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第六十六夜

◆PICK-UP DISC:1
 TITLE;JAWS:30th Anniversary Edition


Studio Universal Pictures
Year 1975
Running Time 2:03:48
Aspect Ratio 16x9 encoded 2.30:1
Audio 5.1 DD ENGLISH,5.1 DTS ENGLISH, 2.0 DD ENGLISH,5.1 DD FRENCH, 5.1 DD SPANISH
Subtitle ENGLISH,FRENCH,SPANISH and NONE
Special Features ■Alternate Beginning
■The Making of Jaws
(※For the first time ever on DVD, viewers will get a complete glimpse into the making of Jaws with this 2-hours documentary)
■From The Set - An insider's look at life on the set of Jaws
(※featuring a never-before-available interview
with Steven Spielberg
■Deleted Scenes
■Outtakes
■Jaws Archives
(※Take a peak inside the Jaws archives including
storyboards, production photos, and marketing materials, as well as a special segment on the Jaws phenomenon
■Chapters 20
Release Date 2005.06.14


THE MOVIE
 
 邦題『JAWS/ジョーズ』。
 スティーブン・スピルバーグ、27歳の快挙。若きスピルバーグは、大脳を無視して直接はらわたに訴える往年の巨匠を彷彿させます。徹底的に観る者に恐怖を味わせる。しかもヒッチコックもびっくりのタッチで。ハードエッジですが下品さとは無縁。
 スピルバーグは、ピーター・ベンチリーの原作から社会性とセックスを排除しました。ベンチリー自身もカール・ゴットリーブ(「天国から来たチャンピオン」の脚本家で、「M★A★S★H」のブラック大尉だ)と共同脚色にクレジットされていますが、結果的にスピルバーグの選択は賢明で、彼のサスペンス手法を一層高みに引き上げます。これは上質なサスペンス映画であると同時に、パニック映画であり、ホラー映画でもあるのですが、現実世界へのアイロニーがたっぷりと詰まっています。

 主演はロイ・シェイダー。この警察署長ブロディ役にスタジオが薦めたのは、チャールトン・ヘストンとスティーブ・マックイーン。最終脚本があがった時に、スピルバーグは本作がビッグネームに頼らなくても成功を収めることを確信していました(メガヒットまでは予測できませんでしたが)。“せっかく素晴らしい脚本に仕上がったのに、スーパースターが主演では結果が読めてしまう”とスタジオを説得。プロデューサーのリチャード・D・ザナックの賛同を得て、シェイダーの抜擢となります。シェイダーを推薦したスピルバーグ曰く“「フレンチ・コネクション」の彼が大好きだったから”。
 鮫狩りの漁師クイントには、ロバート・ショー。内定していたリー・マービンのスケジュール調整がとれず、ショーにクイント役がまわりましたが結果は吉と出ました。彼のフィルモグラフィにおいてもベストワークの1本に。
 海洋学者フーパーにはリチャード・ドレイファス。原作ではブロディ夫人と肉体関係になってしまうフーパーですが、原作のキャラクターの匂いも残しているという点で、当初のキャスティングはティモシー・ボトムズ(『ジョニーは戦場へ行った』『ラストショー』)。
 “ロイがブロディ役に決まった段階で、登場人物のビジュアルが見えた。スマートな主人公に対して、角張って頑丈なクイント、小柄で小太りのフーパー、というようにね。これは3バカ大将みたいなビジュアルなんだ。”そう語るスピルバーグ。やっぱり、どこか突き抜けていたんですね。  

■score;A


IMAGE-TRANSFER QUALITY
 
 映像はアスペクト2.30:1のスクイーズ仕様。撮影は35mm/パナビジョン・アナモフィック。劇場公開時は、ブローアップされた70mmプリント(スコープサイズ)も制作されました。撮影は70年代を代表するシネマトグラファーであるビル・バトラー(『脱出』『カンバセーション...盗聴...』『カッコーの巣の上で』)。
 本作は00年に『公開25周年記念盤』が登場していますが、映像クオリティの差異は僅少です。映像は終始柔和な表情をみせ、中高域にかけての階調表現も滑らかに推移します。黒側の情報は引き込みが早めですが、これはフィルム・リソースに起因するもの。最新映画と比較しては酷ですが、解像感はもう少し欲しいところです(ショットによっては1ポイント・マイナス)。スキントーンはナチュラルで、この正攻法の配色が本盤の観どころとなります。そしてもう1つの観どころは、様々なルックス(柔和であり、恐ろしい)をみせる海のカラーパレット。温度感、深度、うごめきといった、海の表情がきっちりとらえられています。

