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HOME> 地球ゴージャス プロデュース公演 Vol.13 「クザリアーナの翼」の音響システム

地球ゴージャス プロデュース公演 Vol.13 「クザリアーナの翼」の音響システム 取材協力 : アミューズ、エス・シー・アライアンス、ローランド 写真 : 辻内真理
 去る1月8日から2月20日にかけて、東京の赤坂ACTシアターで上演された演劇、『クザリアーナの翼』。俳優の岸谷五朗と寺脇康文が主宰する演劇ユニット、“地球ゴージャス”がプロデュースするこの作品は、4つの階級に縛られた架空の国「ジャメーリア」に生きる人々の物語で、中村雅俊、風間俊介、山本裕典、宮澤佐江、佐藤江梨子、湖月わたるといった豪華俳優陣が出演。大好評のうちに東京公演は幕を閉じた(本誌が刊行される3月18日(火)から31日(月)までは、大阪の梅田芸術劇場 メインホールで公演予定)。

 その音響システムのプランニングとハウスのオペレーションを担当したのは、「SCアライアンス サウンドクラフトライブデザイン社」の武田安記氏。“地球ゴージャス”の公演では、100ch以上のチャンネルを一人でオペレーションするために、複数のコンソールとDAW、アウトボードをMIDIで接続し、コンパクトなMIDIキーボードを使って、すべての機器をプログラム・チェンジするという複雑なシステムが構築されているという。また、今回の公演から、音楽の再生システムとして「ローランド」のハードウェア・レコーダー「R-1000」とコンソール「V-Mixer M-300」を導入。システム全体の安定性と音質をさらに向上させたとのこと。そこで本誌では、その音響システムの詳細について、武田氏に話を伺ってみることにした。
俳優の岸谷五朗と寺脇康文が主宰する演劇ユニット、“地球ゴージャス”のプロデュース公演
photo
地球ゴージャスプロデュース公演 Vol.13『クザリアーナの翼』。
3月18日から31日まで、大阪の梅田芸術劇場でも上演される
――― 今回、現場におじゃまさせていただいた『クザリアーナの翼』は、俳優の岸谷五朗さんが作・演出を手がけられている演劇だそうですね。

武田 ぼくはこのところずっと岸谷さんの作品に関わらさせていただいているんですが、岸谷さんは同じく俳優の寺脇康文さんと二人で、“地球ゴージャス”という名義で公演をやられているんですよ。“地球ゴージャス”はいわゆる劇団ではなく、本当にお二人のユニットという感じなんですが、大体1〜2年に1本のペースで公演をやられているんです。今回の『クザリアーナの翼』は、その“地球ゴージャス”の最新作で、東京はここ赤坂ACTシアターで1ヶ月半、地方も1ヶ月半、合計で約3ヶ月の公演となっています。
 “地球ゴージャス”について、岸谷さんは“エンターテインメントな演劇”とおっしゃってますね。芝居、歌、ダンス、アクション、あらゆるエンターテインメントが詰め込まれています。今回のテーマは“革命”で、階級や奴隷制度に対するメッセージが含まれていたり、割と重いテーマではあるんですけど、架空の時代の架空の国の話なので、本当にエンターテインメントとして観劇できると思います。演者さんは全部で三十数名で、メインの歌い手として中村雅俊さん等が出演されています。ですのでミュージカルのような感じもあるんですが、その範疇に収まらないエンターテインメントとして楽しめる作品になっていますね。

――― 武田さんは、“地球ゴージャス”の作品にはずっと音響オペレーターとして関わられているんですか?

武田 “地球ゴージャス”は、もう20年くらい活動されているユニットなので、もちろん最初からではないんですけど、かれこれ7年ほど関わらさせていただいています。最初は恩師がプランニングを手がけていて、自分はオペレーターだったんですが、最近は“地球ゴージャス”をはじめとする岸谷さんが演出を手がけられる作品では、システム全体のプランニングもやらさせていただいています。普通、こういう演劇作品ですと、オペレーターとは別にプランナーがいるものなんですが、岸谷さんは音響にもとてもこだわられる方なんですよ。なのでオペレーターとは別にプランナーがいたり、複数のオペレーターで作業を分担したりすると、岸谷さんの要望が上手く伝わらなかったり、あとはレスポンスも遅くなってしまうので、ぼく一人ですべてを手がけるようになりました。ぼくも一人でやる方が好きだったりするので、恩師のアドバイスを受けつつ、今はいい感じでやらさせていただいています。もちろん、一人ですべてをこなすために機材やシステム面で工夫は必要になってくるんですけどね。

