―日本時間1月14日 2:23受信― 麻倉怜士のCES2008リポート 最終便
なぜワーナー・ホームエンターテイメントはHD DVDを棄てたか?
なぜワーナー・ホームエンターテイメントはHD DVDを棄て、BD-ROMを排他的に選んだのだろうか。フォーマット戦争の行方を占う極めて重大な問題だ。CES後、ハリウッドのワーナー・ホームエンターテイメント本社で幹部にインタビューする予定だが、その前に、その理由をワーナーの声明を元に、これまでの数年に渡るワーナー取材のドキュメントも動員して分析してみた。
次世代DVDを単一規格化するためにとったワーナーの戦略的行動
まずワーナーのひじょうに強固な思いは「単一規格(シングル・フォーマット」だ。このことは以前から一貫している。ワーナーの声明には、こうある。
Jeff Bewkes, President and Chief Executive Officer, Time Warner Inc., the parent company of Warner Bros. Entertainment. “Today’s decision by Warner Bros. to distribute in a single format comes at the right time and is the best decision both for consumers and Time Warner.”
ワーナーが「単一規格」になっただけでなく、業界を単一規格化するためにとった極めて戦略的な行動が、今回のHD DVD廃止、BD-ROMに一本化なのである。この一年の市場の経験から、ソフトウエア販売は常に2:1でBD-ROMがHD DVDを上回っている。
次世代DVDを単一規格化するためにとったワーナーの戦略的行動
まずワーナーのひじょうに強固な思いは「単一規格(シングル・フォーマット」だ。このことは以前から一貫している。ワーナーの声明には、こうある。
Jeff Bewkes, President and Chief Executive Officer, Time Warner Inc., the parent company of Warner Bros. Entertainment. “Today’s decision by Warner Bros. to distribute in a single format comes at the right time and is the best decision both for consumers and Time Warner.”
ワーナーが「単一規格」になっただけでなく、業界を単一規格化するためにとった極めて戦略的な行動が、今回のHD DVD廃止、BD-ROMに一本化なのである。この一年の市場の経験から、ソフトウエア販売は常に2:1でBD-ROMがHD DVDを上回っている。
現在の多数派を圧倒的な多数派にする道を選んだワーナー
逆にもしBD-ROMを棄て、HD DVDを選んだら、両陣営はさらに拮抗することになり、消費者は、いったいどちらを選べばよいからわからない(つまりどちらがサバイバルするか分からない)から、買わないでおこうとする状態が、さらに悪化することになる。
だから、HD DVD一本化は絶対にありえなかった。

↑この表で分かるように、もしワーナーがHD DVDを選ぶと、HD DVD 41.2%、BD 50%と拮抗に近くなってしまう
ワーナーの声明にはBarry Meyer, chairman and CEO of Warner Brothersの言葉として、こうある。The window of opportunity for high-definition DVD could be missed if format confusion continues to linger.
だから、ワーナーは多数派のBDを選んで、現在の多数派を圧倒的な多数派にする道を選んだのである。そのためには自分としては少数派のHD DVDを棄てることが、戦略的に必要であった。単一規格でないと、次世代DVDは普及しないというワーナー論理から論を進めると、どうしてもこういう結論になる。
実は両方が均衡することを前提にしたメディアもワーナーは計画していた。昨年のCESで発表した「トータルHD」である。片面がBD-ROM、片面がHD DVDというシロモノ。なぜこんなものを発想したのかと、幹部に聞いた答えが「二つの勢力は拮抗すると見ています。すると、消費者にはどっちを買えばいいのかという困惑、自分の買ったフォーマットが負けてなくなるリスクがあります。それなら、両方の信号を持つディスクをつくれば混乱はないでしょう。店の展示面積も節約できますからね」。
しかし結局、いつでもBDの方がより多く売れている。つまり拮抗状態ではなかった。そこで、それを前提にしたトータルHDは中止。そして、BDを選んだ。
だから、HD DVD一本化は絶対にありえなかった。

↑この表で分かるように、もしワーナーがHD DVDを選ぶと、HD DVD 41.2%、BD 50%と拮抗に近くなってしまう
ワーナーの声明にはBarry Meyer, chairman and CEO of Warner Brothersの言葉として、こうある。The window of opportunity for high-definition DVD could be missed if format confusion continues to linger.
