「イングロリアス・バスターズ」で
タランティーノ×ブラピが夢のタッグ!

タランティーノ×ブラッド・ピット、「イングロリアス・バスターズ」でナチス映画に挑戦

 昨日11月4日、東京・六本木のザ・リッツ・カールトン東京にて、「イングロリアス・バスターズ」の来日記者会見が開かれた。登壇したのは、監督のクエンティン・タランティーノ以下、ブラッド・ピット、メラニー・ロラン、ジュリー・ドレフュスの4人。タランティーノとブラッド・ピットの組合せで、おまけに舞台はナチス占領下のフランスという要素に興味を引かれるからか、映画は世界各国で大ヒット。タランティーノ監督作の中でも、「パルプ・フィクション」や「キル・ビル」を上回る興行収入No.1となった。

 会見の冒頭、挨拶を終えたクエンティン・タランティーノは、突然「スーパークール!!」と叫んで報道陣を笑わせる。そして、日本在住で、NHK教育の「フランス語講座」にも出演していたジュリー・ドレフュスが完璧な敬語で挨拶すると、報道席から拍手とどよめきが。映画同様、ハイテンションでのスタートとなった。

ハリウッドで神話化していた“タランティーノの戦争映画”

 タイトルにもなっている「イングロリアス・バスターズ」(名誉なき野郎ども)は、第二次世界大戦時の連合軍が結成した、極秘部隊の名称。映画は、ナチスに家族を殺されて復讐を企む女性、“ナチス兵の頭の皮を100人分剥ぐ”という命令を実行するバスターズ、“ユダヤ・ハンター”の異名を持つナチスの大佐など、複数の人物に焦点を当てている。群像劇、復讐、バイオレンス、残虐だけど痛快……といったタランティーノ節が全開だ。言うまでもないが、実話にはまったく基いていない。

「何でタラちゃんがナチス映画を?」というのは、誰しもに共通した疑問だと思うが、“単純に戦争映画が好きだから、自分のバージョンのものを作りたい”というところからスタートしたそう。「戦争映画の中でも、野郎どもが指令を元に何かをする、っていうタイプの作品が好きなんだ。だから、そんな作品にしようと脚本を書き始めて、キャラクターを追求していく過程で時代的な意味や重みが付いて来る。だけど、自分で“これはこういう作品だったんだ”とわかるのは、完成した映画を観てからなんだよ」と語る。

 タランティーノが脚本を書き始めたのは10年前。ブラッド・ピット曰く、「“タランティーノが第二次世界大戦の映画を作る”という噂はハリウッド中に流れていて、僕が聞いたのは8年前。もう、ほとんど神話みたいになってた」。「それが、まさか自分のところに話が来るなんて! しかも、アルド・レイン中尉の役は、もともと彼が自分のために書いたんだ。それを僕に譲ってくれたから感動しちゃって、シナリオをなるべく変えないように役を作っていったよ」とのこと。タランティーノは、「アルド・レインは最初からいた登場人物で、あて書き(役者を想定して脚本を書くこと)はしていないんだ。去年いよいよ真剣に脱稿しようと思ったとき、初めて俳優のことを考えてね。すぐにブラッドの顔が浮かんで、完璧にイメージができちゃったんだよ。でも、彼は世界最大の映画スターだから(と言われ照れるブラピ)、断られるんじゃって不安もあったんだよね」と話した。

「面白さタランかったら全額返金しバスターズ!!」って……

「イングロリアス・バスターズ」の中で使われる言葉は、フランス語、ドイツ語、英語、イタリア語と実に様々。“ナチスが登場するのになぜかすべて英語”という、よくある悲しい事態にはなっていない。それどころか、言語は劇中の重要なキーでもある。それだけに、キャスティングは難航したようだ。

 メラニー・ロランが演じるショシャナ・ドレフュスは、ナチスに復讐を使う女性。ブラッド・ピットのアルド・レインと同じく、10年間タランティーノが温めてきたキャラクターだ。この役は、“フランス語ができること”と“ユダヤ系であること”が条件になる。「僕はフランスで誰がユダヤ系なのかすら知らないから、脱稿するまで役者のことは考えないようにしたんだ」とタランティーノ。「メラニーは最初のオーディションではちょっとぎこちなかったんだけど(笑)、彼女には何かあると思ったんだよね。それで、相手役のダニエル・ブリュールと一緒に演技をしてもらったら、絵が1942年のMGMスタジオ作品みたいにゴージャスなんだ! そのあと彼女の出演作を観て、“彼女は感じていることを観客に伝えられる役者だ”と思った。その瞬間に受話器を手に取ってたよ」という。

