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Prosound Feature ローランド LIVE MIXING CONSOLE  今月5日、ローランドは新型ミキシング・コンソール、O·H·R·C·A M-5000を発表した。O·H·R·C·A M-5000は、同社が初めて手がけた中型クラスのミキシング・コンソールである。ライブ・コンサートのFOH/モニター用途をはじめ、放送の中継/収録、ライブ・ハウスやホールなどの設備など、あらゆる現場に対応する新世代ミキシング・コンソールだ。 様々な特徴を備えるO·H·R·C·A M-5000だが、最大のフィーチャーは内部構成を自由に定義できる“コンフィギュラブル・アーキテクチャー”が採用されていることだろう。O·H·R·C·A M-5000は、ミキサーとしての機能は固定されておらず、最大128chの範囲で入力/出力/AUXバス/マトリクス・バスなどを自由に定義することができる。例えばFOH用途なら入力チャンネルを多めに確保し、モニター用途であれば出力チャンネルを多くするといったフレキシブルな使い方が可能なのだ。まさに“変幻自在のミキサー”と称するに相応しく、これまで1千万円クラスのコンソールにしか採用されていなかった“コンフィギュラブル・アーキテクチャー”がこの価格帯のコンソールに導入されたというのは、かなり衝撃的な出来事なのではないだろうか。 そこで本誌では、開発者にじっくり話を伺うことで、この革新的なコンソールの全貌にいち早く迫ってみることにした。写真:小野広幸 O·H·R·C·A M-5000 photo
 ローランドの新世代ミキシング・コンソール、O·H·R·C·A M-5000。はたしてこのコンソールはどのようなコンセプトで開発され、どのような特徴を身にまとって世に送り出されるのだろうか。開発を手がけたローランド株式会社 RPGカンパニー所属の辰井義信氏、野中剛氏、内山隆文氏の3氏にじっくりと話を訊いてみた。

開発のスタート・ポイント

─── O·H·R·C·A M-5000(以下、O·H·R·C·A。“オルカ”と発音する)は、そのミキシング・キャパシティや機能を見ると、中型卓にカテゴライズされるコンソールだと思います。ローランドがこれまで注力してきたV-Mixing Systemは、比較的小規模な現場向けのコンソールでしたが、なぜその上のクラスの中型卓を開発しようと思ったのか。まずはO·H·R·C·A開発のスタート・ポイントからおしえていただけますか。

辰井 長年、V-Mixing Systemの開発を手がけてきて、より上のクラスのコンソールへの想いは持っていたのですが、一番のきっかけはお客様からのリクエストですね。V-Mixing Systemは、導入していただいたお客様からその音質と機能、そして拡張性をひじょうに高く評価していただいているのですが、“もっと大きなモデルがあれば、大規模な現場にも使えるのに”という声は、決して少なくない数のお客様から頂戴していたんです。“せっかくこれだけの音質を持っているのに惜しいよね”とか……。中には本当にV-Mixing Systemの音質を気に入って、2台カスケード接続して使用されるお客様もいらっしゃいました。それだったらということで、V-Mixing Systemよりも上のクラスのコンソールの開発に着手したんです。

製品コンセプト #1 96kHz対応とFPGA+DSPのハイブリッド・エンジンの採用による高品位な音質
─── O·H·R·C·Aの製品コンセプトをおしえてください。ローランド初の中型卓ということで、ミキシング・キャパシィの増強/サーフェースの大型化以外に考えたことというと?

野中 最初の段階で決まったのが、96kHz対応ということです。V-Mixing Systemの音質は、お客様からひじょうに高く評価していただいていますが、開発側からすると一つ大きな宿題が残っていて、ミキサー部のV-Mixerだけが96kHzに対応していなかったんです。入出力を担うDigital Snakeも、パーソナル・ミキサーのM-48も96kHzをサポートしているのに、ミキサーだけが対応していなかった。ですからいつかは96kHzに対応したミキサーを出したいと前々から思っていて、それは今回、絶対に実現しようと考えました。

辰井 V-Mixerの最初の製品、M-400を発表したのは2007年のことですが、当時のプロセッサーの処理能力ですと、96kHzに対応させてしまうと十分なチャンネル数が確保できなかった。ですからV-Mixerに関しては、あえて96kHzには対応させなかったんですが、“Digital Snakeが対応しているのだから、96kHzで使いたい”というお客様からの要望も多かったですし、当時と比べるとプロセッサーの処理能力も大幅に向上したので、今回はぜひとも96kHzに対応させようと考えたんです。

photo 内山 やはり96kHzのサウンドは、アンビエントが全然違いますし、一皮剥ける感じがありますね。入出力のレイテンシーも、48kHzと比べるとほぼ半分になるわけですから、メリットは大きいと思います。

─── ユーザーの間で高く評価されているV-Mixing Systemのサウンドは、O·H·R·C·Aでも継承されていると考えていいのでしょうか。

辰井 そうですね。しかしO·H·R·C·Aは96kHzで動作するわけですし、内部のアルゴリズムも全面的にブラッシュ・アップしていますので、V-Mixing Systemの定評あるサウンドを継承しつつ、その音質は格段に向上しています。

