NO.11
堀切日出晴
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最近日本のTVドラマって、全く観てないんです。だって、だって、だって・・・(沈黙)。
今から40年前。そう、1960年代の幕開け。映像メディアの闘い、つまり映画とテレビの激戦で60年代の幕は開いた。でもね、激戦なんて名ばかりのもの。誰の目にも映画に「勝ち」の目はない。どーみても勝ち目のない闘いで聖林が善戦出来たのは、まずはそのスケール。大画面でしか堪能できない、娯楽大作、秀作群を量産した。もう、これでもか、これでもか。そしてもうひとつ。これが大切なの。敵陣からの優秀な兵隊の略奪。シドニー・ルメット。リチャード・ドナー。ジョン・フランケンハイマー。アーサー・ペンにサム・ペキンパー・・・。もう、名前を挙げたらキリがない。ホントに聖林は見境ないお国だけど、こればっかりは映画の役に立った。彼らは独自のスタイルを持って、その後の映画界を支えることになったのね。前述の彼らが映画史に名を残す「顔」となった今、ふとTV界を見ると60年代の勢いはない。肥大化したTVメディアの中で、完全に個性が消されているのだ。昔のように、もっともっと新鋭映像作家が映画界に殴り込んで来てもいいだろうに・・・。
とは言っても、よーく見渡しますとね、TV作家やスタッフの充実というよりも、TV番組としての充実度が高いのがよくわかる。なんとも面白い事に没個性の影響が、集団作業としてのドラマの完成度を高めた、と見ていいのかもしれません。さてさて、番外の地第十一夜の今夜は、最近気になった、というよりハマってしまいました状態の外国ドラマのDVDを紹介しましょうね。


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THE SOPRANOS:The Complete First Season
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●$99.98
 
PICTURE ★★★★☆
SOUND ★★★★
現在WOWOWで放送中のタイトルは「ザ・ソプラノズ/哀愁のマフィア」。(12/8から毎週金曜日10:00〜10:55放送)このほっかほっかの新作ドラマ、昨年受賞(ノミネート)した賞をざっと挙げるだけでも下記の通り。例えばエミー賞。強力なライバル、NBCテレビ放映「ウェスト・ウィング」(ホワイトハウスの内幕を描く政治ドラマ)に主要部門を持って行かれたけれど、その健闘ぶりは知る人ぞ知るところ。
★=受賞 ☆=ノミネート
■EMMY Award
★Outstanding Lead Actor in a Drama Series ジェームス・ガンドルフィーニ
★Outstanding Casting for a Series
★Outstanding Lead Actress in a Drama Series イーディ・ファルコ
★Outstanding Single-Camera Picture Editing for a Series
★Outstanding Writing for a Drama Series
☆は「Outstanding Drama Series」他 「Casting for a Drama Series」
「Directing for a Drama Series」「Writing for a Drama Series」
「Lead Actress in a Drama Series」「Supporting Actress in a Drama Series」
「Supporting Actor in a Drama Series」「Guest Actor in a Drama Series」
「Cinematography for a Single-Camera Series」
「Single-Camera Picture Editing for a Series」
「Sound Editing for a Series」「Sound Mixing for a Drama Series」
「Art Direction for a Series」「Art Direction for a Single-Camera Series」