 ジュリー・ドレフュスは、「キル・ビル」に続いて、2作目のタランティーノ作品出演となる。彼女のフランチェスカ・モンディーノ役は、あて書きされた数少ない役だったそう。出演交渉の際、こんな面白い会話があったらしい。
「今度こういう映画を撮るから、もしよかったら脚本を読んでみて」
「えー! 読まなくても、私何でもやりますから」
「いやいや。ちょっとしたチャレンジも入ってるし、ちゃんと読んでみてから返事をして」
 このエピソードを披露したジュリーは、「こんなふうに話をいただいて、一応私もタランティーノファミリーに入っているのかな〜? って。ラッキー!」とガッツポーズして、報道陣を笑わせる。タランティーノも「ジュリーはもちろんファミリーだよ!」とにこにこ。すでに映画界でのポジションを確立している監督なのに、今も変らず、腰が低くて陽気な人のようだ。

 さて、すでにCMでも流れている通り、この映画は11月20日(金)〜23日(月)の4日間、前代未聞の全額返金キャンペーンを実施する。その名も「面白さタランかったら全額返金しバスターズ!!」。……って、これ誰が考えたんでしょう。

 それはさておき、配給会社からこのアイディアを聞いたタランティーノは「“僕の作品を60分だけ観て出るなんて! ぜひやってやろうじゃないか”と思ったよ」と、不適な笑みで告白した。そして、「もし60分で出たい方、どーぞ出てください。残った方々と楽しくやりますから!」と高笑い。このキャンペーンのことは、会見前に待機していた報道陣の間でも話題に上っていた。最終的に“作品に自信があるからこそ、こんな思い切ったことができるのだろう”という意見で一致。実際、すでに観た人の評判はすこぶるよかった。ちなみに返金にはいろいろと条件があるので、詳しくは上記リンクからご確認を。

レッドカーペットならぬ、イエローカーペットの謎

 記者会見のあと、東京・有楽町の東京国際フォーラムに場所を移し、ジャパンプレミアが行なわれた。舞台挨拶と本編上映の前には、カーペットイベントを実施。地面には、なぜかレッドカーペットならぬイエローカーペットが敷かれている。なぜイエロー? どなたかわかる方、教えてください!

 寒空の下、限定100名のファンに加え、会場に入りきれなかった800名以上が地上広場に詰め掛けた。イベントに登場するのは、会見と同じ4人。ファンの声援に応え、握手をしたり一緒に写真に収まったりプレゼントを渡されたり。タランティーノは、なんと「先にファンのところを回るよ! 後で戻ってくるから!!」と、報道陣のフォトセッションをすっ飛ばして、ファンのところへ行ってしまった。会見でのジュリーの話に続き、人柄が垣間見えた瞬間だった。

舞台挨拶にて、ブラピから「前編作って!」のリクエストあり

 この作品は、半分以上の国で今年8月に公開されており、まだ公開前なのは日本だけ。たっぷりのファンサービスを終えて舞台に登場したタランティーノは、「偶然日本が世界最後の公開になったけど、こうやってキャストと一緒に最後の花火を打ち上げられるよ!」と挨拶。そして、まるでプロレスの選手入場のように派手なコールでキャストを迎え入れる。中でもやはり、最後に登場したブラピは特別。「レディースアンドジェントルメン! ボーイズ、アンドガーールズ! ブラーーーーーーーーーーーーーーッド!」と、よく息が続くなと感心するほどの声の伸び。大興奮の観客に迎えられてステージに登場したブラピは、「これは本当にスペシャルな映画だから!」とアピールした。さらに、タランティーノ映画の魅力を聞かれ、「観客の心に訴えること、セリフが磨かれていること、血がドバドバ出ること!」と、客席の笑いを誘う。「できれば続編じゃなくて、前編を作ってほしいね」というリクエストまで飛び出した。

 メラニーは「友達に“東京へ行く”って話したら、“きっと素晴らしいよ”ってみんなに言われたの。実際に来てみたら、想像を超えていたわ! しかも、初めての東京がタランティーノの映画でなんて、本当に嬉しい。多くのフランスの俳優・女優はハリウッドでのデビューを願っているけど、私はタランティーノと仕事できれば、他はどうでもいいの」と、ブラピに続いて会場を笑わせていた。最後にジュリーが「こんばんは。お越しいただいてありがとうございます」と挨拶すると、観客から「おおおおおー」という感嘆が。やはり、外国の方が流暢な日本語を話してくれると嬉しいようだ。「『キル・ビル』に続いてタランティーノから役をいただけるなんて、すごい贈り物です。心から感謝してます」と、もちろん日本語で語っていた。

 世界に引き続き、日本でも大ヒットをマークできるだろうか。キャンペーンの動向も含め、今後が気になる作品がまもなく登場する。「イングロリアス・バスターズ」は11月20日(金)より公開。


監督・脚本:クエンティン・タランティーノ
出演:ブラッド・ピット/メラニー・ロラン/クリストフ・ヴァルツ/ダニエル・ブリュール/ダイアン・クルーガー/ジュリー・ドレフュス/マイク・マイヤーズ
原題:Inglorious Basterds
配給:東宝東和
スコープ・サイズ/ドルビーSRD/アメリカ/2時間32分
2009年10月より TOHOシネマズ日劇他にて全国ロードショー


2009年11月5日
映画コラムニスト 鈴木晴子

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最終更新 11.12.20 15:43

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