NO.17
堀切日出晴
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恒例:HiVi本誌未紹介米国盤DVD特集です。2部構成でたっぷりお届けします。今夜はその前編。さぁさぁ、お立会い。
まずは前回お届けしたDD-EXのお話の続き。
「T2」「セブン」のように、劇場公開時にはサラウンドEX公開されていない作品がEX仕様でDVDリリースされるケースがあります。実は「The Astronaut's Wife/邦題:ノイズ」もそうしたDVD。
しかもPAL盤は、NTSC盤で収録されていないDTS音声が収録され(Non-ES)ていますし、映像アスペクトも劇場公開アスペクト(1.85:1)をシネスコサイズに変換して収録(NTSC&PAL)してあり、どうやら「このDVDは劇場プレゼンテーションと違うんですよ」というコンセプトみたいですね。
各方面にmailで問い合わせた結果、以下の作品が「ノイズ」と同様のプレゼンテーションとして名が上がりました。マイケル・ウィンターボトム監督の西部劇愛憎劇「The Claim」(発売済)、絶好調サミュエル・L・ジャクソン主演のスリラー「The Caveman's Valentine」(発売済)、せくしぃ〜! ヘザー・グラハムお嬢の「Say It Isn't So」(8月)、ブラピ&ジュリア初共演作「メキシカン」(8月)、アシュレイ・ジャッドがキュートな「Someone Like You」(9月)、ロバート・ロドリゲス監督の新作「Spy Kids」(9月)、FBIスーパー捜査犬のコメディ「See Spot Run」(9月)。上記作品群の中でも怪しいナンチャッテEX盤も含まれているようで、現時点で確実なものは「Spy Kids」だけなんですけど。
PAL盤では、スタン・ウィストンのクリーチャー(大ワニ)・エフェクトが観モノの「U.M.A レイク・プラシッド」(発売済)、珍しや、インド映画のサイコ・スリラー「Bichhoo」(発売済)、ドイツ映画の正統派ラブ・ロマンス「Im Juli」(発売済)、インド&イギリス合作映画の恋愛もの「Refugee」(8月)。後者3作は劇場でもEX公開されてますので間違いありませんね。ちなみに前回未聴だった「アンブレイカブル」は、ドルビーから正式に「EXですよ」との報告を貰ってます(ジャケットにはEX未記載ですけど)。

そして10/2にMGMから「ターミネーター/スペシャル・エディション」が登場しますが、こちらはDD-EX仕様(国内盤はFOXから)。$26.95でカバーはなんとホログラフィック仕様。特典もたっぷりです。
また前回紹介したアンカー・ベイからのEX&ES-DVDですが、「サスペリア」「オペラ」の仕様は以下の通り。リリース9/11、THX-DVD、レストア・スクイーズ盤(「サスペリア」=2.35:1、「オペラ」=1.85:1)、DD-EX、DTS-ES6.1。共に$24.95。更に美味しいのは通常盤の他、リミテッド・エディションが登場します。
仕様は「サスペリア」が以下の通りです。こりゃぁ、ホラー・ファンにはたまらんわ!
●limited to 60,000 copies
●3-discs set
●Disc1: aforementioned standard edition
Daemonia music video
a still gallery
talent bios
theatrical trailers
TV and radio spots.
●Disc2: features the all-new 52 minute documentary "Suspiria: 25th Anniversary"
featuring interviews with Dario Argento,
co-writer Daria Nicolodi
cinematographer Luciano Tovoli
the band Goblin (Agostino Marangolo, Massimo Morante, Fabio Pignatelli and Claudio Simonetti)
actors Jessica Harper
Stefania Casini and Udo Kier
●Disc3:the original Goblin soundtrack CD
●32-Page Booklet with photos and an interview with star Jessica Harper
●9 5x7-lobby card reproductions
●$44.95.
