最新作はドルビー7.1ch+3D!
「トイ・ストーリー3」にどっぷり浸かる

あれから14年。最新作は3D版/2D版で上映!

 1996年、おそらくは5月1日か6月1日。私はその日友人と一緒に、大宮駅近辺の映画館をはしごしていた。お目当ての作品は「ベイブ」、「陽のあたる教室」、「トイ・ストーリー」。鑑賞順は左に書いた通りで間違いないはずだ。そして“まぁ観てみてもいいか”という程度で鑑賞したラストの「トイ・ストーリー」が、3本の中で図抜けて面白かったのを憶えている。あれから14年、シリーズの最新作が、3D版/2D版の上映となって帰って来た。

 ちなみに「ベイブ」と「トイ・ストーリー」は、大宮ハタシネマという映画館で観た記憶がある。この記事を書くにあたって映画館名を検索し、当時大宮駅前にあった映画館がすべて閉館していたことを知った。シネコン隆盛の今、こういう展開になることはうすうす予想できたとはいえ、いろいろお世話になった身としてはやはり悲しい。

 あの頃のような“町の映画館”が今まだ存在していても、多分2D版での上映になるのではないだろうか。「トイ・ストーリー」のときは固い椅子で腰を痛くしながらウッディやバズ(作中に登場するおもちゃ)の冒険を眺めていたのに、今回の「トイ・ストーリー3」の3D版に行こうと思えば、シネコンで背もたれが頭まである椅子に座り、悠然と観ることになるのだろう。今のほうがもちろん快適なのだが、どこかで味気ないなぁと思う自分もいたりする。

 思い出話のついでにもうひとつ言えば、上記の3本を観た日は、まずサービスデーだったに違いない。当時はレディースデーなどというものはなく、割引料金で観られる日は毎月1日だけだった、ような気がする。「ベイブ」の公開日が1996年3月9日、「トイ・ストーリー」が3月23日、「陽のあたる教室」が4月27日。当時の自分は通常料金で映画を3本もはしごできるような身分ではなかったので(それは今でもだが)、きっとそのあたりの1日の日に観たんだろう。という短絡的な考えで「5月1日か6月1日」と書いたわけだ。もっとも、サービスデーの記憶自体が間違っているかもしれないが。

 と、どうでもいい話をだらだらと語ってしまった。この「トイ・ストーリー3」の物語の核を成すのは“変りゆくものへの切なさや悲しさ”なので、まったく無関係でもないか、と許していただければ幸いだ。

アンディが大きくなることは、「トイ・ストーリー2」のときからわかっていた

 さて。本作を観る前は、できれば「トイ・ストーリー」と「トイ・ストーリー2」を観ておきたい。特に「2」でウッディの行なう“選択”は、この「3」に大きく関わってくる。持ち主のアンディがいつか大きくなることは、彼が8歳のあのときからわかっていた。わかっていて決めたことだけど、でも――という、どうすることもできないジレンマにウッディは陥る。そこへ、ちょっとした行き違いから誤解が生じ、おもちゃたちは「アンディに捨てられた、裏切られた」と怒り出してしまい……。

 この作品が語りかけてくるテーマは、そのまま実生活にも通じる。どんなに楽しい時間でも、それが永遠に続くことはあり得ない。むしろ、楽しいからこそ終わりがつらくなる。失いたくないと思う。しがみつきたくなる。それでも、そのときは容赦なくやってきてしまうのだ。例えば仲良しだった友達が転校していったとき、学校を卒業するときなど、思い返せば誰にでもそんな瞬間があったのではないだろうか。もちろん、自分自身にも思い当たることがある。

 大学卒業を目前に控えた頃、今まで過ごしてきた友人たちと離れるのがとても悲しかった。でも、そのとき仲間うちで話していたのは、「終わりがあるから、今が楽しいんだ」ということ。この時間が死ぬまで続くなら、楽しさに気づくことすらないのかもしれない。きちんと区切りを付けた私たちは、また次のステージへと進んでいく。

ピクサーが仕掛ける、大人向けのアニメ

「トイ・ストーリー3」の中で、登場するおもちゃたちの行動は2つに分かれる。ありのままを受け入れ、向き合おうとするグループ。現実から目をそらし、憎しみを募らせていくグループ。どちらを選択するかは本人次第だが、負の感情からは何も生れず、いつまでも自分が苦しむだけだ。

 そういう、人が成長していく上でぶつかる壁や感情を、“おもちゃ”というツールを使ってさりげなく、でも存分に表現するピクサーの手腕には、毎回脱帽させられる。わははと笑い、彼らの冒険に手に汗握り、ふと気づけばその世界に夢中だ。そして、自分はこういうときどう思ったんだっけ、などと考えている。しっかりとした脚本やおもちゃたちの豊かな感情などをみるにつけ、これはやっぱり“大人向けのアニメ”なんだなと思う。どっぷりと作品に浸り、最後はさわやかな涙を流す1時間43分。幸せな時間だった。

7.1ch+3Dが、「トイ・ストーリー」の世界を存分に引き出す

 ところで本作は、ドルビーサラウンド7.1chということでも話題になっている。ドルビーでもかなり気合を入れて宣伝しているようだが、偶然にも5.1chの2D字幕版、7.1chの3D吹替版の両方を鑑賞する機会に恵まれた。しかも、1回目の2D版はディズニー試写室の1列目の中央、2回目の吹替版は同じ試写室2列目の中央と、ほぼ同じ条件だったので比較もしやすい。

 7.1ch版では、最初のドルビーのロゴが映し出された段階で「おぉっ」と思った。前回とは、明らかに音の包囲感が違う。本編に入っても、低音が足にびりびりと迫ってくる感覚だ。また、映像に関しても「やっぱり実写よりも、CGアニメのほうが3Dに向くな」としみじみ感心した。奥行が自然で、違和感を感じさせない。上記でも少し触れたが、「トイ・ストーリー」シリーズといえば、おもちゃたちの大冒険が大きな見どころのひとつ。普段は「絶対に3D上映じゃないと嫌だ!」と考えるタイプではないのだが、立体映像と7.1chがもたらす臨場感は、とてもこの映画に向いているように感じた。

 個人的に、大満足だった「トイ・ストーリー3」。公開は7月10日、109シネマズ川崎/菖蒲/名古屋/箕面のIMAXデジタルシアターでも上映される。この夏は、ウッディとバズ、そしてその仲間たちに会いに行こう!

監督:リー・アンクリッチ
声の出演:<日本語吹替版> 唐沢寿明/所ジョージ <字幕スーパー版>トム・ハンクス/ティム・アレン
製作総指揮:ジョン・ラセター
製作:ダーラ・K・アンダーソン
音楽:ランディ・ニューマン
2010年/アメリカ/ドルビーSRD-EX/ビスタ/1時間43分(短編「デイ&ナイト」6分)
7月10日(土)全国ロードショー
(C)DISNEY/PIXAR


2010年7月9日
(映画コラムニスト 鈴木晴子)

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最終更新 11.12.20 15:43

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