第5回(前編) パナソニック DVDプレーヤー DVD-H1000
プログレッシブの先駆者
グランプリの狭間に埋もれた
パナソニックの隠れた銘機
グランプリの狭間に埋もれた
パナソニックの隠れた銘機
いまとなってはDVDのプログレッシブの映像出力(480p出力)はごく普通のフィーチャーとなったが、1996年に登場した松下電器、東芝のDVDプレーヤーの初代モデルは、どれもインターレース出力に限定されていた。スクイーズ収録によって垂直方向の解像度は向上したわけだが、3管式プロジェクターによる100インチ級の大画面表示になると、480本の走査線を60分の1秒間隔で半分づつ交互に再現するインターレース映像は、どうしても走査線の影が目立ち、チラツキも気になりやすい。この問題を初めて解消してくれたのが、480本の走査線を一気に書き出すプログレッシブ表示(480p)出力を装備したDVD-H1000だったのである。
【製品スペック】
パナソニック DVDプレーヤー DVD-H1000
パナソニック DVDプレーヤー DVD-H1000


↑上下に並ぶ2組のコンポーネント端子のうち、上がプログレッシブ信号専用の出力端子。電源のインレットは、中央に配される。
●映像信号:色差コンポーネント水平走査周波数31.5kHz(プログレッシブ)、水平走査周波数15.75kHz(インターレース)●音声信号:ステレオアナログ、リニアPCMデジタル(48kHz/16ビット以下)、ドルビーデジタル、DTS●再生可能ディスク:DVD-VIDEO、CD-DA、ビデオCD●接続端子:色差コンポーネント出力2系統、S端子出力2系統、コンポジット出力1系統、RCAアナログアンバランス出力2系統、デジタル音声出力3系統(光×1、同軸×2)●寸法/質量:W430×H112.5×D391mm/約16.6kg
当時、SD映像(480i)のプログレッシブ変換は、高度な動き検出回路を搭載し、動画部分は上下の走査線情報から、静止画分については1つ前のフィールドと重ね合わせて、走査線525p画像を作りだすというシステムが一般的だった。この技術は徐々に完成度を高め、MUSE対応のハイビジョンテレビなど一部の高級テレビで実用化されていたが、動き検出の誤動作から完全に逃れるのは困難で、インターレースの通常のカメラで捉えた映像を扱うかぎり、静止画処理できる範囲にも限界がある。不自然なボケが生じたり、映像に繊細さが不足したり、どうしても補間による副作用から逃れられないのが実情だった。
もともとインターレースで収録されるビデオ映像については、この問題はいつまでもついてまわることになるが、映画を中心としたフィルム収録の映像であれば、完全なプログレッシブ映像を作りだせる可能性がある。DVD-H1000では、フィルム素材のソフトに限り、常時全画面静止画像として補間処理し、不自然なボケのない480pの映像信号を出力するという難題にチャレンジしたのである。
強靭なシャーシで
画と音を支える
画と音を支える
では、完全なプログレッシブ映像はいかに作りだされたのか。もともと映画は1秒間に24コマのフィルムとして撮影されるわけだが、これをテレシネ変換する場合、1コマ目を2回、2コマ目を3回、3コマ目を2回、4コマ目を3回、……といった具合に写して、時間のズレを吸収している。つまりそこにはオリジナルの秒24コマの情報が隠されていることになる。
しかもDVDの映画ソフトの場合、PFF(Progressive Flame Flag)、RFFF(Repeat First Field Flag )という2種類のMPEGフラッグが立つため、テレシネ前の1コマ、1コマのフィルム情報を確実に取り出すことが可能。そこからダイレクトにプログレッシブ画像を作りだし、1コマ目を2回、2コマ目を3回、3コマ目を2回、4コマ目を3回、……といった具合に送りだすことによって、完璧な480p出力が実現するという仕組みだ。
【映像処理技術】

↑映像回路基板。8ビットデータの10ビット処理、ガンマ補正などを行なう

↑ジェネシス社製LSI。DVDのデジタル信号をアナログのプログレッシブ信号に変換する
実はこのDVD-H1000が登場する数年前に、同様のシステムを採用していた映像プロセッサー(ラインダブラー)が存在していた。そう、米国のベンチャーブランド、ファロージャである。当時、ラインダブラーの場合、アナログの映像信号を受けて、その画像内容から2-3のプルダウンを検出しなければならなかったため、誤動作も散見されたが、3管式プロジェクターと組み合わせた時の効果は絶大。まさにスクリーン上にフィルム画像が映し出されるイメージで、我々のような3管式ユーザーにとってまさに憧れのマシンだった。価格は数百万円。
当時、ブランドイメージにも圧倒的なものがあったが、DVDプログレッシブの普及が進むにつれて、その輝きは衰え、軌道修正が強いられることになる。現在は米国ジェネシスに買収され、ICでの供給がビジネスの主流になりつつあるが、システム価格が10万ドルという物件も珍しくない北米のカスタムインストーラー市場では、現在もまだ高級ラインダブラーを供給し続けているという。
【DVD-H1000の内部構造】

↑中央が電源とドライブ、左がオーディオ回路、右がビデオ回路

↑各回路ごとにブロック化。アルミダイキャストシャーシは、平均3〜4mm厚
話を戻そう。DVD-H1000はどんなプレーヤーだったのか。まず外観は高級CDプレーヤーを思わせる風格のある仕上がり。シャンペンゴールドのフロントパネルは、7mm厚のアルミ押し出し材で、主電源、再生、早送りなど各種操作ボタンについてもすべてアルミの無垢材というこだわりようだ。
メカニズム、回路基板を収容するシャーシもアルミダイキャスト製。アルミは非磁性で電気抵抗が少ないために、シャーシ内に電位差が生じづらく、安定したグラウンドレベルが確保できる。今回はメカニズムユニット、オーディオ基板、メイン基板、プログレッシブ基板などが独立したブロックに分割配置できるように、8ブロックの独立コンストラクションとしていた。
シャーシ底部は1.6mm厚鋼板3枚による積層構造として、トップパネルについては3.2mm厚の重量級鋼板で構成。それぞれアルミダイキャストシャーシに強固に固定され、異なる素材の組合せによって共振ピークを分散する。動作時における筐体の振動は、それがたとえ微小なレベルであろうとアナログ回路でのノイズを誘発し、本質的なクォリティを損ねる原因となる。その元凶を川上でシャットアウトしてして、高純度の映像信号、音声信号を送りだすというのがDVD-H1000のシャーシ設計の考え方だ。
オーディオビジュアル評論家 藤原陽祐











