2017年12月 3日/映画番長・堀切日出晴
The story hinges on Maya, a spiky loner with next to no back story, no friend or family, who's more of an ambivalent protagonist than a traditional heroine.
Release Dates (Theater): December 19, 2012 (USA)
Domestic Total Gross: $95,720,716
(Foreign: $37,100,000)
『ハート・ロッカー』の監督キャスリン・ビグローと脚本マーク・ポールのコンビが、オサマ・ビン・ラディン(aka.ウサーマ・ビン・ラーディン)暗殺の極秘作戦=Operation Neptune Spear/海神の槍作戦を映画化した衝撃の問題作。主人公は本作戦で中心的役割を担った若きCIA女性分析官マヤだが、実際には諸説入り乱れており、国家機密の公開許可が下りる2061年までは真実が明らかにされない(生きちゃいねェってば、オレ)。ビグローは現代映画の重要なリアリズム映像作家のひとり。映画製作上のスタイルは、まるで現実世界と同じものだと認識できるような、客観的な現実味を作品に反映させる天才肌と言える。実在する場所や詳細な情報を強調し、編集室で「健全」を切り捨てる勇気を持つ。とはいえ本作はアクション・スリラーを土台に構築された映画であり、写実にこだわり過ぎて鑑賞するのは禁物。全編を通じて気魄がこもっており、ひとときも緊張を緩めることなく編集されたシークエンスが積み上げられ、次第にコントロール不能に陥った出来事によって押し流さていくような感覚。これに身を委ねていただきたい。
当初予定されていたルーニー・マーラ降板の後、ビグローの強い要望でマヤ役に選ばれたのはジェシカ・チャステイン(『オデッセイ』)。共演にジェイソン・クラーク(『エベレスト』)、ジェニファー・イーリー(『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』)、エドガー・ラミレス(『X-ミッション』)、カイル・チャンドラー(『マンチェスター・バイ・ザ・シー』)、マーク・ストロング(『裏切りのサーカス』)、ジェームズ・ガンドルフィーニ(『ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア』)。また対テロリスト特殊部隊「DEVGRU」隊員にジョエル・エドガートン(『エクソダス:神と王』)、クリス・プラット(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』)といった主役級の俳優が扮している。
アカデミー賞
★音響編集賞受賞
☆作品・主演女優・脚本・編集賞ノミネート
撮影は『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』のグレイグ・フレイザー。アリ・アレクサM / アレクサ・プラス(4:3センサーモード / ARRIRAW2.8K / 2880pix × 2160pix)撮影。DSMは1.85:1トリミング(2868pix ×1550pix)。DIファイルは2K。映像平均転送レート映像58Mbps。ピーク輝度1.613nit/平均709nit。
思わず目を瞠らせる、鮮明、ノイズレスのHDR絵画。高精細・高解像度化によって、ハンドヘルド・カメラの妙をたっぷり味わえるのも嬉しい。輪郭は滑らかで輪郭補正の弊害、過度な先鋭感とは無縁。時に内容とは正反対の(軟調さとは異なる)柔和な表情を魅せるショットがあり興味深い。重量感を感じさせる人物のたたずまい、弾力がある肉感的な肌質は観モノのひとつ。CIA内部のプロダクションデザインから中東のロケショットに至るまで、ディテールは細密かつ賢固。アクション・シークエンスでも揺るがない。HDRエンハンスはソニー傘下カラーワークスが担当。陽光や反射光、機器の発光には力感が宿るが、過度に強調されることはない。光彩操演にも増して、色調の拡張が目覚ましい。二次色の手触り、低体温のグレーやシルバー、点在する機器の原色光、そして暖色照明が描く深い空気感に注視されたい。逆光ショットにも確かな奥行き感がある。HDRの実力は緊迫のクライマックスでピークに達する。その暗闇HDR絵画に目を奪われること必至。極度のローライトレベル撮影ショットにみる暗色、暗視スコープの冷たいグリーン、最暗部の映像情報と階調の再現が凄い。
HI-RES SCREENSHOT (1080pix × 608pix) - The included screenshots are sourced from a blu-ray disc
サウンドデザイン/音響編集監修/リレコーディングは、『ハート・ロッカー』でアカデミー録音賞と音響編集賞を獲得したポール・N・J・オットソン。本作では再び音響編集賞に輝いている。リミックス・ドルビーアトモス・サウンドトラック採用。音声平均転送レート4.8Mbps (24bit / 48kHz)。
