spacer.gif spacer.gif r_top.gif
今月の米国盤:番外地
NO.13
堀切日出晴

春のDVDラッシュ。注目作の勢揃い! 今夜はHiVi本誌未紹介の作品(3〜4月リリース)特集。

 もう、どうしようかと思いました。お金の事をあまり考えないでDVDを発注してましたら、なんだかこの数ヵ月、毎週毎週30枚とか40枚とか、もの凄い量のDVDが届きまして、気がつけば2ヵ月で200枚を軽く超えておりました(汗)。さすがに自粛状態。
 と思いきや、ことごとく知人に言われます。「着の身着のまま結構。嫁なし子なし結構。三食喰えずも結構。でもね、映画にだけはとことん贅沢しちゃうもんね(HiVi2月号/マイ・フェイバリット・ビデオディスク・Best10)」って書いてたじゃない。自粛なんてもってのほかでしょ。買っちゃいなさい買っちゃいなさい....。えーい!自粛撤回!
 2ヵ月=200枚以上の作品から各月11枚選択なんて、もう、そのDISCピックアップ自体神業に近いわけでして、今夜と明晩の二夜に分けて未紹介作品をピックアップしていきましょう。まずはクライテリオンの、この名盤群から。
 



I KNOW WHERE I'M GOING!:The Criterion Collection

●$39.98

PICTURE ★★★★
SOUND  ★★★☆

●Audio essay by film historian Ian Christie
●Behind-the scenes stills, narrated by Thelma Schoonmaker Powell
●The 1994 documentary, 「I Know Where I'm Going! Revisited」 by Mark Cousins
●Excerpts from Michael Powell's 1937 Feature 「The Edge of the World」
and 1978 documentary, 「Return to the Edge of the World」
●Photo essay by 「I Know Where I'm Going!」
●Home movies of Michael Powell's Scottish expedition, narrated by Thelma Schoonmaker Powell

 さぁ、パウエル&プレスバーガーの、45年のコンビ作「渦巻」の登場です。ウェンディ・ヒラー扮する、自信過剰で、ちょっぴり頑固なヒロイン。彼女を待ち受けるのは、彼女が望んだ金持ちとの結婚。初老の男性。愛なき結婚。彼が住む島を前にして、嵐のスコットランドの村で立ち往生させられた彼女が出会うは、海軍の青年士官。静かで、謙虚で、そして、金もない。この出会いで彼女がどう変っていくのか、そんなお話。
 この聖林製ドラマに良くありそうなお話、まぁ、パウエルとプレスバーガーが料理すると、なんてなんて恐いんでしょ。この青年の心に、姿に、英国の伝統と神話を持ち込んだ。青年は次第に彼女に惹かれます。当然彼女も青年に惹かれていきます。でも、時としてみせる近寄り難きヒステリックなヒロイン、その化身=嵐。渦巻。そして、美しくも人を寄せ付けない島。行けない。行きたくない。でもね、そこには逢った事もない初老の男が彼女を待ってるの。どうなるの? どうするの? この三つ巴(一人は姿も見せない!)の対比こそスペクタクル! ロマンティックで美しい顔を持つお話ですが、「I KNOW WHERE I'M GOING!」という原題の持つハラハラドキドキさが本作の命。その映画的サスペンス。これに酔う。
 でもね、言い替えてみれば、そのサスペンスこそロマンティックと切っても切れない仲でしょ、と語ってみせる巧妙さ。こうした物語の土台がしっかりしているからこそ、彼女が嵐の中、島に向けて船を出し荒波を超えていく場面の迫力がホントに活きてくる。スクリーン・プロセスの特撮中心でそのシークエンスが描かれるが、もう三半規管ボロボロ、酔います! 酔わせます! とにかく視覚をいや! ってほど刺激するんですね。
 パウエル&プレスバーガー、名手ジャック・カーディフ(下記参照)と出会う前のモノクローム絵画だが、ミステリアスなパワーが充満するビジョンが圧巻。撮影は、ラングの「M('31)」で名手フリッツ・アルノ・ヴァグナーのカメラ・オペをしていたアーウィン・ヒラー。「M」はドイツ表現主義の最後の作品。自身も語るように、このドイツ表現主義の味わいを戦後のイギリス映画で描いて魅せた。これは凄い事。特に屋外撮影。ロー・ライティングで、逆光で切り撮るモノクローム絵画は、ヒロインの不安、動揺を見事に表わして魅せるよ。
映画の幕が閉じても、あれからどうなっただろう、と思いを馳せらせる映画的サスペンスの香りは、モノクローム絵画の方が強く、刺激的だ。

