NO.03
堀切日出晴
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さて第3話は、アレック・ギネス特集? いいえ、違うんです。
アレック・ギネス、永眠。次々に名優が亡くなります。たまらないほど悲しいけれど、パッケージ・ソフトの中で永遠なる命と共に生きていく、と思えば、悲しさも薄まるというもの。逆にそういった役者さん達は本当に幸せ者だ。さて、ギネスには本誌10月号で触れていますのでそちらを見て頂きたいのですが、こちらは未だによくわからない命名の「番外地」。ギネスから何故か懐かしのホラー特集へと……。ギネスといえば「スター・ウォーズ」のオビ・ワン・ケノビ! という人もたくさんいるでしょ。でもね、あの映画にはピーター・カッシングも出とるでしょ。カッシングといえば、ほら、ホラーに行き着くじゃない、という強引な展開の「今月の米国盤:番外地」第3話なのでありました。でもね、ホラーものを紹介し出すと切りないから、最近リリースのDVDに限ってます。悪しからず。
THE FRANKENSTEIN CREATED WOMAN
●Anomorphic Widescreen 1.66:1 ●DD MONO
PICTURE QUALITY ★★★
SOUND QUALITY ★★★
邦題「フランケンシュタイン 死美人の復讐」。タイトルからしてなんだか凄いな。'60年代してる! カッシングはフランケンシュタイン博士に扮して、醜女のヒロインを絶世の美女に再生しちゃう。醜い彼女を愛して愛して、やがて無実の罪で処刑される彼氏。フランケンお嬢ちゃんの復讐劇。とっても悲しい哀しい。だから見せかけの恐さを期待しちゃダメ。血なんてまさに絵の具色。ところが、です。次第に傑作ホラー「フランケンシュタインの花嫁」同様、押し寄せる強烈なペーソスとユーモアに唸ってしまう。そこに英国の土壌がある。昨今のアメリカのお子さまホラーとは違う味わいがある。しかもね、紙一重で人間の醜さを揶揄するわけ。表面も内面も。これが、恐い。ホント、じわじわ恐くなる。しかも、なんだか水気たっぷりでしょ。梅雨時は観られんな、これ。でもハマー・プロダクションのホラーは、一度味わうと止められなくなっちゃう。スクイーズ収録されてホントに綺麗綺麗。哀しくて恐くて、ファンは大喜びだろな、これ。それに本誌ではなかなか紹介できないもの。
THE MUMMY'S SHROUD
●Anomorphic Widescreen 1.66:1 ●DD MONO
PICTURE QUALITY ★★★
SOUND QUALITY ★★★
邦題「ミイラ男の呪い」。「ハムナプトラ」なんかから比べると文化祭なみのセットなんだけど、夜トイレに行くのをちょっとばかりためらわせる雰囲気がいいんだよね。カッシングはここではナレーションを担当。この英語がいい。まさに舞台役者の発音。'40年代や'50年代の彼のフィルモグラフィを見てご覧なさい。例えばね、クライテリオンから発売されたばっかりのローレンス・オリビエの「ハムレット('48年)」、SPEから登場した「情事の終わり('55年)」の芝居を観てご覧なさい。背筋が伸びているけど、どこか不健康な英国を体現してる。だからこの発音に、肺や声帯を病んでいるんじゃないか、と思わせるような声色が加わって、本作には「恐さ」という華が宿った。見世物小屋的な大衆劇の延長でもあるから、かなり下世話な恐さも秘めている。でもそれを英国服で刳るんで魅せた。ちょっとばかり見栄がある。ちょっとばかり高い所から見渡した。この微妙なバランスが美味しいわけ。モノーラルだけど分厚いスコアが鳴り響くだけで、当時の劇場にタイム・トリップできますよ。
INFERNO
●Anomorphic Widescreen 1.85:1 ●DD-5.1ch
PICTURE QUALITY ★★★☆
SOUND QUALITY ★★★
同じヨーロッパでもイタリアン・ホラーはブッ飛んじゃう。'70年代に入ると泣く子も黙るアルジェントおじさんの登場だ。本人の存在自体がホラー! 恐いもん、このお顔。でもね、アルおじさん、'60年代はレオーネの「ウエスタン」に代表されるマカロニ・ウエスタンや、リー・ヴァン・クリーフやジャック・パランス主演のマカロニ戦争映画! の脚本を書いていた。ネットリぐっちょりの血生臭さ。やたら見得を切らせるハッタリ大作戦。お下品丸出しのお色気攻撃。だから「サスペリア」を台頭とするホラーものは、この二大マカロニものの衰退と入れ替るように、出るべきして出てきたジャンルだった。そして80年。この「インフェルノ」を発表した。中川三郎の「地獄」も別の意味で凄いんだけど、こちらの地獄はまたひと味違う。誘われたら黙って「お願いします」と言ってしまいそうなおねェさまと、「これでもか! これでもか!」の“ハッタリ”サウンド。きわめつけは色彩の原色大百科事典。この配色。ヤク漬けDVDだな、これ。結局話なんて半分も理解できないもん。
DEEP RED
●Anomorphic Widescreen 2.35:1 ●DD-5.1ch