「Hairstyling for a Series」 の23部門。
エミー賞といえば、映画のアカデミー賞に喩えられる。でもね、ここ数年のエミー賞、あまり作品選考に冒険してないのね。悪い意味でちょっと保守的。つまり、明確な主義主張を持つ作品やインディーズな作品を避ける方向にあった、という事。このためエミー賞主催団体であるテレビ芸術アカデミーは、アカデミー賞同様審査員に候補作のビデオを送り、自宅選考を認知した。従来の審査方法? 週末に指定ホテルで候補作品を鑑賞していたけれど、こんなの、もう、時間に余裕のあるお年寄り連中ばかりが審査員として集まっちゃう。
「ソプラノズ」の製作は、米国Pay-TVのHBO製作/放送ですからね。HBOの番組はスポンサーに番組をあーだこーだと弄らせない。しかもネットワークではタブーの、例えばSEXやバイオレンス描写、ダーティ・ワードがポンポン飛び出してくる。そりゃ、扱うのがマフィアの世界、避けられませんわな。とは言っても、そこはアメリカ、「あなた、MA(成人指定)番組ですよ!」というお達しを与えていますけど・・・。
今年のゴールデングローブ賞のテレビ部門でも多数ノミネートされているが、昨年のゴールデングローブ賞を含むその他99年の各TV賞受賞25部門、ノミネート24部門という錚々たるもの。確かに今の米国TV界、かなり作品の質が低迷しているから、いざ話題作が登場するとその注目度は数年前の比ではない。やたら「各賞ノミネート、受賞」という中で持ち上げられちゃうのだけど、そんな中でちょっと注目して貰いたいのが、映画(アニメーション、ドキュメンタリーを含む)とTVドラマの各音響賞を表彰するMOTION PICTURE SOUND EDITORS Award。この賞、一昨年は「アイアン・ジャイアント」Yearsだったね。「アイアン」くん、凄く評価が高かった。
プロのサウンド畑の審査員達がこだわり抜いて選ぶ音響賞の今年のTV部門の受賞が「Best Sound Editing - Television Episodic - Dialogue and ADR」「Best Sound Editing - Television Episodic - Music」。特に後者のre-recording music mixerを担当したのが ロン・エバンス。彼は昨年公開、DVDリリースされたジョン・ランディス監督のマシンガン・トーク・コメディ「Susan's Plan」(米国盤DVDタイトル『Dying to Get Rich』/国内ビデオタイトル『スーザンズ・プラン/殺せないダーリン』)のダイアローグ監修をした人。正確無比な機関銃トークが痛快だったんですけど、とにかくこの「ソプラノズ」、きっちり仕事しまっせ!スタッフが集結しているのです。
物語の主人公は中年マフィア、トニー・ソプラノ。イタリア系マフィア「ソプラノ一家」の主。このトニーに扮するのが、映画で助演をさせるともう惚れ惚れ! のジェームス・ガンドルフィーニ。代表作は「民事訴訟」「8MM」等でお馴染の俳優さん。特に「クリムゾン・タイド」の艦長側の海軍兵士。黒人副艦長デンゼル・ワシントンに、偏見を込めた眼光と共に銃の標準を合せる、その異様。良かったな、これ。
さて今回彼が演ずるトニー、腕っ節はめっぽう強いのだが、マフィア業ではもう散々。時代遅れの熱血イタリアン伯父貴は、とにかく始末=殺しに突っ走る。出世欲の塊の問題児の甥っ子は、組織のルールなんて関係ありませーん。もう頭痛いのよー、トニー親分。さぁ、家に帰れば帰ったで、こっちの「ソプラノ一家」も底抜け脱線ゲーム状態。ボケ始めた婆さん(トニーのかあちゃん)は、何をトチ狂ったか、トニーの始末を伯父貴殿に頼んじゃうわ、気が強い嫁さんは嫁さんで、マフィアの親分状態。トニー親分、反抗するも子分状態。あー、情けなや。大学受験を控えた娘は娘でとんでもないヒス娘だし、トニー親分の職業を未だ知らない息子は息子で、どっかネジが緩んでる。あらあら、あなた、自分と照らし合せてるでしょ。コワモテなんだけど、トニー親分の悩み事、世の中間管理職のおとーさん達と何ら変らんの。ここが全米でウケちゃってるのね。
さぁ、「Fuck You!」連発のトニー親分、どーする?どーなる?