続いて「オペラ」。
●limited to 30,000 copies
●2-discs set
●Disc1 :aforementioned standard edition
the new 36-minute documentary "Conducting Dario Argento's OPERA"
featuring interviews with Dario Argento
cinematographer Ronnie Taylor
animatronics artist Sergio Stivaletti
composer Claudio Simonetti
actors Daria Nicolodi and Urbano Barberini
a Daemonia music video
Argento bio and trailers
●Disc2:the original soundtrack CD
●$34.95
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CLOSE ENCOUNTERS OF THE THIRD KIND
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$27.95
PICTURE ★★★★
SOUND ★★★★
   
●Production notes
●Theatrical trailers
●Feature Length Making-of Documentary
●1977 Featurette 「Watching the Skies」
●11 Deleted Scenes
さてさて、この作品もDVDだけのサウンド・プレゼンテーションですね。もう有名な有名な「未知との遭遇」のお話。とは言ってもEX、ES仕様ではありませんけれど、たっぷりゴージャスDTSプレゼンテーションが楽しめます。
そう言えば公開年の'77年。「Play(遊び)」と「Pray(祈り)」の映画の一騎打ちでしたね。「Play」映画は、ご存知「スター・ウォーズ」。そして「Pray」映画は本作。僕はこの作品が好きでしてねぇ、ブローアップの70mm版とはいえ、テアトル東京(シネラマ館だぁ!)やら有楽座やらの70mm上映館をハシゴしました。今では両館とも廃館となりましたが、巨大スクリーンで観る本作の迫力美は今も忘れられません。サウンドもドルビーサラウンド上映。ところが国内100館以上で上映された本作、ドルビーサラウンド上映に対応していた上映館は全国で10館にも満たなかったわけですから、高い入場料で70mm館のハシゴもするというもの。
何しろ極秘極秘の撮影でしたから、予告編もとってももったいぶっちゃってる。でもですね、これが功を奏しましたねぇ。黒味の画面がいきなりグリーンのレーダーでワイプ・インとなる、ほら、あの有名な予告編ですよ。思い出しました? 背筋がゾクッとした予告編。今みたいに情報がない時代でしたかたらね、もう、初日が楽しみで楽しみで。
さてさてDVDのお話。マスターは'98年にリリースされたLD-BOXに使用されたコンポーネント・マスター。この'98年ヴァージョン、'99年にAFIの「Top 100 Films of All Time」選考のためにレストア再編集されたもので、一般公開はされていません。逆に言えば、先行試写前にLDがリリースされていたわけで、LD全盛時の勢いを感じます。
DVDリリースにおいては、この'98年マスターに更なるデジタル・クリーニングを施したのですが、映像ディテイルがやや甘めなのは仕方ない? 当時DVDのリリースをターゲットに入れていたのはわかりますが、日進月歩のDVD技術向上ですから、この月日の流れは意外にも大きくのしかかってきちゃいました。
しかも、止めを刺すは、今年の1月1日にNHK-BSでHD放映されました映像。これがあまりに凄い映像でしたもので...。公開年1977年から25年近く経つんですが、LVP-2001&D-2001で再生した映像は、もはやクラシックとは言えませんもの。クライマックスのSFXシーンよりも、映画の中半、リチャード・ドレイファスとメリンダ・ディロンが駅で再会するシークエンスの、その奥行感たっぷりの映像。群集が一人一人奥の奥まで確認出来ちゃう。続く、デビルス・タワーとのご対面。この縦皺の山の異様。これを観てますからね、DVDで待望「未知との遭遇」が登場して視聴するんですけど、映像に身が入らんの。これには弱わりましたね。ど〜しましょ(この辺のお話は撮影監督ビルモス・シグモンド、特殊撮影監督ダグラス・トランブルのお話と共に後述します)。
本作の音声は先述した通りDD-5.1。そしてDTS-5.1。本作に関してはDTSに軍配が上がります。もともとディスクリート・マスターではないので、時折不自然なエコー感がまとわりつきますが、全体的に包囲感の描写が素晴らしいですね。最新映画とサウンドと比較するのは酷と言うモノ。でもですね、「ジョーズ」同様、スクリーン後方への奥行描写も実に説得力があります。中でもLFEの恩恵は多大で、UFOとのファースト・エンカウンターの重低音、更にそれ以上にChap.22&23のマザーシップ・シークエンスのそれは、もう体調を崩してもおかしくないですからね。くれぐれも気をつけて下さい。
特典大好きのあなたには、貴重なスピルバーグおじさんのお話に興味津々でしょうね。何しろマックイーン・ファンのスピおじさん、「ジョーズ」の第一候補もマックイーン。この時は「マックイーンじゃ、サメに勝つ結末がわかりすぎる」という事でNGに。
「未知との遭遇」では、主人公ロイ・ニアリー役。これはLDにも収録されていたのでご存知の方も多いのですが、ちょっとWeb再現してみますと。
「第一希望は、スティーブ・マックィーン。面識もないのに、いきなり電話して『UFO映画の主役をやって下さい』と頼んだんだ。すると脚本を読んだ彼がエージェントを通して、会いたいと言ってきた。彼の自宅のあるトランカスまで出向いたよ。待ち合せ場所はバーだった」
