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インターネットを経由した音声伝達技術サービス「ResoNetz」が宿すライブ・でコーディングと音楽リスニングの未来像
新しい音声伝送技術「ResoNetz Link」とは?
続いて、ResoNetz の技術について詳しく紹介していく。前項で触れたように、ResoNetz とは、オーディオ IP プロトコル「ResoNetz Link」を用いた伝送サービスのこと。ここでは、ResoNetz Link を開発したレゾネッツ・エアフォルク株式会社の丹下昌彦氏に、技術の詳細についてお聞きした。
2001年3月に、コンピューターやソフトウェアの受託開発を行なう株式会社エアフォルクを設立。インターネットのプロトコルをソフトウェア上で実現するサーバー用ソフトなどを開発後、ハードウェアをプログラミングできるFPGAに注目し、イーサネットを使った音声伝送技術を確立する。2011年、技術を汎用化した標準型を作り上げ、開発を経て「ResoNetz Link」を確立。同技術は特許を取得し、さらに「EtherMADI-64」の製品化を実現する。
レゾネッツ・エアフォルク株式会社
代表取締役
丹下 昌彦(たんげ まさひこ)氏

2001年3月に、コンピューターやソフトウェアの受託開発を行なう株式会社エアフォルクを設立。インターネットのプロトコルをソフトウェア上で実現するサーバー用ソフトなどを開発後、ハードウェアをプログラミングできるFPGAに注目し、イーサネットを使った音声伝送技術を確立する。2011年、技術を汎用化した標準型を作り上げ、開発を経て「ResoNetz Link」を確立。同技術は特許を取得し、さらに「EtherMADI-64」の製品化を実現する。
——マルチチャンネルの音声をIP化して伝送するプロトコルResoNetz Linkは、“LAN”と“WAN”という2つのトポロジーに対応したネットワーク・システムですが、まずはそれぞれの違いについて簡単に説明をお願いします。

丹下 LANとWANを簡単に説明すると、“伝送距離の違い”があります。例えば同じ建物の中にネットワークを作るのであればLANでつなげますが、道路を渡った隣のビルや、東京~大阪間などの長距離の伝送はLANでは不可能です。こういった場合、昔なら無線を利用した中継、もしくは2つの地点をつなぐ専用線を使っていました。現在の主流は、信号をIPデータ化し、外部の管理ネットワークサービスを用いてLANとLANをつないで伝送している......これがWANです。WANは回線さえあれば音声を送れるのに加えて、接続の自由度が高いので、新しいネットワーク技術のほとんどは、現在、WANを念頭において開発されています。

——ResoNetz Linkはこの伝送システムを応用して開発された「EtherMADI-64」と呼ばれる専用の送受信機を用いて、オーディオIP化して伝送を行なうというものですが、その発想の原点になったものは何でしょう?

丹下 ResoNetz Linkというシステムのはじまりは、私たちが“HRTP”というハードウェアを用いたRTP(Real-Time Transport Protocol)技術を開発したことに由来します。6年前にラジオ放送局が音声のIPネットワークによる中継に必要な専用ソフトウェアの導入を検討していたのですが、安定性に欠けることが理由で、私たちのHRTPが採用されました。ただ、この時点ではLANやこれに準じる専用線による通信だったので、この技術をもとに、WANへと対応させたシステムがResoNetz Linkです。