PICTURE QUALITY ★★★
SOUND QUALITY ★★★
カッシングからアルジェントに節操なく跳んじゃうところが、番外地の連載のいいところなのかは「?」なんですが、この「サスペリア2」もかなりのヤク中ホラーですよ。「サスペリア」の大ヒット後のため、製作年度が先にも拘わらず「2」をつけた東宝東和。これだけでも脳死状態に陥いっちゃう。でもね、実はこのDVDファンには垂涎のディレクレターズ・カット版。25年ぶりに126分のホラー絵画の全貌が観られる! ということなんだろうが、これを観てホントに驚いて欲しいのはプロダクション・デザインのアート感覚。色彩、光、影、そしてその姿。これね(下記HPアドレス参照)アメリカのモダン・アート作家エドワード・ホッパーの作品を、驚くほどに研究し取り入れているから。アルジェント、こういうところが侮れんな。こういう絵を見せることで、母親の愛憎が活きたね。Deep Red(イタリア原題も同じ意味)=深紅が何か見えてくる。「2」なんてつけとる場合じゃないのね。最近とみに変態おじさん度急上昇だけどだけど、嫌いになれんな、この人。
Edward Hopper http://www.i-galleries.com/hopperidx.htm
例えば「Nighthawks」は冒頭の広場、「Chop-Suey」はBARの光景というように。
PHANTASM
●Widescreen 1.85:1 ●DD-5.1ch
PICTURE QUALITY ★★★
SOUND QUALITY ★★★
“ハッタリ”といえば、'70年代最後の年に製作された「ファンタズム」。数年前に充実のLDボックスとして登場したのを記憶している人もいると思うが、先日リリースされたDVDもかなりの高画質。スクイーズ収録ではないが、リッミクス5.1ch音声は実にクリアーだ。だけどね、思えばこの作品、ビジュラマ方式と言う宣伝文句だった。上記のアルジェントの「サスペリア」も、サーカム・サウンド方式ということだったが、今でもそれが何なのか理解できていません。更にこのビジュラマ方式、ってのが凄まじかった。一般劇場では絶対体験でない、試写会での特別版。この作品の中で「スター・ウォーズ」に出てたような頭巾をかぶったフリークスが出て来るんだけど、そのフリークスのシークエンスになると試写会場の袖から、フリークスと同じ格好をした輩がスクリーン前を横切るの。おそらく配給会社の宣伝部員なんだろな。そりゃぁ、会場は沸くわな。これがビジュラマ方式! 考えたこと自体ホラーだな。恐ろしいな、'70年代。お色直しのDVDで当時を懐かしんで下さいね。
CLASSIC MONSTERS COLLECTION
●STANDARD 1.33:1 ●DD MONO
PICTURE QUALITY Not Yet
SOUND QUALITY Not Yet
最後はこれで締めましょう。入稿ギリギリに届いた、それはそれは懐かしいモンスター映画のコレクターズ・セット盤。リリース済の作品も含めてラインナップは、「フランケンシュタイン」「フランケンシュタインの花嫁」「大アマゾンの半魚人」「魔人ドラキュラ」「ミイラ再生」「オペラ座の怪人」「透明人間」「The Wolf Man(未)」の8作品。例えばね、ボリス・カーロフ演じるモンスターの為に花嫁を製造する「フランケンシュタインの花嫁」。実はこれ、強烈なペーソスとユーモアが堪能できる快作、傑作。「半魚人」なんて、恐ろしくも美麗なギルマンのクリーチャー・デザイン。艶美なヒロイン、ジュリア・アダムス。神秘的な魅力に溢れた舞台。と、もう、早くみたい!見たい!観たい!でしょ。怪物映画の老舗、ユニバーサルの正統なる系譜を探索したくば、このBOXセットは必須アイテムです。ホラーって、その語りが魅力なわけ。語りをどう見せるか。'30年代前後のクラッシック・ホラーってホント良かったな。でもね、僕は「牡丹灯籠」が、一番コワイ、こわい、恐い……。
次回の番外の地のお話は、うって変って8月29日の大噴火! 「T2」「ホーンティング」のサラウンドEX、DTS-ESサウンドのお話が出来れば、と思っています。では次回も「番外たいむ、番外ちゃんねる」で……って、ちょっと古いな、これ。
<追記>
'70年代までの英国産ホラーは、製作会社のハマーとアミカス、スターさんのカッシングとクリストファー・リーなくしては語れない。低予算で、おすけべサービスカットが盛り込まれたり、でもね、良質の古典ホラーが数多く作られているのも忘れてはいけませんね。'50年代に米国ユニバーサル社からホラー・スピリットを継承するように製作されたハマー・ホラーは、ショッキングなシーンのあふれる総天然色シャシンでした。懐かしいな。
注:本ページでご紹介している米国盤は「Region-ALL」と書かれているもの以外は国内向けのリージョン2仕様DVDプレーヤーでは再生できません
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