注:ジャック・カーディフ(1914年生まれ)
 イギリスが生んだ映画カメラマンにして映画界の財産、ジャック・カーディフ。
 今年のアカデミー名誉賞を受賞したカーディフですが、季刊「ホームシアター 2001年夏号」では、カーディフ作品を特集します。「赤い靴」「アフリカの女王」「あの胸にもういちど」....。テクニカラーの父、と呼ばれた彼の特集にご期待ください。



Bertrand Tavernier's COUP DE TORCHON:The Criterion Collection

●$39.98

PICTURE ★★★★
SOUND  ★★★★

●Exclusive video interview with Tavernier
●Tavernier's alternate ending
●Original theatrical trailer


 「田舎の日曜日」「ラウンド・ミッドナイト」のベルトラン・タヴェルニエの'81年作品。日本未公開作。舞台は1938年のフランスのアフリカ植民地。この村に住んでいる白人どもが、また怪しく卑しい輩ばかり。フィリップ・ノワレ扮するルシアン、正義なんて忘れちまった、まったくやる気なしの警察官。妻にも、仲間にも、悪党連中にも馬鹿にされている。しかしある日ある時、彼はマキアヴェリズムの天使に変っていくの。
 そう、本作の根底にあるのはマキアヴェリズム。例えば、マキアヴェッリが書いた「君主論」を思い起こすと、あなたが君主になった時、やって良い事、悪い事、を説いている。ケチであるべきか、気前が良くあるべきか。慈悲深くあるべきか、冷酷であるべきか。傭兵を用いるべきか、自軍を育成すべきか。中立を守るべきか、旗印を明確にすべきか。親しまれるべきか、恐れられるべきか。もう、外交官としての経験をもとに、君主の心構えを淡々と語っている。最後に君主として最も避けねばならないのは、憎悪と軽蔑の対象になる事と締める。ノワレ扮する警官、まさにこんな小難しい渦中にいるのね。
 本作の原作は、「ゲッタウェイ」でも有名なジム・トンプソンの「POP.1280」。このアメリカのノヴェリストとイアタリアの政治学者、そしてお仏蘭西の映画芸術のコラボレーションが、実に美味しいシャシンとなって観る者に迫ってくるのだ。そう、まさに淡々と。ネオ・ノワールなんて言われた本作だが、小難しい思想を皮肉ってもみせます。だからね、もう肩肘張らなくてもいいの。ゆったりとソファに腰をおろして、ちょっぴりニヤニヤしながら愉しんで下さいね、この作品を。
 16:9のスクイーズ・トランスファーによる映像は、いたって輪郭描写が滑らか。時折シュートやMPEGの弊害が見受けられるが、アメリカ映画にはないタッチは絶品ですよ。嗚呼、もう、お仏蘭西語の響きも実に心地よく響きます。



MONA LISA:The Criterion Collection

$39.95

PICTURE ★★★★
SOUND  ★★★★

●Commentary by director Neil Jordan and actor Bob Hoskins
●Theatrical trailers

 ニール・ジョーダンの名を一躍広めた、'89年作品「モナリザ」。ムショ帰りの中年男ジョージ。暗黒街での昔の名声も今はない。最愛の娘に会おうと別れた妻のもとを訪ねれば門前払い。喰わずには生きていけない彼は高級コールガールの運転手になるが、そのシモーヌという黒人コールガールから人探しを頼まれる。探すは行方不明の仕事仲間の可愛いお姉ちゃん。彼女の手助けを引き受けた時から、デンジャラス・ゲームの幕が開く。あらあら、当然のようにジョージは彼女に惹かれていき...。
 ジューダンは生粋のアイルランド人。アイルランド人って家族をとっても大切にする民族。思えばジョン・フォードもアイルランド系だったね。家族、仲間というものに対して、ホントに粋で、ちょっぴり泥臭いエピソードを映画に入れてくる。ジョーダン、アイリッシュ魂の人だから、泥臭さの割合が強い。これがいいのね。これが、ジョーダン=ボブ・ホプキンスで見事に出た。コールガールに粉するキャシー・タイソン、洗練された身のこなしと息を飲むような美貌の持ち主。この美しさと哀しさを滲ますお姉ちゃんがいい。このお姉ちゃん、ただ綺麗なだけ、ただスタイルがいいと、馬鹿にしちゃいけませんよ。17歳でドロップ・アウトした後、お芝居で頑張って頑張って、やがてロイヤル・シェイクスピア劇団で揉まれ、このヒロイン役をゲットした娘。この愛すべき娘が演じた哀しきヒロイン像は、後の「クライング・ゲーム」に引き継がれる。それほどインパクトがあったわけです。
 本作はLD時代のD1マスターにデジタルクリーニングを施したノン・スクイーズ盤。LDと比べて確実に色彩感、階調感が向上しているが、国内盤スクイーズDVDと比較しても、上品さと凄みで1歩も2歩も上回るのはどういう事でしょうね。



