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今月の米国盤:番外地

 さて、ちょっとここでドルビーデジタル(DD)・サラウンドEXのお話をしないといけませんね。ルーカスフィルムのサウンドデザイナーにして、映画音響界の最高峰のリレコ技師、ゲーリー・ライドストロームが、“何でも欲しがる"ルーカスおじさんを誘惑して開発したのがその始まり。こけら落としは「スター・ウォーズ/エピソード1」。DD-5.1chをベースにマトリックス技術を用いて拡張チャンネルを設けよう。サラウンドバックというエキストラ・チャンネル。あらま、このEX、音が広がる、動き回る。その昔、トーキーになっった時、お客さん、みんなぶっ飛んだ。今の若い人、驚き方のお戯びを体で知らないから、冷静に見える。でも、ホントはドキドキ、ワクワク。EXともっと戯んでね。
ところでEX公開された作品ってどれだけあるの?これから公開される予定の作品を含めて、ちょっと紹介しましょうね。
99年公開作品(全米公開順)
「スター・ウォーズ/エピソード1(FOX)」「オースティン・パワーズ:デラックス(ニューライン)」「ホーンティング(ドリーム・ワークス)」「ファイトクラブ(FOX)」「BATS(Destination)」「ボーン・コレクター(ユニバーサル)」「ジャンヌ・ダルク(コロンビア)」「トイ・ストーリー2(ブエナビスタ)」「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ(MGM)」以上9本。
2000年公開&予定作品(全米公開順)
「PITCH BLACK(GRAMERCY)」スマッシュ・ヒットとなったSFホラー。
「ミッション・トゥ・マーズ(ブエナビスタ)」なんとデ・パルマのSFX大作。
「グラデュエーター(ドリーム・ワークス)」こちらはリドリー・スコットの壮大な史劇。
「CHICKEN RUN(ドリーム・ワークス)」吹き替え=メル・ギブソンのCGアニメ。
「パーフェクト・ストーム(ワーナー)」日本公開中。ワーナー初のEX作品。
「THE LEGEND OF BAGGAR VANCE(ドリーム・ワークス)」
「THE ART OF WAR(ワーナー)」
「SPOOKY HOUSE(S.H.L.)」
なお、2000年以降オフィシャル発表になっている作品はスピルバーグの「MEMORIRS OF A GEISHA」と「MINORITY REPORT」。特に後者はトム・クルーズとのコンビで、なんと2002年5月29日の公開日まで決まっている。こりゃ、大変。
(追記:またシュワちゃんの「エンド・オブ・デイズ」と記録的なメガヒットなった「X-MEN」の2作はEX仕様発表されたが、劇場ではEX公開されていない。十分なダビング日数が確保できなかった、というのが大方の見方だ。3月にテスト公開された「エクソシスト/完全版」は9月22日にEX仕様で拡大公開される予定。また12月にドイツで劇場公開された動物アニメーション「KAPTユN BLAUBAR」がEX公開されたほか他、米国以外でもイタリア、中国等12本の作品がEX公開予定となっている。そのうちタイ映画が6本を占めているのが興味深い。)
さて上記作品の中でDVD化されている(または予定の)作品はというと。
第1弾は99年5月全米公開(FOX)の「スター・ウォーズ/エピソード1」。もういいな、この作品。今じゃぁ、ちょっとしつこいもんな。DVD登場までお休みしましょ。続いて6月に公開(ニューライン)された「オースティン・パワーズ:デラックス」。日本人には到底真似できない肉食ギャグを、“洒落"として魅せてくれる。聴かしてくれる。もともとEX、大がかりな“洒落"だもの。この作品だって、他人の庭でおシッコしちゃう様な作品だもの。それをみんなで正面から見ている。こんなクスクス笑いがいいわけ。音もちょっと下世話で。
続いてドリームワークスが7月に公開した「ホーンティング」。これには驚いた。原作の怪奇小説「山荘奇譚」の味わいが見事にない、ない。何もない。監督のヤン・デ・ヴォン、“撮影時間がなくて消化不良だった。これは音の映画さ"とか言っている。よくわからんね、この人。確かに音は凄い。テーマパークみたい。でもお話は退屈。まっ、いいか。これが今夏8月末にDTS-ディスクリート6.1ch・ES盤が登場する。DTS-マトリックス・ES盤は下記の「ボーン・コレクター」がその実力を見せつけるが、完全ディスクリートはEX、ES盤を通じて業界初の収録。しかも、劇場版、DD-EX版には入っていないサウンドまでリレコしているとなれば、もう皆さん、待ちきれないでしょ?さらにさらに、マルチチャンネル再生に伴うダイアローグの指向性管理を、リレコ時に完璧に行っているのは本作だけ。でもね、その実力を楽しめるのも、現時点でDENONの最新AVアンプだけ。まっ、いいか。次作は「プリンス・オブ・エジプト」の予定。
10月はFOXが「ファイト・クラブ」、独立プロのデスティネーションが「BATS」を送り出した。前者の音には色香がある。ジャック=エドワード・ノートンの分身、タイラー=ブラッド・ピットが言う。“俺達はさ、歴史の真ん中の子供。目的も、居場所も、大戦争も、大恐慌も、なんにもない。テレビに育てられ、有名になれると思っていた。でもなんにもない。俺達は今、ホントにむかついている。"彼らは怒る。荒れる。そしてそれは人の内面での闘いと知る。ちょっと幼稚なお話し。男を利用したフェミニンな映画。それを音が救った。ファイト・シーンより日常のシークエンスで、美味しそうな香りがプンプン。
なんと、サミュエル・フラーの香気まで出てきた。恐いね、EX。後者は「鳥」のパクリ。正々堂々パックって魅せた。この開き直りが嬉しいな。だから音は、ホントに踊ってる。楽しそう。見終わった後、なーんにも残らんからからいいの、この作品。
