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今月の米国盤:番外地
NO.08
堀切日出晴

   2000年年末はDTS-ES&DD-EX盤話題作の連打。
   番外の地「第八夜」は、ES&EXのお話、再び。

 年末年始とまーたく休みがなかったもので、21世紀になった気がしません。いやはや困ったもんです。とは言っても、「番外の地」2001年第一弾は「DTS-ES & DD-EX、Returns!」という事で、しっかりとお送りいたします。今年もよろしくお願いいたします。
さて、2000年年末、世紀末を飾るかのようなDVDが2本登場しました。1本はニューラインからの「セブン」。もう、待って待って、首が伸び切っちゃった人もいるでしょうね。でもね、あなた、待った甲斐がありましたよ。この絵、この音。驚きの連続です。もう1本は「エクソシスト」。「The Version You've Never Seen」と副題が付いた、堂々のディレクターズ・カット盤。しかも、あらあら、登場時にはまだ国内劇場公開中というオマケつき!そしてこの2本に、ドリームワークスの新作アニメーション「The Lord to El Dorado」も加えちゃいます。となると、またもや前篇、後編の2部構成。
今夜、明晩の番外の地では、音のお話に絞ります。えっ、絵の話もやりなさい、出し惜しみするな、って?あなた、ホントに欲張りだな。急がば回れ、って言うでしょ。映像を中心にした絵と音のレストレーション(修復)のお話、裏話は、2001年2月発売の「季刊ホームシアター」でお届けする予定ですので、ちょっと待ってくださいね。はい、モアこってり、と。作品は「セブン」「エクソシスト」以外にも「北北西に進路を取れ!」「プラトーン」「黒い罠」「戦場に架ける橋」エトセトラ、エトセトラ、でお届けする予定です。


ではでは、今回視聴の機種を簡単に列記しましょう。

●フロントプロジェクターソニーVPH-G70VRJ
●スクリーンスチューワートHD130/120インチ(4:3)
●DVD プレーヤー パナソニックDVD-H1000(米国仕様)
●AVセンター デンオンAVC-A1SE
●スピーカーウェストレイクBBSM-6VNF×2(フロント)
ウェストレイクBBSM-6F×1(センター)
ウェストレイクLc6.75×2(サラウンドLR)
ウェストレイクLc5.75×2 (サラウンドバック)
●サブウーファーリンAV5150 II
 
 AVC-A1SE、ウェストレイク7本使い、頑張るなぁ、このAVセンター。さすがにHiVi視聴室の広いソニック・スペースで過激に内臓アンプ駆動すると(しかもかなりの音量でした)、途中ちょっと悲鳴を上げかけたけれど、頑張りましたねぇ。実に生真面目。そして力強いですねぇ。セパレートアンプと組み合わせれば、さらに豪快かつ緻密なソニック・プレゼンテーションを得られるでしょうね。でも今回は、内臓アンプでフル駆動する方も多いので、敢えてA1SE内のアンプで駆動しました。サラウンドスピーカーはダイポール仕様ではないけれど、当初視聴位置の真横にレイアウト。視聴するにつれて視聴位置より約15度前方に移動しました。サラウンドバックは視聴位置より後方、各約30度にレイアウト。最終的にはスピーカー1個分内側に移動して落ち着きました。高さはスピーカー下部まで130cm。まぁこの辺は、ご自宅の状況と参考程度に比較してください。但し今回は、サラウンドバック1本使い、サラウンドLRを斜め後方にと、それぞれ比較しましたが、A1SEに関しては確実にサラウンドバック2本、サラウンドLR真横より前方設置のレイアウトをお薦めします。音場の濃密度は勿論、フロントチャンネルからサラウンドチャンネルへのソニック・トラッキング、サラウンド3チャンネルのソニック・パンニングで、確実に中抜け状態が解消されます。部屋のスペースの問題、ES&EX以外のソフト視聴の場合等、対処しなければならない問題点は残っていますが...。

SEVEN/NEW LINE PLATINUM SEREIS
●29.98$
●Anamorphic Widescreen 2.35:1(Theatrical Aspect Ratio=2.40:1)
●Dolby Digital Surround EX(448Kbps)
●DTS-ES Discrete 6.1(768kbps)
●Dolby Surround

さて、本編内のコメンタリー、DISC-2のサプルメント、これまた充実してます。
● 2discs-set 
Supplements Disc One:
4Audio Commentary tracks

1.The Stars―Director David Fincher and actors Brad Pitt & Morgan Freeman

2.The Story―Professor of Film Studies/Author Richard Dyer,
screenwriter Andrew Kevin Walker,
film editor Richard Francis-Bruce,
New Line President of Production Michael De Luca,
Director David Fincher

3.The Picture―Cinematographer Darius Khondji,
production designer Arthur Max,
screenwriter Richard Francis-Bruce,
The Story―Professor of Film Studies/Author Richard Dyer,
Director David Fincher

4.The Sound―Sound designer Ren Klyce,
composer Howard Shore (with isolated score and effects cues),
The Story―Professor of Film Studies/Author Richard Dyer,
Director David Fincher