一人でオペレーションするため、複数の機器をMIDIでシーン・チェンジ
――― 今回の音響システムについておしえてください。

武田 ハウスのマスター・コンソールは「ヤマハ PM5D」で、モニター・コンソールは同じく「ヤマハ」の「M7CL-48」を使っています。それとハウスのサブ・ミキサーとして、SEやカホンなどの入力用に「ヤマハ DM1000」、音楽のミックス用に「ローランド V-Mi­x­er M-300」があって、これらの出力は「PM5D」にアナログで繋いでいますね。本当は1台のコンソールで出来たらいいとは思うんですけど、バックアップを含めると150chくらいの信号を扱わなければならないのと、アウトのバスの数や操作性の都合で、こういったシステムになっています。
 そしてSEの出力用に「Ableton Live」、音楽の出力用に「ローランド R-1000」があって、「Ableton Live」の出力は「Avid」社のオーディオ・インターフェースと「Behringer」社のDAコンバーターを経由してアナログで「DM1000」に入っています。「R-1000」と「V-Mixer M-300」の接続は当然REACなのでデジタルですね。「Ableton Live」に関してはバックアップ用にもう1台置いてあります。

――― これだけのシステムを1人でオペレートするのは大変ではないですか?

武田 そうですね。なので、ほとんどの機材はMIDIで繋いで、「M-Audio」のMIDIキーボードを使って、SEを出すついでにシーン・チェンジしているんですよ。具体的には、「PM5D」、「DM1000」、「V-Mixer M-300」、「Ableton Live」、エフェクト用の「TC Electronic M3000」、「ヤマハ SREV1」といった機材のプログラムがシーン・チェンジで切り替わるようになっています。

photo
ウェッジ・スピーカーとして採用された「K-array」。舞台の前端に沿って設置されている
―――「M-Audio」のMIDIキーボードで、複数のMIDI機器をトリガーし、シーンを切り替えているというわけですね。

武田 そうです。台詞やフレーズに合わせてマニュアルで鍵盤を押して。キューの回数で言ったらかなりの数になるんですけど、そこはリハーサル時に入念に確認してやっていますね。以前はシーン・チェンジだけでなく、パラメーターを動かしたりもしていたんですけど、生ものの性質上、上手くいかない場合もあったんですよ。ですから今は基本的にシーン・チェンジだけを使っています。人の声はデータでは追えないですしね。

――― コンソールだけでなく、アウトボードのプログラムもMIDIで切り替えるシステムというのは久々に見た気がします。

武田 すべてはMIDIのおかげですね。「ヤマハ」や「ローランド」の機材には、今でもしっかりMIDI入出力が備わっていますから。こういうシステムに落ち着くまではもちろん時間がかかったんですけど、岸谷さんの要望に応える形でどんどんブラッシュアップしています。

――― モニター周りについてもおしえてください。

武田 モニター・コンソールは、先ほども言ったとおり「M7CL-48」で、演者さんのマイクに関しては、ソロがあるソリストに関してはステージ上で頭分けしています。もちろんすべてを頭分けにしてもいいんですけど、そうするとモニター・マンも常に何十本ものフェーダーを追っかけなければならなくなってしまうので、ある程度はミックスで送っています。それに全部ウェッジから返してしまうと、ソリストだけでも10人いるので、団子になって聴き取りにくくなってしまいますからね。マイクはすべてワイヤレスで、「Sennheiser」の本体に「DPA」のヘッドを組み合わせて使っています。
 モニター・スピーカーは、サイド・フィルとして「Electro-Voice」の「X-Array」を3段積みにして置いています。今回のステージ上のセットは立体的な感じになっているので、ちょっと上を狙ったセットアップにしていますね。あとはポイント・ソースで「Meyer Sound」のスピーカーを置いているのと、ウェッジとして細長いスピーカーの「K-array」を使っています。これまではウェッジにももっと大きなスピーカーを使っていたんですけど、お客さんの視点で見たときに手前に大きなスピーカーが置いてあるのはどうだろうと。岸谷さんは別に構わないと言ってくれていたんですけどね。それでいろいろ探している中で「K-array」を発見して、これはなかなか良さそうだなと思って使い始めました。今回は3インチのものを横に並べて使っています。
 モニターに関して言えば、演劇でモニター・コンソールが用意してあるのは珍しいかもしれないですね。もちろん、ブロードウェイのミュージカルだと当然ですし、国内の演劇でもオーケストラとかが入っているものですと、モニター・コンソールを使うんですけど。この規模の演劇でモニター・コンソールを使用しているのは、やっぱり演者さんのリクエストに応えたいからです。外のバランスが良くても、演者さんは聴こえにくいということはありますからね。演者さんのリクエストにしっかり応えるなら、表と中を分けて別々にした方がいいんじゃないかと。


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