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ユーザーの嗜好に寄り添う強み“ メイド・イン・ジャパン”クォリティを貫くカナルワークスのカスタムIEM 取材& 構成= 中林直樹 Photo= 三原久明
カナルワークス(株)
代表取締役・林一博さん
 ユーザー一人ひとりの耳に合わせて製作される「カスタム・インイヤー・モニター」。もともとはライヴや舞台でミュージシャンやパフォーマーが使うものとして、メジャーではないものの、ひとつのジャンルを築いていた。ステージ上のモニタースピーカーの代用としてである。音を正確に、そして聞きもらさないように開発されたものだ。音楽を楽しむのではなく、音を聴き分けるための装置の一部であるともいえる。それが一般リスナーに対しても有益だと一部のエンスージアストたちが察知。それは各自の好みのサウンドに仕上げることができるとわかったからだ。そして音楽リスニングに相応しい音へとチューニングを追い込んでいった……。というのがこの10 年ほどで起こった出来事である。

来たるべき音楽の聴取環境を見極め満を持して立ち上げたブランド
 さて、あるブランドを知りたいと思うとき、最も手っ取り早い方法のひとつが、創業の出自を調べることである。今回の主役、カナルワークスは2010 年に産声を上げた国産ブランドだが、その背景は実に面白い。まずはそのあたりから話を進めてみよう。さらには新製品であるCW-L02 の詳解へ、さらにはブランドのポリシーなど、代表取締役の林一博さんへのインタビューを通して綴ってみたい。

 中学生の頃から音楽に興味があり、ギターをプレイしていたという林さん。電気通信系の大学時代に進むと、理系の知識を活かして自らエフェクターも制作するようになったという。そんな彼が就職先として選んだのは、パイオニア。「ミュージシャンになる力量はなかったので(笑)、なんとか音楽に関わる仕事がしたかったんです」。すぐにオーディオ部門に配属になり、民生用のDSP チップや1980 年代に一世を風靡したミニコンポシリーズ「プライベート」の開発にも携わったという。プライベートは、個人的に思い入れの深い製品群だ。コンパクトでデザインも他ブランドとは一線を画すスタイリッシュなものだった。カタログや広告にも高いデザインセンスが溢れ出ていた。当時中学生だった僕がおそらく、パイオニアというブランドに特別な何かを感じたのはプライベートの存在が大きい。もっというならば、オーディオ世界への入り口を提示してくれたブランドのひとつなのである。あれから30 年ほどが経過した。そんな今、プライベートの開発者にこうした形でお会いできるとは……。といった私情が思わず首をもたげ出してしまう。

 やがて、時代はMD の登場、そして衰退へと移り変わっていく。当時、製品企画を担当していた林さんは「どのようなメディアが次世代のユーザーに相応しいのか、大手オーディオメーカーが議論しはじめていました」。2000 年頃のことだという。そこで出された結論のひとつが「音楽配信」である。2004 年にはオーディオ機器メーカー8 社の共同出資により、エニーミュージック株式会社が誕生。音楽配信サーヴィス「mora」と連携し、ネットを介して対応するオーディオ機器へ音楽の直接配信するというサーヴィスだ。残念ながら2013 年に終了してしまったが、各オーディオメーカーが、ソフトウエアとの新たな付き合い方を提示したという点ではひじょうに意義のあることだった。林さんはそのエニーミュージックにパイオニアの社員として出向したこともあるそうだ。

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同社カスタムIEM の特徴はカラフルな色やエンブレム、さらにプリントアートワークなどを自在に組み合せられる点も大きな魅力だ(オプション・ラインナップを含む)




 こんなふうにカナルワークスの立ち上げまでをじっくり記したのは、オーディオシーンの最先端に林さんが籍を置き、未来を見据える立場にあったことを知って欲しいからだ。つまり、振り返ってみれば、現在の仕事の礎が、その時点で生まれていたのだ。ノンパッケージで配信された音楽は、デジタルファイルとして手軽に扱え、ポータブルのプレーヤーにも簡単に転送できる。そうなれば、屋外で音楽を聴くこともより活発になるはずだ。無論、メーカー在籍時は、カナルワークスの立ち上げを考えてはいなかったことだろう。しかし、現在の音楽との接し方、あるいは来るべきリスニングスタイルを10 年ほど前から予感していたのである。そして、もうひとつ彼の目を大きく見開かせる出会いがあった。

 「2005 年頃アルティメットイヤーズの5PRO という製品をたまたま知ることがありました。驚きましたね。小型のバランスド・アーマチュア(BA)型のドライバーを複数使っているのですから。しかも音が良かった。それに価格も当時の一般的なイヤフォンと比べるとかなり高額でした」

 当時は現在ほどイヤフォンの価値は高くなく、プレーヤーの付属品、もしくは買い替えようとしても3,000 円あたりが一般的なボリュウムゾーンだった。それから時代は流れ、ユニバーサルタイプのモデルだと1万円台中盤が現在、激戦区といわれている。そこだけを見つめてもこのシーンの隆盛ぶりがわかるというものだ。