Supplements Disc Two:
1.An Exploration Of The Opening Title Sequence
a three minute analysis of the film’s stylish credits designed by Kyle Cooper

2.Deleted Scenes & Extended Takes
there are seven scenes in this segment which effectively demonstrate the subtle impact slight trims on scenes can have on storytelling

3.Alternate Endings
includes the final scene as it appeared in early test screening versions and an animated storyboards for an unshot ending.
Both have optional commentary by Fincher

4.Production Designs
a nine minute series of production illustrations with commentary

5.Still Photographs
●15 minutes of photographs of John Doe with commentary by Melodie McDaniel
●a 3 minutes segment on Victor’s decomposition (commentary by Fincher)
●6 minutes on police crime scenes with commentary by unit photographer Peter
Sorel
●11 minutes of production photos with commentary by Peter Sorel

6.The Notebooks
an 8 minute segment on the design of the notebooks kept by the character of John Doe

7.Promotional Materials
includes the 6 minutes electronic press kit and a theatrical trailer

8. Filmographies
includes principal cast and crew

9.Mastering For Home Theater
a unique 23 minute segment on issues related to audio,
video and telecine with commentary by Brant Biles & Robert Margouleff of Mi Casa,
colorist Stephen Nakamura and New Line Vice President of Video Post Production Evan Edelist

10.DVD-ROM Enhancements―includes the screenplay and a link to the “John Doe’s World” Web site

Anamorphic Widescreen 1.66:1/DD-5.1ch
PICTURE QUALITY ★★★★★
SOUND QUALITY  ★★★★★


 まずサウンド監修は、監督のデビッド・フィンチャーと、彼のサウンド・ワールド構築の右腕レン・クライス、という所がおミソ。レンは「セブン」でサウンド・デザイナーとして1本立ちしてから、フィンチャー映画の常連。当然「ゲーム」「ファイトクラブ」の、もう神経衰弱サウンド・デザインも彼によるもの。DTS-ESディスクリート6.1ch、そしてDD-EXというフォーマットを使って更に成長した「セブン」サウンドを構築したかったという。とは言っても、決してジェット・コースター・ムービーのような躍動感に溢れたリミックスをしているわけではないのは、もう、「セブン」大好きスキスキのあなたにはわかっていますよね。本作のソニック・プレゼンテーションのキャンパスは、コンクリートで覆われた都市。そして憂鬱な天気にあるでしょ。ここに不気味な生き物達、これはブラッド・ピットとモーガン・フリーマン演ずる刑事たちも当然含むんだけど、このフリーク達がこの空間で息してる。蠢いている。
 まずはこの異様が、ES&EXという2つのリミックスで見事に出たね。1歩間違えれば劇画的な色に染まってしまうけれど、レンの感性がそれを救った。彼はもともと音楽家。そしてシカゴ大学で美術も専攻していたから、ひじょうに広い範囲でアートの造詣が深い。この造詣の深さが「都市」と「天気」という空間での、決して下世話にならない、下世話に聴かせないサウンド・デフォルメに繋がった。これは見事なDVDサウンドのプレゼンテーション。
その主題は特に3サラウンド・チャンネルに聴くことが出来る。サラウンド・フィールドを積極的に開放しているのだが、シークエンスごとの主題もきっちりと聴かせてみせるのだ。つまりここでいう開放とは、たとえ狭苦しいアパートの1室においても、交通音にみるトラフィック・エフェクトや、雨音、隣人の気配、といった視覚に入らない存在に対しての開放である。サラウンドバックの効果は絶大で、視聴位置の後方にも異様な空間が渦巻いている。これは、ホントにじわじわ恐いよ。そこに、クローネンバーグ映画で作品の持つ悲劇性を謳い上げ続けた、ハワード・ショアのスコアが絡んでくる。怖気ちゃうね。
決してでしゃばらないLFEのデザインもお見事。LFEが観る者の体を金縛りにするのは、以外にもオープニングタイトル。デビッド・ボウイとナイン・インチ・ネイルのタイトル曲。もともとタイトル・デザイナー、カイル・クーパーが後半にしか現れない犯人の異様を、手際よく簡潔にまとめたものだが、ここでのアグレッシブな低音域は確実に心拍数を早めるはず。心臓を握られちゃうよ。高血圧、不整脈覚悟のオープニング。こりゃ大変だ。

