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今月の米国盤:番外地
NO.19
堀切日出晴

今夜は、ヒッチコックが好きで好きでたまらない、ブライアン・デ・パルマおじさんの特集です。

 残暑お見舞いのお知らせとともに、ドッ、と押し寄せたデ・パルマDVD群。すべてスクイーズ仕様で、しかもあっと驚く高画質。最近ちょっぴり元気のないデ・パルマおじさんですが、猛暑の疲れが出始めているあなたに、デ・パルマ・マジックをお届けしましょう。う〜ん、この美味しきスタミナ料理で疲労回復間違いなし。更にパクリ大魔王デ・パルマおじさんがお題を頂いた、そのお仲間DVDも紹介していきますよ。


BLOW OUT

●$19.98 
PICTURE ★★★★☆
SOUND  ★★★★
 

●Theatrical trailer

 9月20日発売のHiVi10月号の「今月の米国盤」コーナーで上記の「ミッドナイト・クロス」を紹介したんですが、原題「BLOW OUT」が語るようにアントニオーニの「BLOW UP/欲望」にインスパイアされているのは、もう誰でもわかると思います。しかも物語の中には、あれや、これやと、完全無欠のパクリ大魔王ぶり。いいですねぇ、デ・パルマ。もう、このシャレしゃれ洒落の、愉快、痛快、ケッサクぶり。しかもデ・パルマ流痴話噺、その語り口は、作品を数えるごとに饒舌となっていきますから、今回の70年代、80年代作品群の魅力はデ・パルマ・ファンならずとも気になるところでしょうね。
 さてさて、それではまずはこの作品からご紹介していきましょう。

PHANTOM OF THE PARADISE

●$19.98
PICTURE ★★★★
SOUND  ★★★★

●Theatrical trailer

 「悪魔のシスター('73)」発表後、彼が取り組んだのは、なんと魅惑の「オペラ座の怪人」。しかもデ・パルマ、この幾度となく映画化され愛され続けてきた物語を、大胆なロック・ミュージカル仕立てにしちゃいました。その名も「ファントム・オブ・パラダイス」。翌年映画化される「ロッキー・ホラー・ショー」とともに、映画が許してくれるグロテスクさでディフォルメされたエクスタシー・ミュージカルの金字塔ですもの。さぁ、FOX印のDVD、エッジ・エンハンスは実に僅少。非常に良質なテレシネが行なわれたのは一目瞭然。ロング・ショットになるとさすがにナロウになっちゃうけれど、多用される登場人物のクローズ・アップ、この凄みにクラクラ。キッチュな衣装、美術もじっくり愉しみたいところですが、やっぱり人の表情、瞳の輝き、これがこの映像絵画のキモでしょうね。これが息吹けば音楽も躍動する。おそらくは、ほとんどの映画ファンがこのクォリティで本作との劇場体験をしていないはず。冷静に見れば未完成のデ・パルマ節、そのちょっぴりの苦悩が迫ってきます。27年前の蒼きデ・パルマ青年が、しっかり映画青年していたことを体感できるだけでも手元に置く価値のある玉手箱。それからですね、エンド・タイトルも見逃さんでね。ずっと下のほう、セット・ドレッサー、そこにある名はシシー・スペセイク。これから2年の後、「キャリー」の衝撃が生まれます。

THE PHANTOM OF THE OPERA('25)

●$19.99
PICTURE ★★★
SOUND  ★★★☆

●Remastered to correct running speed
●Essay About Lon Chaney
●Color Tinting to the Original 1925 Specifications
●Bal Masque Sequence in Original Technicolor