この辺りがマックイーンらしいね。何しろ当時ちょっとアル中おじさんでしたからね、彼は。結局マックイーンは話を断るの。断られ馴れしていない若きスピお兄ちゃんは、とってもショック。何しろ飛ぶ鳥落とす状態でしたからね。
「彼の14杯に対抗して私も3杯もビールを飲んだ。飲めない私にしては精一杯。グラス半分のワインで酔っ払うんだから。私は彼に断る理由を聞いた。すると、私は映画では泣かない、と答えたんだ。家族を振り返り涙する、という描写が脚本にはあった。それなら書き替ると言ったら、彼自身はその場面に感動したんだと言う。だが彼は、私はカメラの前でいい格好しかできない。だからこの映画のために出演を断る、と答えたんだ」
スピお兄ちゃん、その言葉に胸を打たれ、二人に友情が芽生えた、そうな。「彼は一流のアクション・スターであるだけでなく、感性豊かな俳優であることがわかったんだ」
う〜ん、気づくの遅いんでないかい、スピお兄ちゃん! ところで、私はカメラの前でいい格好しかできない、というのはマックイーンの本音です。カメラが回り始めたら誰も彼の演技を遮れない。同時にいい格好のためなら、ドンドン脚本を変えちゃう(自分の台詞を削っちゃう)人でしたから。それもこれももとはと言えば、マックイーン、台詞覚えが悪かったのね。カンペ(カンニングペーパー)がなくては長台詞が出てこなかった。だから壁やら黒板に台詞を書かせてたの。それが結局は、無口な精悍さのイメージと重なってキャラクターを作っていった人ですからね。
断られたスピお兄ちゃんは、おじさんになってからもトラウマを引きずります。今月号のHiVi本誌でもちょっと触れましたが、「プライベート・ライアン」でトム・サイズモアに「君はマックイーンだ!」と叫んでいたくらいですから。
ところで本作を語る時、どうしても思い出さずに入られない映画があるでしょう。「Pray」映画の元祖? 「2001年宇宙の旅」。続いては2001年のお話。
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STANLEY KUBRICK COLLECTION
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$199.92($24.98 each)
8-DISCS
2001:A Space Odyssey

●All-New State-of-the-Art Remix in DD-5.1
●Interview with Arthur C. Clarke
●Theatrical Trailers of this and its Sequel: 2010: The Year We Make Contact
PICTURE ★★★★☆
SOUND ★★★★
Barry Lyndon

●Restored Picture and Digital Audio
●New Digital Transfer
●Soundtrack Remastered in DD-5.1
●Theatrical Trailer
PICTURE ★★★★☆
SOUND ★★★★
A Clockwork Orange

●Restored Picture and Digital Audio
●New Digital Transfer
●Soundtrack Remastered in DD-5.1
●Theatrical Trailer
PICTURE ★★★★
SOUND ★★★★
Lolita

●Restored Picture and Digital Audio
●New Digital Transfer
●Soundtrack Remastered in DD-MONO
●Theatrical Trailer
PICTURE ★★★★☆
SOUND ★★★☆
Full Metal Jacket

●Restored Picture and Digital Audio
●New Digital Transfer
●Soundtrack Remastered in DD-5.1
●Theatrical Trailer
PICTURE ★★★★☆
SOUND ★★★★☆
The Shining

●Restored Picture and Digital Audio
●New Digital Transfer
●Soundtrack Remastered in DD-5.1
●Theatrical Trailer
●Vivian Kubrick's Behind-the-Scenes Documentary 「The Making of the Shining」
PICTURE ★★★★★
SOUND ★★★★☆
Dr.Strangelove
 (a very fuzzy 1.45:1)
●Restored Picture and Digital Audio
●New Digital Transfer
●Soundtrack Remastered in DD-MONO
●Featurette: 「The Art of Stanley Kubrick: From Short Films to Strangelove」
●Documentary: 「Inside the Making of Dr. Strangelove」
●Original split-screen interview with Peter Sellers and George C. Scott
●Original advertising gallery
PICTURE ★★★★☆
SOUND ★★★★
Eyes Wide Shut
 
●Interviews with Tom Cruise, Nicole Kidman and Steven Spielberg
●2 Television Spots.
