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今月の米国盤:番外地
NO.05
堀切日出晴

 魅力たっぷりの米国盤。どうしても本誌で紹介できなかった円盤にご登場願いましょう。

 本誌「今月の米国盤」も8年目に突入していますが、連載当初のページを開いてみて、あらら、LDを5本だけ紹介してたんですね。当時は米国盤といってもクォリティの低い米国盤LDも一杯あって、10本程度のお薦め盤を選んでそのうち5本を選択していました。今は月9本+サプルメント3本。ところがDVDがテイクオフして4年も経つと、この12本でも紹介し切れない。特に今年。DVDに本気になった米国盤の絨毯爆撃、これが凄いのよ。凄まじいのよ。まぁ、そうした選外盤の紹介もしていきましょうね、という企画で番外の地の連載も始まったわけですから。前回は「懐かし? のホラー映画特集」だったけど、うーん、なにやら怪し気だったもんな。今回はちょっと襟を立てて、それでは気を引き締めていきましょ! 続・本誌未紹介の番外盤特集の始まり始まりィ。

KEEPING THE FAITH
Anomorphic Widescreen 1.85:1/DD 5.1ch
PICTURE QUALITY ★★★☆
SOUND QUALITY  ★★★☆


 「ファイト・クラブ」のエドワード・ノートン初監督作。彼の主演作群を観るかぎり、往年のスクリューボール・コメディを髣髴させる題材を初監督作に選ぶとは思わなんかったなぁ。ちょっと意表をつかれました。スタージェスと言うよりは、ダグラス・サークに近い語り口。塗して魅せたのはセックスの香り。ノートン、セックスを戯び道具として巧みに魅せた。お洒落と下世話のバランスが上手いのだ。下世話に流れ込んで、語りの面白さが霧散した「メリーに首ったっけ」とは明らかに違いますね。おそらく、観る人観る人、話の展開にぽかんと口を開けたり、乗り出したりするはず。役者さんと同じ動き、リアクションをするでしょう。まさに愛すべき小品。御年78歳のエルマー・バーンスタイン。好き好き、欲しい欲しい、してして、の鼓動をスコアに乗せた。さすがです。ディズニー系のDVDのクォリティ、急速にアップした。でもまだ黒側の階調部分でS/Nがちょっとよくないタイトルがある。これもそう。でもね、1年でこれだけ画質向上したんだもの、文句などありませんよ。

THE UNSINKABLE MOLLY BROWN
Anomorphic Widescreen 2.35:1/DD-5.1ch
PICTURE QUALITY ★★★☆
SOUND QUALITY  ★★★


 邦題「不沈のモーリー・ブラウン」。なんだか凄いな、このタイトル。不沈、ってあんた……。でもね、ブロードウェイ・ミュージカルの映画化で、64年の全米興行ベスト5に入ったヒット作ですよ。「マイ・フェア・レディ」「メリー・ポピンズ」の陰に隠れてちょっと損をしている。銀山を相続して大金持ちになったモリーお嬢様、ヨーロッパ社交界デビューはしたもののヒッチャカメッチャカの大騒ぎ。さぁ、もうアメリカに帰りましょうか、ということで、乗ったお船がかのタイタニック。氷山にドーンで、さぁ大変。もうお分かりと思いますが、モーリー・ブラウン、実在のお嬢様なんですね。タイタニックの事故の際に、怯むことなく救助活動に力を貸した人。これで付いたのが「不沈」の名。主演は懐かしのデビー・レイノルズ。シネスコ・サイズで観るミュージカルはホントに気持ちいいなぁ。ワーナーがMGM作品のリリースをフォローすると発表して半年、多くの名作がワーナー印の高品位DVDとして蘇っているが、本作もその1本。不朽のMGMミュージカルのお味は美味ですよ。

