第五十四夜
番外地五十夜、五十一夜で紹介しました、DVDOの映像プロセッサー「iScan HD」ですが、先日HDCP対応モデル「iScan HD+(プラス)」を視聴する機会に恵まれました。さてその画質に進歩はあったのでしょうか?
わが家庭劇場では、ニュービデオボードへのヴァージョンアップを済ませた「エアーD1プログレッシブ」と色差/RGBセレクター「D-2001」との間に「iScan HD」を接続して、アナログRGB出力信号を3管プロジェクター「LVP-2001」に送出しています。「エアーD1プログレッシブ」から「iScan HD」へはDVI(光ファイバー仕様)接続。「iScan HD」から「D-2001」へはアナログRGB接続。
この接続状態で「iScan HD」を「iScan HD+」に変えてみます(「iScan HD+」のメニュー項目も追加変更があります)。出力解像度480P。フレームレート72Hzを選択。映し出された映像は、確実に鮮度が上がっており、立体感、奥行感も明らかに向上。黒レベル、階調再現の見直しもされているようで、「iScan HD」と「iScan HD+」とでは映像イコライジング数値が変ります。「エアーD1プログレッシブ」からのアナログ色差接続において変化は、DVI接続ほどではありませんが、確かにクォリティは向上しています。
「iScan HD」発売後に、世界各国からの「iScan HD+」への多くの要望や情報が寄せられたという事で、DVDOとしてもひじょうに参考になったと伝え聞きます。これが「iScan HD+」の画質アップに繋がっているのは間違いないでしょう。
「エアーD1プログレッシブ」はHDCP非対応機種ですから、上記のDVI入力/RGB出力接続が可能になっていますが、HDCP信号が付いた映像に関しては(HDCPの規定により)「iScan HD+」のVGA端子(YPbPr/RGBHV)は使用不可となります(スケールアップした映像はDVI出力端子からのみ出力)。国内製光ディスクプレーヤーではデジタルインターフェイスが不可能ですが、それでもアナログ接続による480P/72Hz映像は十分に魅力的です。
フレームレート72Hzでの映像再現が可能になったことは、3管プロジェクター・ユーザーには吉報です。映像入力信号に対する再調整などで多少の手間は強いられますが、これは「3管プロジェクターよ、もう一度」「復活、3管プロジェクター」と言うべき製品プロジェクトなのです(一般的な液晶プロジェクターや単板式DLPプロジェクターでは、72Hz信号をプロジェクター内で60Hzに変換してしまいますので意味がありません)。
では「iScan HD」を購入してしまった方は、どうなるのでしょうか?これは「iScan HD+」への有償ヴァージョン・アップを受けることができますのでご安心を。
(製品の詳細はマルチフォニック・サウンド株式会社のHPを参照して下さい)。
それでは今夜も「PICK-UP DISC」紹介とまいりましょう。
◆PICK-UP DISC:1 TITLE;POLYESTER:Widescreen Edition

| Studio |
NEW LINE HOME ENTERTAINMENT |
| Year |
1983 |
| Running Time |
1:25:57 |
| Aspect Ratio |
16x9 encoded 1.85:1(Original Aspect Ratio) |
| Audio |
2.0 DD ENGLISH,MONO DD ENGLISH |
| Subtitle |
ENGLISH and NONE |
| Special Features |
■"Odorama" scratch-and-sniff cards
■Feature/Episode commentaries by director John Waters
■Original Trailer
■Chapters 21
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| Release Date |
2004.09.07(Re-Release) |
邦題「ポリエステル」。