——もともと放送局で採用された技術だったのですね。

丹下 ResoNetz Linkは、“安全性に優れた伝送”と“運用のしやすさ”を重視しています。ただし放送局で使用され始めた段階では、用途が限定されていたので、よりサービスとして使いやすいものへと設計をブラッシュアップする必要がありました。
ResoNetz Link システムのネットワーク・カテゴリー、レベル1とレベル2に対応する送受信機。ResoNetz Link システムを利用するには送信と受信に合計 2 台の EtherMADI-64 が必要となる。本機に加えてサンプリング・レート・コンバーターを内蔵したモデルが登場予定。また放送局用途やライブ・ストリーミングなどの用途に合わせたオプション機能も予定されている。価格は一台 50 ~ 60 万円程度を予定。
ResoNetz Link システムのネットワーク・カテゴリー、レベル1とレベル2に対応する送受信機。ResoNetz Link システムを利用するには送信と受信に合計 2 台の EtherMADI-64 が必要となる。本機に加えてサンプリング・レート・コンバーターを内蔵したモデルが登場予定。また放送局用途やライブ・ストリーミングなどの用途に合わせたオプション機能も予定されている。価格は一台 50 ~ 60 万円程度を予定。
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● LAN (Local Area Network)
構内接続を中心とした、スイッチングハブなど で接続されたネットワーク。Ethernet パケットの単位で伝送を行なう。
● WAN (Wide Area Network)
ルーターを使用した、遠隔地との通信を行なう形態。 IP プロトコルを使用して、複数の遠隔地にあるネットワークを結合し、相互通信を行なう。IP パ ケットの単位で伝送を行なう。
ResoNetz Link と Dante などの伝送システムの違い
ネットワークを用いた音声伝送のトポロジーには LAN と WAN の 2 種類がある。 LAN の “L” は “Local” の意味で、これは Ethernet ケーブルが持つ優れた伝送性能を利用し、ホールなどの同じ室内に点在する機器間を Ethernet ケーブルやルーターで接続して音声伝送を行なう技術だ。LANの分かりやすい例としては、近年のコンサート PA でも活用されている Dante や Ethersound、REAC などの伝送規格がこれにあたる。いわゆるステージ・ボックスとコンソール、スピーカーとアンプ間をつなぐデジタルネットワークシステムだ。  それに対して ResoNetz Link が持つネットワーク・トポロジーは LAN にも対応するが、基本的には WAN での使用を想定としている。“W” は “Wide” の意味で、こちらは “ オーディオ IP 化 ” した信号をインターネット回線を利用して “ 遠隔地 ”へと伝送するというもの。ResoNetz Link は伝送速度に優れた回線を用いて、低遅延かつ高音質の音声を伝送するという技術を特徴としている。LAN も WAN も同じルーターやハブを用いたネットワークだが、IP 化して外部の管理ネットワーク (インターネット)を使用するというのが、 ResoNetz Link と、先述した Dante などの LAN を用いた伝送システムとの大きな違いと言える。
プロトコルのすべてをハードウェア化。優れた伝送スピードと大容量、安定度の高さを実現
——WANのネットワーク伝送と言うと、一般的にはコンピューター上のソフトウェアからインターネットへ接続してストリーミングをする......というイメージがあります。ここにハードウェアを用いて伝送を行なうことでどんなメリットがあるのですか?

丹下 連続稼働における安定性が格段に向上します。EtherMADI-64は、各プロトコルをソフトウェアではなく、ハードウェアデバイス上でハードワイア(直接結線)にて構成しています。そのためCPUやHDDなどのパーツがないので発熱や故障も少なく、メンテナンスも簡単です。さらにハードウェアはハッキングが困難なので、セキュリティ上でもメリットがあります。そして私たちの機器が放送局で実用化された最たる理由は“信頼性”にあります。もしシステムの電源が落ちた場合、ソフトウェアをベースにしたものだと、再起動に早くても数十秒かかるので、放送事故につながります。EtherMADI-64なら約3秒で復帰して伝送を再開します。

——EtherMADI-64の心臓部にはFPGAを搭載していると、資料には書かれています。

丹下 FPGAを用いることで、ハードウェアでありながら内部プログラムのアップデートが可能です。このようにソフトウェアのメリットを生かしてハードウェア化しているのが私たちの技術の特徴です。そしてもうひとつ、ハード化によるメリットは、伝送スピードの向上です。

ResoNetz Link は FPGA を用い、IP 伝送に必要な複雑なプロトコル制御を全てハードワイアで構成し、遅延やジッタの非常に少ない IP 伝送を実現している。これにより、高品質、多チャンネル、 低遅延、信頼度の高い伝送を可能にしているという。
ResoNetz Link は FPGA を用い、IP 伝送に必要な複雑なプロトコル制御を全てハードワイアで構成し、遅延やジッタの非常に少ない IP 伝送を実現している。これにより、高品質、多チャンネル、 低遅延、信頼度の高い伝送を可能にしているという。
——具体的にはどれくらいの伝送速度が得られるのでしょう?

丹下 およそ800Mbpsです。EtherMADI-64は1Gbpsの通信速度に対応しており、MADIのケーブルで言うと、おおよそ8本分を束ねたデータの転送量でもビクともしません。

——EtherMADI-64の伝送チャンネル数は?

丹下 1台あたり最大で64チャンネル(24ビット/48kHz)です。ひとつのネットワーク・システムで送信側のEtherMADI-64を8台まで接続できるので、最大で512チャンネルの大規模システムの構築も可能です。

——一般的な意見として、インターネット回線を使うとなると、コンピューターでストリーミング放送を聴いた際に感じる“音切れ”に不安を感じる人もいると思います。

丹下 確かに一般家庭では、夕方になるとネット回線が遅くなるということもありますが、ResoNetz Linkが推奨するダークファイバ、帯域保証高域イーサネットサービスなどのネットワークを用いれば、致命的な遅延はまず起こりません。それと、今おっしゃったようなコンピューターのブラウザを経由する場合は、TCPというプロトコルを使っていまして、これは落ちたパケットを後から送り直すという仕組みになっています。つまり、パケットを送り直す間に遅延が起きてしまうので、オーディオの世界では使用されていません。それほどオーディオの伝送というのは遅延にシビアなので、ResoNetz Linkは信頼できる回線での使用を想定しながらも、パケットロスや遅延、回線事故への対処を行なっています。

——具体的には?