だから、ワーナーは多数派のBDを選んで、現在の多数派を圧倒的な多数派にする道を選んだのである。そのためには自分としては少数派のHD DVDを棄てることが、戦略的に必要であった。単一規格でないと、次世代DVDは普及しないというワーナー論理から論を進めると、どうしてもこういう結論になる。
実は両方が均衡することを前提にしたメディアもワーナーは計画していた。昨年のCESで発表した「トータルHD」である。片面がBD-ROM、片面がHD DVDというシロモノ。なぜこんなものを発想したのかと、幹部に聞いた答えが「二つの勢力は拮抗すると見ています。すると、消費者にはどっちを買えばいいのかという困惑、自分の買ったフォーマットが負けてなくなるリスクがあります。それなら、両方の信号を持つディスクをつくれば混乱はないでしょう。店の展示面積も節約できますからね」。
しかし結局、いつでもBDの方がより多く売れている。つまり拮抗状態ではなかった。そこで、それを前提にしたトータルHDは中止。そして、BDを選んだ。
完全に決着が付くまでは消費者は様子見を続ける?
東芝はHD DVDプレーヤーの方がたくさん売れているとする。また、HD DVDドライブを搭載したパソコンも売れているという。それならなぜ、ソフトウェアはBDの方がたくさん売れるのか。

↑次世代DVDハードウェア販売におけるブランド別シェア(東芝の記者会見資料映像より)
一つは、もちろん、この図にないソニーのプレイステーション3の力だ。もうひとつは98ドルという力づくの安価(昨年11月2日、ウォルマートでの東芝のプレーヤーの値付け)と5枚のおまけで衝動的に買うユーザーは、HD DVDソフトをどんどん買う熱心な層ではないということではないか。
ワーナーは、商戦の結果を慎重に見ていた。しかし、いつまでたっても、ソフトウェアの売り上げは、BD-ROMが優勢なままなのである。ハードのクリスマス商戦には、ソニーが次世代DVDカテゴリーで一位になり、BDプレーヤーが優位なことを証明した。
東芝はCESの記者会見で、これからもHD DVDで頑張ると言っている。しかし、ワーナーにしてみると、そんな姿勢こそが問題と映ったのではなかろうか。
もし、ここでBDのスタジオの多くがBDをやめて、東芝のHD DVDに排他的に参集するなら、それはそれで単一規格になる可能性がある。しかし、BDのスタジオの多くがBDをやめて、HD DVDに参集することなど、BDが多数派になった今、絶対に起こらない。ソニー・ピクチャーズ、ディズニー、20世紀フォックスはもとより筋金入りのBD信奉者であり、ワーナーはBDだけ選んだ。ワーナーを見ている、パラマウントはBDを選ぶ可能性が高い。
ワーナーがいうように「単一規格でないと、次世代DVDは普及しない」のなら、東芝がHD DVDをあくまでも頑張ることで、単一規格になる可能性が最も高いフォーマットの普及の足を引っ張る(常に一定のシェアをHD DVDが持ってしまい、消費者にどちらを選べばよいかの混乱を常に与える)状態が、いつまでも続くことになる。
業界からはHD DVDが完全になくならないと、消費者は様子見を続けるという意見も出てきた。BDだけになれば消費者は混乱なく、スムーズにDVDから次世代DVDに転換できるが、少しでもHD DVDが存在するならば、消費者の混乱は収まらないと言う見方だ。それが、ITメディアが伝えた「次世代DVD戦争はまだ続く――小売店の見解。Blu-ray優勢に傾いたとみられる次世代DVD戦争だが、小売業者は完全に決着が付くまでは消費者は様子見を続けると考えている(ロイター)」(2008年01月10日 11時40分 更新)。