01年の9月にリリースされた、ジョン・ピータース監督作のカップリング・ディスク「デスペレート・リビング(77)」「ポリエステル(81)」ですが、そのうち「ポリエステル」が単品売りで再リリースされました。
これはウォーターズ印の大メロドラマ。ダグラス・サークの「悲しみは空の彼方に(59)」(米国盤「Imitation of Life」の仕様は、番外地42夜の巻末で紹介しています)へのオマージュを感じさせるのですが、そこはウォーターズ、ダークサイドへの誘いがたっぷり(公開時のポスター・デザインがまた凄い)。
アメリカ郊外のどこにでもありそうな住宅地。そこに暮らす4人家族。ディヴァイン(!)扮する貞淑な主婦フランシーヌ(もう、この段階でイッちゃってるのだけど)。超おデブのフランシーヌの夫はポルノ映画館の経営者。亭主関白で浮気性。長女は男漁りで遊び歩き、挙句は妊娠が発覚。長男は極度のハイヒール・フェチ(ハイヒールにではなく、臭いにだ!)で、やがて警察沙汰に。メチャクチャに崩壊した家族なのだが、その家族からも蔑ろにされちゃうフランシーヌ。もう、フランシーヌに降りかかる、不幸、不幸、不幸の嵐。やがて、あまりの心労と苦痛からキッチンドランカーとなり、ボロボロのノイローゼ状態に。そしてサイテー最悪の出来事が、これでもか、これでもかと降りかかる。普通の家族で、普通の主婦で、普通の生活を送りたいのに……。
さてウォーターズは、徹底してこの“普通”を皮肉ります。「ポリエステル」の公開は81年。その前の年にオスカーを受賞したのが「普通の人々」。本作を「普通の人々」のパロディとして観れば、そこにウォーターズ流の挑発が見えてきます。
そして本作は、「オドラマ方式」作品。これはHiVi-SHOWCASEのコーナーで。
■score;A
映像はアスペクト1.85:1のスクイーズ仕様。
キワモノ映画と呼ぶなかれ。この映画が持つ存在感、テーマ性は見事に家庭劇場で開花します。FILM-to-TAPE変換の仕上がりは良好です。粒状ノイズは随所で散見されますが、視聴の気を散らすことはありません。スキントーンはひじょうに柔らかいのですが、暗部階調は低輝度のシーンで詰り気味になります。


さて、憶えてますか?「ポリエステル」はクライテリオンLDでも登場しているんですよ。クライテリオンLD版も(当時としては)見事な仕上がりになっていたのですが、(DVDとLDというフォーマットの違いがあるとはいえ)本盤を視聴すると明らかに映像鮮度が向上しています。
■score;A−
サウンドはオリジナルドルビーデジタル(以下、DD)-MONO音声と、リミックスDD-2.0音声を収録。
最新作と比較しては酷ですが、どうしても奥行き、厚みに欠けるサウンドになっています。リミックスDD-2.0音声においても、セパレーションはよくありません。ただし、(時折甲高く響くとはいえ)ダイアローグの説得力は立派。音楽を担当するのはマイケル・ケイメン。主題歌はデボラ・ハリー。意外や、この音楽の響き、なかなかいいですよ。
■score;B
さて、なんと言ってもこの映画の見所、いや聴き所、いえいえ“嗅ぎ所”といえば、オドラマ方式にあります。思えばアメリカでは1950年代後半に、「アロマーラマ」方式や「スメル・オ・ビジョン」方式の嗅覚エンタテインメントがありました。これは、映画館や劇場の通風口や客席の下から匂いを放つもの。
これにウォーターズは目を付け発案したのが、オドラマ方式、つまり"匂いがする"映画方式です。まぁ、これが単純明快で、かなりおマヌケな方式。映画館の入口では、1から10までの番号が印刷された“オドラマ”カードなるもの配られます。
開幕でインチキ博士が登場し、オドラマ方式の解説を始めます(最初はスタンダードサイズ画面で、「これがオドラマだぁ!」と叫ぶと画面が広がってビスタサイズになっちゃうのだ)。映画の中で画面の右下に番号が表示されるシーンが出てきます。そこで素早くカードを取り出し、画面の番号と同じ番号を、爪やコインで擦ります。そこに漂う映画の中の香りを、鼻をくっつけて、クンクンとやるわけです。ねっ、おマヌケでしょ。薔薇の花の香りに、う〜ん、いい香りだなぁ。次はオナラの臭い。う〜ん、ゲロゲロ...。で、だんだん臭いも過激になってきて、いやぁ、サイテーって大スキ!
