2013年5月24日/スズキハルコ
「マッチポイント」(2005)以降、"ホーム"のニューヨークを離れ、「人生万歳!」(2009)以外の8作品中7作品をアメリカ国外で撮影しているウディ・アレン。ロンドン、バルセロナ、パリに続き、今回舞台に選んだのはローマだ(ウディが国外で映画を撮る理由は、6月3日発売のホワイエ Vol.62で明かされているので注目を)。
4つの物語が入り乱れて展開する本作について、ウディは「ローマは散歩しているだけでも驚くような街で、街そのものが芸術品。複数の物語を語るのに適した場所だと思ったんだ」と語っている。
[1]ローマを旅行中に現地の男性と恋に落ちて婚約した女性と、娘の婚約者に会うためアメリカから飛んできた両親(ウディ・アレン出演)
[2]田舎からローマへ移り住もうと計画している初々しい新婚夫婦と、手違いで夫のもとへ派遣されてきたセクシーダイナマイトなコールガール(ペネロペ・クルス出演)
[3]同棲中のアパートに彼女の親友が転がり込んできて、ついその親友に心を奪わてしまう青年(ジェシー・アイゼンバーグ&エレン・ペイジ出演)
[4]なぜか突然ローマ一の有名人に祭り上げられてしまった平凡なサラリーマンと、彼を追いかけ回すマスコミ(ロベルト・ベニーニ出演)
こんな色とりどりの物語は、まるで"ウディの思うローマ"を詰め込んだよう。となると群像劇なのかと思いきや、最後までそれぞれが独立した物語だった。
混乱するのは、とあるパートでは数時間の、しかし別のパートではある程度の期間を描いていること。時間の経過がバラバラなので、物語が変わるたびにスイッチの切り替えが必要だ。これならば入れ子にしないで短編集としてまとめるか、いっそ各パートを膨らませて4本の映画にしてしまったほうがスッキリしたような気も......?
さて、その中でも一番気になったのは、上記[3]のパート。ジェシー・アイゼンバーグ演じるジャックの彼女が、エレン・ペイジ演じる親友のモニカについて「頭がよくて面白くて、しかもセクシーで小悪魔的な魅力があるから男はみんな夢中になるの」と説明したから、思わず「エッ」となってしまった。
……エレンがセクシー、ですか? それは[2]のペネロペ・クルスのようなタイプに当てはまる言葉であって、彼女は可愛らしいけど“セクシー”とか“小悪魔”とは対極にいるような気がする。案の定、モニカと対面したジャックは「これがセクシーなモニカ? へ~」という反応だし。
ところが、ウディ映画の登場人物は大体そうだけど、このモニカもよくしゃべるしゃべる。しかも“頭がいい”と評価されるだけあって、小難しそうな内容だ。最初は彼女を何とも思っていなかったジャックも、その知的弾丸トークでいつしかメロメロに……。
あれ? このモニカのキャラクター、どこかで見たことあるような……と、しばし考えてみた。そうか、過去のウディ映画で、ウディ自身が何度となく演じた“どう見たってカッパおやじなのに、なんでそんなにモテモテ!?”という主人公に似ているのだ! モニカのほうが圧倒的に陽気とはいえ、インテリぶったところまでそっくりで、彼女に過去の自分の役を重ねたとも取れる。
おまけに、ジャックのお目付け役のような立場のジョン(演じるのはアレック・ボールドウィン)に、「彼女は賢そうに見せるのがうまいだけだ。こんな勘違い女はやめておけ」なんて言わせている。自分を投影したキャラクターを“似非インテリ”と批判させるあたり、いかにもウディっぽい自虐ネタじゃないか?
そして“意外なモテキャラ”を女性にしてみたところで、振り回されるのは結局男性というところに、ウディの皮肉と諦観が表れているようで笑ってしまった。
左がエレン・ペイジ。女目線だと、どちらかというと異性よりも同性に受けるタイプだと思うけど、ひょっとして男性から見たらセクシーなの? ジャック役(右)は「ソーシャル・ネットワーク」のジェシー・アイゼンバーグ
なお、ケイト・ブランシェットが主演するウディの次回作「Blue Jasmine」(2013、7月26日アメリカ公開予定)では、はじめてサンフランシスコを舞台にしている。見るからに神経質そうなウディと、カリフォルニアの太陽が輝く健康的な雰囲気……に、似合わない。一体どんな作品になるのだろう? ぜひ日本公開を期待したい。
さらに、つい最近「Blue Jasmine」を完成させたと思ったら、あっという間にエマ・ストーン&コリン・ファースが出演する次々回作の準備を始めたそう(舞台は南仏とのこと)。
御年77歳、まだまだ衰えることなく突っ走るウディ。これからもあと20年ぐらいは、わたしたちの目を楽しませてくれると嬉しい。そして、ここらへんでそろそろニューヨークの作品もお願いします!
ローマを旅行中のヘイリー(右)は、あれよあれよという間に現地の男性と恋に落ちる。ウディの前作「ミッドナイト・イン・パリ」でゼルダ・セイヤー・フィッツジェラルドを演じたアリソン・ピルが、ウディの娘役で出演!
監督・脚本・出演:ウディ・アレン
出演:ペネロペ・クルス/ジェシー・アイゼンバーグ/エレン・ペイジ/アレック・ボールドウィン/ロベルト・ベニーニ
原題:To Roma with Love
配給:ロングライド
2012/アメリカ=イタリア=スペイン/115分/アメリカン・ビスタ/ドルビーデジタル
6月8日より新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ他にて全国ロードショー
(C) GRAVIER PRODUCTIONS,INC.photo by Philippe Antonello
▼ペネロペ、エレン、ジェシーの出演作はまずこれをチェック!