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今月の米国盤:番外地
NO.44
堀切日出晴

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第四十四夜
 このDVDを映画館で観る前に愉しもう。<後編>


 さて、続いてはFEATURED-DVDです。

 最近では米国盤が登場する前に(もしくは同時期に)リリースされる国内盤も多くなってきましたが、やはり米国盤の魅力の一つは、日本の映画館でかかる前の(あるいは上映中の)作品を自宅で愉しめる事。

 今回は本誌で紹介した作品以外の、そんなお愉しみDVDをご紹介しましょう。

◆FEATURED DVD

ANGER MANAGEMENT:Widescreen Special Edition

PICTURE ★★★★☆
SOUND ★★★★




 邦題「N.Y式ハッピー・セラピー」。
 主演はアダム・サンドラーとジャック・ニコルソン。サンドラー扮するデイヴは、些細な事が原因で飛行機内で大騒ぎを起こしてしまいます。しかも、普段はおとなしい彼なのですが、短気矯正治療(原題=ANGER MANAGEMENT)を受ける事を裁判所から命令されてしまいます。なんで俺が? などと悩んでいる間もなく、送られたクリニックの変人医師(ジャック・ニコルソン)によって治る病も悪化していく一方。
 更にこのお医者さん、デイヴの恋人までちょっかいを出し始めたから、さぁタイヘン。さてさて、この変人お医者さん、本当にデイヴの治療を行なえるのでしょうか?




 さすがのサンドラーもニコルソンに喰われっぱなしの100分。そのクォリティは?
 カラーパレットは豊穣で、スキントーンの描写もナチュラル。解像感はもう少し欲しいところですが、暗部の階調表現、柔和な輪郭描写は眼を瞠るものがあります。
 サウンドは派手なデザインではありませんが、ダイアローグの鮮明さが光ります。スコアの響きも心地よく、総じて画面からの集中を欠かす要素は見当たりません。
 破壊的ですがまったく憎めないニコルソンの怪演。次第にぶっ壊れていくサンドラーの面白さ。表情一つを取ってみても、大画面再生の楽しさが表出します。大好きなマリサ・トメイ。歳こそとりましたが、彼女の可憐さもお愉しみのひとつ。
 映画にはNYヤンキースの面々も登場。松井が入団する前の撮影のため、彼の姿がないのが残念。

 DVD-SHOTは下記の写真をクリックして下さい。

 続いてDVD-SHOT(Largeサイズ)です。
 誇張した遠近法とディープフォーカスの愉しさは、大画面になればなるほど愉しいものです。細部情報だけではなく、光や陰影の再現にも注意を払いたいもの。それは光量の少ない室内シーンにおいて、最も要求されてくるものです。
 ニコルソンとサンドラーのツーショット。可笑しさと迫力が混在しています。最後にMENU画面を。こんなMENU、ちょっと怖い・・・。

ONCE UPON A TIME IN MEXICO

PICTURE ★★★★★
SOUND ★★★★★

 邦題「レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード」。監督はロバート・ロドリゲス。本作は「デスペラード」の続編(続編として観なくても構わない柔軟性も兼ね備えています)でもあり、彼は演出の他に、製作、脚本、撮影、編集、音楽、美術にも携わっていて、これはまさに彼のホームムービー。主演はアントニオ・バンデラス。
 原題は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・メキシコ」。もうこれだけで、セルジオ・レオーネに捧ぐ、マカロニ・ウェスタンの鎮魂歌とわかってきます。つまりはイタリア臭い浪花節。このムードに酔うこと。これが大切。重箱の隅をつつくように映画を観たらダメですよ。
ほら、嬉し愉しの出演陣、その面構え。こういう映画ならではの愉しさを、大きな気持ちで味わって下さい。

 レオーネは、スタイリッシュなニヒリズムとケレン味で、衰退著しいウエスタンを蘇らせた立役者。この絵、この音には、ロドリゲスの映画愛がたっぷり詰まっています。
 劇場公開は2.35:1のスコープサイズ。しかし本盤では1.78:1(16×9)アスペクトで収録されてます。これはトリミングによるものではなく、もともと本作の撮影がソニーのHWD-900(1080p24 high definition video)カメラによるものだからです。ロドリゲスは映画館はスコープサイズ、ホームシアターではHDフルアスペクトと決めていたとのことで、別の見方をすれば、映画館とは違う愉しさがここに詰まっていると言えるでしょう。




 同時に、家庭劇場の愉しさは、(シャッター機能等がある機種によって)上下を自由にトリミングして2.35:1=スコープサイズの視聴も可能というところにあります。それはそれで、堅苦しいことナシの、十二分に愉しめる世界。スコープサイズの視聴では−−強い日差しの乾燥しきった風景のインターカットに、息苦しくなるようなクローズアップを挟み、アクションシーンをクライマックスに導いていく−−そんな、まさにマカロニ・ウエスタン的な妙味を体験することができるわけです。





 本作のサウンドはDD-EXではありませんが、EX効果は随所に体感できます。とにかくアクティブなサウンドに仰け反る事でしょう。包囲感、移動感も卓越しており、分解能も極めて高いのがわかります。様々な音が入り乱れる活劇シーンにおいても、ダイアローグは明快に響きます。お見事。