↑次世代DVDハードウェア販売におけるブランド別シェア(東芝の記者会見資料映像より)
一つは、もちろん、この図にないソニーのプレイステーション3の力だ。もうひとつは98ドルという力づくの安価(昨年11月2日、ウォルマートでの東芝のプレーヤーの値付け)と5枚のおまけで衝動的に買うユーザーは、HD DVDソフトをどんどん買う熱心な層ではないということではないか。
ワーナーは、商戦の結果を慎重に見ていた。しかし、いつまでたっても、ソフトウェアの売り上げは、BD-ROMが優勢なままなのである。ハードのクリスマス商戦には、ソニーが次世代DVDカテゴリーで一位になり、BDプレーヤーが優位なことを証明した。
東芝はCESの記者会見で、これからもHD DVDで頑張ると言っている。しかし、ワーナーにしてみると、そんな姿勢こそが問題と映ったのではなかろうか。
もし、ここでBDのスタジオの多くがBDをやめて、東芝のHD DVDに排他的に参集するなら、それはそれで単一規格になる可能性がある。しかし、BDのスタジオの多くがBDをやめて、HD DVDに参集することなど、BDが多数派になった今、絶対に起こらない。ソニー・ピクチャーズ、ディズニー、20世紀フォックスはもとより筋金入りのBD信奉者であり、ワーナーはBDだけ選んだ。ワーナーを見ている、パラマウントはBDを選ぶ可能性が高い。
ワーナーがいうように「単一規格でないと、次世代DVDは普及しない」のなら、東芝がHD DVDをあくまでも頑張ることで、単一規格になる可能性が最も高いフォーマットの普及の足を引っ張る(常に一定のシェアをHD DVDが持ってしまい、消費者にどちらを選べばよいかの混乱を常に与える)状態が、いつまでも続くことになる。
業界からはHD DVDが完全になくならないと、消費者は様子見を続けるという意見も出てきた。BDだけになれば消費者は混乱なく、スムーズにDVDから次世代DVDに転換できるが、少しでもHD DVDが存在するならば、消費者の混乱は収まらないと言う見方だ。それが、ITメディアが伝えた「次世代DVD戦争はまだ続く――小売店の見解。Blu-ray優勢に傾いたとみられる次世代DVD戦争だが、小売業者は完全に決着が付くまでは消費者は様子見を続けると考えている(ロイター)」(2008年01月10日 11時40分 更新)。
BDだけの世界をつくらなければならないとワーナーは決断した
もうひとつ気をつけなければならないのは、IT系の攻勢。この混乱に乗じて、一挙に配信の世界に舞台を持っていこうという動きが出ている(「勝者はBlu-rayでもHD DVDでもなく、ハードディスク」--シーゲイトCEOが発言)。
そんな状況では、HD DVDは存在してはならないーワーナーの「単一規格」論をよくよく考えてみれば、衝撃的で悲しい結論が自ずから引き出される。筆者はBD-ROMもHD DVDもどちらも大好きだ。特に初期のワーナー・ホームエンターテイメントのHD DVDの「オペラ座の怪人」は素晴らしかった。東芝のスタッフも好きだ。だから論理的な必然とはいえ、こんな分析をしなければならないのは、とても残念だ。個人的にはぜひHD DVDにはこれからも力一杯頑張って欲しいと思っている。
しかし、アメリカでHDTVの次世代DVDを伸ばすには、それしかないとワーナーの行動は明快に示しているのである。
東芝は無駄なこだわりとメンツを棄てよ! とワーナーは、無言の強烈なメッセージを発した。そうでなければ、HD DVD陣営に決定的に打撃を与える、CESの開幕直前という時期に、「HD DVD撤退、BDだけ」を発表するなどの無茶は絶対にしない。HD DVDを徹底的に粉砕し、BDだけの世界をつくらなければならないとワーナーは決断したのであろう。