さて気を取り直しまして、続いては10月にリリースされたスーパービット盤をご紹介しましょう。リリース・タイトルは「バッドボーイズ2バッド」「レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード」「ナバロンの要塞」「クリフハンガー」「S.W.A.T.」「アンダーワールド」。


そして今夜ご紹介するのはこの作品です。
◆PICK-UP DISC:2 TITLE;THE MISSING:SUPERBIT
| Studio |
COLUMBIA TRISTAR HOME VIDEO |
| Year |
2003 |
| Running Time |
2:16:52 |
| Aspect Ratio |
16x9 encoded 2.40:1(Original Aspect Ratio) |
| Audio |
5.1 DD ENGLISH,5.1 DTS ENGLISH |
| Subtitle |
ENGLISH,FRENCH,SPANISH,PORTUGUESE,THAI,KOREAN,CHINESE and |
| Special Features |
■10 trailers
■Chapters 28
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| Release Date |
2004.10.26 |
邦題「ミッシング」。
監督はロン・ハワード。彼の作品で“誘拐もの”と言えば、メル・ギブソンと組んだ「身代金」を思い出しますが、今回の舞台は19世紀アメリカ南西部のニューメキシコ。ワイルド・ウエスト。大西部劇です。
その西部の大地で逞しく生きるシングルマザーのマギー。そのマギーの父親で、20年ぶりに彼女の前に現れる父サミュエル。和解のために娘のもとへ戻ってきたサミュエルですが、マギーは父を徹底して無視し続けます。自分と母を捨てて出て行った父を許せない!
そんなある日、事件が起ります。恋人のブレイクと使用人が殺され、長女のリリーが連れ去られてしまいます。若い女を誘拐し、メキシコへ売りさばく悪漢たち。マギーは娘を奪還するために、父サミュエルと幼い次女トッドとともに追跡の旅に出ることになります。
この作品にはこんな人たちが出演しています。とりわけケイト・ブランシェットがいいですねぇ。
■score;A
映像はアスペクト2.40:1のスクイーズ仕様。
撮影は「エニイギブンサンデー」「チェンジング・レーン」の新鋭サルヴァトーレ・トチノ。色数を抑えた渋い色調ですが、馬の毛並みや衣装の色彩は実に濃密。スキントーンは旅をする土地や環境で微妙な差異を見せます。男性と女性の肌のグラデーション表現が見事。黒レベルも安定しており、深い艶黒を再現。階調表現はグレースケール上での10%以下の黒を意図的に潰してみせるデザイン。それでも濡れた質感の木の影、暗い室内、夜間ショットで、冷たく、乾燥した空気感を再現しています。
先行の通常盤は解像感が薄れてしまっていましたが、スーパービット仕様の恩恵で奥行感、立体感に長け、そして切れ味のよい鮮明映像を魅せつけてくれます(更にこの作品は、前述のiScan HDのフレームレート72Hz視聴で磨きがかかります)。この映像クォリティの差異は大きいですよ。スーパービット国内盤は11/26発売。
■score;A
サウンドはDD-5.1音声とDTS-5.1音声。
音楽はジェームズ・ホーナー。西部劇は、音楽で大きく映画の印象が変ってしまうことがよくあります。まずはスクリーンから広がり出る西部劇スコアに酔い痴れてください。テーマ曲を繰返し聞かせる映画ではありませんが、登場人物の感情に寄り添うスコアです。ダイアローグも常に明快。もともとサウンド・クォリティの高い作品でしたが、映像の見晴らしが良くなったため、広大な映像空間に配置されたSEが浮かび上がって聞こえてきます。派手ではありませんが、音による空間演出が秀逸。
■score;A+
拡大DVD-SHOTをご覧ください。
開幕近くのトミー・リー・ジョーンズのショット。奥行に広がる冷たい空気の触感。そこに浮かび上がるジョーンズの姿。衣装や小道具の質感に注目です。馬の毛並みも素晴らしい。ジョーンズのゴツゴツした顔や手も魅力的です。
続いてジョーンズとケイト・ブランシェットの2ショット。ハイキーなトーンで描かれるシークエンスですが、ディテイルが霧散しないように再現したいもの。再生機器の白側のユニフォミティ(均一性)も問われます。
さて、誘拐、探索ものと言えば、やはり「捜索者(56)」を思い出してしまいます。愛する弟夫婦を殺され、わが子のように可愛がっていた幼い姪をさらわれた中年男。人間の怒りと執念に支えられて年老いていく男の魂のさすらいを、これほど激しく鮮烈に描き出した西部劇も数少ない。ジョン・フォード、ジョン・ウェインのコンビによる傑作西部劇でした。「ミッシング」と「捜索者」の併映がお薦めですよ。
久しぶりに連打となったスーパービット・タイトルですが、ハイクォリティ盤で登場してくれるなら大歓迎。もう少し旧作タイトルを増やしてくれると嬉しいんですが……。
それでは次夜まで、おやすみなさいませ。よい夢を。
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