●Theatrical Trailer
PICTURE ★★★★★
SOUND ★★★★★
Stanley Kubrick: A Life in Pictures
 
●A bonus documentary exclusive
「A Life in Pictures」 is an intimate look through the lens of this master filmmaker.
Kubrick's life and works come into sharp focus in this compelling all-new documentary narrated by Tom Cruise.
さぁ登場しましたよ、Newly Remastered キューブリック・コレクション。まず最初に言っておきましょう。このBOXに収録されているDVD−「2001年 宇宙の旅」「シャイニング」「時計じかけのオレンジ」「バリーリンドン」「フルメタル・ジャケット」「ロリータ」「博士の異常な愛情」「アイズ ワイド シャット」、そしてドキュメンタリー「A Life in Pictures」(今年2月にベルリン映画祭、5月にサンフランシスコ世界映画祭に上映されたもの)−後者2作は別として、この映像、すべて別物! 何が? そのクォリティ。何と比べて? 昨年登場したキューブリックBOXの収録されていた同タイトルと比べて。もう、綺麗綺麗綺麗!
総じてシャープなイメージ。明快なディテイル。リッチな色彩。ディープで階調感豊かな黒。そして何より高S/N。新しくデジタル・クリーニングが施されるとは聞いていましたが、いやぁ、ここまで変身するとは誰が想像したでしょう? レストア公開プリントを使用して、しかもスクイーズ収録された「2001年 宇宙の旅」よりも、他の作品群の方がその違いが明快です。「シャイニング」なんてぶっ飛びですよ。★5ツですよ、もう。☆ひとつは驚きのオマケ。旧キューブリックBOXをお持ちのあなた、残念ですけど買い替えた方が賢明でしょうね。
「2001年 宇宙の旅」のシネマトグラファー、故ジェフリー・アーンス御大。この作品で追加撮影を担当したのが、新人ジョン・オルコット。その後'86年にオルコットが亡くなるまで、それまで作品ごとに撮影監督を変えていたキューブリックは、彼とコンビを組み続けます。実はこの綺麗綺麗なDVDで味わうその名コンビの妙味、これがメインディッシュかも知れません。
キューブリックが撮影監督に要求するのは、彼のライティング・デザインを具現化できるかどうか、という事。特にイギリス(BCS=ブリティッシュ・シネマトグラファー・ソサエティ)の撮影監督は、ライティング・カメラマンと呼ばれてますから(以前HiVi本誌「映画の光と影」で、松山凌一さんがその呼び方に疑問を持ってらしたが、そんなわけなんですね)、キューブリックの要求に応え易い所もあるんでしょう。
「時計じかけのオレンジ」に観る、地下道での恐い恐いライティング。「シャイニング」に観る、ステディカムと短焦点レンズの組合せの妙。「自然光をシミュレートする」というコンセプトのもとに撮影された「バリーリンドン」。特にオルコットにアカデミー撮影賞を与えた後者。NASA開発のツァイス50mm、F0.7のレンズ(人間の目でF1.0と言いますから、見えないところまで写っちゃいます)が使用され、結果、ローソクの明かりだけで撮影されたにもかかわらず、その表情は柔らかな輪郭線で浮き上がります。この絵画は観モノ。願わくばスクイーズで観たかったですが、LBの映像でさえエッジ・エンハンスは皆無!
