spacer.gif spacer.gif r_top.gif
今月の米国盤:番外地
NO.09
堀切日出晴

2000年年末はDTS-ES&DD-EX盤話題作の連打。
番外の地「第九夜」は、ES&EXのお話、その後編。

 今夜は最新ES&EX作品の紹介、その後編。前回「セブン」に続く作品は「エクソシスト」。「The Version You've Never Seen」と副題が付いた、絵と音の堂々のディレクターズ・カット盤。そしてドリームワークスの新作アニメーション「The Road to El Dorado」も加えた、2本立てで贈ります。視聴機種、セッティングは前篇=第八夜を参照してくださいね。

THE EXORCIST/The Version You've Never Seen
●$24.98
●Anomorphic Widescreen 1.78:1(Theatrical Aspect Ratio=1.85:1)
●Dolby Digital Surround EX(448Kbps)
●Dolby Surround

PICTURE QUALITY ★★★★☆
SOUND QUALITY  ★★★★

 昨年の9月24日に全米664館(翌週には1,150館に拡大)でレストア公開。日本でも公開中のディレクターズ・カット版だが、全米だけでおよそ100万ドルのレストア費用に対し約40倍の収入をもたらした。ユ98年に公開25周年記念として限定公開された時に今回のヴァージョンの企画が組まれ、昨年3月のワーナー75周年記念限定テストリリースがあまりに好評で、拡大公開に発展した次第。本サプルメントは監督フリードキンのオーディオ・コメンタリーと2ラジオ・スポット。確かに絵と音のレストアと「11 minutes of delete and altered footage」が目玉ですからね、「本編をとにかく観てくださいな」というコンセプトなんでしょう。でもフリードキン、コメンタリーで、どうして本ヴァージョンを創り上げたか、創り上げたかったか、については触れていませんねぇ。ちょっと寂しい気がしますが、これも季刊「ホームシアター」で触れられればと思っています。特典としては、昨年11月にリリースされたBOXセットの方が気合が入ってますよ。写真と内容を紹介しますと

「THE EXORCIST」 25th Anniversary Edition DVD
●Audio Commentary by director William Friedkin and William Peter Blatty
 including audio outtakes of sound effects
●Production notes
●8 Theatrical trailers
●6 TV spots
●Special introduction by director William Friedkin
●「The Fear of God: The Making of the Exorcist」
 a 74 minute documentary including never-before-seen-footage plus
 all new interviews with the movies's cast and crew
●DVD-Exclusive documentary featurette of the movie's storyboards and production
●packaged in a luxury fitted slipcase

includes:
1.soundtrack CD
2.8 original limited edition lobby cards
3.Commemorative 47-page 「THE EXORCIST」 tribute book
4.Exclusive limited edtion senitype iamge from the movie with 35 mm film frame and numbered print

 昨年リリースのBOXセット。デレクターズカットDVD。ファンなら2アイテムとも欲しい欲しい、というところでしょう。2本で$104.96。僕は安いと思うんですけど。こんなおっかないモンにそんな金額払えない、って? うーん、わかるんですけど、「四谷怪談」のDVDを買ってのけぞっちゃうよりいいでしょ?
 さて、音のお話をしなくてはいけませんね。サウンドトラックは2種類。そのひとつがドルビーデジタル・サラウンドEXときたもんだ。25周年記念盤のドルビーデジタル5.1chリミックスのクォリティにも驚かされたが、今回の最新マルチチャンネル・プレゼンテーションの品質にも唸らされてしまう。
 マトリックスではあるが、新たに付加されたサラウンドバックの恩恵はひじょうに大きい。当然各チャンネルの成分配分も巧妙に再デザインされており、全トラックでチャンネル間のインフォメーションはひじょうに緻密になっている。感情表現――それは映画の登場人物は勿論、視聴する人のそれをも示唆する――が、ひじょうに豊かなのだ。怒り、恐怖、喜びに悲しみ。その感情のグラフは人により様々であっても、確実にクライマックスに向かって下降する事はない。同録の魔術師クリス・ニューマンによるダイアローグ録音は、僅かに歪みを伴うシークエンスやこもりがちに響くこともある。でもね、ここが大切なの。時代がここにあるの。それは技術面での時代というより、ドラマの中の時代の響きといっていいでしょう。不透明な時代の言魂がここにある。
 これは原作の主題にも繋がること。今回のリミックスに驚かされたのは、その響きの持つテーマをリアルな音場空間の中で更に前面に押し出して聴かせた。魅せた。今回のソニック・プレゼンテーションは、様々な効果音が散りばめられた包囲感、つまり登場人物が置かれた空気の中の会話劇、そこにある。悪霊=不透明の恐怖は、空間で地球の裏側まで繋がっているのに、人の感情は余りにちっぽけで、繋がりすら見出せない。皆あがくあがく。まさにグチャグチャになってあがくのね。でも答が見つからない。恐いな、これ。それがこの音で出た。残念なのは、ショックシーンや悪霊の前兆シーンでもサラウンドバックが活躍するが、むしろそれはお化け屋敷的な見世物映画として、本作を格下にみせてしまう。こんなに音で説明する必要などないのに。
 例えばね、天井から音がする。斜め後方から。後ろから。座敷わらしみたい。キャーキャー、ぶるぶる、で観て聴いているうちはいいけど、そのデザインを再生するために一生懸命、のめりこんじゃうんなら、はい、アウトです。結局はたったひとつの音が語る映画、あるんですよ。ほら、「西部戦線異常なし」のように。結局たった一発の銃声。恐かったな、あの銃声。ここでは、クライマックスの階段落ち。そのガラスの砕ける音、これをどう描くか。どう体感するか。この音の聴こえ方次第で、続く階段落ちの骨の肉の砕け裂ける音、つまりは悪霊に勝つか、負けるか、がわかる。映像ではその結末を、なーんにも見せませんよ。あなたの中で悪霊がまだ生きて感じるようなら、あなたの負けです。もう、この音自体が映画を語っていると言ってもいいくらい。あっちへ行ったり、こっちへ行ったり、ワッと大声を出すような目先の遊園地音場に騙されちゃだめですよ。フリードキン、わざと煙に巻く悪戯もしてますから?。ホントにいやらしいな、このおっさん。