 と言うわけで、さぁ、デ・パルマ・マジックに酔ったあなた。とにもかくにも、幾度となくリメイクされてきた「オペラ座の怪人」の第1作をご覧になってくださいね。リリースはIMAGEから。製作は1925年ですね。主演はロン・チャイニー。ユニヴァーサルが誇る(と言うのでしょうか?)世界最高のグロテスク役者さん。そういえば「ノートルダムのせむし男('23)」も彼ですね。本作でもこのチャイニー扮する怪人、恐い恐い。モノクロームだからホントに恐く迫ってくる。この頃ユニヴァーサルは、パリのオペラ座を舞台に、なんとサイレントでオペラを写し撮っていました。しかもそのオペラ座の地下までカメラがどんどんどんどん入って行く。こういう凄味は決して今の映画では出ません。そして、この凄味が悲しみに変わる、ここがホントに美味しくて恐い。

THE PHANTOM OF THE OPERA('43)

●$24.98
PICTURE ★★★☆
SOUND  ★★★☆

●Exclusive Documentary:「THE OPERA GHOST, A PHANTOM UNMASKED」
●Feature Commentary with Film Historian Scott MacQueen
●Production Photographs
●Theatrical Trailer
●Cast And Filmmakers
●Production Notes

 こちらは42年版。邦題「オペラの怪人」。製作は同じくユニヴァーサルですが、この会社ホントに思い切ったことをしてみせました。この魅惑のホラーの監督にユニヴァーサルが抜擢したのは、アボット&コステロの凸凹コンビ映画のアーサー・ルービン。関係者は皆、あっ、と言いましたね。ホンマにこの人、恐怖映画が撮れるんかいな? みんながみんな、噂しましたね。さぁ、そんな噂の中でルービン、スタジオにリクエストした撮影監督はハル・モーア。フィリッツ・ラング&デイトリッヒのコンビ作「無頼の谷('52)」や、マーロン・ブランドの人気を決定的にした「乱暴者(あばれもの/'53)」での、どこか冷めた筆致が印象にありますが、実はモーア、「オペラ座の怪人」の第1作が製作された25年に、同じく怪人役のチャイニーと「魔人(The Monster)」と言う作品で仕事をしています。ルービンはこの「魔人」が好きで、モーアのカメラにも惚れ込んでいましたから、彼の強いリクエストの理由もわかりますね。かくして「オペラの怪人」、その異様な雰囲気を褪せさせることなく、その年のアカデミー賞撮影賞に輝くことに。デ・パルマがインスパイアを受けているのは、この42年版。昨年登場した本DVDには、懐かしく麗美で、果てしなく恐い恐怖映画の匂いが立ち込めています。そう、むせ返るくらいに。

Dario Argento's THE PHANTOM OF THE OPERA

●$19.98
PICTURE ★★★☆
SOUND  ★★★☆

●Production notes●Interview With Actor Julian Sands
●Behind-the-Scenes Footage
●Fangoria Article
●Theatrical & Video Trailers
●Photo Galleries

 な、な、なんとアルジェントまでもがぁ。彼は88年に「オペラ座/血の喝采」という倒錯ホラーを発表していますが、「オペラ座/血の喝采」に観る、かなり偏執的なオペラ座への傾倒から、本作「オペラ座の怪人」の登場は容易に予測できます。しかし、それでも登場するまでに10年の歳月が経っており、果たしてアルジェントは円熟期を迎えたのか、それともただ単に丸くなってしまっただけなのか、このDVDでその是非を探って頂きたいものです。愛娘アーシアの童顔に潜むエロぶりは、ハンパな男どもなど手玉に取られちゃうでしょうね。このイタリアン・オッパイ星人の方が怪人の名に相応しいような……。ちなみに「オペラ座/血の喝采」はアンカーベイから、極上DVDで登場。サウンドもDTS-6.1ES & DD-5.1EXと贅沢この上ない円盤です。

OPERA: Limited Edition

●$34.96
PICTURE ★★★★☆
SOUND  ★★★★

Disc 1:
●Conducting Dario Argento's OPERA:
An all-new 36 minute documentary featuring interviews with
Co-Writer/Director Dario Argento, Cinematographer Ronnie Taylor, Animatronics Artist Sergio Stivaletti, Music Composer Claudio Simonetti,
and Stars Daria Nicolodi and Urbano Barberini
●Theatrical Trailers
●Daemonia Music Video
●Dario Argento Bio
Disc 2:
●Original Claudio Simonetti Soundtrack CD


