ハイファイオーディオの未来を示唆するLINN KLIMAX/AKURATE DS。
その設計思想はオープン。果してサウンドクォリティは?

家庭内ネットワークと連結してデジタル音楽データをオーディオアンプに受け渡すDS

●KLIMAX DS/AKURATE DS
モデル名 価格 発売日 対応音声フォーマット 質量 フィニッシュ
KLIMAX DS 2,940,000円 発売中 FLAC/WAV 10kg シルバー
AKURATE DS 892,500円 発売中 FLAC/WAV/MP3 4.2kg シルバー/ブラック

 リンジャパンは、先頃発売を開始したネットワーク型ハイファイオーディオデータプレーヤーAKURATE DS(アキュレイト ディーエス)、先行して発売されていたKLIMAX DS(クライマックス ディーエス)のスペシャルプレゼンテーションを開催した。ここでは、その場で明らかになったリン DSシリーズの詳細と、実際に聴かせていただいた音の印象をお伝えしたい。

 会場となった都内ホテルのスゥイートルームには、今回のプレゼンテーションに合せて、スコットランド本国から、新ジャンルのオーディオ製品開発における技術責任者であるGilad Tiefenbrun(ギラード・ティーフェンブルン)氏も来日しており、これまで謎の多かったDSの詳細が明らかにされた。

 まず、KLIMAX DS、AKURATE DSがいったいどういうオーディオコンポーネントなのかをカンタンにご説明しておこう。話の枝葉をばっさり落して、誤解を恐れずにお伝えするとすれば、それは家庭内ネットワーク(LAN)で結ばれたCDトランスポートとD/Aコンバーターにたとえられるかもしれない。DSはここでいうD/Aコンバーター。ではCDトランスポートは何か? といえば、それは家庭内ネットワークに接続されたLAN接続型ハードディスクドライブである。最近では、ネットワークに連結したデータ保存機器をネットワーク・アタッチメント・ストレージ(=NAS、ナスあるいはナズ)と呼ぶことが多いようだ。

 NASには、同じ家庭内ネットワークに接続されたパソコンによってCDから吸い上げられたデジタル音楽データ、あるいはダウンロードされたデジタル音楽データがストックされる。その再生は、同じネットワーク上のパソコンにインストールされたインターフェイス用ソフトウェアより指示を出すことで実行されるしくみ。すると、指定された曲のデジタル音楽データが家庭内ネットワーク上を伝わり、DSに入力され、アナログ変換後、外部のオーディオアンプへと送出されるというわけである。イーサネット規格による家庭内ネットワークに組み込まれることから、ハブあるいはDHCPサーバーが必要で、DSにもIPアドレスが割り当てられるのは一般的なLAN接続の流儀そのままである。もちろん無線LANへと拡張することも可能(下欄の接続イメージ図参照)。

デジタルミュージックプレーヤーのサウンドは、CDプレーヤーのそれを上回る合理的な理由がある

 ここまでお読みになった方のなかには、似たようなネットワーク対応オーディオシステムは他にもあるのではないか? と思われた方もいらっしゃることだろう。音楽データのダウンロードによって楽曲を入手する方法が一般化したこんにち、それはそれほどめずらしいタイプのオーディオ再生装置ではない。では、このDSならではの特徴はいったいどこにあるのだろうか? 説明会にて配布された資料のことばを借りれば、それは『「音楽」に近づくために徹底されたこだわり』ということになるだろう。とかくハンドリングの手軽さばかりがクローズアップされがちなネットワークオーディオだが、DSはその手軽さに加えて、徹底的に高音質にこだわったというわけなのである。

 前出のギラード氏はこう語る。

「KLIMAX DS、そしてAKURATE DSが高音質である、
ということにはいくつかの技術的な裏付けがあります。
ひとつめは、音楽を途切れさせてはならないCDとは異なり、
時間をかけてじっくりと正確なデジタルデータの読出しができること。
ふたつめは、ディスクドライブなどのメカニズムとして可動する部分や
レーザーダイオードなどを持たないことによる、
熱変動や機械振動、ノイズ輻射の少なさです」


 たしかに、音楽をとぎれさせてはいけないCDプレーヤーの場合、いくらかのバッファーメモリーを与えられているにせよ、ピット上に刻まれたデジタルデータの読込み直しには限界がある。その点、パソコンのアプリケーションにて行なうリッピング作業なら、ソフトウェアまかせで何度もリトライできるわけで、より忠実なデジタルデータが確保できるわけだ。もちろん、パソコンにて一般的に行なわれているリッピング作業のような48倍速などの高速読出しは行なわず、等倍速以下まで効率は落されるが……。先述のギラード氏によれば、現代の最新CDプレーヤー/トランスポーターをもってしても、CDに刻まれた信号のすべてを読み出せているわけではないという。つまり、CDの誕生から20年を経たこんにちでも、私たちはディスクに刻まれたすべての音を聴くことはできていないのだ。

 この点について、ギラード氏はこんなことも言っていた。

「リンは、レコードプレーヤーのLP12を世に送りだした1972年以来、
音楽再生に対する考え方や理念はまったくかわっていません。
LP12では、レコードの音溝に刻まれた信号をあますことなくピックアップしたい、
というのが設計者、技術者たちの願いでした。
それと同じことが、2008年の今、このDSシリーズにも当てはまるのです」