丹下 WANネットワークの遅延は、接続状況によって流動的に変化します。ですが、これはネットワークを経由したパケットの届き方から予測することが可能です。EtherMADI-64は、遅延予測プログラムが自動でバッファサイズなどの補正を行ないます。加えて、伝送中に1~2パケットのデータが落ちても復元できる“FEC”プロトコルを用いています。これらによって伝送中の遅延は、双方向の往復遅延でおよそ数ミリセカンド、放送局での使用に耐えうる数値です。また、2本のネットワークを用いたリダンダント接続も採用しており、これは片方の音声が途切れた際に切り替わるという単純な構造ではなく、2本のネットワークのデータをハードウェア内で組み立てることで、音声の途切れやノイズのない高品質な伝送を実現しています。

汎用性の高い標準プロトコルを重視。その場のルーターを経由してすぐ回線につなげられる
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——EtherMADI-64でWANネットワークに接続するために、特殊なハブやルーターなどは必要ですか?

丹下 その必要はありません。ResoNetz Linkの規格はインターネットの標準的な回線プロトコルRFCに則っているので、汎用のハブやルーターを介して、簡単にインターネット回線につなげられます。これもResoNetz Linkのメリットです。

——それは大きなポイントですね。例えばLAN領域でネットワークを構築する場合でも、特殊なプロトコルや特定のハブやルーターに加えて、接続順などを含めた複雑な定義付けが必要とされることが多いですよね?

丹下 そこがLANとWANの違いでもあります。もし接続エラーが出た場合でも、LANは接続ポイントを“視認”できることもあり、原因を特定しやすいのですが、WANはインターネット回線にのせた後は回線事業者の領域になるので、トラブルの特定がしづらくなってしまいます。ですので、可能な限り汎用性の高い標準プロトコルに則っておく必要があると、私たちは考えています。ResoNetz Linkはその場にあるルーターを経由すればすぐに回線につなげられますし、接続したい場所にある既存のLANシステムに相乗りしても、トラブルは起きません。現在では、AES67などの新しいオーディオIPプロトコルもありますが、私たちが考える“安全性”を踏まえると、AES67への対応は将来的に視野に入れているというのが現状です。

——ResoNetz Linkのネットワーク・カテゴリーですが、これまでに見える範囲内で接続したLANのレベル1、そしてインターネット回線事業者を介しての“有線”の伝送というレベル2について説明してもらいました。さらにもうひとつ、“レベル3”があるようですね。

丹下 レベル3は送信機にRM-01、受信機にEtherMADI-64を用いて、オーディオIP化した信号をWi-Fiの無線接続で伝送するカテゴリーです。RM-01は最大で66チャンネルの音声伝送に対応します。無線はレベル2と異なり、電波による伝送になるので、回線状況に応じてのサンプルレートのコンバートやロスレス・エンコーディングでの音声圧縮に加えて、2系統のWi-Fi機能を用いた無線伝送のリダンダント、先述したFECプロトコルによる遅延防止機能を備えています。RM-01はミキサー機能やXLRインプットを備えたモバイル中継装置を想定していますが、通信部分などの製品の最終的な仕様については現在、開発段階中です。

——これまでのお話を聞くと、ResoNetz Linkは放送局水準を満たすネットワークインフラに対応したプロフェッショナルなオーディオIP伝送プロトコルという印象を受けました。もし、地方の小規模なコンサートホールのように業務向けの回線が無い地点から、ResoNetz Linkでマルチチャンネルでのストリーミングをする際は、どういった回線の使用を想定していますか。

rResoNetz Link システムのネットワーク・カテゴリー、レベル3に対応する送信機で、受信機にはEtherMADI-64 が必要となる。RM-01 はWi-Fiを用いたオーディオIP伝送を行なえるほか、ミキサー機能などを備えたモバイル中継機を想定したスペックとなっている。最終的な技術仕様は現在開発中とのことで、予価は未定。
ResoNetz Link システムのネットワーク・カテゴリー、レベル3に対応する送信機で、受信機にはEtherMADI-64 が必要となる。RM-01 はWi-Fiを用いたオーディオIP伝送を行なえるほか、ミキサー機能などを備えたモバイル中継機を想定したスペックとなっている。最終的な技術仕様は現在開発中とのことで、予価は未定。
丹下 身近に使える回線としては、NTTひかり電話のデータコネクトを検討しています。このサービスは日本全国に対応する従量課金制サービスで、優先的に数メガbpsの帯域を使用できるので、ハイレゾ音源の安定した伝送も可能です。先ほど村井さんが話された大賀ホールの実地実験でもデータコネクトを用いて、ノントラブルの伝送に成功しました。このサービスをResoNetz Linkに標準化させるかどうかは、技術検討の段階ですが、将来的に導入できれば、全国に点在するホールからResoNetz Linkを用いたWAN伝送が可能になり、より柔軟かつ手軽に、ResoNetz Linkを使ったライブ・ストリーミングが実現できるでしょう。
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