500円から。お揃いのサイドチェアーも用意(59,640円より)
無垢のテーブルの天板には「ちぎり」と呼ばれる割れ止めが施されているものだが、今回はこれを等間隔に配置。このあたりにも、機能性をすこしだけ洗練させることで意匠として活かすという、デザインの本質を突いているといえよう。(HAKAMA、MADO、BRANCH)
以上をみてくると、幾何学的、建築工学的に空間を捉える手法には、バウハウスの影響を感じさせる。ともすると過度に民芸調になりかねない無垢の家具だが、ステンレスの質感とともに、むしろ生成の美しさを際だたせている。流れる木目を活かした表現は、伝統的な木工のよさを活かしながら、ユニバーサルなデザインに昇華させたところが魅力を放っているのだろう。
日本の住宅事情に合せ、ラインナップは巾1800mmから用意している。日本の空間寸法にも造詣が深いペーター・マリー氏ならではであり、プロポーションのバランスもいい。リビングシアターが一般化した今日、やはりもっとも稼働率が高く触れる時間も長いダイニングテーブルにこそ、いいものを奢りたいと感じさせる。
ところで、今回の発表はいずれも無垢材の天板を利用している。自然素材をいかに効率よく使うかが環境保護であるとするなら、天然無垢材で構成することは、「エコ」に反するという考えもありうるだろう。しかし、いいモノを長く使うという視点に立てば、世代を超えて使い続けられることによる経済性、そして心の豊かさこそ再評価されるべきである。「広葉樹は育つのに100年、150年はかかる。だから、それが土に還るまでも、同じ年月かけないといけない。つまりテーブルも、100年は使ってもらえるものでなくてはならないのです」とは、創業者の長原實さんの言だ。
五反田に昨年オープンして支持を拡げているインテリアショップ「ippon」のミニマリズム思想といい、さらに中古家具を修復して再販するビンテージ事業といい、カンディハウスの創業以来のピュアリズム、つまり純真無垢な哲学が、手に触れる部分のマットな質感、暖かみを支えているといえる。



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