オルコット亡き後コンビを引き継いだのが「フルメタル・ジャケット」のダグラス・ミルサム。オルコットに15年師事し、キューブリックの下で育った逸材。オルコットから引き継いだ本作の課題は「ドキュメンタリー・タッチ」。何しろ撮影機材はキューブリック印の私物ばかりですから、キューブリックが指示したニコンのT1.4レンズなど、被写体を細密に写し撮ってしまう。ミルサムはフィルムを倍増感して、わざと綺麗な黒を濁します。結果、濁った黒、汚れたグレーの描写となり、この妙味がDVDでしっかり再現されますよ。ホントにホントに嬉しいですねぇ。前キューブリックBOX内の本作、ボロボロでしたモン。
実はこの味をまたまた真似しちゃったのが、スピルバーグおじちゃん。ENR=残銀処理の手法を用いてドキュメンタリー調に再現したルックスから、シャッター同調をずらして撮影して描かれるストロボ効果のようなスローモーション・カットに至るまで。ちょっと困ったチャンですね、スピおじさん。
サウンドもすべてDD5.1ch仕様になりました。実はキューブリック、'70年代からドルビーサラウンドをやりたくてやりたくて仕方がなかった。でも、反面ドルビー・マニュアルに疑問を持っていたし、あまりに完璧主義を貫くものだからサウンド・エディットの時間が足りなかった。5.1ch化には賛否両論あるかもしれませんが、色々な発見も一杯あります。「監督の意図するもの」とよく言いますが、更に一歩進んで監督が意図したこと以上のものを見つけるのがホームシアターの醍醐味。キューブリック、喜んでるかも知れませんよ。ありがとう、ありがとう、って。
さてここでは全収録作を紹介できませんので、スクイーズDVDとして登場した「2001年 宇宙の旅」のお話をしましょう。2001年に「2001年」を観る事は、キューブリックが愉しんだろう運命の悪戯ですね。しかもご家庭で。DVDで。劇中登場する宇宙旅客船の中のワイドヴィジョンで観るDVD、憎たらしいほど戯ばれちゃってますね、わたくしたち。70mmフィルムから12cmの円盤への変身、この出来もまた憎い憎い憎い。
何しろ登場済の本DVD、ノン・スクイーズ。これに不満タラタラの方、一杯いましたから。満天の星を御覧なさい。この星たち、「スター・ウォーズ」タイプの瞬きではないんですね。ずっとずっと上品。おそらくは映画の中で(映画史の中でも)「最も偉大なる瞬間」であるBone(骨)-to-Spaceship(宇宙船)のジャンプ・カット、その雄大なるスケールをどう描く? その空間描写の妙。大画面再生の醍醐味とは、これ。このこと。片や100億年の歴史を秘めた無限の宇宙。片や「つい最近」サルから進化したばかりの人間社会。このパワーとユーモアの源泉。これを味わうために、スケール感の対比をしっかりと再現して下さいね。
スクイーズの恩恵は、ディープでピュアな黒再現でも明らかです。幾つかのシーンでエッジ・エンハンスの弊害があるもの、終幕までデジタル臭に気を紛らわせる事はありません。
何しろ映画への集中力を削ぐ要素が僅少ですからね、後は、後はですよ、この人類が自分達より高度な生命体と遭遇する壮大な神話を、大いなる輪廻を謳い上げて幕を閉じさせるか、シュールという名に寄りかかった退屈なクライマックスで幕を閉じるスペース・オペラで終るか、もう、あなたの映像再現の手腕にかかってます。
こういう印象の差異は上質なイメージの積み重ねですから、例えば宇宙服のマスクに映る映像の再現ひとつでも変ってきますよ。マスクのバイザーに映る物体の姿とそのボケ具合、光の反射とその流れ。それと並行するバイザーの中の人物の表情、スキントーン。美麗です。今でこそバイザー内に小型ライトを仕込んだりして撮影しますが、明快な映像が出来上がる反面、想像力の欠如を感じます。