 イヤフォンの将来性を見抜いた林さんはさらに調べを進めると、カスタム・インイヤー・モニターにたどり着く。これが多くの音楽ファンに支持されるだろうと信じてメーカーから独立を決意。これがカナルワークス、第1章の始まりだ。「たまたまパイオニアのOB で補聴器販売店を営んでいる先輩がいまして、彼に相談し、技術の糸口を掴んだんです」。オーディオ畑で30 年近く研鑽を積んで来た林さんだが、イヤフォンづくりは経験したことがなかったという。回路の設計や音の追い込みなどは、もちろんお手の物だが「シェル(ボディ)の作り方など当時、補聴器メーカーとコラボできたことは意味が大きかったと思っています」。

耳型採取は提携店で執り行なうカスタムIEM がより身近な存在に
 そして2010 年、第一号機CW-L11 が登場する。2ウェイで3つのBA 型ドライバーで構成される。しかし、そのリリースよりも前の段階で林さんが行なったことがある。それは提携店を探しパートナーシップを結ぶことだった。ここでいう提携店とは、カスタムの最たる特長である耳型(インプレッション)を採取してくれる補聴器販売店のことだ。カナルワークスでは製品の注文を受けた後、提携店を紹介。注文者はそこに出向き耳型を採取する。耳型採取費用は製品代金に含まれているため、提携店へ直接支払う必要もない。そして耳型は提携店からカナルワークスに直接届けられ、イヤフォンの製造が開始される。あとは製品の到着を待つだけ、というワンストップサーヴィスを構築している。「音楽を好きな人が、まず耳型を採取し、それをメーカーやショップに持ち込むのはとてもハードルが高いことです。お客様に負担をかけず、耳型を採っていただける場所を用意して始めてサーヴィスとして成り立つと思いました」。

 そんなカナルワークスの新製品がフルレンジのBA 型ドライバーを1基搭載したCW-L02 である。CW-L01Pの後継機という位置づけだ。ヴォーカル帯域にフォーカスし、声にツヤ感を出したという前モデルのテイストはそのままに、中高域の伸びをさらにアップさせている。

 「エントリーモデルとはいえ、ハイレゾ音源もたっぷり楽しんでいただけるような、より音楽に入り込めるチューニングにしています」。具体的にはノズルの口径やダンパー部の細部に手を加えているそうだ。

 さて、そろそろ紙幅も尽きて来た。林さんとのお話で印象的だったフレーズを用いて原稿を締めくくりたい。「現在、シングルから3ウェイ8ドライバータイプのものまで幅広くラインナップしています。それはお客様のご要望によるものです。フルレンジのモデルだけで3タイプ用意しています。もちろん、それぞれチューニングも変えています。ただ、これまでシングルなのか、2ウェイ3ドライバーなのか、それとも3ウェイ6ドライバーなのか、お客様の選択の基準は価格だけでした。それではご自身の好みの音を探す、とっかかりにはなりませんよね。そのためにヴァリエーションを増やしつつも、ロックやJ-POP、ヴォーカルなど音楽ジャンルとコンセプトを明確にし、開発を続けています」。単に耳の形に合わせてイヤフォンを作るのではない。ユーザーの好み、カタチにも寄り添う、それがこのブランドの真髄だと感じた次第だ。

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CW-L02
オープン価格
●ユニット構成:フルレンジ・シングルドライバー
CW-L32V
オープン価格
●ユニット構成:3 ウェイ4ドライバー
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CW-L71
オープン価格
●ユニット構成:3 ウェイ8ドライバー
CW-L05QD
オープン価格
●ユニット構成:フルレンジ4ドライバー



ヴァラエティに富んだモデルを選べる楽しみ

 CW-L02 はヴォーカルなどの中域の充実ぶりに目を見張った。沖縄民謡をベースにしたポップスを歌う上間綾乃。彼女の歌声はきめの細かさと、深みが調和している。ピアノも中域にしっかりとした存在感があり、高域にもきらめきを感じさせた。爽やかな音場も魅力のひとつだ。ヴォーカルを中心軸にしてほどよい奥行きがあるのも好ましい。ジャズ・ピアニスト山名千尋の6名編成のアンサンブルは音楽全体に自然な伸びが生まれている。山中の力強いピアノのタッチもありのままに描き出しているかのようだ。また、ギターのトーンはまろやかで耳に優しい。
 CW-L32V は3ウェイ4ドライバーを搭載。CW-L32をヴォーカルにフォーカスしてチューニングしたモデル。たしかに、上間綾乃の声は、バンドよりも半歩前に迫り出すようなイメージとなった。CW-L32 の声の温かみはそのままに、主役としての存在感が高まったかのような印象だ。
 高域用に4基、中域と低域用にそれぞれ2基という3ウェイ8ドライバーというプレミアムな構成のCW-L71。高域のディテイルを追求した個性派ともいえる。上間綾乃のヴォーカルやコーラスは極めて繊細に表現される。かといって淡くはならない。声の微妙な震えやブレスもリアルに伝える。
 フルレンジドライバーを4 基搭載し、クワッドドライブ方式を採用したCW-L05QD。山中千尋の低域はマイルドで、中高域の解像度は高い。最大の特徴は自然な広がりがもたらされることだ。これは同社の他のモデルとは少し違う傾向。インナーイヤーだが、音楽が耳の奥まで入り込み過ぎない。スピーカーで聴いているのと近い雰囲気を味わえた。(中林直樹)

問い合わせ:カナルワークス(株)☎ 04(2941)4852 / http://canalworks.jp/

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