 そうしてえられた結果は、高級なCDプレーヤーを使ってディスクそのものを聴くより、定められた手順によってハードディスクに吸い上げたデジタルデータをDSにて聴く方が音がよい、というにわかには信じられないものとなったという。

日本ではなじみ薄いが、リンのコンセプトにぴたり合致したFLACという圧縮規格

 ここで、KLIMAX DS/AKURATE DSにて現在再生できる音楽ファイルのフォーマットについて触れておく必要があるだろう。具体的には冒頭の一覧表のようになるが、リンでは次の3つの点でFLACの使用を推奨しているという。
  • 音質がよいこと
  • アーキテクチャーがオープンであること
  • 楽曲の詳細を格納するtag情報に長期にわたる互換性が確保されていること

 FLACとはフリー・ロスレス・オーディオ・コーデックの略で、日本国内ではあまりなじみのない音声圧縮フォーマットである。その名の通り、使用が自由で、そのソースが公開されていることが特徴。コーデックを経てもデータに変化のない可逆圧縮である。ギラード氏は、大きな企業が開発したコーデックの場合、その企業側の都合で、規格が変ってしまうことがあり、長期に渡る再生保証ができないことがひとつの問題であると語っていた。

 このFLACに対応するリッピング(吸上げ)ソフトは、そのホームページから無料でダウンロードできる他、両DSにも付属しているとのこと。また、そうしたアプリケーションを使って音楽CDからパソコンのハードディスクあるいはNASにデータをコピーする作業は、これまで一般的に行なわれてきたそれとは違い、ドライブの速度とはほぼ関係なく、相応の時間が必要であることを了解しておかなければならない。それは、CDのピットをもれなく救い上げようという意図からくるものであり、一定範囲に収まるまで、トレース作業が繰り返されるためである。

 なお、現状ではiTuneのライブラリーにあるデジタル音源(AACファイル)の再生はできないが、マーケットからの要求を受けて、対応する予定(MP3、AAC、WMAフォーマットなどを検討しているという)。ソフトウェア面における技術的可能性は幅広く、DSはネットワークや記録メディアを使ったアップデートなども容易とのことであった。

本国のLINN RECORDSのサイトからはスタジオマスタークォリティの音源も入手できる

 今回の説明会では、主にKLIMAX DSと、同じリンの高級CDプレーヤーAKURATE CDとの間で比較視聴が行なわれた。素材は同じ1枚のCD。AKURATE CDではそれをそのまま再生し、DSでは、事前に同じCDから取り込まれたFLACファイル(NASに保存)を再生した。ちなみにDSでは、信号の演算処理の過程でアップサンプリングされているという。

 両プレーヤーからのアナログ出力は、KLIMAX KONTROL+KLIMAX SOLOというセパレートアンプ、そしてKOMRIというフラッグシップスピーカーで再生されたわけだが、この両者の音の違いはたいへん興味深いものであった。AKURATE CDの再生音に比較すると、DSではやや音量があがったかのような印象をまず受ける。もちろん、両者間の物理的な音量レベルは揃えてあるのだが……。そして、楽器やヴォーカルにまとわりつく音の響きが、それらからすっと解き放たれるかのように感じられるのだ。AKURATE CDといえば、すでにその高音質には定評のあるモデル。だがこのKLIMAX DSは、そのサウンドを上回ってしまっている。

 リンは本国のWEBサイトにて、LINN RECORDSとして、高音質なデジタル楽曲をダウンロード販売中。それはたとえば、FLAC 24ビット/88.2kHz(2,758.5MB)というようなスペックを持ち「スタジオマスター」であることを高らかにうたっている。そうした楽曲はこの日の視聴でも披露され、CDという流通媒体の呪縛から解放された、とてもすがすがしい音を楽しませてくれた。

 ちなみに、先行モデルたるKLIMAX DSに対する新製品AKURATE DSの違いは、上記表にある再生可能フォーマット、その筐体設計、シャーシ、そしてアナログフィルターのデザイン(つまり音の傾向が違う)とのことであった。したがって、中枢となる回路基板/ソフトウェアなどはほぼ同一とみてよいだろう。

DSとはデジタルストリーミングの意味。それは音楽鑑賞のメインストリームになるだろうか

 最後に多くの時間が割かれたディスカッションの場では、この説明会に同席された月刊HiVi執筆陣のひとりである、和田博巳さんの質問に答えるカタチで次のような意図の発言を行なっている。

「おっしゃるとおり、この先5年後、あるいは3年後、
もしかすると音楽のメインソースの座にCDはいないかもしれません。
そのとき、私たちがいま提案しているプランが
たくさんのひとびとに支持されていることを信じています。
おそらく、そういう時代がくるまでに
10年はかからないのではないでしょうか」


 リンジャパンでは、今年、このDSシリーズの販売に大きな力を注ぐという。そのサウンドクォリティ、気になる方は、ぜひ全国のリン取扱いディーラー/ショップへ問い合せてみてほしい。チャンスがあれば、その音を体験することをおすすめする。  
2008年2月5日
メディアマーケティング部・K

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