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NO.01
堀切日出晴
この激夏、いかがお過ごしでしょう? クーラーのきいた部屋で、キンキンに冷えたビール片手のAV三昧? うーん、たまりませんなぁ。
さて、HiVi Webの連載コラム。その名も「今月の米国盤:番外地」(凄ぇ、タイトルですな!)。何せ月間40本、50本とソフトを視聴する身ですから、本誌上で紹介し切れない作品数知れず、なわけです。ならば本Webで、ちょっと気になるDVDを紹介しましょう、ということになりました。昨今の米国DVDソフト市場は、とにかく熱い! 熱い! 極上盤の連打、劇場では観られない貴重な作品群の登場、等々。さぁて、この番外の地の連載、どーなりますやら。
おにィさん、おねェさん、肩肘張らずにお楽しみ下さいな。お代は後で。
注:本ページでご紹介している米国盤は「Region-ALL」と書かれているもの以外は国内向けのリージョン2仕様DVDプレーヤーでは再生できません
2000年上半期お薦め米国盤
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SUMMER OF SAM
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●Widescreen 1.85:1●DD 5.1ch
| PICTURE QUALITY | ★★★☆ |
| SOUND QUALITY | ★★★★ |
視聴から半年。この暴力。この堕落。我が国での出来事とオーバー・ラップすることが多い。凄まじいまでの切れ味! この絵、この音、危険度は超弩級だ。1977年。夏。ニューヨーク。ディスコ・ミュージック。パンク・ロック。ドラッグ。セックス。そして、サイコ・キラー“サムの息子"。これらをスパイク・リーが調理するのだから、猛暑の中で人間関係のハーモニーの崩壊を描いた「ドゥ・ザ・ライト・シング」同様、本作も熱風のように絡みついてくるドラマになる...はずだった。なのに、寒い。冷たい。心地よさなど微塵もない。苛立ち。感情の爆発。それらは、若さという名の下に逃げ隠れした投げやりな感情の延長にある。怒りまでもが寒い空洞にあるのだ。この、冷めたリーの視線が恐いな。おぞましい悪寒が走るな。物事を白と黒に分けて心地よさを求めるより、摩擦や両義性を選ぶのがリーの主義ならば、本作に限ってDVDだとか、スクイーズだとか、5.1chだとかの是非を語っても意味がない。魂が衝撃を受け、消耗する。本作のテーマはそこにあり、すべてはそこから始まる。
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JOE THE KING
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●Widescreen 1.85:1●DD 2.0ch
| PICTURE QUALITY | ★★★☆ |
| SOUND QUALITY | ★★★☆ |
これは美しき小品! 心優しき呼吸を体で感じてください。オリーバー・ストーン組のバイプレーヤー、フランク・フォエリー初監督作品。他にも名監督の作品に多数出演しているだけあって、語り所がさり気なく、巧いのだ。飲んだくれの親父の暴力。家族の繋がりすら見失ってしまう貧しさ。様々な向かい風の中で、手探りながら光を求める少年。そう、これは思春期に足を踏み入れたばかりの少年の“サバイバル"ストーリー。これは役者の映画。中でも飲んだくれのお父ちゃんに扮したヴァル・キルマー。ぶよぶよビール腹のお父ちゃん。怒りと苛立ちと焦燥と痛き愛に静かに静かに悶えるお父ちゃん。これが、いい。しかもノア・フレイス扮するお兄ちゃん、きっちり答えて魅せた。がっぷり受けて魅せた。恐ろしくも素晴らしきこのお兄ちゃん。いいな、このお兄ちゃん。とりわけ、その瞳。こんなにも歪んで、こんなにも哀しいけれど、ここには古き良き亜米利加の家族愛が息づいている。ノン・スクイーズ?ノン・5.1ch?それがどうした!ハートが目と耳をさらに高みへと導いてくれる。
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THE BIG SLEEP
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●STANDARD 1.33:1●DD MONO
| PICTURE QUALITY | ★★★ |
| SOUND QUALITY | ★★★ |
本誌8月号で8坪シアターの館主、澤里昌吉さんが、本作「三つ数えろ」と「キー・ラーゴ」でカメラがとらえたバコールを艶やかに語ってらしゃるが、彼女の美しさを目にした時の衝撃は今も忘れられません。国内盤が発売になっているので、あらためて本DVDを紹介するまでもないが、'45年公開版と、その後'46年に公開されたファイナル・ヴァージョンが同じ円盤に収録されているのは感涙もの。映画研究の書でもあり、ワーナー版クライテリオンであるかのよう。ホークス、ボガード、共に不滅の魅力を振り撒いているのだが、やっぱりバコールに身も心も傾いちゃう。デビュー作の「脱出('44年)」をご覧なさい。当時19歳。「逢いたくなったら、口笛を吹いて。吹き方くらいわかるでしょ。唇をくっつけて吹くだけよ。」もう、たまりませんな。美容整形メニューから各部分を集めまくったサイボーグ女優や、それに憧れる世の若き女性に、誰かバコールのDNAを分け与えてあげてやって下さいな。さぁ本作の、艶色香るモノクロ映像に填って下さいな。