DOUBLE SUICIDE:The Criterion Collection

●$29.95

PICTURE ★★★★☆
SOUND  ★★★★

 中村歌右衛門が亡くなった。生涯女形。'60年のニューヨーク公演で、グレタ・ガルボが、毎日毎日劇場に足を運んだというエピソードはあまりに有名。しかも幕だまりから歌右衛門演ずる女の姿を覗いてた。ガルボですよ、あなた、ガルボ。ジュリア・ロバーツが、ジュディ・フォスターが、メグ・ライアンが、グィネス・パルトロウが、ニコール・キッドマンが、キャメロン・ディアスが、もう束になってかかっても足元に及ばないお人。どんな男がモーションをかけても絶対ダメだった人。しかもそのガルボ、公演後に歌右衛門に「LOVE、LOVE、LOVE、GARBO」という電報を送ったの。しかも、歌右衛門を招待したマッカーサー元帥の副官を介して。よっぽど感動したのでしょうね。でも、直接歌右衛門に電報など送れない人。
 ガルボは、自分は女になれない、と思ってた人。こんなにこんなに美しい人なのに、いつもいつも、どうやったら女になれる、と思ってた人。例えば'35年のキューカーの傑作「椿姫」。ヴェルディのオペラでも知られ、アレクサンドル・デュマ・フェスによる有名な戯曲の映画化。舞台は19世紀のパリ。演ずるは社交界の花形マルグリット嬢。ガルボは、この役が嫌で嫌で嫌で。遊女みたいな、女です! という役はダメなのね。
 その美しきガルボがですよ、幕だまりでですよ、歌右衛門の芝居に感動していた。たとえ歌舞伎に興味がない人でも、この話を胸に焼き付けていなくてはいけませんよ。


↑グレタ・ガルボ/Greta Garbo

 さて前置きが長くなりましたが、クライテリオンが贈る邦画DVDは「心中天網島」。「心中天網島」が初演されたのは、1720年(享保5)12月、竹本座で近松門左衛門作の世話物浄瑠璃として。大阪網島大長寺の心中事件をもとにした、近松世話物語悲劇の最高傑作。本DVDは、この近松の傑作を'69年に映画化した篠田正浩監督の同名タイトル作です。
 お話の主人公は紙屋治兵衛さん。家にはいい嫁さん、おさんがいる。2人の子供もいる。なんも文句がないほど仲のいい一家。治兵衛さん、ある日であった小春という女に夢中になってしまう。遊女の小春、これがまたとってもいい女。嫁さんもいい。小春もいい。「いい女」というのは見た目の話じゃない。ホントに心がいい女。治兵衛さんが遊び人だったら良かったろに。結局、治兵衛さんと小春、おさんの義理に苦しみながら死んでいく。死への道行が綺麗。でも恐い。残されたおさん、二人の死を聞いて涙に暮れて、泣いて泣いて、それが悔し涙ではなく、2人のために流す大粒の涙。その涙、溢れて溢れて。そしておさん、2人の子供を連れて尼僧になる。このお話はね、女の誠に潰された男と、2人のいい女のお話。優しくて、綺麗で、お涙頂戴の、ホントに恐い恐いお話。
 さぁ、映画。この最後の「恐い」を強調しました。綺麗ごとで終らせませんでした。綺麗な衣装や装飾で魅せながら、深いところに恐さを忍ばせた芝居と違い、本作はモノクローム絵画。光、影が心中の汚い部分を描く。心中とは、置き替えれば忠という字。この文字が持つ恐さを、異様に置き替えた。血飛沫に塗れた抽象的なセット。武満徹の音楽。劇団・天井桟敷演じる黒子。二役は勿論、岩下志麻。あまりに完成された近松世話物語悲劇だから、篠田監督としても「悲」の部分を徹底して抉るしかなかった。その苦心が手に取るようにわかるでしょ。
 ただ僕はいつも思うんですけど、篠田監督、志麻さんが好きで好きでしょうがないのね。だから志麻さんの女としての部分に翻弄されるの。必ず1作で、一箇所はその部分が露呈する。この人間臭さは嫌いじゃないんですけど、どの作品を観ても、志麻さんを観てる、と気が萎えるところがある。本作でそれが何処かは、皆さんの目で確かめて下さいね。