LOST IN TRANSLATION

PICTURE ★★★★☆
SOUND ★★★★☆








 邦題「ロスト・イン・トランスレーション」。
 監督はフランシス・フォード・コッポラ(本作の製作)の愛娘ソフィア・コッポラ。監督処女作「ヴァージン・スーサイズ」は、線の細さこそ感じさせましたが、なんとも鮮度の高い佳作でした。「ゴッドファーザー Part3」でのメアリー・コルレオーネの演技こそ酷評されましたが、実際はそれ以前から裏方(デザイナー)として映画にかかわってきた人。先日発表されたオスカーでは、見事本作でオスカー脚本賞を受賞しました。

主演はビル・マーレイ。この人、ウェス・アンダーソンとの作品群(「天才マックスの世界」「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」)で、なんだか一皮も二皮も剥けた気がします。表情の機微、この味はまさに大画面再生にぴったり。


 さて、このマーレイと絡む若きヒロインにスカーレット・ヨハンソン。レッドフォードの監督・主演作「モンタナの風に抱かれて」の、傷ついた少女役も記憶に残りますが、「ゴーストワールド」の彼女もグー。近作で印象に残っている小品が、エヴァ・ガルドス監督・脚本の「アメリカン・ラプソディ」。58年、ハンガリーからカリフォルニアへ亡命してきた監督自身の経験がベースになった作品。

 鉄のカーテンを抜け出し、ブタペストを離れた夫婦(トニー・ゴールドウィン、ナスターシャ・キンスキー)は、LAへ向かう計画を企てますが、多くのお金を失ってしまいます。彼らの幼い娘、スザンヌ(監督自身であり、思春期の彼女をヨハンソンが演じる)はブタベストに置き去りにされ、6歳になった時に両親と再会します。彼女は成長し、思春期を迎えるのですが、自らのアイデンティティを見つけるために故郷へと旅立ちます。その旅で彼女は、何を見つけることができるのでしょうか? 「ロスト・イン・トランスレーション」との2本立てなんて、いかがでしょうか?




 DVDはWidescreen盤とFull-Frame盤の2タイプがリリース。紹介はWidescreen盤で。
 まず念頭に入れておいて頂きたいのが、本作はスモールバジェットのインデペンデント映画であり、東京でのオールロケーション作品という事。こうした撮影上の制約は、過度の照明を常とする聖林の規範を、大きく逸脱したルックスにならざるを得ません。しかし、今回はそれが映画の魅力となって花開きました。


 このムーディで、薄暗いルックスは、コッポラと撮影監督のランス・アコード(「バッファロー66」「マルコヴィッチの穴」「アダプテーション」)が狙ったトーンである事は間違いないでしょう。聖林映画の鮮明な映像に慣れている眼には、“暗い”“不鮮明”と映るかもしれません。しかし意図的に光量を出し惜しんだロー・キーの画面、抑えたカラー、印象的な街の風景など、どこかフィルム・ノワール的な表情を感じさせるあたりに、この映画の面白さがあるのです。
 ただ、細部ディテイルが不足気味に再現されるショットもあり、ディテイル描写はシーンによって差異があることは確かです。収録されている音声は、DTSと2種類のDD-5.1音声。果たして仏語DD-5.1音声は必要だったのでしょうか?あきらかに、この再現が厳しい映像が、音声の転送レートの犠牲になっているようです。


 円盤の仕様は以下の通りです。
■Running Time=1:44:16
■A conversation with director Sofia Coppola and actor Bill Murray
■"Lost on Location" - behind-the-scenes featurette including exclusive footage shot by the filmmakers
■Deleted scenes
■"Matthew's Best Hit TV" - an extended version of the Japanese TV show
■Music video
■Trailer
■DVD Release Date:2003.02.03
■Chapters:24

 転送レートは下記の通り。
Average Bitrate:7.3Mbps

 MENU-GALLERY、特典映像は下記の写真をクリックして下さい。

 DVD-SHOT(Largeサイズ)は下記の写真をクリックして下さい。
 意図的に光量を出し惜しんだとはいえ、夜景=ネオン街の美しさは特筆モノです。

 ロー・キーの画面ながらヨハンソンの肌の質感が、柔らかく描写されます。

 総じて黒色は、艶やかで重厚。さすがに映像のDレンジは抑えられていますが、黒色の背景に浮かぶスキントーンは鮮度が高い。

 おやおや、どこかで観た番組。色温度は高めですが、カラフルな映像の妙味が充分に伝わってきます。

 いやぁ、この映画のマーレイ、実にいい味を出しています。

 そういえば、コッポラと血縁関係にあるニコラス・ケイジも「SONNY」デビューをしています。米国盤は昨年の8月に登場済ですが、この作品も日本では近日公開。

 この作品は娼館に生まれ、娼婦の母を持ち、男娼として育てられた青年ソニーのお話。映画は、ソニーが軍隊を除隊して故郷に帰ってくるところから始まります。
 ケイジは数多くの名監督とコンビを組んでいますので、映画のツボを魅せることに長けています。しかし、映像作家としてのオリジナリティに欠ける部分もあり、どこかで観たようなシーンが続くのは少し残念。


 それでも物語の面白さ(脚本は15年前に書かれ、内容は実話に基づくもの)もあって、最後まで飽きさせません。この青春映画の佳作を、今宵の上映会の1本に加えてみては如何でしょうか?
 さて気がつけば、終演のお時間。それでは次夜まで、おやすみなさいませ。良い夢を。


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