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THE TRUE GRIT
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●Anamorphic Widescreen 16:9●DD MONO
| PICTURE QUALITY | ★★★☆ |
| SOUND QUALITY | ★★★ |
ジョン・ウェイン。西部劇。ウェインの魅力は大画面でないと味わいきれない。決して器用でない彼にオスカーをもたらした「勇気ある追跡」。描くは老匠ヘンリー・ハサウェイ。DVDのラップを剥いでプレーヤーに盤を乗せる。ほどなくパラマウントのロゴにテーマ曲(必聴!)が被さり、広大な山並みが映り、赤い文字のウェインの名前。嗚呼、もうそれだけで、それだけで嗚咽してしまうよ。片目の老保安官、ルースター・コグバーン。嗚呼、なんといい名前なのだろう。父親の敵を討とうとする少女との、祖父と孫娘のような愛情の交流の、なんとすがすがしき事よ。馬の手綱をくわえ、左手に拳銃、右手にライフルを風車のように振り回し、たった一人で無頼漢どもをなぎ倒していく。少女が言う、あれが本当の勇気だと。ウェインの豪快なストップ・モーションの画面にタイトルが流れる。泣けて泣けて、勇気を貰える。凄いこと、これは。1907年生まれの彼だが、西部劇は俺が築き上げた世界だ! という誇りを胸に歩む姿。それは紛れもなく男の姿であり、西部劇の生きた歴史である。
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THE STELLA MARIS
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●STANDARD 1.33:1●DD 2.0ch●Region-ALL
| PICTURE QUALITY | ★★☆ |
| SOUND QUALITY | ★★★ |
あらあら、こう見ると毎月ベストワンに、新作、大作がない。罪作りだね、これって。本作に至っては、今から82年前の作品。勿論無声映画。メアリー・ピックフォード(下記アドレス参照)のサイレントDVDは本作を含め8本。しかも全てノー・リージョンで、その映像をリストアされ、そのスコアを再び演奏、レコーディングされている。小柄な彼女が“アメリカの恋人"と慕われ、今なお映画界最初の“スターさん"と大切にされている理由も、この一連の作品を観れば説明不要だろう。ステラ・マリスは天使の心を持った女性。そしてもう一人、不幸を背負った家なき娘。二人のヒロインが、一人の男性と出会った時……。本作はハリウッドの伝統芸メロドラマだが、背筋が凍りつくようなショットが随所に挿入されている。恐い! ぶっ飛ぶよ! しかもヒロイン二人を演ずるは彼女一人。現代の映画が寄って集っても勝てないシャシン。はい、このことですよ。でもね、素顔の彼女って結構いやらしい性格だった。それもまた聖林の伝統芸。あらあら、これもやっぱり罪作りなお話でしたね。
Mary Pickford"America's Sweetheart" http://www.geocities.com/marypickford2000/
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VAGABOND
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●Widescreen 1.66:1●DD MONO●Region-ALL
| PICTURE QUALITY | ★★★☆ |
| SOUND QUALITY | ★★★☆ |
そして、この「冬の旅」。また古いな、なんて言わんでね。'85年にアニエス・ヴァルダが発表した痛き針のような秀作。ヌーヴェルヴァーグの作品を定義する事は非常に難しい。「カイエ・デュ・シネマ」誌に寄稿していたゴダール、トリュフォー、ロメール、シャブロルとは違うスタンスで、ヌーヴェルヴァーグを支えていた映像作家たち。レネであり、ドゥミであり、アラン・マイケルであり、このヴァルダである。このヌーヴェルヴァーグの流れを広い視点で見つめ、愛し、後世に大切に伝えようとするソフト・レーベル、はっきり言って世界でクライテリオンだけ。ホントに凄いこと、これは。同社からの「5時から7時までのクレオ」を観てもわかるのだが、ヴァルダ作品は“万年筆"と喩えられる。“小説の文体を思わせる"といえば簡単だが、安易に文学的と評しても、登場人物の存在の揺らぎが伝わらねばその焦点は見えてこない。それは家庭の視聴においても、である。このDVDには、それがある。それがあるから、冷たい涙がこぼれるのだ。悪寒が走るのだ。魂が鷲掴みにされるのだ。
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