08年の初夏、意を決して300万円近くもするリンのKLIMAX DSを購入した。駆動メカニズムを持たないネットワークプレーヤーの音のよさ、外部大容量ストレージ(NAS)に“オレ流音楽図書館”を構築し、
聴きたい曲を瞬時に自由自在に引き出せる楽しさ、それからCDフォーマットを超えるハイレゾリューションミュージックファイル(以下
ハイレゾファイル)が聴け、
それを蒐集できる面白さを理解し、ぜひ自分のリスニングルームに迎え入れようと考えたわけである。
それから3年間、ほぼ毎日このプレーヤーを稼働させて、充実した音楽生活を送っている。とくに昨今増え始めた、WAVやFLACファイルで提供されるCD規格(44.1kHz/16ビット)を超えるハイレゾファイルのすばらしい音を聴きながら、「うん、無理して買ったかいがあったナ」と一人ごちていたわけだが、最近そんなぼくをアッと言わせる
“事件”があった。ネットワークプレーヤー
DNP-720SEの登場である。それがなぜ
“事件”か?
いくつかのウェブサイトからダウンロードした48kHz/24ビットや96kHz/24ビットのハイレゾファイルをこの安価なプレーヤーで聴き、ぼくが自室で使っているKLIMAX DSと共通する音のテイスト、魅力を発見したからだ。もちろん両者には価格相応の「クォリティ差」は存在するのだが、300万円近くはたいてやっと得られたと信じていた音の質感が、なんと
60分の1の値段のプレーヤーで得られたのだから、これは“事件”というほかないだろう。
30年ほど前に考案されたエラー訂正技術を前提とした駆動メカニズムを持つCDプレーヤーと大きく違うのはここで、CDプレーヤーの場合、300万円と5万円の製品の音を比較してみると、そこには物量投入の違いによる大きなテイストの差、千里の径庭ともいうべき埋められない距離が必ずある。
では、KLIMAX DSとDNP-720SEに共通する音の魅力とは何か。それはハイレゾファイルを聴けばすぐわかる。ハイレゾ最大の持ち味は、演奏現場の空気感や雰囲気をまるごと甦らせて、時空を超えてリスナーをその<音楽の現場>に連れて行ってくれるところにあると思うが、
5万円のDNP-720SEで聴いても、その魅力がほぼ欠落感なしに、きちんと伝わってくるのである。
たとえば、m.a レコーディングスの「セラ・ウナ・ノーチェ」(96kHz/24ビット:WAV)。1996年にアルゼンチンのガンダーラ修道院教会でワンポイント・ステレオ録音された作品で、このハイレゾファイルには演奏現場のエアーがたっぷり詰まっており、そのプレゼンス感の豊かさは圧倒的だ。KLIMAX DSクラスのネットワークプレーヤーでないと、この現場の空気感をリアルに再現できないのでは? と考えていたのだが、DNP-720SEで聴いて、石造りの、天井が高く黴くさい教会で、ミュージシャンが車座になって演奏している風景がありありと目に浮かび、ぼくを驚かせた。しかも演奏されるアコースティック楽器やヴォーカルのひびきの肌理がじつに細かく、その美しさにしばしうっとりと聴き惚れてしまったのである。
これは事件というほかないというぼくの気持がおわかりいただけるだろうか。
▲ ネットワークオーディオを楽しむには、PC経由で、CDからリッピングしたファイルやダウンロードしたハイレゾファイルを、まずNASに格納に、NAS内にライブラリーを作ろう。NAS内のライブラリーに入っている曲を聴くには、DNP720SEからまずNASを認識させ、ルーター経由で呼び出して再生する。
ネットワークプレーヤーとしてのDNP-720SEの操作は、DNP-720SE本体、付属リモコンのほか、リモコンアプリ「Denon Remote App」を無償ダウンロード/インストールしたiPad/iPhone/iPod touchでも可能だ
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「Denon Remote App」について
▲ DNP-720SE本体正面にある、有機ELディスプレイ。その表示は、ひじょうに美しく見やすい