5.1chに姿を変えたサウンドも、クライマックスにモノリスがボーマン船長の記憶を使って仕掛けた罠同様、ブラックな仕掛が読み取れますよ。この作品、ロードショー、リバイバル公開されるたびに、京橋のシネラマ館=テアトル東京で観まくりましたから、サウンド・イメージは染み付いてます。驚いた事に5.1ch、この映画館のイメージに近い。確かに猿人の闘い(叫び声)などでリア・スピーカーで戯びますが、映画への忠誠を忘れてはいません。宇宙空間でのアストロノーツの呼吸音の響きなど、映画館の巨大空間での緊迫感を明快に蘇らせてくれます。恐い恐い音ですけど、同時に実に耳に心地いいですねぇ。
5.1chのサウンド(特に声の明瞭さで)で改めて気づかせられたのは、この映画、「市民ケーン」を意識しているという事。これには心底驚いた。
それはですね、ボーマン船長がコンピュータHALを停止するシークエンス。HALは「やめてくれ」と何度も何度も哀願するんですが、突然生まれた時の記憶を語ります。
「....私の先生はラングレイさんです。彼は歌を教えてくれました。お望みなら歌いましょうか?」
船長は「聞きたい」と答えますね。悲しい船長の声ですね。HALは歌います。「デイジー、デイジー、答えておくれ。気が狂いそうなほど君が好き」 スロー回転で消え入る声ですね。これはもっともっと悲しい声ですね。デイジーとは女の人の名ですね。でもデイジー、「雛菊」という意味もあるんですね。雛菊の別名は「延命菊」ですね。死に行くHALは延命の歌を歌うんですね。何と悲しいんでしょ。そして何て上手いんでしょ、キューブリック。
そして映画史上最高の名作「市民ケーン」。オーソン・ウェルズは新聞王ケーン=ウェルズの死の縁で、子供の頃の遊び道具の事を口にして死んでいきます。本当に愛すものは、子供の頃の記憶、その中にある「薔薇のつぼみ」と名付けられたソリですね。死の縁にあって原体験を口にするんですね。HALもそう。キューブリックはウェルズが主人公に語らせた「薔薇」を「雛菊」に置き換えましたね。
HALはケーンですね。誰からも愛される事なく、一人、たった一人で死んでいったケーンですね。ケーンは人間性を欠いた人間として知られてます。そんな彼でも死の縁で、記憶の扉を開く愛しい愛しい原体験がありました。キューブリックはコンピュータと人間、その違いを原体験で表わし、比較し、共通点を描きましたね。恐いですよ。ホントに恐い。これが、この絞り出す声が、5.1chで蘇りましたね。ケーンの声と、(声質ではなくて)その声の裏側とそっくりですよ。「市民ケーン」、いよいよDVD化ですから、リリースされたらご自分で確かめて観てくださいね。
さぁ、この「STANLEY KUBRICK COLLECTION」、国内盤も間もなくリリースされます。このクォリティを維持していて欲しい。ワーナーさんのやる事ですから安心していますが、是非とも是非ともこのままの姿で皆さんのお手元に届きますように。
さて、先述したBSデジタルのお話に戻りますが、「2001年 宇宙の旅」のHDマスターはNHKが所持してます。NEW「2001年 宇宙の旅」ではありませんが、これも放映されたら腰抜かすでしょうね、皆さん。便利さを抜きにして、単純に映像のインパクト、緻密さを問えば、もうDVD、勝ち目はありません。
例えば、再び「未知との遭遇」のお話。特殊効果と、豪華で大規模な撮影術とを結合させようというプレゼンテーション。シネマトグラファーはビルモス・シグモンド。「ディア・ハンター」「天国の門」...'70年代以降のアメリカ映画史を飾る名手です。彼が「未知との遭遇」で魅せたのは、撮影監督としての自分のスタイルを変えた撮影。タッグを組む特殊効果マンはダグラス・トランブル。「2001年 宇宙の旅」特撮絵画の天才児ですね。その特撮マットワークのために、鮮明なネガでなくてはいけない。しかもたっぷりと露光されたネガでなくてはいけない。ネガは見た目はシャープなのが良いが、そこにソフトな性格を組み入れるのがシグモンドのやり方。しかしここで求められるのは、彼にとっては鮮やかすぎ、コントラストが強すぎのネガ。画家のスタイルを思い浮かべて下さい。彼らは色彩をコントロールしますね。色彩をやたら広げませんね。勿論コントラストの強いものを避けますね。色彩を選択するから芸術なんですね。
