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Aston Microphones Aston Origin/Aston Spirit エントリークラスながら高音質を実現する
英国の新進気鋭ブランドが開発したコンデンサー・マイクロフォン
Aston Spirit Aston Origin
 去る2016年8月9日、「ローランド」社はあるプレス・リリースを発信した。日本市場における新規事業として、音楽や楽器と親和性が高い海外製品の輸入販売を始める……と言うのである。「ローランド」といえば、浜松に本社を構える音楽関連の電子機器を自社で開発から製造まで手掛ける老舗メーカー。コンパクト・エフェクターのブランド「BOSS」やエレキ・ギター用アンプ「JAZZ CHORUS」といった往年の銘機達は今でも製造され、新たなユーザーを獲得し続けている。近年は、電子楽器、オーディオ・インターフェース、プロ向けのPA・放送用ミキシング・コンソールまで手掛ける総合企業へと変貌しつつある。
 そして、国内事業における新たな展開が先述のプレス・リリースである。そこにはプロ向け製品として、海外3社の製品を輸入販売すると記されていた。●Aston Microphones社(英、2015年設立):マイクロフォン、●Audiofly社(豪、2010年設立):ヘッドフォン並びにイヤーモニター、●Munro Sonic社(英、2011年設立):モニター・スピーカー。この度は「Aston Microphones」のマイクロフォン「Aston Spirit」と「Aston Origin」に焦点を定めてレビューする。
Text by 種村尚人
新進気鋭のマイクブランド Aston Microphones
 「Aston Microphones」という会社を、この度のレビュー執筆依頼をいただくまで耳にしたことは一度もなかった。聞けば英国のマイクロフォン・メーカーで、昨年設立したばかりの新進気鋭だという。他2社も含めすべて2010年以降に設立のきわめて新しい企業である。「ローランド」によるこの度のアクションは単なる青田買い的構想ではなく、同社にとって新たな機軸を日本国内に呼び込むための戦略なのかもしれない。

 この「Aston Microphones」を率いるのはJames Young氏。Young氏は、上海出身Siwei Zou氏によって2000年に米国サンフランシスコで設立されたマイクロフォンを主に設計/製造する「sE Electronics」社創立メンバーの一人であり、マイクロフォンなどの製品企画に携わってきた。「sE Electronics」は、設立から数年で廉価かつ高品質なマイクロフォン・メーカーとしてのイメージを世界のユーザーに認知させ急成長してきた。Young氏は「sE Electronics」での経験を最大限に活かしつつも、従来の既存製品とは一味異なるテイストを秘めたマイクロフォン・メーカーを目指すとしている。

Aston SpiritとAston Originの概要
 その第一弾として世に送り出された製品が、ラージ・ダイアフラムのコンデンサー・マイクロフォン「Aston Spirit」と「Aston Origin」である。また、ホームスタジオなどでのヴォーカル収音の際に不要な反射や外来ノイズ音を防ぐリフレクション・フィルター「Aston HALO」も同時に発売された。この度の試用・試聴ではマイクロフォン本体、「Aston Spirit」と「Aston Origin」のみの借用だったので「Aston HALO」についてのレビューは割愛させていただく。

 「Aston Spirit」と「Aston Origin」は、キャッチフレーズに“Built in Britain”と謳い、“英国的な本格サウンド”を目指したものとし、開発、設計、デザイン、組上げをすべて英国内で行なっている。ただし各種パーツには英国以外のものもある。例えばマイクカプセル本体は、サードパーティ製であり自社開発ではない。電子部品は厳選した高品位パーツを使用している。例えばヨーロッパで高音質コンデンサーとして認知度を得ているドイツ「WIMA」製コンデンサーを採用している。ちなみに別売りのショックマウント・サスペンションは、やはり英国の世界的ウインドジャマー・メーカー「RYCOTE」社製を採用した。「Aston Spirit」「Aston Origin」向けカスタムモデル「Aston Rycote Custom」が用意されている。

「Aston Spirit」。指向性を3種類持ち、トランスも内蔵するコンデンサー・マイクロフォン
「Aston Spirit」。指向性を3種類持ち、トランスも内蔵するコンデンサー・マイクロフォン
「Aston Origin」。トランスレスのコンデンサー・マイクロフォン
「Aston Origin」。トランスレスのコンデンサー・マイクロフォン
 「Aston Spirit」「Aston Origin」双方とも箱から取り出し手に取ってみた。外観の違いが明確なのは長さ。「Aston Spirit」は175mm、「Aston Origin」は125mm。これは、主にトランス回路の有無と指向性変換回路などの有無によるものだろう。円筒内部を見てみると「Aston Origin」に対し「Aston Spirit」には基板が1枚追加されている。重量は「Aston Spirit」が625g、「Aston Origin」は450g。重量が軽いと床からの振動を拾いやすく、また共振周波数が上がるので楽器の出音による悪影響が考えられる。日本国内のレコーディング・スタジオでスタンダードな高品位コンデンサー・マイクロフォンとして普及している「Neumann U87Ai」が500gなので、軽過ぎることはなく標準的であり安心感を持てる。

 指向性は、「Aston Spirit」が単一指向性、無指向性、双指向性の3つから選択できるのに対し、「Aston Origin」は単一指向性固定となっている。試用・試聴においては「Aston Spirit」の指向性を単一指向に設定した。PADは「Aston Spirit」が-10dBと-20dBから選べるのに対し、「Aston Origin」は-10dBのみのON/OFFである。ハイパス・フィルターは双方共に80Hz以下のカットON/OFFとなる。これらの切替えは本体円筒部上端に取り付けられた小型のトグルスイッチで行なう。

 次に2モデル共通の特徴を見ていこう。まずは何と言ってもマイクカプセル部のハウジングにウェーブ状に成形された鋼板帯による「メッシュヘッド」と呼ばれるスプリング機構だ。見た目の印象もさることながら、この機構によってマイクカプセル部に対して垂直方向からの衝撃を和らげ、本体内部構造へのダメージを防いでいる点が特筆となろう。このウェーブ状鋼板帯は固着されていないので、ハウジングの側面を押すとへこんで歪曲するが、反対方向から力を加えれば元の形状に戻る。自ら変形することによって外部からの衝撃を緩和するのである。何となく奈良県の法隆寺五重塔が変形する(しなる)ことによって免震性を得ている事を思い出した。

 この「メッシュヘッド」内には、ステンレス鋼線製のポップフィルターを内蔵している。この組込み式のポップフィルターは二重構造となっており、外側は細いステンレス線をランダムに編み込んだ約1mm厚の網、内側には目の粗い金属クロスメッシュが当てられ過度な変形からマイクカプセルを守っている。このポップフィルターはダイアフラムを360度囲む構造となっているが、トッププレートの内側にもステンレス線のランダム編み込みの網が取り付けられているので、上面も含めてダイアフラムは完全に覆われている。この構造によって外部からの様々な周波数による電磁放射ノイズからオーディオ信号を守ることにも寄与している。さらに、ダイアフラムを覆うこの構造は、先述のウェーブ状「メッシュヘッド」も含め、ネジ2本のみで固定されており、6角レンチが1本あれば容易に取り外すことが可能である。よって、ヴォーカル収音が続き汚れや臭いが気になる際には、ポップガード部を取り外して洗浄することも可能だ。ステンレス製なので水分によるサビの心配もない。

 本体円筒部は2mm厚の鋼製で充分な剛性。表面にはタンブル研磨加工が施されており、特に引っかき傷に強く指紋も退ける。もし傷が付いても目立ちにくい。タンブル研磨加工独特の風合いは秀逸で美しく、見た目の高級感を醸し出している。
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