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澤里昌吉
ジャンケン娘のDVDレーベルとジャケット

第四回「ジャンケン娘」
今月の「まだ観ぬキミ」=HiVi編集部 たまさん

本作が“世紀の巨篇”というのはオーバーではない
ジャンケン娘のDVDジャケット
↑イーストマンカラー 総天然色の文字が躍るDVDのジャケット。公開当時のポスター、あるいはチラシをもとに製作したものだろう。「歌の中から飛んで出た七色の甘い恋」「二度とない張りきり3人娘の顔合せ」など、あらんばかりのキャッチコピーが並ぶ。この3人の組合せがいかに話題を集めるものだったかがうかがわれる

1955年といえば、すでにテレビ受像機は登場していたけれど、まだまだ高価すぎて一般家庭にまでは普及していなかった。映画スターの立ち振る舞いはスクリーンで接することが出来たけれど、歌手となると劇場での歌謡ショウでも見ないかぎり“動くお姿”は拝めなかった。SP盤のレコードやラジオの歌謡番組から流れてくる歌手の顔を知るのは、もっぱら「平凡」「明星」等の芸能月刊誌。両誌は床屋(理容室)や美容院や銭湯や医院の待合室に必ず置かれていた。そんな時代に美空ひばり、江利チエミ、雪村いづみの3人娘が映画で初顔合わせ。ヒットして当然だった。ひばり、チエミ、いづみは3人娘の元祖的存在。2代目は中尾ミエ、伊東ゆかり、園まり。山口百恵、桜田淳子、森昌子が3代目。ぼくの年齢に近いのは2代目だった。

一般的な認識でいうと、ひばりは歌謡曲、チエミはジャズ、いづみはポピュラーを得意としていた。もっとも、それはあくまでも出自であって、歌唱力のある3人はジャンルにとらわれない数々のヒットを飛ばした。そういえば、ひばりの復刻LPや紙ジャケット仕様のCDは、昨今、ひばりを知らぬ世代もターゲットであるとか。ひばりのジャズの巧さは知る人ぞ知るところだ。3大スターの共演映画ともなれば、その扱いに脚本家はアタマを悩ますはず。でも「ジャンケン娘」は巧みに3人の均衡を保っている。理由のひとつは持ち歌にあると思う。3人は劇中で自分の曲を唄うが、その曲数は同数。それぞれにヒット曲があるというのは、さすがビッグ・スターだ。

今回、あらためて観て笑ったのは、ひばりの役名が「ルリ」であること。だって片仮名ですよ。雰囲気からすると、いづみのほうが似合いそう。いづみは舞妓で「雛菊」、チエミは「由美」。しかし、まあ、いづみに舞妓役とはスゴイ発想だ。それはさておき、グループならまだしもスターの共演による映画なんて現在では不可能に近いだろうね。その意味では、謳い文句にもあるように本作が“世紀の巨篇”というのはオーバーではない。懐かしき哉、昭和。懐かしき哉、スター。本作がBDのパッケージソフトで登場するのは、いつのことやら。だから、貴重なDVDといえるかもしれない。キミのシステムで、昭和のスターを訪ねてみるのも楽しいと思うよ。

もう一度たまさんの頭の中に戻る

視聴風景
視聴機器
↑シネマ昭和館で取り上げる映画は、取材当日まで、対談相手となる若い編集者にも、WEB担当者にも知らされない。候補作品はすべて澤里さんのアタマのなかにある。毎月HiViを読んでいただいているみなさんも、初めて目にする作品ばかりなのではないだろうか
↑今回の視聴ディスプレイはブラウン管。とはいっても、家庭用ディスプレイはもうすべて薄型テレビになってしまっているため、長年HiVi視聴室のリファレンスとして使われているソニーの放送局用マスターモニターを持ち出した。依然、ブラウン管にしか出せない絵がある
※シネマ昭和館第四回の取材/原稿執筆は、2008年8月中旬に行なわれました。掲載が大幅に遅れましたことを深くお詫び申し上げます

【作品情報】
1955年度東宝作品
カラー スタンダードサイズ 本編92分
ドルビーデジタル モノラル

●原作・中野実
●監督・杉江敏男 脚本・八田尚之 撮影・完倉泰一
●出演 美空ひばり 江利チエミ 雪村いづみ 山田真二 江原達怡ほか
【あらすじ】
仲良し女子高生のルリ(美空ひばり)と由美(江利チエミ)は修学旅行先の京都で舞妓の雛菊(雪村いづみ)と知り合う。雛菊はお座敷で出会った大学生が忘れられずに上京してくる。わかっているのは“西北大学の斉藤”ということだけ。憧れの君は何処? ルリと由美が一肌脱ぐ。昭和12年生れの同い年、ひばり、チエミ、いづみの3人娘が初共演した青春ラブ・コメディの本作は、1955年に東宝の興行成績No.1を記録したヒット作品。憧れの大スターである3人娘が銀幕で歌い、踊り、演じる姿に観客は拍手喝采した。
【DVDソフト情報】
 
【過去の掲載分】
第一回 成瀬巳喜男「乱れる」
第二回 黒澤明「虎の尾を踏む男達」
第三回 久松静児「駅前飯店」