HOME > 連載 > Masato’s G clef Lab. > その7 なぜ私は、絶縁トランスを「手作り」しようと思ったのか
2013年5月10日/木村雅人
以前HiViの連載「手作りシアター現在進行形」で紹介した絶縁トランスがG clef Lab.でも効果があったので、今回はその概要をもう一度紹介しながら、私が製作時に作成したケース図面も掲載しようと思います(絶縁トランス自体はあるサイトで一時話題になったから、すでに知っている人多いかもしれませんね)。
図面にはトランス・スイッチ・コンセントの取り付け穴が載っています。図面と同じタイプを作るのであれば、ケース加工を販売店に依頼すれば、後は部品を買って配線するだけで完成します。電源強化アクセサリーとして使ってみたい人はチャレンジしてみてはいかがでしょう。
スイッチング電源やコモンモードノイズについての詳細は別の方にお任せするとして、ここでは簡単な説明だけさせていただきましょう。
最近の電化製品はスイッチング電源の採用が多く、オーディオビジュアル機器であってもその採用例は少なくありません(BDプレーヤー、レコーダー、USB DAC、テレビ、プロジェクター等)。もちろんこれらの中にも内部のノイズ侵入に気を使っている製品はありますが、スイッチング電源からのノイズは、電源ケーブルを伝って他の機器にも影響を与えている可能性があります。
そこで電源を絶縁(アイソレーション)する必要があって、絶縁トランスを使う......となるのですが、オーディオ用に作られた製品は結構高価なので、購入を躊躇する方も多いのではないでしょうか。
私もその一人で、試しに自作して、効果がありそうなら製品を買ってみるのもいいだろうとの考えで作ってみたのが始まりです。
そこでスイッチング電源を使っている機器(G clef Lab.ではEDGEやOPPO等)に使う為の絶縁トランスを作る事にしました。ノイズを出しそうな機器をアイソレートしたのです。
設計という程ではありませんが、私なりにこだわった部分は以下の通り。
・コンセントからトランスをできるだけ離し、漏洩磁束の影響が少なくなるように配慮
・スタンバイ状態でもスイッチング電源はノイズ源となるから、完全に電源を落とせるようにスイッチを付ける(ふたつあるコンセントの片方がスイッチ非連動)
ケース加工を頼んでおいたので製作は30分程で終わりました。順序としては以下の通り。
1) 部品を一度仮設置して、ケーブルの寸法取り
2) トランスに電線をハンダ付け、トランスをケース底面に取り付ける
3) ケースを組み立てながら、スイッチやコンセント・ヒューズを設置、配線して行く
4) 断線やショートの可能性がないかを確認したら完成
ヒューズは最低でも壁コンセント側(一次側)に必須で、必要に応じて本体コンセント側に設置して下さい。トランスの配線の仕方はトランスの種類によって変わってくるので、付いてくる仕様書をよく見て、分からない場合は販売店に確認をして下さい。
最後に電源をつないで(まだ機器は接続しない)コンセントから出力されている電圧を確認したらお待ちかねの試聴となります。
今回はG clef Lab.でオッポBDP-38SE NEとDVDO EDGEを絶縁トランスに接続した場合のインプレッションを紹介しましょう。
ジャズの定番アルバムのビル・エバンス「ポートレートインジャズ」から『枯葉』を再生。すぐ気づくのはノイズフロアが低くなった事です。G clef Lab.ではデジタル系とアナログ系は別系統のブレーカーから電源を取っていますが、それでもスイッチング電源の影響はあるようです。またノイズフィルター系にありがちな音の痩せも感じず、ピアノの高音域での倍音がトランス未設置時に比べ詳細に描かれているのがわかります。
ただ、少し音が丸くなった印象もあります。これは使っているシステムによってもイメージが違うだろうし、組んだばかりであればエージングによっても変ってくるでしょう。
映像のクォリティはどうなったかを確認するために「007/スカイフォール」を視聴してみます。冒頭のバイクで砂塵を巻き上げる追走シーンでは、音の時と同じようにS/Nがよくなっているのが確認できます。チャプター14の宮殿にボートで入っていくシーンでは、照明の色のにじみも少なくなっているし、音の時のようなクセが感じられませんでした。G clef Lab.のスクリーンが140インチというサイズだから、ちょっとした変化でも大きく感じるのかもしれません(自分で作ったからユルめのインプレッションかもしれない……)。
絶縁トランスによる音・映像の効果は作るだけの価値は充分にあると思います。今のAV機器はケーブルを自作・交換するぐらいでホビー要素が少ない! だからこそ自分で作くれる絶縁トランスみたいな物は所有する喜びも大きいし、後でフタを開けてあれこれいじれる楽しみもいいと思う。
配線を充分注意すれば「アナタだけのAVアクセサリー」を作ることができ、それが自分の「システムの一部」になる。コンセントを一般的な物にすればさらに安くできるから、絶縁トランスの自作に挑戦してみてはいかがでしょう。
●G clef Lab.流自作絶縁トランスの設計図はこちら
※PDFファイルをダウンロードする際は、リンク上で右クリック→ショートカットメニューからリンク先を保存してください
製作時の注意点
・接続機器の合計消費電力を計算し、余裕のあるトランスを用意する。(トランス容量に余裕がないと発熱・発火の恐れがあります。)消費電力の倍あれば、まず不具合は起きないでしょう。
・配線・組立てが完了してもすぐに電源を入れず、テスターで配線ミスやショート・出力ボルトを確認する。(大事な機械が故障する可能性あり、火災につながります。AC100Vをナメてはいけません)
使用した部材(総費用4万前後)
・絶縁トランス本体(ノグチトランスPM-200WS容量200VA)
・コンセント2個(フルテックFPX Cu)
・配線材(2m程)※電源用ケーブルを使う事
・スイッチ(ON・OFFが必要な場合)オムロン A8L-11-11N1
・コンセントカバー2口用(UL規格用)
・ケース(タカチPSL 133-20-23 SS)
・ハンダ・ネジ等のショートパーツ
・ヒューズボックスとヒューズ(事故を最小限に防ぐためです)
※ケースは必要ないと思うかもしれませんが、漏洩磁束や見た目・安全性を考えると絶対に必要です。
※絶縁トランスの製作は自己責任で行なってください。製作中、もしくは完成品を使用した時に起こった事故や不具合について、筆者並びに株式会社ステレオサウンドは責任を持ちません。自信のない方は専門家のアドバイスを受けるか、完成品の購入をお勧めします。
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