しかし、トランブル、そしてスピルバーグが求めたのは全く正反対。黒からあらゆる色彩のスペクトルを経て白に至る、色の全域を網羅したルックス。色彩を選択するから芸術と言いましたが、黒から白までの色帯域とコントラストを持ったからといっても、それイコール芸術になるわけではありませんね。つまり見えてくるのは、スピルバーグ、トランブルが求めたものはリアルで鮮明な映像。つまりは技術的なルックス。非の打ち所のないほどに技術的である映像のプレゼンテーション。それは言い替えれば、作り話を見せるのではなく、これは本物なんですよ、と観る者にプレゼンテーションする事。この映画、一歩間違えればあざとい作品になるところを、シグモンドの手腕が見事に救ってます。
特撮が絡むシーンはすべて65mmで撮りましたね、シグモンド。オリジナルの撮影は35mmですね。だからこの65mmの映像、特撮が合成されてくると35mmのルックスとマッチしてくるわけです。粒状性、またはすべての映像的後退要素に付随しながら。
しかもシグモンド、画面構図とはロングショットについて語る事という持論がある。もうこうなってくると、DVDでは再現できないところが一杯一杯出てきてしまんですね。例えばロングショット。ボケちゃいますでしょ、DVD。
しかしHDの放送、これには弱りますよ。DVDプレーヤーの価格差、様々な皆さんの努力、これらを無にしてしまうほどのインパクト、説得力がありますからね、この空から降ってくる映像には。あなた、なんだかDVDって短命なようにも思えてくるでしょ? 困りましたね、ホント。しかも、こうした映像群をきっちり描ける再生映写機が不可欠なわけでしょ。好みの映像と言いますが、再現されてからこそ、描けてからこその、好みの調整、追い込みですからね。さぁ、DVD、ホントにホントに頑張んなくちゃ。愛情を持って接してあげなくちゃ。
ところがここにも、先程お話した芸術と技術のお話の中にある、また「2001年 宇宙の旅」のバイザーのお話にもあった、皮肉な皮肉な落し穴があるんですね。
映画は「隠す」芸術という事を忘れないで下さいね。隠した中に顔を覗かせる「観せる」表情。これに酔うんですね。だから忘れんで下さいよ。躍らせられんで下さいね。映像に説明されんで下さいね。
さてそれでは次の作品を紹介しま....あら、あらら、DVDの1層から2層に変わるフリーズ状態ですね。続きは明夜にお届けしましょう。はい、お楽しみに。
$29.99
  
●Commentary by Orson Welles biographer Peter Bogdanovich
●Commentary by Roger Ebert
●Theatrical trailers
●Disc1:
1.Feature Film
2.1941 Movie Premiere Newsreel
3.Gallery of storyboards, rare photos, alternate ad campaign,
studio and personal correspondence, call sheets and other memorabilia
●Disc2:
1.2 Hours Documentary:「The Battle Over Citizen Kane」
details the power struggle between Orson Welles and William Randolph Hearst
2.Interviews with Welles, the stars of 「Citizen Kane」 and associates of Welles and Hearst
3.Rare footage from Hearst's San Simeon Estate and Welles's historic 「The War of the Worlds」 broadcast
4.Biographical profiles of Welles and Hearst
PICTURE NotYet
SOUND NotYet
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