しかし東芝の立場になってみると、それはないぜ……である。これまで何のために一緒にやってきたのか。東芝とワーナーは1994年のDVD規格戦争で、共同戦線を張り、ソニー/フィリップス規格を撃退。次世代DVDでも当初はHD DVDだけ採用し、次世代DVDのしっかりとした世界をつくろうと言っていた。
05年正月のワーナー取材ではこんなことを言っていた。
「われわれは、BD-ROMの二層50GBディスクは、製造の問題からリアリティがないと見ています。するとBDの一層の25GBとHD DVDの二層の30GBの比較になります。新しいMPEG-4AVCハイプロファイルというコーデックを使えば、30GBで映画本編が三時間、サプルメントが三時間半、HDTVの画質で入ります。ワーナーの99%の作品は一枚でokです。これ以上、何が要ります?」(当時のマーケティング担当責任者)
だが今や、ワーナーはあなたがいない方が次世代DVDのためですよと問わず語りに言っているのである。
そんな状況では、HD DVDは存在してはならないーワーナーの「単一規格」論をよくよく考えてみれば、衝撃的で悲しい結論が自ずから引き出される。筆者はBD-ROMもHD DVDもどちらも大好きだ。特に初期のワーナー・ホームエンターテイメントのHD DVDの「オペラ座の怪人」は素晴らしかった。東芝のスタッフも好きだ。だから論理的な必然とはいえ、こんな分析をしなければならないのは、とても残念だ。個人的にはぜひHD DVDにはこれからも力一杯頑張って欲しいと思っている。
しかし、アメリカでHDTVの次世代DVDを伸ばすには、それしかないとワーナーの行動は明快に示しているのである。
東芝は無駄なこだわりとメンツを棄てよ! とワーナーは、無言の強烈なメッセージを発した。そうでなければ、HD DVD陣営に決定的に打撃を与える、CESの開幕直前という時期に、「HD DVD撤退、BDだけ」を発表するなどの無茶は絶対にしない。HD DVDを徹底的に粉砕し、BDだけの世界をつくらなければならないとワーナーは決断したのであろう。
しかし東芝の立場になってみると、それはないぜ……である。これまで何のために一緒にやってきたのか。東芝とワーナーは1994年のDVD規格戦争で、共同戦線を張り、ソニー/フィリップス規格を撃退。次世代DVDでも当初はHD DVDだけ採用し、次世代DVDのしっかりとした世界をつくろうと言っていた。
05年正月のワーナー取材ではこんなことを言っていた。
「われわれは、BD-ROMの二層50GBディスクは、製造の問題からリアリティがないと見ています。するとBDの一層の25GBとHD DVDの二層の30GBの比較になります。新しいMPEG-4AVCハイプロファイルというコーデックを使えば、30GBで映画本編が三時間、サプルメントが三時間半、HDTVの画質で入ります。ワーナーの99%の作品は一枚でokです。これ以上、何が要ります?」(当時のマーケティング担当責任者)
だが今や、ワーナーはあなたがいない方が次世代DVDのためですよと問わず語りに言っているのである。
これからどうするべきか。バトンは東芝に渡った
この痛烈先制パンチのおかげで、CESでのHD DVD陣営は大混乱であった。私も彼らへの取材が一切、拒否され、大いに打撃を受けた。偶然、CES会場でHD DVD陣営の最高幹部にお会いしたが、疲労が顔に蓄積していた。
バトンは遂に、東芝に渡った。
バトンは遂に、東芝に渡った。
2008年1月15日
麻倉怜士(文・写真)






















メルマガ登録
HiVi WEB内 記事検索(by
)
月刊HiVi 記事検索