THE EAGLE HAS LANDED
Widescreen 2.35:1/DD-MONO
PICTURE QUALITY ★★★☆
SOUND QUALITY  ★★★


 '92年に世を去った名匠ジョン・スタージェス、彼の最後の監督作品です。50〜60年代に傑作を連打したスタージェスだが、70年代の仕事ぶりは寂しかった。その彼がジャック・ヒギンスの原作を得て、映画魂に再び灯をともしたのがこの作品。76年当時、映画ファンは心底彼の復活を喜んだもの。全盛期に観る豪放な筆致こそ薄れたが、語りはもういぶし銀の如く。残念ながら、視力の極端な低下のため最終編集作業までは参加できなかったから、劇場公開版は予定より短いヴァージョンで公開された。彼は異を唱えなかった。良しとした。今回はカットされたシーンが追加されたが、彼亡き今、この変更版リリースはさほど大きな意味を持たない。彼の目に触れていないもの。それより何より、本作のリズムを体で感じて欲しいな。役者は全て熱演! アン・クレジットで、「栄光のル・マン」でマックイーンとデッドヒートを演じたジークフリート・ラウヒが、ドイツ軍軍曹に扮して登場してるのも、もう嬉しくて嬉しくて……。スタージェスのお話は、いずれゆっくりしましょうね。

PATRIOT
Anomorphic Widescreen 2.35:1/DD 5.1ch
PICTURE QUALITY ★★★
SOUND QUALITY  ★★★★


 「パトリオット」。あなたねぇ、これを選外にしてたの? 困りましたねぇ。という声が聞こえてきそう。でもね、これちょっと絵がヒドい。SPE印と思って買った人、ちょっと可哀相。とにかくエッジ・エンハンスの分量を間違えた。ザラザラの一筆書き。もともとCG映像とのバランスで、フィルムの質感も荒かった。ENR(銀残し)手法も含めてわざと荒らして時代の香りを出そうとしたの。でもね、プロデュースは「プライベート・ライアン」のM・ゴードンとG・レヴィンソン。もう、もう一度ライアンをやりたくてやりたくてしょうがないお二人。それにUS「ゴジラ」の監督と製作者が加わった。人間を単純にしか描けないお二人。どんなにメル・ギブソンが熱演しても、優れた作品になるはずがないことはみーんながわかってた。ハリウッドすら知ってたのね。ジョン・ウイリアムスのスコアも一本調子。「ライトスタッフ」の名撮影監督キャレブ・デシャネルも実力を発揮できなかったね。音はがんばったけど芯がないの。これじゃ、説得力も奪われる。この作品、図体だけ馬鹿でかい大味作品でしたね。

RULES OF ENGAGEMENT
Anomorphic Widescreen 2.35:1/DD 5.1ch
PICTURE QUALITY ★★★★
SOUND QUALITY  ★★★★


 邦題「英雄の条件」。これは音の映画。今年のサラウンドお薦めDVDのBEST10に入るでしょう。とにかくS/Nがいい。それは戦闘シーンは勿論、裁判の法廷シーンでの暗騒音の表現からもわかる。絵も異様な奥行感。本作でもENRは大活躍するけど、このDVD、圧縮に伴うノイズは僅少。シュートも殆ど見受けられない。最近のパラマウント、DVDの製作工程を見直してから強烈な説得力を持つ絵を披露するようになった。監督は「フレンチ・コネクション」「エクソシスト」のウィリアム・フリードキン。もはや彼には、前述の2作品に見る破壊的とも言える映画的なカイカンを、我々に与える力量はない。かといって円熟とも言えない。時代を駆け抜けてきた人だから蓄えた物が少ないのだ。いわゆる中途半端な映像作家として宙に浮いている。時代が求めない。本作も然り。極上の絵も音もどこか空回り。凄いんだけど空転しちゃう。でもね、たけしの監督デビュー作に影響を与えた「L.A.大捜査線」のような秀作を、忘れた頃に発表するのも彼らしいんだけれど。だから嫌いになれないな、この人。

PITCH BLACK
Anomorphic Widescreen 1.85:1/DTS5.1ch&DD-EX5.1
PICTURE QUALITY ★★★★
SOUND QUALITY  ★★★★