THE ROAD TO EL DORADO
●$26.98
●Anomorphic Widescreen 1.85:1
●DTS-ES 5.1(768Kbps)
●Dolby Digital 5.1(448Kbps)
●Dolby Surround

PICTURE QUALITY ★★★★★
SOUND QUALITY  ★★★★☆

 さぁ、最後にドリームワークスの新作アニメ「The Road to El Dorado」に簡単に触れておきましょう。ひょんな事で黄金の秘境エル・ドラドへの地図を手に入れた二人の詐欺師。彼らの奇想天外な冒険活劇、と書けばスピルバーグおじさんの十八番。これをアニメーションでやらかしたから、もう、絵も音も戯ぶ戯ぶ。劇中のナンバーを歌うはエルトン・ジョン御大。なにやらディズニーを意識し過ぎ? インターネット等のDVDのスペック告知ではDTS-5.1ch、DD-5.1ch&DD-2.0chとなっているのだが、ジャケット裏にはDTS-ES5.1chの記載。ほら、あの■の音声マークですよ。フロント■3つにリア■2つ。そのリア■の間に□がひとーつ。マトリックス・サラウンドバック=□ですねぇ。ホントは今回は「セブン」と「エクソシスト」で終りだったんですけど、せっかくデンオン AVC-A1SEを使うのですから確認も含めて視聴しちゃいます。あらあら、DTS-ES、ロックしましたねぇ。
 ここでもローレベルの更にディープな再現性でDTSが優位に立つけれど、DD-5.1chのソニック・プレゼンテーションも実に優秀。本作が劇場でEX公開された記述はどこにもなく、エンドタイトル上にもEX表記がありません。DTSは劇場公開でのES表記を持たないので、スタジオからのオフィシャルな情報がない限りEX公開の是非で通常判断します。つまり、DD、DTSの両方のシアターサウンド表記がエンドタイトルにある場合、DDがEX表記になっていれば大半はDTSもESで収録されているという事。これはSDDS8.1chも同様なのだけれど、SDDSは上映対応劇場がまだ少ないためメインはEXとESになる。という事は? EX表記がない本作が、ES収録なのは? 大ヒット作でもないのに、DVDのためにESマスターをリミックスした、という事は考え難い。おそらくは劇場公開時からES収録だったのでしょうね。ドリームワークス&DTS強力チーム体制ですし、スピちゃんが黒幕だし。
 さてそのES、サラウンドバックの効果は大きいのだけれど、殆どがサラウンドの包囲感の再現の強化に費やされている。サラウンド3チャンネルの繋がりは実にスムースで、特に暗騒音の再現は格別。と言っても、ちょっと肩透かしもあるんだなぁ。オープニングにいきなり流れるエルトン・ジョンのテーマ・ソング。その響きの大半をスクリーン上にデザインしていて、さぁ、冒険活劇が始まりますよ! といういい意味でのこけおどし性がないのである。広大さ、そうワクワクドキドキのスペクタキュラーにかけるの。これはせっかくのスコアなだけに、ちょっと期待はずれ。この辺は「プリンス・オブ・エジプト」に軍配が上がります。しかし全体のスコアは決して躍動感に欠ける、というわけではないから安心して。とにかくアクション・シークエンスは、水を得たように元気元気のぶっ飛びサウンド。見せ場ごとのLFEも実にアグレッシブ。全チャンネル、アニメーションとは思えない強烈なDレンジが入ってくるから気をつけてね。
 詐欺師の二人の声は、ケビン・クラインとケネス・ブラナーが吹き替えている。実に感情豊かで、クリアーに響くのだが、特にブラナー兄さん。声の表情がリッチで、もう手にとるようにわかっちゃう。上手いなぁ、このシェイクスピア男優。でもシークエンスによって、その妙味を引き出せないリミックスもある。全体に前面に出過ぎのダイアローグ・リミックスで、これはADR=アフター・ダイアローグ・レコーディング、特にアニメーションにおけるそれのキャラクターと言ってしまえばお終いなのだが、肝心の台詞が画面に溶け込まないのだ。これもちょっともったいないね。そんな幾つかのエクスキューズもあるのだが、全体的にひじょうにウェル・バランスのソニック・プレゼンテーションになっています。それにしても、アニメーション・サウンド、侮れませんです事ですよ。

r_bottom.gif
footer.gif