CARRIE

●$19.98
PICTURE ★★★★☆
SOUND  ★★★★

●「ACTING CARRIE」
Documentary with Sissy Spacek, Amy Irving, Nancy Allen, William Katt, Piper Laurie, Betty Buckley and More
●「VISUALIZING CARRIE」
Documentary with Brian De Palma and more
●「CARRIE THE MUSICAL」 Featurette
●Animated Photo Gallery
●「Stephen King and the Evolution of CARRIE」 Biography
●Original Theatrical Trailer

 そのオープニング。煙るシャワールームではしゃぐUSAハイスクール・ガールたちの、股間の剛毛を見るたび、「キャリー('76)」が帰ってきた、と叫んでしまうのは僕だけでしょうか? クライテリオンから権利移行(LD権利でしたが)でMGM印で登場の本作ですが、ぶっ飛びの高画質。フラッシングやフィルター処理で一見視界が悪く感じる映像ですが、当時の映像ニュアンスは映画館以上に伝わってきます。DD-5.1音声も優秀。サイドリアの広がり、バックサラウンド(EXではありませんけど)の定位など、非常に緻密なリレコが行なわれています。しかもあざとくない。う〜ん、これってホントに大切な大切なリレコ・プレゼンテーションのコンセプト。サプルメントも充実してまして、当時既に人妻でスタッフの一人だったスペセイク(なんと当時26歳!)他数人を除いて、主要キャストが「スター・ウォーズ」のオーディションの落ちこぼれ(と言っても、このグンバツなキャラクター!)軍団だったと言うのが、とってもとっても微笑ましいエピソード。スプラッターと紙一重のホラー映画の出演者が、オスカー主演女優、助演女優候補に挙がった、ということ自体驚くべきお話ですね。これまたデ・パルマの歪んだ愛情の賜物。

OBSESSION

●$24.95
PICTURE ★★★★
SOUND  ★★★☆

●Exclusive Documentary: 「OBSESSION REVISITED」
●Theatrical Trailers
●Filmographies

 邦題「愛のメモリー('76/HiVi本誌9月号で紹介)」。松崎しげる系のタイトルに、ちょっと複雑な気分なんですが、作品はとことんインテレクチャル。とっても知的なんですね。これはインテリジェンスな人にはわからない知的な変質お遊戯映画。原題は執心、強迫観念といった意味があり、明らかにヒッチの「めまい」が下敷きにあります。悪趣味とともに大脳中枢を直撃するヒッチの凄味にこそ及びませんが、出演者(クリフ・ロバートソン! ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド!!)、スタッフ(シネマトグラファー=ヴィルモス・ジグモンド! 音楽=バーナード・ハーマン!!)に恵まれて、終始非常に高い質を保ちます。こうした駒に恵まれるのも監督の資質なんですね。リリースはSPEから。最近のSPE、ちょっとクォリティの低下が目立ちます。テレシネ工程のトラブルであることは間違いないようですね。ちなみに「めまい」は米国盤&国内盤とも残念ながらLB仕様。ところがPAL盤はスクイーズ。でもでも、単品では購入できません。ヒッチコックBOXのボーナス・ディスク……。さぁ、あなた、PAL版ヒッチコックBOX、買っちゃいますか?