 「エイリアン」? 「スターシップ・トルゥーパーズ」? MTVの映像を観てるみたいなSci-Fiホラー。サウンドはサラウンドEX。豪快かつ緻密。監督のデビッド・トゥーヒーは「逃亡者」や「G.I.ジェーン」の脚本を書いて、50年代のSFクラシックの匂いがプンプンの「アライバル/侵略者」を監督した人。今回もSFクラシックへの想いがひしひしと伝わってくる。残念なのはね、CGとサウンドに逃げちゃったこと。やり過ぎちゃったね、この人。若い意欲が空回り。カットされたバイオレンス描写を追加したヴァージョンも発売されたけど、結果はいずれも恐くないの。ぜーんぜん恐くない。スリルって何? 「ぞっとすること、ワクワクすること、戦慄、身震い」。この作品、これだけスリルのネタがあるんだから、もっともっと凝って欲しかったな。ヒッチコックを意識してるけど、足元にも及ばない。このネタの数々をもっと面白く膨らませたろうな、ヒッチは。ハッタリでもよかったの、アルジェントばりのね。結局表面のカッコに惑わされた。でもね、この若さ、期待しちゃう。

HIGH FIDELITY
Anomorphic Widescreen 1.85:1/DD 5.1ch
PICTURE QUALITY ★★★
SOUND QUALITY  ★★★☆


  「グリフターズ/詐欺師たち」「ハイ・ロー・カントリー」のスティーブン・フリアーズの新作。原作はニック・ハーヴェイのカルト小説で、シカゴのレコード・ショップのオーナー、ロブお兄ちゃんのお話。この30プラス数歳のお兄ちゃん。アパートに帰ってもレコードが山積み。床やベッドまで占領してる。なんだか僕に似ててヤダな。お店ではいつも音楽のマニアックなお話で店員と口論してるし、彼女はそんなお兄ちゃんに嫌気が刺して出て行っちゃう。もう、憂鬱から生まれた喜劇。憂鬱という名の感情が、カメラに直接繋がっているのね。そしてそれが断続的なモノローグの形式をとる。これはね、退屈と紙一重。一見何でもないことのようだけど、大胆きわまりない演出です。フリアーズの語りに答えて、主演と共同脚本と製作を兼ねたジョン・キューザックの感性が浮き上がってくる。いいねぇ、キューザック。特に役者としてのそれは、手を叩きたくなるような巧妙さ。穏やかで冷静そうに見える彼の外見に潜む、混沌とした絶望の表現。上手いなぁ。分裂症の喜劇。その哀しさの妙。

ME MYSELF I
Anomorphic Widescreen1.85:1/DD-5.1
PICTURE QUALITY ★★★★
SOUND QUALITY  ★★★☆


 レイチェル・グリフィスお嬢様の新作。誰、って? あなた、どうしたの? 映画観てますか? 「日陰のふたり」「ベスト・フレンズ・ウェディング」「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」に出とるでしょ。'98年には「HILARY AND JACKIE」ではオスカー・ノミネート。意外と知られていない、今が32歳、華ざかりの旬なお嬢様なんですよ。このオーストラリア映画のいいところは、ホントに淡々とお話が進んでいくところ。ヒロインのパメラは独身のキャリア・ウーマン。でもアパートに帰るとなんだかちょっと小汚い。酒酒。涙涙。セックスだってしたいけど、テレビから流れるは3流ポルノの喘ぎ声。酒酒。涙涙。彼女の記憶は13年前に遡る。「YES」と言っていれば変っていたはずの生活。するとあらあら不思議。「YES」と言った自分の生活と入れ替わってしまう。ファンタジックなSF映画? SFXもあるけど、もう淡々。これがいい。このリズムで、今時のお姉さん達の、キャリアとファミリーへのジレンマが溢れ出した。ちょっと哀しくて、でもがんばっちゃうお姉さん達に捧げる寓話です。必見!

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