TD 10TH ANNIVERSARY !! HiVI X HiVi WEB SPECIAL CONTENTS FEATURING. ECLIPSE TD SERIES. TD 10th Campaign
REVIEW by YOSHIO OBARA 10年の研鑽が生み出した唯一無二のサラウンド空間
富士通テンの家庭用スピーカー、イクリプスTD(タイムドメイン)シリーズが、今春で発売10周年を迎えた。入れ代りが激しく、目立ったヒット商品もない今日のオーディオビジュアル界において、新規参入ながらも10年継続してきたことにも感服するが、当初からのコンセプトを頑なに貫いていることには畏敬の念すら覚える。ここでは、この10年の足跡を確認しつつ、TDスピーカーならではの音場表現力による高密度サラウンドを改めて検証してみたい。(小原由夫)
 よくよく考えてみれば、私たちの日常はサラウンド音場である。前方からだけでなく、後方からの音も、私たちの耳は「後ろから聞こえる音」と知覚できる。そこには音の“切れ目”は存在しない。だが、その360度音場を1台のスピーカーで再現することが困難ゆえ、私たちはAVシステムに複数のスピーカーを配置し、切れ目のないシームレスな空間再現を目指して切磋琢磨しているわけだ。

 複数のスピーカーを用いての理想的なサラウンド空間を構築するうえで、それに適したスピーカーとそうではないものとが厳然としてある。そのもっとも顕著な差が、前記の音の“つなぎ目”だ。サラウンドが不得手なスピーカーでは、チャンネル間のつながりが悪く、つなぎ目が見えてしまう。一方、サラウンドに適したものでは、つなぎ目がわからないどころか、遠近感が醸し出す音の階層構造や高さまでもがリアルに感じられるのだ。

 私が思うに、サラウンドにもっとも適したスピーカーのひとつが、TDスピーカーである。なぜTDスピーカーがかくも素晴らしい空間再現力を示すのか。それは、TDのコンセプトが、スピーカー固有のキャラクターを排除するものだからだ。しかもしれが、01年のデビューから一貫して変らない点に感服する。

 他方、視覚的には明確なアイデンティティ、アイコンがある。卵型エンクロージャーと小口径のフルレンジ1基という姿形は、まさしく唯一無二。すなわちTDスピーカーのデザインは、そのコンセプトを推し進めた結果の必然の形であり、入力された元の信号をストレートに再現するための帰結なのである。
シームレスとはこうい事だ
 今回、TD712zMK2を5本、ドルビープロロジックIIz再生のバーチカルハイトch用にTD510を2本用意して、BD視聴を通じて究極のサラウンド空間の再現を目指した。オンキヨーのセパレートAVセンター等、用意した周辺機器も相手にとって不足はない。

 何百回見たかわからない「ノー・カントリー」のCh.(チャプター)3、ルウェリンの帰宅から殺人現場に戻るシークェンス。映像には映っていないフレーム外の幹線道路の車の走行音がどこからともなく聴こえてくるが、そのリアリティたるや! トレーラーハウスに入ったルウェリンを追うカメラに連動してテレビの音が動く。アングルに合せて音が移動する様は、シームレスな音場再現力が備わっていなければ的確な再生は望めない。二発の銃声の軌跡にも驚かされた。リアチャンネルは床置したため、フロントと同じ高さなのだが、しっかりと右斜め後方の高い位置から放たれ、先方画面中央のルウェリンめがけて炸裂するのである。

 ディカプリオとスコセッシ監督が4度目のタッグを組んだ「シャッター・アイランド」は、実にていねいな音響デザインが施されたサスペンス作。Ch.10、サイレンの音が島内に拡散するように響き、その中を人々の雑踏が緻密に定位する。隔離病棟内では、天井から滴り落ちる水滴の音、悲鳴や叫び声が、湿り気のある反響音を伴って不気味にこだまする。裸足で走る音、マッチを擦る音といった微細な効果音のニュアンスも生々しい。完全に音質の揃ったスピーカーをバーチカルハイト用に使った恩恵か、上下方向の音のつながりや包囲感にまったく違和感がなく、病棟の陰鬱なムードが自然に醸し出されている。

 強い語気を伴ったディカプリオの台詞は、焦燥感と恐怖心がリアル。そのバックで徐々にクレッシェンドしてくるティンパニの打音が、緊張感をどんどん煽っていく。そうした状況の推移をリアルに活写し、観る者を画面に引き付ける。その凄まじい吸引力こそ、余計な響きを一切足さず、サウンドデザインの意図通りに効果音が再現されている証である。 次へ
オリジナルと同じ“波形”を甦らせるタイムドメインスピーカーとは
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イクリプス TD712zMK2
¥693,000(ペア、レギュラースタンド、写真左)
イクリプス TD712zMK2-S
¥651,000(ペア、ショートスタンド、写真右)

●型式:フルレンジ1スピーカー、バスレフ型
●使用ユニット:12cmコーン型ウーファー ×1
●出力音圧レベル:84dB/W/m
●インピーダンス:6Ω
●再生周波数帯域:35Hz ~26kHz(-10dB)
●寸法/質量:
TD712zMK2=W347×H1,000×D431mm/25kg、
TD712zMK2-S=W347×H611×D431mm/18kg
●問合せ先:富士通テン(株)
イクリプスTDインフォメーションセンター
フリーダイヤル 0120-02-7755

イクリプスのスピーカーはTD(タイムドメイン)理論に注目し、「音の元の波形」をそのままの型で再現することを目指して設計されている。その実践にはスピーカーが音を発した後の残響成分は不要であり、TDスピーカーはそのためにひじょうに細かいアプローチを取っている。まず(1)スピーカーの振動板には高速振動に堪える強度と密度を持った専用設計の素材を採用する。(2)磁気回路も専用設計で、強力なマグネットの搭載とボイスコイルの最適化を図り、高い磁力密度を得ている。そのふたつを組み合せたユニットを強力に駆動させるために(3)グランド・アンカーに固定。さらにそのグランド・アンカーを(4)ディフュージョン・ステーに取り付けることで、エンクロージャーにユニットの振動が伝わらないように配慮されている

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(1)スピーカー振動板
(2)磁気回路
(3)グランドアンカー(強固な足場)
(4)ディフュージョン・ステー
  (仮想フローティング構造)

卵形スピーカーボックスがTDの特徴。これは、四角いエンクロージャーで発生する回折効果や共鳴、定在波を可能な限り押さえ込みたいという狙いから採用している