THE FURY

●$19.98
PICTURE ★★★★
SOUND  ★★★☆

●Theatrical trailer
●Still Gallery

 邦題「フューリー」。超能力を扱ったスリラーという点で、「キャリー」の姉妹編に当たると考えてもよいのですけど(「キャリー」のエイミー・アーヴィングがサイキック役になっているのには笑える)、舞台のスケールは遥かに大きい。でもですね、これが作品のインパクトの大きさに比例するかと言うと、「キャリー」には及ばないんですね。情報部員モノを、おそらくはデ・パルマ、ヒッチのように美味しい題材として料理したかったんでしょうけど、ちょっと映像作家としての空回りが見受けられます。しかしその表現の、語りの、感情の空回り、決して舌触りが悪いわけではなく、次回作を期待させちゃう。これがまたデ・パルマ映画の魔法みたいなもので、僕はこれはこれで結構好きなんですけど。まぁ、役者が贅沢。カーク・ダグラスとジョン・カサベテスが善悪の2本柱。ジョン・トラボルタに断られた(「キャリー」で抜擢されたけど、「サタデー・ナイト・フィーバー」の大当たり後ですからね)ダグラスの息子役ロビンには、ステラ・スティーブンスおネエの実の愛息アンドリュー・スティーブンスを抜擢。毛並みの良さでは抜群だったはずのアンドリュー、その後はエッチ系&低予算B-MOVIE専門役者になっちゃった。しかし、その汚れちゃった毛並みは、近年「処刑人」「追撃者」「ドリブン」といった作品の製作総指揮で綺麗にトリートメントされたようです。原題のFURYとは、激情、凶暴な怒り、という意味ですね。でもFURY、ギリシャ神話の中の女神の名でもあります。復讐の女神。これを是非是非頭に入れておいてくださいね。そうすれば終幕の歪んだ恐怖、これに感情が抉られますよ。

REAR WINDOW

●£16.59
PICTURE ★★★★☆
SOUND  ★★★★

●Remember and Restoring a hitchcock classic - Making Of 「REAR WINDOW」
●Featurette
●Art Gallery
●trailer Compilation
●Theatrical Trailer

 「フューリー」にも「スター・ウォーズ」オーディション落選組が、チョイ役ですけど顔を見せます。エイミー・アーヴィングのクラスメイト役で、TV「ER」セカンド・シーズンから登場のドクター・ケリー、「ディープ・インパクト」のアンカー・ウーマン役のローラ・イネス。う〜ん、ぽっちゃり可愛いハイスクール・ガール(と言っても22歳)。そして本作撮影後「ブレード・ランナー」に抜擢され「スプラッシュ」で人気爆発、80年を代表する女優さんとなったダリル・ハンナ。この映画が実質のデビュー作となったハンナおネエさん(早いもので今年41歳に……)、98年にTVムービー「裏窓」に出演しています。そう、ヒッチの名作サスペンス「裏窓」のリメイクですね。ほらほら、「フューリー」のクライマックスもまさに「裏窓」でしょ(観てのお楽しみ)。なんだかこの映画繋がり、面白いなぁ。こう来て、そう来て、こう繋がっちゃうんですね。
 リメイク版を紹介する前にまずヒッチ版「裏窓」を。NTSC盤は既に登場してますが、先日PAL盤が後発されました。これがまた凄い絵。NEWテクニカラー・レストレーションの妙味はPAL盤で完璧に味わえます。勿論スクイーズ仕様。
 さてリメイク版。こちらは残念ながらDVD未発で、米国版&国内版TAPE有り。ヒッチ版と比較するのは酷なんですが、このTVムービー、かなり美味しい出来。やはり土台がいいからなんでしょうか? もともとリメイク版「サイコ('98)」に対抗して企画されてましたが、資金繰りが巧くいかず(そりゃぁ「裏窓」のリメイクに予算を出すなどと言う映画スタジオはないよなぁ)TVムービーとなったのですが、キャスティングが興味深いですよ。グレース・ケリーの役がダリル・ハンナ。そして車椅子のサスペンスを演じ切ったジェームス・スチュワートの役が、なんとスーパー・マン=クリストファー・リーヴ! なんともブラックで、残酷な映画の悪戯ですね。95年の落馬事故、そして懸命のリハビリを経た、偉大なる出演作(兼製作総指揮)! と言っていいし、ゴールデン・グローブ賞ノミネートも当然でしょう。リメイク版では交通事故で下半身不随になった建築家役で、これがなんとも痛々しい。ちなみに開幕の事故シーンは、ヒッチコック劇場でヒッチ自身が監督した「生と死の間で」からの引用。友人の刑事役には「ジャッキー・ブラウン」のロバート・フォスター。この渋いおじさん、リメイク版「サイコ」にも顔を出していて98年はヒッチ・イヤーだったよう。音楽は70年〜80年代を代表する作曲家デビッド・シャイア。オリジナルのフランツ・ワックスマン御大(「陽のあたる場所」「サンセット大通り」でのオスカー受賞を始め、オスカー12回ノミネート!)の職人芸こそないが、サスペンスフル・スコアのツボはしっかり押さえてますよ。
 是非ともDVD化して欲しい作品ですが、その前にBSデジタル放映されるかも。下記写真はTAPEカヴァー。国内版TAPEはマクザムから昨年4月リリース(\16,000)。