そりゃ、あんた、トニー親分、ストレスで倒れるわな。もう、ふらふら、ばったり。そこで縋るが精神科のセンセー。うーん、何だか似たようなお話、思い出したでしょう。デ・ニーロ&クリスタルの傑作コメディ「アナライズ・ミー」。製作のデイヴィッド・チェイス、10年以上この企画を暖めていた。劇場公開作品にしたかったのね。でも当時だーれも興味を示さなかった。その後FOXにTV化の話を持ちかけ断られ、挙げ句、ワーナーからは同じような企画映画「アナライズ・ミー」が。やっとこさ辿り着いた先がHBOだったんだけど、結果は「吉」に転んだね。これほどの人気番組に化けるとは、チョイスも思ってなかった。
さてさて本作でトニー親分が相談したのは、ちょっぴり年増の、でもその皺すらお美しいおネェさまセンセー。このセンセー、親身になってトニーの言葉に耳を貸す貸す、貸しますよ。そーなれば、あなた、後は男と女のお話に。でも何だかトニー親分、彼女にゃ純情純情、子猫ちゃん。癒しの天使ちゃん。ところがセンセー、トニー親分の言葉に耳を貸すうち、今度は自分がちょっぴりノイローゼ。そりゃそうでしょ。「Fuck You!」連発の、「始末」に「裏切り」テンコ盛り人生だもんな。さぁさぁ、どーなる、この2つの「ソプラノ一家」。
恐妻役のイーディ・ファルコ、この人も好きな女優さん。以前HiVi本誌「今月の米国盤」で取り上げた「COST OF LIVING」での、浮き草のような中年女(といっても、ワイルドで結構色っぽい年増女)。これが、良かったな。寂しくて、哀しくて、強がってもポキリと折れそうで、どこかアニエス・ヴァルダの「冬の旅」のヒロインを髣髴させる、この女。怖かったなぁ。それとボケ婆さんに扮したナンシー・マーチャンド。昨年の8月に亡くなったな。恐さと滑稽さを滲ませる婆さん。残念。
製作費=200万ドル/1話。毎回、舞台となるニュージャージーやN.Y.でのロケーション撮影を行なっているのだが、こうした映画ロケ同様の空気感がまた美味しいのです。HBOは単発ドラマの場合、海外公開を劇場公開とする、というスタンスも未だ持ち続けているので、映画スタジオと提携したロケーション、機材類のルートに独自のスタイルを持っている。本シリーズは35mmフィルムで撮影されているが、放送に関してはHDTVフォーマットに準じた形でFILM-to-TAPE変換が行なわれたマスターが使われる。HDマスターを使用したドラマは昨年から増えてきているが、35mmフィルム撮りしたものをHD変換するような予算のかかる番組が急激に増えることはない。確かに将来性を考慮に入れ、現状ではNTSC放映だがマスターはHDマスターが保管されている番組もあるのだけれど。
これからは、CBSの異色の交通渋滞コメディ「Rubbernecking」のようにSONY製のHDW-700AといったHDカメラで撮影されるケースが増えていくでしょう。そんな予算との鬩ぎ合いの中で、ABCの秀作警察ドラマ「NYPD Blue」のように、35mmフィルム撮り、そして720p放送(2001年度から)という、クォリティ重視のために徹底した予算確保をしてシーズンに挑む作品もある。
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| 「Rubbernecking」 |
「NYPD Blue」 |
さて、本DVD。今回リリースのDVDフォーマットへの転送で、素材を標準DVD規格レベルに落とす事となったとはいえ、映像クォリティは驚くものがある。1.78:1(16:9)のDVD映像アスペクトもこうした経緯によるものだし、5.1ch音声のクォリティもひじょうに高い。映像は実に発色がよい。特にスキン・トーンがいいな。ライティングによって健康、不健康とぐるぐる移り変る肌の色。また、ロケーションの空気感を伝えるディテイルの遜色もない。
音に関しては、特に凝ったサウンド・エフェクト処理がされているわけではないのだが、とにかくダイアローグ命のお話なので台詞のクリアさは出色。とにかくイタリア訛りの、ちょっと聴き辛いダイアローグを粒立ちよく視聴者の耳に伝える。ロケーション撮影に伴うトラフィックノイズ、環境音等を綺麗に各チャンネルに配置する。そのナチュラルなサラウンド感。今やクラシックとなりつつあるロックン・ロールの名曲を含むスコアを心地よく響かせる。というように、なかなかTV放映では味わえない、等身大とも言える絵と音の妙を味わってくださいね。
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