■score;A


AUDIO-TRANSFER QUALITY
 
 サウンドはドルビーデジタル(以下DD)5.1音声、DTS-5.1音声を収録。
 サウンドに関しても『公開25周年記念盤』との大きな差異はありません(本作の目玉は特典映像なのです)。聴きどころはジョン・ウィリアムスのスコア。よく聴けば実にシンプルな楽曲なのですが、そのハラハラどきどき度はハンパじゃありません。さらにDTS音声(758kbps)は必聴。LFEのエンハンスはディープで、サラウンドのパンニングもDD音声より良好です。ダイアローグは力感があり、終始明快。

■score;A-



HiVi-SHOWCASE
 
 本作の平均転送レートは、Average Bitrate:7.16 mb/s。
 前述のビル・バトラーの映像が、ヴァーナ・フィールズのサスペンス溢れるカッティングと相まって、観る者を震え上がらせます。フィールズといえば、代表作に『アメリカを斬る』『ペーパー・ムーン』『アメリカン・グラフィティ』があり、スピルバーグとは『続・激突!/カージャック』で組み、『ジョーズ』でオスカーを受賞しています。2人の目から涎の映像リズムは、やはり極上盤で楽しみたいもの。ブロディが遭遇する鮫のファーストアタック・シークエンスでは、バトラーのカメラ美術とフィールズのカッティング・マジックの妙味が十二分に体験できます(拡大DVD-SHOT(1))。
 さて今回のHiVi-SHOWCASEでは、拡大DVD-SHOTを使いながら『ジョーズ』をもっと深く探求できるお話をしましょう。時間制約のない家庭劇場なら、 その探求・発見は容易なはずです。
 スピルバーグは、バトラーやフィールズのテクニックに支えられながら、特定の種類の状況に対してある様式的な決まりごとを残しています。75年までにはアナモフィック方式が望遠ショットにも使用できるようになって、幾つかのショット(アミティ島を訪れる観光客のショット等)でスピルバーグは、このレンズを使い正攻法で撮り上げています。
 しかし全編を通じて見えてくるもの、スピルバーグの広角レンズへの偏愛ぶりです(拡大DVD-SHOT(2))。室内ショットでは照明レベルが低いので、奥行のある場面はピントを甘くしています(拡大DVD-SHOT(3))。
 これが屋外ショットとなると、海面や砂浜からの反射光が利用できるため、広角レンズを使いながら40年代を偲ばせるローアングルでの“長廻し”を展開します(拡大DVD-SHOT(4))。このショットでブロディとフーパーは目障りな広告看板の前で市長と言い争います。興味深いのは、この“長廻し”広角ショットにおける、被写体(人物)のアクション。


(1) 口論の間に横並びの3人のうちフーパーは後ろに(看板近くまで)下がり、ブロディと市長の口論がショットのフロントラインを占めます。
(2)すぐにフーパーはブロディのところに戻り(前へ出る)、ブロディに「すぐに街を出るべきだ」と言います。
(3)市長が2人を無視し、一歩前に出るとカメラアングルは傾きをみせ、ブロディはフーパーを説得しようと後ろに(看板近くまで)下がります。
(4)2人は最後の説得を試むために、再び市長のところへ(前へ)歩み寄ります。しかし市長が一歩前へ出ていたため、3人は看板を隠すように横並びになります。
(5)ここでフーパーは鮫の大きさを注意するのですが、3人の立ち位置の合間から、鮫の恐怖を描いた巨大な看板がはみ出して構図レイアウトされています。
 ここで3人が看板を隠す構図にもかかわらず、3人の合間からはみ出した看板が鮫の巨大さを暗示し、看板に描かれた恐怖が強調されることになるわけです。『ジョーズ』には動のショットにも静のショットにも、こんな興味深い仕掛けが一杯です。クライマックスのショットも、レンズの効果を巧みに使い、編集の妙と相まって強烈なインパクトを与えています(拡大DVD-SHOT(5)拡大DVD-SHOT(6))。こういうショットの数々は、いずれは次世代DVDで味わい尽くしたいものですねぇ。
 “40年代を偲ばせる広角レンズによる演出手法”と前述しましたが、あたかもこの伝統に敬意を払うように、フーパーに船上である台詞を言わせます。鮫がオルカ号の近くまで来た時、ブロディーに船首のところで一歩下がるように頼みます。その台詞。
 「スケールを出すために、前景になにか欲しいんだ!」

 それでは次夜まで、おやすみなさいませ。良い夢を。

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