REAR WINDOW

●$9.98

SCANNERS

●$14.95
PICTURE ★★★★☆
SOUND  ★★★★

●Theatrical trailer

 この「フューリー」にインスパイアされたわけではないのでしょうが、デビッド・クローネンバーグが超能力スリラーの極め付きを発表します。「フューリー」から2年後ですね。その名も「スキャナーズ」。クローネンバーグの名を全世界に一躍広めた傑作スリラーです。カナダのホラー系シネマトグラファー、ロドニー・ギボンズ(「血のバレンタイン」だぁ!)の正攻法の筆致も好感が持てますが、やはりこのお二方にご登場願いましょう。音楽のハワード・ショア。そして特殊メイクアップのディック・スミス御大。ショアは物語の悲劇性を完璧に理解し、その高揚で譜面を彩ります。スミスはCGなき時代に、このアナログ・メイクアップ! まさにアナログ・レコードの凄味、とでも言いましょうか。これは今だからこそ必見の職人芸です。絵、よし! 音、よし!

DRESSED TO KILL

●$19.98
PICTURE ★★★★
SOUND  ★★★★

●UNRAED Version Option
●The Making of 「DRESSED T0 KILL」 Documentary
Including Interviews with Brian De Palma, Angie Dickinson, Nancy Allen、
Dennis Franz and more!
●UNRATED, R-RATED and TV RATED Comparison Featurette
●Slashing 「DRESSED T0 KILL」 Featurette
●An Appreciation by Keith Gordon Featurette
●Animated Photogallery
●Advertising Gallery
●Collectible Booklet
●Original Theatrical Trailer

 ねっ、言ったでしょ。次回作を期待させちゃう、って。習作時代の70年代を経て、デ・パルマ黄金の80年代の開幕を飾るは「殺しのドレス」。「フューリー」の次作「HOME MOVIES」(邦題の「悪魔のファミリー」とは、何たるセンスのなさ!)は日本未公開でした。サラ・ローレンス・カレッジの学生たちと創り上げたまさにホーム・ムービーで、カーク・ダグラス(「フューリー」に続いての出演!)、ナンシー・アレン、キース・ゴードン(「殺しのドレス」へと……)と、みんなイッちゃてる輩ばかり。カルトな倒錯世界を突きつけられましたから、みんな期待しましたよ、メジャー作品でたっぷりお金の使える「殺しのドレス」に。
 ほらほら、もう、デ・パルマ汁たっぷりの傑作サスペンス。これを食さないテはないでしょう。もう、「サイコ」にオマージュを捧げているのは誰が観ても明らかで、シャワー、服装倒錯等々、そのヒッチ&デ・パルマ・エッセンスは挙げれば切りがありません。しかし最も注目しておいて貰いたいのが、主人公たる女性が映画の途中で無残に殺され、別のヒロインが真相を探る、というプロット。「サイコ」ではショッキングな各シーンより、このプロットが一番ショッキングでした。しかも、ヒッチにしては珍しくグロテスクな作品です。ここをデ・パルマは舐めて魅せました。ヒッチの驚かせ方を知っている人には甘味に感じるかも知れませんが、この食感は病み付きにさせますよ。
 ヒッチはとっても辛口でしたでしょ。例えば、女性の裸に代表する性的臭気。「サイコ」が公開された1960年の映画界は、まだまだ検閲局が厳しかった頃ですけれど、ヒッチは彼等が手を出せない絶妙な演出で映像化してみせました。そのために構築されたアイディアの数々。この料理をデ・パルマは舐めてみたわけですから、映画的な安心感があるんですね。煌びやかで、とっても凝っているんですけど、人の土俵で相撲をとっているからどうしても甘口になってしまう。
 でもですね、DVD、この甘味の舌触りがとっても良い。この絵ですから。この音ですから。しかも、サプルメントでUNRATED版、劇場公開版、TV放映版の違いまで見せてくれます(本編はUNRATED版、劇場公開版を収録)。オープニングのシャワー・シーン。「キャリー」ですね。しかも後に「ボディ・ダブル」に辿り着く。ほら、思い出して下さい。ヒッチほど前に使ったテを、何度も何度も使った監督はいませんでしょ。「三十九夜」を引き伸ばせば「北北西に進路を取れ」に、「暗殺者」を拡大すれば「知りすぎていた男」になるとか。だからデ・パルマDVDを愉しむお約束は、年代順に必ず観なさいよ、ということなんですね。

