第5回(後編) パナソニック DVDプレーヤー DVD-H1000
プログレッシブ処理の心臓部
色表現の僅かな差も譲れない
色表現の僅かな差も譲れない
頑強なシャーシに収められる映像、オーディオ回路からも、最高峰を目指そうという技術者たちの意気込みが見て取れる。まず映像系だが、注目はやはりプログレッシブ生成だろう。フィルム素材は秒24コマの元の情報から、そしてビデオ収録素材は、垂直方向と時間軸方向の2次元フィルターによって、秒60フレームのプログレッシブ信号を作りだす。プログレッシブ用の倍速処理ICは奇しくも米国ジェネシスと共同開発したもので、信号処理も贅沢な4:4:4(Y、Cb、Crの各サンプリング周波数が13.5MHz)。4:2:0で収録されているDVD映像からすると、オーバースペックのようにも思えるが、この余裕が画質に効くと、担当エンジニアは譲らなかった。「一般的な4:2:2処理に比べると、微小な色の表現力で差がでる」というのが彼の持論だった。
【音声技術】

↑オーディオ基板。L/Rでシンメトリーにレイアウトされる

↑バーブラウン製96kHz/24ビットD/Aコンバーター PCM1704。ダイナミックレンジ110dB、S/N比116dB

↑オーディオ専用大型Rコアトランス。
オーディオ回路についても、96kHz/24ビットD/Aコンバーター(米国バーブラウン社製のPCM1704)をはじめ、竹繊維混抄セパレーターを組み込んだ電源平滑用の電源コンデンサー、高級オーディオ機器で実績のあるクラスAA回路搭載のアナログ出力段および電源回路、L、R対称のオーディオ基板レイアウトなどなど、高音質化のための技術が目白押しだ。
その映像は緻密で、滑らか。とにかく映像そのものの鮮度がよく、透明度が高い。すでにいくつものDVDプレーヤーの画質を検証していたが、ここまでノイズレベルを下げたモデルは初めてだった。解像度はとくに高いという印象はないが、柔らかなタッチのなかで、ディテイルが自然に浮き上がるという品位の高さを感じさせてくる。そのS/N感はまさに感動的だった。
注目のプログレッシブの画質だが、彫りの深い堂々たる再現性を示した。フィルム素材、ビデオ素材は問わず、白がすっきりと伸びて、中間調が緻密に描きだされる。目を凝らすと輪郭には1本シュート(白いフチドリ)が見えたが、これも作為的な感じはせず、少なくても解像度の不足分を補うようなものではなかった。
映画ソフトの再生で印象的だったのが、ジュリア・ロバーツ主演の「ベスト・フレンズ・ウエディング」。もともとDVDソフトとしての画質も優れていた作品だが、DVD-H1000で観るその映像はまるで別物。常時、全画面完璧な補間処理された映像は、動きの伴う部分でボケが生じる、斜めのラインがギザギザに見えるといった問題はほとんどなく、質感もフィルムルックだ。屋形船で桟橋の下を通過するシーンは、まさにフィルムの静止画像がスムーズに動いているかのイメージ。画像そのもののフォーカス感が有利になり、中央から周辺部にいたるまで見通しのいい映像が描きだされた。
ちなみにサウンドはおおらかに鳴らすというよりも、エネルギーを音像に集中してくるタイプ。贅肉を取り除いた無駄のないサウンドで、彫りが深い。頑丈なシャーシ設計が、音の厚み、押し出しの強さとなってでている感じだ。ドルビー収録のムービーサウンドも、同様の傾向、実に見通しのいいきめ細かい描写で、しかも骨格もしっかりしている。力強さだけでなく、一定のしなやかさもあわせもった表現力に富んだサウンドだった。
H1000時代からのこだわりが、
最新BDレコーダーに彩りを加えた
最新BDレコーダーに彩りを加えた
AV機器の歴史に残る銘機であることは間違いないが、残念ながらDVD-H1000はHiViグランプリの三賞の受賞を逃している。98年秋、いざ発売というタイミングで、米国ハリウッドのメジャー系映画会社で組織されるアメリカ映画協会「MPAA」から、「480pを480iの信号に変換した時に、コピーガードが効かなくなってしまう危険性がある」と指摘され、発売が急遽延期されてしまったのだ。
結局、翌年に発売されることになるが、映像処理関連のデバイスの古さがネックとなり、99年のHiViグランプリはライバル、パイオニアのDV-AX10に浚われてしまった。悲運の銘機である。
【リモコンとプログレッシブ出力設定】

↑左上が、プログレッシブ出力の設定画面。左下は、リモコンカバー内
今年、松下電器では第2世代のBDレコーダー&プレーヤーを製品化し、各方面から高い支持を得ている。45nmプロセスを用いた1チップLSI(UniPhier)の実用化が大きな話題だが、このMPEGデコーダー部分に注目すべき高画質化技術が投入されている。
MPEG2、MPEG4を問わず、MPEGの映像圧縮はフィールド毎に4:2:0/4:0:2(Y:Cb:Cr)の信号が記録され、再生時(解読時)4:2:2の映像信号に復元される。
DVD、BDを問わず、従来この部分に2タップ構成のフィルターが採用されていたわけだが、松下電器のハリウッドの出先研究機関(PHL)との協力により、原画(オリジナル)との比較を慎重に進めていった結果、色のキレ、彩度、グラデーションといった部分で正確に復元されていないことが判明したという。
そこで今回、フィルターのタップ数をさらに倍に増やしたPHL標準クロマプロセッサー回路を構築し、高精度演算による4:2:2復元を実現している。実際、その効果は絶大で、輪郭部分の色キレの鋭さにとどまらず、淡い微妙な色調や色の深みまでもが、これまでのプレーヤーとはかなり違って見える。色数が増えたとはこのこと。本来の色の世界が再現できるようになったことで、映像としての表現力が押し上げられた印象だ。
「数年に1度ですが、画質は劇的に変化することがあります。今回の色もその部類に入る変化だと思います」。PHL標準標準クロマプロセッサーの開発で重要な役割を果たしたエンジニアのコメントだが、彼はDVD-H1000の480pのフィルム処理を実現した人物でもある。松下電器のDVD/BDプレーヤーの画質キーマン。近い将来、我々にまた大きな驚きと感動をもたらしてくれるに違いない。
オーディオビジュアル評論家 藤原陽祐