贅肉を削いだ演出で貫かれた映画であり、本作の緊迫感は「音」と組み合わされてこそ大きく効果を発揮することを忘れてはならない。しかも実話の映画化であり、殺伐とした舞台で生じている1音1音は、映画そのものの欠くべからず要素となっているのだ。大仰な音響操演とは無縁、針の先を集めたような音彩操演を披露する。発声とサウンドエフェクトは並外れた明瞭さを有しており、ステージングはスムーズかつシームレス。要所に応じてローエンドのサポートに優れている。ドルビーアトモスは随所で不安感をあおり、サスペンスの感触を醸し出し、観る者に緊張を強いる。本作のサウンドトラックは異国や施設の環境音によって支配されているが、それ以外の危険に直結する音(たとえば兵器や装備の金属音など)を配置編集するバランス感覚を聴取されたい。いよいよクライマックス、血の通わぬシネソニックは、心底怖い。寝静まった隠れ家のただならぬ空気感。その空気を瞬時に切り裂く銃撃音。「オサマ?」「オサマ?」と存在を確認する張り詰めた声。必聴である。
FINAL THOUGHTS
じわりじわりと沁み込んでくる緊迫感は、サスペンス映画慣れしたシネフィルでも心拍数が早まるのは間違いナシ。映画を観たという充実感は得られるし、なかなかお目にはかかれない傑作ではあるが、鑑賞後は嫌ぁ~な気分になる人もいるかも。間違ってもご家族、カップルでご覧ならぬように。リリース当初は全米BEST BUY店舗のみの販売だったが、現在では米amazonでも購入できる。
HI-RES SCREENSHOT (1080pix × 608pix) - The included screenshots are sourced from a blu-ray disc
Title |
ZERO DARK THIRTY |
---|---|
Released |
Sep 12, 2017 (from Sony Pictures) |
Run Time |
2:36:59.410 (h:m:s.ms) |
Codec |
HEVC/H.265 (Resolution: 4K / HDR10) |
Aspect Ratio |
2.40:1 |
Audio Formats |
English Dolby Atmos (48kHz/24bit/Dolby TrueHD 7.1 compatible), English Dolby Digital 5.1 |
Subtitles |
English, English SDH |
Supplements |
《UHD BLU-RAY》no extras,《BLU-RAY》No Small Feat (3:51) / The Compound (9:25) / Geared Up (7:03) / Targeting Jessica Chastain (5:09) |
タイトル |
ゼロ・ダーク・サーティ |
---|---|
年 |
2012 |
監督 |
キャスリン・ビグロー |
製作 |
キャスリン・ビグロー, マーク・ボール, ミーガン・エリソン |
製作総指揮 |
コリン・ウィルソン, テッド・シッパー, グレッグ・シャピロ |
脚本 |
マーク・ボール |
撮影 |
グレイグ・フレイザー |
音楽 |
アレクサンドル・デプラ |
出演 |
ジェシカ・チャステイン, ジェイソン・クラーク, ジョエル・エドガートン, ジェニファー・イーリー, マーク・ストロング, カイル・チャンドラー, エドガー・ラミレス, ジェームズ・ガンドルフィーニ, クリス・プラット, フランク・グリロ |
解像感 |
★★★★★★★★★☆9 |
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S/N感 |
★★★★★★★★★★10 |
HDR効果 |
★★★★★★★★★☆9 |
色調 |
★★★★★★★★★☆9 |
階調 |
★★★★★★★★★★10 |
解像感 |
★★★★★★★★★★10 |
---|---|
S/N感 |
★★★★★★★★★★10 |
サラウンド効果 |
★★★★★★★★★★10 |
トップスピーカー効果 |
★★★★★★★★★☆9 |
低音の迫力 |
★★★★★★★★★☆9 |
Film |
★★★★★★★★★★10 |
---|---|
Image |
★★★★★★★★★☆9 |
Sound |
★★★★★★★★★★10 |
Overall |
★★★★★★★★★★10 |
スティーブ・マックィーンとパッケージディスクへの情熱はハンパなく、これまでに購入した映画ディスクの総額は軽く億を超えることから、通称は「映画番長」。映画助監督という作り手としての経歴を持ち、映画作品の本質を見抜くには、AV機器を使いこなすこと、ソフトのクォリティにも目配りすることを説く。HiVi連載「www.ハイデフ.com」(「世界映画Hakken伝」から改題)は、前身の「今月の輸入盤」から数えて20年を越える、最も人気の高い連載のひとつとなっている。
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