SISTERS

●$29.95
PICTURE ★★★★☆
SOUND  ★★★★

●Director Brian De Palma's 1973 VILLAGE VOICE Essay 「MURDER BY MOOG: Scoring the Chill」 on Working with Composer Bernard Herrmann
●A 1973 Print Interview with De Palma on the Making Of 「SISTERS」
●「Rare Study of Siamese Twins In Soviet」 the 1966 LIFE Magazine Article
that Inspired Brian De Palma
●Excerpts from the Original Press Book, Including Ads and Exploitation
●Production, Publicity, and Behind-the-Scenes Stills

 そして「殺しのドレス」の翌年、「ミッドナイト・クロス」へ。元警官で、捜査中に仲間を死なせてしまい、今ではポルノ映画の録音技師になっている、どうしようもなく病んだ心を隠し持った主人公。悲しい映画です。こうしたデ・パルマ描くところの二面性の妙味は、彼の名を高めた「ファントム・オブ・パラダイス」は勿論、日本デビュー作の「悪魔のシアター('73)」でも存分に味わえます。デ・パルマ・ルーツのエッセンスは、この二面性にあり、例えば「ファントム・オブ・パラダイス」では、ともにこの世に存在しないウィリアム・フィンレイ扮する怪人と、ポール・ウィリアムス扮する幽霊。2人は相反する憎しみの存在でありながら、人でないということで感情を共有しているんですね。異者にしながら、精神の両性具有者。実はこのルーツは、「ファントム・オブ・パラダイス」の前作である「悪魔のシスター」に脈々と流れています。
 ヒロインは切り捨てられて死んだ、シャム双生児の片割れに意識を犯されていきます。存在しないものに精神を操られるヒロインに、70年代、80年代のデ・パルマ映画のルーツをみることは容易でしょう。そのルーツを学術書としてみせてくれたのが、天下のクライテリオン。このDVDがあるから、この夏から初秋にかけてのデ・パルマ・ラッシュ、この熱き映像魂が更なる生気を帯びると言っても過言ではありません。リリースは昨年の10月。未見の方は勿論、かつて本作に震えた方も購入必須のDVDです。是非ともお手元に。

 さてさて如何でしたでしょうか、デ・パルマ特集。デ・パルマ映画は、書き始めるとどっぷり深みに入っていく誘惑がありますね。ですから今回は意外と(?)あっさり紹介させてもらいました。この絵、この音ですから、後は皆さんご自身が視聴されてその楽しさにどっぷり浸って頂ければ充分だと思っています。
 さて番外の地、第二十夜はPAL盤特集を予定しています。
 ではでは、また明晩お会いしましょうね。

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