▲ DNP-720SEは、iPod touch/iPhone/iPadに入っている曲を聴くことのできるAirPlay機能を搭載。iPod touch/iPhone/iPadそのものをリモコンのように操作して、お気に入りのシステムで鳴らすことができる。AirPlayは「Denon Remote App」での操作もできるが、上記のように、iPod touch/iPhone/iPadからの操作も可能(Wi-Fi設定後、聴きたい曲を選択→画像赤丸で示した「AirPlay」ボタン をタップすればOK(AirPlayを使うにはWi-Fi環境・iOS4.2以上が必要です)
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- AirPlay - デノンで広がるネットワークの世界
DNP-720SEは、ネットワーク経由で
NASやPCに収めたデジタルミュージックファイルやインターネットラジオが聴けるほか、
AM/FM放送が楽しめ、iPhoneやiPadに収めたiTunesライブラリーが聴ける
AirPlay機能を有した多機能モデルである。
資料にはデジタルミュージックファイルの対応レゾリューションはFLACが96kHz/24ビットまで、WAVが48kHz/24ビットまでと書かれているが、実際には先述のように NASに収めた96kHz/24ビットのWAVファイルの「セラ・ウナ・ノーチェ」がなんの問題もなく再生できた。この対応ファイルから考えると、本機は同社製最新AVセンターの
AVR1912
/
AVR3312
のネットワークオーディオ再生機能を切り出した単体プレーヤーといってもいいだろう。
操作面についていえば、
iPhoneなどで使えるアプリ「Denon Remote App
」がAppStoreからダウンロードできるが(無料)、本体正面にある3ライン表示の
大型有機ELディスプレイがたいへん見やすく、付属リモコンでもライブラリー検索などが比較的簡単に行なえる。
また、本機にはUSBマスストレージ用のA端子が前面に用意されており、直接音楽ファイルの再生が可能。ステレオサウンドの「High Resolusion Master Sound 01」からいくつかのミュージックファイルを聴いてみたが、その
ローディングもきわめて早く、雄大なスケール感の表現
というハイレゾの魅力が快適に味わえた。
iTunesを直接ストリーミング再生できる
AirPlayの操作も快適きわまりない。ふだんヘッドフォンで聴いているiPhoneに収めたファイルを、
ワンタッチで瞬時にDNP-720SEに送って愛用スピーカーで聴く楽しさは、一度経験したら誰もがすぐに理解することだろう。
iTunesが身近にあり、これから本格的にネットワークオーディオに取り組んでみたいとお考えの音楽ファンにぜひ一度本機に触れていただきたいと思う。
デノン ネットワークプレーヤー
DNP-720SE
*左・写真上から、DNP-720SE(K)=ブラック、DNP-720SE(SP)=プレミアムシルバー、リアパネル
【ネットワークプレーヤー部】
●再生周波数特性/2〜48,000Hz(fs:96kHz)、2〜20,000Hz(fs:44.1kHz) ● ダイナミックレンジ/98dB ● S/N比/110dB ●全高調波歪率/0.003% ●音声出力端子/光デジタル出力、アナログ音声出力 ●その他端子/ETHERNET端子、無線LAN用アンテナ端子、FM/AMアンテナ端子
【チューナー部】
●受信周波数/FM:76.0〜90.0MHz、AM:522〜1629kHz
【総合】
●消費電力/18W(待機電力0.2W) ●外形寸法/W434×H74×D282mm(つまみ、端子を含む、無線LAN用アンテナ除く) ●質量/2.9kg ●付属品/リモコン(RC-1159)、単4乾電池×2、オーディオコード、電源コード、FM室内アンテナ、AMループアンテナ、無線LAN用アンテナ
iTunes, iPad, iPhone, iPod touch, Mac, AirPlayは、米国および他の国々で登録されたApple Inc.の商標です。AirPlayはiPad、iPhone 4、iPhone 3GS、iPod touch(第2世代以降)でご利用いただけます。