 とにもかくにも、CRI-DVD。その凄みは絶対的です。いずれ本誌でご紹介するでしょうが、CRI-DVD初見参のキューブリック(「スパルタカス」)、5月にはスタンバーグとデートリッヒのコンビ作(「恋のページェント」)に乞うご期待!


THE SCARLET EMPRESS:The Criterion Collection

●$29.95

PICTURE NotYet
SOUND  NotYet

●The 1996 BBC documentary「The World of Josef von Sternberg」
●Production stills archive
●Von Sternberg tribute by underground filmmaker Jack Smith
●Liner notes by film historian Robin Wood

 でででで、でたぁ〜っ。「隠し砦の三悪人」! クロサワ初のスクイーズ仕様で登場だぁ。
嗚呼、このDVDジャケット、カッチョイイ! 観せたい! 観せれない!
THE HIDDEN FORTRESS:The Criterion Collection

●$29.95

PICTURE NotYet
SOUND  NotYet


●Exclusive Video Interview with George Lucas about 「The Hidden Fortress」
●Original Theatrical Trailer

 HiVi5月号「SM氏のシネマ・視ネマ・私ネマ」で、澤里さんが「伝線フェチ」たる素晴らしいフェチ語を書かれていたが、そのフェチ語を生んだブニュエルの「小間使の日記」が登場する。何を隠そう、隠す気もないが、わたくし、かなりの伝線フェチであります(自爆)! 嗚呼、ジャンヌ・モローお姉さまぁ〜っ(激爆)!

DIARY OF A CHAMBERMAID:The Criterion Collection

$29.95

PICTURE NotYet
SOUND NotYet

●Video Interviews with Screenwriter and Longtime Collaborator Jean-Claude Carriere
●Reprint of Interview with Luis Bunuel about 「Diary Of A Chambermaid」
●Original Theatrical Trailer

 6月にはミケランジェロ・アントニオーニの「情事('60)」。

L'AVVENTURA:The Criterion Collection

$39.95

PICTURE NotYet
SOUND NotYet

●Commentary by Gene Youngblood
●Theatrical trailers
●「Antonioni: Documents and Testimonials」
58 minute documentary by Gianfranco Mingozzi
Writings by Antonioni、
read by Jack Nicholson - plus Nicholson's recollection of the director
●Reprint of Antonioni's statements about 「L'Avventura」、
circulated after the film's premiere at the 1960 Cannes Film Festival

 マリオ・モニチェリの実質デビュー作のクライム・コメディ「BIG DEAL ON MADONNA STREET」

BIG DEAL ON MADONNA STREET:The Criterion Collection

$29.95

PICTURE NotYet
SOUND NotYet

●Theatrical trailers

 メロドラマの名匠ダグラス・サーク作品を観るならこの2タイトル!
「風と共に散る」と日本未公開作「天は全てを許し給う」。

WRITTEN ON THE WIND:The Criterion Collection

PICTURE NotYet
SOUND NotYet

●A Douglas Sirk Filmography Featuring Rare Production and Publicity Stills
●Behind-The-Scenes Photos and Vintage Lobby Cards
●Original Theatrical Trailers for「All That Heaven Allows」「Written On The Wind」
●Exclusive Liner Notes by Noted Film Theorist Laura Mulvey

ALL THAT HEAVEN ALLOWS:The Criterion Collection

PICTURE NotYet
SOUND NotYet

●「Behind The Mirror:A Profile Of Douglas Sirk (1979)」
 BBC Documentary Featuring Rare Interview Footage with the Director
●「Imitation Of Life:On The Films Of Douglas Sirk」
 A Seminal Essay by Sirk Admirer and Filmmaker Rainer Fassbinder
 Illustrated with Rare Ephemera
●A Stills Archive with Production Photos and Vintage Lobby Cards
●Original Theatrical Trailer
●Exclusive Liner Notes by Noted Film Theorist Laura Mulvey

 さぁ、次回の番外の地はクライテリオン以外の作品をご紹介します。お楽しみに。伝線フェチ@Horikiri.co.JPでした。

r_bottom.gif
footer.gif