HOME > 連載 > ナベさんのマストバイ > ナベさんのマストバイ<14> ソニー「HT-ZR5P」(後)色々使える万能スピーカー
2016年10月 7日/渡部法之
まずはBluetooth接続でスマートフォンに保存した音楽をいくつか聴いてみたが、スピーカーのサイズからは想像できないどっしりとしたスケールの大きな音に圧倒された。しっかりした骨格でエネルギー感豊かな音が、高剛性バッフルの恩恵を感じさせる。グッと深く沈みつつ上質な低音はエンクロージャーの左右に装備したパッシブラジエーターによる効果だろう。
本機はプリセットEQを搭載しており、デフォルトのFLATも安定感あるバランスが魅力だが、ロックなどにはちょっと落ち着きすぎな感じがする。そこでROCKを選んだところ、高域が適度に華やかさを増し、やや膨らみ気味だった低音とのバランスが改善された。
この状態で聴くプログレメタルバンドのサーカス・マキシマス『A Darkened Mind』は 、メリハリのある攻撃的な音に変貌し、静かな冒頭から徐々に盛り上がる曲展開をドラマティックに表現した。
続いてUSBメモリーを背面端子に挿してハイレゾ音源を聴いてみた(※なお、本機は再生周波数帯域が非公開で、ハイレゾマークは付いていない)。ビル・エヴァンスの『Waltz for Debby (take 2)』(192kHz/24bit)は、ROCKでは少々大味な印象だったので、ここでのEQはJAZZをチョイス。FLATからの変化はROCKほど大きくないが、高域の見通しがよくなる。演奏の細かなニュアンスが再現され、音に繊細さが加わった。
メタリカの『The Unforgiven』(96kHz/24bit)は、深みのあるバスドラムの再現が肝で、ROCKにしたところ荘厳な低音が静かに力強く胸に響いてきた。本機のプリセットEQは絶妙なさじ加減で音楽の魅力を倍増してくれるので、積極的な使用をお薦めしたい。
やはり音楽再生においては、BluetoothよりUSBメモリー経由で再生したほうが、音の品位が向上し、音色も豊かになる。クォリティを重視するならおのずとUSBメモリーという選択になるだろう。
テレビとHDMIケーブルでつなげばテレビ用スピーカーとしても使える。テレビ番組のサウンドを確認すると、音楽再生ではちょっと地味にも思えたEQの設定FLATが好印象だった。中低域に厚みのある本機のキャラクターが、番組視聴を邪魔することなく全体のクォリティを向上させる。それと同時に、デジタル放送の音声コーデックAACは薄味で低音が軽い傾向があるので、その弱点も補ってくれるというわけだ。
また、前編でも触れた「ワイヤレスサラウンド」機能にも注目したい。これは同社製の対応するサラウンドバーやAVアンプとの組み合わせで、本機をワイヤレスでサラウンドスピーカーにすることが可能なのだ。
前方に置いたAV機器からサラウンドスピーカーへ伸びる長いスピーカーケーブルは、サラウンド環境を構築する上で障害になる場合が意外に多い。この部分がワイヤレスになれば、スピーカーケーブルの取り回しに苦慮することなく、美観を損なわない設置が可能になる。ソニーは過去にもワイヤレスのサラウンドシステムを送り出しているが、本機のシステムがもっともスマートで実用的だ(電源ケーブルはL/Rそれぞれに必要)。
このワイヤレスサラウンドを含め、本機は簡単な設定で機能を変更できるので、サラウンドスピーカーとして利用しないときはBluetoothで音楽を聴くといった使いこなしも可能だ。状況に応じた使い分けができるのが本機最大の魅力だろう。
<ナベさんのマストバイポイント>
再生機器との接続だけでなく、左右のスピーカー間もワイヤレスになるので、機材のまわりがかなりスッキリする。絡み合ったケーブルに悩まされているユーザーにはまさに夢のスピーカーと言える。
クォリティ:★★★★★
高級感のある低重心な音は、コンパクトスピーカーのイメージを覆す。プリセットEQもかなり練られたチューニングが施されているので積極的に活用したい。
使いやすさ:★★★★☆
簡単な操作で設定を変更できるため、本機の多機能をストレスフリーで堪能できる。iOS/Android用アプリのSongPalは、EQ設定にたどり着くまでの経路が長いなど、若干改善の余地があると感じた。
コストパフォーマンス:★★★★★
ペアで実売約5万円という価格は一見すると高く感じるが、実際に機能と音を体験すればバーゲン価格に思えてくる。
※本連載は最後にクォリティ、使いやすさ、コストパフォーマンスの3項目で5点満点による採点を行なう。それぞれの項目に採点理由も添えているので参考にしてください。
<SPECIFICATIONS>
ソニー HT-ZR5P 想定市場価格:¥50,000前後
●型式:2ウェイ2スピーカー・パッシブラジエーター付き
●使用ユニット:14mmドーム型トゥイーター、70mmコーン型ウーファー、パッシブラジエーター×2
●パワーアンプ最大出力:60W×2(40W+20W)
●接続端子:HDMI入力1系統、アナログ音声入力1系統(3.5mmステレオミニ)、USB-A端子1系統、イーサネット端子1系統
●消費電力:30W(1台)
●寸法/質量:W101×H161×D101mm/1.7kg
筆者プロフィール
渡部 法之(わたなべ のりゆき)
家電量販店のクロモノ担当からオーディオ&ビジュアルの世界に足を踏み入れ、AV機器専門店の店舗スタッフとして10年以上在籍した。イベントの企画/運営や数多くのホームシアター導入相談に携わるなかで知識や経験を積み重ね、2000年以降のAV機器には誰よりも多く接していると自負している。
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