11月は4作登場。まずはユニバーサルからの「ボーン・コレクター」。まぁ、「セブン」を意識したサイコパス・スリラー。ここまで意識しなくてもいいだろうに、と思うけれど、サウンド・デザインは素晴らしい。特にDTS-マトリックス・ESを選択しての視聴は、圧巻!転送レート448kbpsのDD-EXに対して、754kbpsのDTS。“従来の半分に転送レートを落としましたよ。レートが高いから有利なんて、もう言わせません"というDTSのメッセージ。本作のサウンド・デパ-トメントの面々が凄いもの。彼らの手腕を巧く味方に付けました。それはそれで、はい、お見事。「ジャンヌダルク」はコロンビアの自信作。DVDでもその自信は揺らぐことはなく、DVD史上最高の極上盤に仕上がった。凄いね、この蠢くサウンド。縦横無尽とは、このこと。リアルさと神秘的な香りの間で、音で戯んで魅せた。そのリズム。ちょっとばかりハリウッドに魂を売ってしまったリュック・ベンソンだが、“唇だけは許してません"的な女々しさが、作品に淫靡な香りを与えてくれた。苦しみがあるな。それが、いい。音も苦しんでるのね。わかる?EXで出るよ、それが。出たな007!これは一貫したEXデザインはされていない。適材適所。ちょっと物足りない人もいるかも知れないけど、「ワールド・イズ・ノット・イナフ」は、コネリー時代の妙味を再現して魅せた。この開き直りがいいわけ。当時のフィルム感度なんて、今の半分もあればよく、黒なんかどっぷり沈んじゃう。敢えて暗さを強調した名手テッド・ムーアの筆致と、コネリーの持ち味が加算され、独特なダークな妙味が漂っていたわけ。この作品の音が巧いとわかるのは、随所で流れるジェームス・ボンドのテーマ。当時の劇場のエコー感を再現しようと、勉強したな。これが、初期作を意識した絵作りを引き立てた。アクション・シークエンス?別に007じゃなくてもいいでしょ。でも、これは007、ボンドの映画なわけ。音楽。リズム。その響き。これが結局アクションを下品にしない。いい意味でのイギリスの見栄。だから、国内劇場公開のラストの音楽。ルナ・シー?馬鹿なことをしたな。最低の愚行。DVDはオリジナル通りエンディング・スコア。救われました。
というように、EX効果は思わぬ所に溢れている。でも「トイ・ストーリー2」のようなアニメで魅力全開するのは間違いない。第1作「トイ・ストーリー」とのカップリングで今秋リリースされるが、「2」のみEX仕様。実際にサウンド・デパートメントにライドストロームが名を連ねているから、品質は今から保証されたようなもの。DVDは10月中旬発売予定。ライドストロームといえば、8月末にリリースされる「ターミネーター2/アルティメット盤」も自信の1作。EXリミックスについても“自分でも驚いた。それほどに楽しめるよ"とのコメント。またDTS-マトリックス・ES収録もされる本作だが“意識的に冒険したのはDTS"とのことで、何しろ「劇場公開版」「ディレクターズ・カット版」「ユニバーサル・スタジオ・3D版」の3バージョンを収録しており、お楽しみの全貌は8月まで取っておきましょうね。
このほかにも9月中旬に「ミッション・トゥ・マーズ」がリリースされる。あの強烈なサウンドが家庭でどう再生できるか楽しみ。楽しみとはいっても、EX、ES盤の大半はフロント・チャンネル、LFEに意図的に20hz周辺の帯域を伸張した重低音がデザインされており、リア・チャンネルにも45hz付近の低音域までたっぷりと含まれている。ちょっと恐いね。機械を壊さんでね。また「セブン/ニューライン・プラチナム盤」「エクソシスト/完全盤」もEX仕様での登場がアナウンスされているし、前出の劇場EX公開リストの作品はその殆どがEX仕様でリリースされる予定です。
原稿入校後のアナウンスをお知らせします。「ピッチ・ブラック」が、10月中旬にユニバーサルからDD-EX仕様でリリースされます。
「セブン/ニューライン・プラチナム盤」の仕様予定は以下の通り。
2層式/2枚組。クライテリオンLD版とほぼ同様のジャケット・デザイン。
サプリメントもクライテリオンLDと同様。映像はリマスティング・シネスコ・アナモフィック。注目のサウンドは、リマスティング・DD-EX。
また、リマスティング・DTSはディスクリート・6.1chの模様。
詳細は問い合わせ中。リリース・デイトは12月中旬。)

でも、ジャケット等にEX、ESの表記がないのも困まりモノ。ウワサがウワサを呼んで、混乱しちゃう。
EX権利の問題などが複雑に絡み合っているのでしょうし、THX公認のものでないと「パイレーツEX」などと呼ばれたり、ちょっぴりユーザー不在で困りもんです。
というわけで、簡単にEX、ES作品の紹介をしましたが、ノン・アナウンスのものを含めると、今秋以降のEX、ESタイフーンには目を光らせて、耳をとがらせていなくてはいけませんね。

◆参考文献

ドルビーデジタルEX劇場公開作品リスト
「DOLBY LABORATORIES/Current & Upcoming Dolby Digital Surround EX Films」

ドルビーデジタルEX-DVDリスト
「DVD FILE/Software Review & Database」
「WIDESCREEN REVIEW/DVDreviews Detail Infor mation」
「WIDESCREEN REVIEW/DVDreviews Narrative Re view」
「HOME THEATRE A/V MAGAZINE Dolby Digital Surround EX Available Software Title」

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