さて気になるDTS-ESディスクリート6.1chとDD-EXのクオリティ。ローレベルの再現性、細部のエフェクト・ディテイル、スピーカー間の繋がりでESに軍配が上がる。とは言ってもEXのクオリティも実に優秀。ひじょうに見晴らしのよいソニック・プレゼンテーションは、過去のEX作品の中でもトップクラス。SEの粒立ちがいいですねぇ。風のように軽く流れるLFEもカイカン。今回は広いHiVi視聴室での視聴ですけど、狭いスペース、小型スピーカー使用、スピーカー同士の間隔が狭い、そのようなロケーションではEXの方がバランスよく健闘、音場構築するのでは?と思えるほど巧妙なリミックスが行われていますよ。
でもね、実はそんな事よりとにかく驚いたのは、ESとEXとでは重要なシークエンスでの主題が明らかに違って聴こえてくるという事。このお話を延々とすると皆さん寝ちゃうでしょうから、このシークエンスをピックアップしましょうね。
中半のクライマックス、サイコ・キラー=ジョン・ドゥとの雨中の追跡シーンの後、犯人の部屋を蹴破り、部屋の中を探索する一連のシークエンス。この部屋、憎し惹かれし犯人の巣。初めて眼にする。初めて耳に触れる。初めて臭気を感じる。ここでの、特にサラウンドバックに注目。サラウンドバックがマトリックスなのか。ディスクリートなのか。それで視聴は大きく変わる。ブラッド・ピット扮するミルズが蹴破るドア。カメラはドアの開放と共にトラックバックする。EXは3サラウンドで部屋の気配を出した。異様な状況を掴み所のない気配で聞かせた。ミルズが見据える部屋の内部の、憎し惹かれし気配。ミルズ第一なの。ESはサラウンドLRに暗騒音の気配をデザインし、なんとサラウンドバックに、カメラのトラッキングとシンクロさせて風=悪、病理の威嚇の吐息をデザインしてみせた。部屋がミルズに挑戦するのだ。開けましたね、パンドラの箱を、とでも言うかのように。犯人の視覚として聞かせたの。もうこのデザイン、ミルズがジョン・ドゥに勝てないことを聴かせるのね。
ジョン・ドゥの部屋に入るよ。手には懐中電灯。常に聴覚はミルズと、モーガン・フリーマン=サマァセットにある、とデザインするEX。犯人の生活を、異様を初めて目の当たりにするひじょうに重要なシークエンス。憎し惹かれし、と書いたけど、二人の刑事の恐怖と怒りと興味と、何より唖然とさせられる鼓動が聴こえるのね。3サラウンドには暗騒音とシンセで作った叫び声のような気配を混濁させる。観るもの、そして聴くもの=現像の暗室で聴く電球が触れ合う音に、二人は現実の中での異様を感じるのだ。だからその後の犯人からの電話音を、観る者に何処となく音の位置を確認させるようにデザインしたのも理解できるでしょ。異様から現実に引き戻されるのね、ここで再び。
ところがES。シンセでデザインされたサウンドを、犯人の苦しむように搾り出す叫びとして、明らかな意思を持った音として聴かせる。サラウンドLRとフロント3チャンネルで。二人の刑事とスクリーン上で交錯させる。サラウンドバックには病理の空間で蠢く風をデザインした。聴きようによっては幽霊譚。ジョン・ドゥの異様に憑依される。病理をいつの間にやら共有させる演出。知ってはいけない、見てはいけない所へ音がいざなうのだ。だからわかるでしょ。赤い電球が擦りぶつかる音、犯人の高笑いなのね。二人は勝てない。電話もそう。とにかく空間に音が浮く。現実にすぐには戻さない。徐々にフロント側に比重が置かれるが、受話器を取って、憎し惹かれし犯人の声を聴いても、二人の魂は犯されてしまっている。行き着く先は、はい、地獄。見なさいね、お二人さん。

前述のシークエンスをチョイスしただけでも、ホントに一杯一杯発見があるESとEX。DVDのためのサウンドデザイン、こんなに凝ってる、拘ってる。しかも技術だけのマスターベーションでない。もう今、自分だけでイッちゃう人、一杯一杯いますからね。この「セブン」のDVDサウンドデパートメント、映画をよーく勉強してる。嫌と言うほどの回数、ブリーフィングしている。確かにES、物語を説明しちゃう部分も感じないわけではない。でも「セブン」を1度でも観た人には、このソニック・プレゼンテーションは嬉しいプレゼントでしょうね。初見の人はEX、再見の人はES、というような短絡的なお話ではないのですが、意識しないうちに違った形で映画の主題を突きつけられている事に気づくはず。その昔、スピルバーグの「オールウェイズ」の試写で、ドルビーサラウンドにも対応していないホールでの試写と、最新設備のイマジカ本社の試写とで、もう、評論家の皆々様、作品の印象、批評が全く変わっちゃった。前者で観た人の批評は、もう散々。後者では、素晴らしい素晴らしい、と大騒ぎ。あらあら、もう大変でしたよ。
そんなわけで、なんでもないようで、ところがとてつもなく恐ろしき音の魔法。「セブン」で改めて震えてしまいましたね。実は実は絵のお話も、もっともっと凄い事してるんですけど、これは季刊「ホームシアター」でお話しましょうね。
あら、あなた、よーく最後までこの夜話、お付き合いしてくれました。続きは次回。ESとEXの夜話、その後編で。といっても、すーぐHiVi編集部は更新してくれますよ。おそらくは来週、さぁ、「エクソシスト」で、この画面でお会いしましょうね。

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