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HOME> マンハッタン・ジャズ・オーケストラ 来日公演レポート

Prosound Report マンハッタン・ジャズ・オーケストラ 来日公演レポート 写真:辻内真理
 今年で結成25周年となるジャズ・ビッグ・バンド、マンハッタン・ジャズ・オーケストラ。名アレンジャー/ピアニスト、デヴィッド・マシューズ率いるマンハッタン・ジャズ・オーケストラは、ブラス・ロック、ラテン、映画音楽、クラシックなど、幅広いジャンルの音楽をビッグ・バンドで痛快に演奏するグループとして、世界中で高い人気を誇っている。そんなマンハッタン・ジャズ・オーケストラが今年2月から3月にかけて、約2年ぶりの来日。東京・名古屋・大阪・広島・岩国・札幌、6都市で計7回の公演を行なった。また、コンサートだけでなく、東京のスタジオで新作のレコーディングも行なわれたという。そこで本誌では、招聘・制作企画を手がけた株式会社ミュージックポケットの藤井真一氏と、ホール公演でオペレーターを務めた有限会社ベアフットオーディオの熊谷正憲氏に、今回の公演のPAシステムとレコーディングの様子について話を伺ってみることにした。
世界最強のビッグ・バンド・ジャズ集団、マンハッタン・ジャズ・オーケストラ
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デヴィッド・マシューズ氏(写真右)とプロデューサーの川島重行氏(写真左)
プロサウンド(以下、PS) 藤井さんはマンハッタン・ジャズ・オーケストラ(以下、MJO)のデヴィッド・マシューズさんとは30年以上の付き合いだそうですね。

藤井 その昔、1979年か1980年のことなんですけど、あるギタリストのアルバム・レコーディングをぼくのユニットでやることになり、そのストリングス・アレンジをデヴィッド・マシューズにお願いしたんです。当時キングレコードのプロデューサーだった川島重行さんがデヴィッド・マシューズのプロデューサーでもあったので、その縁で彼にストリングス・アレンジを依頼することができたんですね。それがデヴィッド・マシューズの初来日になるんですが、僕は彼の大ファンだったので、来日中はすべての仕事をキャンセルして、食事から何から全部アテンドしましたよ(笑)。そこから長い付き合いが始まったんです。
 ちなみに川島重行さんという人は、知っている人は知っていると思いますけど凄い人で、日本人プロデューサーとして初めてグラミー賞を受賞した方なんです。ジャズ・ビッグバンド部門で。受賞したのは坂本龍一と同じ年で、ニュースなどでは一緒に日本人の快挙として報じられましたね。

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マンハッタン・ジャズ・オーケストラの東京公演が行なわれた東京文化会館の大ホール
PS 藤井さんにとって、デヴィッド・マシューズさんの魅力というと?

藤井 彼は昔からジャズをやっている人なんですけど、ロック・ミュージックのフィーリングやフレーバーをしっかり理解している人なんですよ。頭で理解しているだけではなく、そのフィーリングやフレーバーを音として出せる。当時のジャズ・ミュージシャンで、ロックのフレーバーを出せる人は他にはいなかったと思います。ジャズ・ミュージシャンがロックに興味が無かったというのもありますが、リズム感覚や解釈の違いから、技術的にも難しかった面があったのかもしれません。

PS 現在はMJOの招聘元として、日本で定期的に公演を行なっていますね。

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ステージ袖に置かれた「ローランド」の「Digital Snake S-0816」(上)と「Digital Snake S-4000S-3208」。ハウスの「V-Mixer M-480」とREACで接続され、「V-Mixing System」の入出力として機能
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ハウスの「V-Mixer M-480」の脇に置かれた48トラック・レコーダーの「ローランド R-1000」。今回はリハーサル時のサウンド・チェック用に活用された
藤井 僕がMJOの招聘元になったのは約2年前のことで、何年か前から川島さんから相談を受けていたんです。でも僕は秋吉敏子の招聘をやっていたので、難しいと感じていたんですよ。しかしその後、状況が変わったので、こうしてMJOの招聘を手がけられるようになったんです。

PS 今回の来日公演は、約2年ぶりですか?

藤井 そうですね。東京、名古屋、大阪、広島、岩国、そして札幌で計7公演行ないました。東京だけ東京文化会館とブルーノートの2箇所で行なったんです。MJOは、本当にファン層が広いですね。もちろん純粋なジャズ・ファンが多いんですけど、MJOはアフター・ビートを聴かせてくれるバンドなのでロック・ファンも多いんですよ。普通のジャズのビッグ・バンドの場合、ビーバップをメインで演奏するんですけど、MJOの場合は誰もが知っているようなアメリカの人気テレビ番組のテーマ曲やスティーヴィー・ワンダーの名曲なんかもやる。だからお客さんは老若男女、本当に幅が広いですね。最近はジャズ・ミュージシャンを目指している音大生や、ブラバンをやっている高校生とかも増えていますよ。
 このところMJOは2年に一度のペースで来日しているんですけど、1年半くらいのペースに縮めたいと思っています。実は今年が結成25周年なので、12月にも再来日して記念コンサートをやる予定なんですよ。このクラスの外タレで1年に2度来てコンサートを行なうというのは異例だと思いますが……。

MJOのコンサートで狙っているのは、客席で聴いてスピーカーの存在を感じさせないサウンド
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「V-Mixing System」の核となる「V-Mixer M-480」。ステージ袖の「Digital Snake S-0816」と「Digital Snake S-4000S-3208」、そして脇の「R-1000」とはREACで接続されている
PS MJOのライブは、2年前も取材させていただきましたが(註:その模様は、2012年10月号に掲載されています)、PAに関してはその存在を感じさせない、生音を最大限に活かすシステムになっていますね。

藤井 こういうシステムでやっているのは、おそらくウチだけだと思います。たとえばBunkamuraオーチャードホールは2,150人収容できる会場で、プロセニアム・スピーカーも使ってはいますが、メインで使っているスピーカーは幅60㎝、高さ40㎝のものが左右に1組ずつだけですから。いかにオーケストラの生のサウンドと感じていただけるか。単にディレイをかけるだけでは実現できない、熊谷のノウハウの塊なんですよ。というのも、我々がこのシステムで狙っているのは、スピーカーやPAシステムのことを感じさせないサウンドなんです。ただ、もちろん弱音楽器もあるので、そういったものはPAシステムで増幅しなければならない。しかし弱音楽器だけ下手にPAしてしまうと、生音との誤差が気になるので、慎重にマイク・セッティングを行なう必要があるんです。
 こういう音作りを始めたのは、秋吉敏子のビッグ・バンド(Toshiko Akiyoshi Jazz Orchestra)からなんですけど、なぜこんなことを始めたかというと、いろいろなビッグ・バンドのコンサートを聴きに行っても音が画一的でつまらなかったからなんです。どのバンドを見に行ってもバランスが同じでつまらなかった。考えてみれば当然ですよね。バンドのバランスではなく、オペレーターが機械で作ったバランスなわけですから。でも音楽ってそういうものではないと思うんですよ。ミュージシャンそれぞれに独自の演奏能力があって、持ち味があるわけですから、コンサートでもそれを聴かせてくれないとつまらないんです。我々が狙っているのは、客席で聴いてスピーカーの存在を感じさせないサウンド。「スピーカーから音が出ている」と感じた時点で失敗なんです。だから熊谷は大変ですよね。実際にスピーカーから音が出ているのに「おい、スピーカーから音が出ているぞ」とか言われるわけですから(笑)。


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