内山 O·H·R·C·Aでは、FPGAと弊社オリジナルのDSPを組み合わせたハイブリッドな処理体系を採用しています。サミングやチャンネルEQ、チャンネル・ダイナミクスを担うのがFPGAで、AUXで使うようなエフェクトを担うのがDSPという使い分けですね。処理に関しては、その部分部分で最適な解像度に変えているんですが、今回のアルゴリズムの肝は、演算の途中で一切ビットを切り捨てないという点にあります。従って演算誤差が生じず、デジタル・コンソールで発生しがちなノイズや音質劣化はまったく起こりません。核となるサミング部分は72bitと余裕のあるキャパシティになっているので、すべてのチャンネルを目一杯突っ込んでも、クリップや切り捨てなどは一切生じない設計になっているのです。

─── チャンネルEQやリバーブなどのアルゴリズムは新しくなっているのですか?

内山 V-Mixerのアルゴリズムをベースに、大幅に改善しています。例えばチャンネルEQですと、どんなにパラメーターを変化させても“プチ”というノイズがほぼ発生しない、ひじょうに滑らかな効き具合になりました。もちろんV-Mixerユーザーに好評のRE-201やSDE-3000、SRV-2000といったヴィンテージ・エフェクトもすべて搭載していて、これらのアルゴリズムも96kHzに対応させただけでなく、全面的にブラッシュ・アップしています。より実機に忠実なサウンドが実現できていると思います。

辰井 アルゴリズムに関しては、処理の精度が大幅に向上していますね。これは数字で表すのは難しいんですが、時間をかけて生真面目に追求した部分です。

製品コンセプト #2 ミキサーとしての機能を自由に定義できる “コンフィギュラブル・アーキテクチャー”
─── 開発にあたって、音質の次に考えたことは何ですか?

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O·H·R·C·Aは、96kHzのハイ・サンプル・レートに対応。内部回路はFPGAとローランド・オリジナルのDSPで構成され、サミング回路は72bit処理となっている
野中 最初に96kHz対応でいこうと決めたわけですが、いくらプロセッサーの処理能力が向上していると言っても、96kHzで使うと48kHzの倍のパワーが必要になるわけです。その中で現代のコンソールに求められるチャンネル数を確保しようとすると、他社製品とそんなに変わらない仕様になってしまうんですよ。もちろん、中型卓としては十分なチャンネル数なんですが、我々としてはせっかく新しい市場に参入するわけですから、もう少し他社製品と差別化したかった。何度も議論を重ねる中で、“やっぱり96kHzはやめて、48kHzにしてミキシング・キャパシティを倍にした方がいいんじゃないか”という意見も出たりしたんですが、96kHz対応というのはどうしても譲れない部分で……。それで他社製品と差別化できる特別な機能、O·H·R·C·Aならではのフィーチャーというのを模索する日々が続いたんですが、ある日技術者の一人が、“入出力や内部バスの構成を自由に定義できるコンソールというのはどうですか?”と訊いてきたんですよ。それを聞いたときに“これだ!”と思いました。これはいけるぞと。
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ローランド株式会社
RPGカンパニー 製品リーダー
辰井義信(たつい・よしのぶ)氏
ローランド株式会社
RPGカンパニー 係長
野中剛(のなか・たけし)氏
ローランド株式会社
RPGカンパニー
内山隆文(うちやま・たかふみ)氏
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O·H·R·C·Aでは、この価格帯のコンソールとしては初めて“コンフィギュラブル・アーキテクチャー”を採用。最大128chのシグナル・パスを、入力チャンネル、メイン出力、AUXバス、マトリクス・バス、サブ・グループ・バス、ミックス・マイナス・バスなど自由に割り振り、内部構成を自由に定義できることができる。例えば、FOHコンソールとして使用する場合は入力チャンネルを多めに設定し(グラフ一番上)、モニター・コンソールとして使用する場合はAUXバスを多く設定することが可能(グラフ上から2番目)。使用する現場、アプリケーションに合わせて、内部構成を自由に変化させられるコンソール、それがO·H·R·C·Aなのである
辰井 それがO·H·R·C·A最大のフィーチャーである“コンフィギュラブル・アーキテクチャー”なんです。O·H·R·C·Aの内部構成は固定されておらず、最大128chの範囲で入力チャンネル、メイン出力、AUXバス、マトリクス・バス、サブ・グループ・バス、ミックス・マイナス・バスなどを自由に定義できるようになっています。例えば、FOHで使用する場合は入力チャンネル数を多めに割り当て、モニターで使用する場合は逆に入力チャンネル数を少なくして、その分AUXバスの数を増やすことができる。またマトリクス・ミキサーとして使う場合は、60ch以上の入力と60系統以上のマトリクス・バスという大胆な割り振りにも対応します。現場の用途に合わせ、内部構成を自由自在に定義できるコンソール、それがO·H·R·C·Aなのです。
 コンソールの仕様を決める上で非常に難しいのが、入出力やバスの数なんです。FOH、モニター卓、中継、設備……使用される現場によって必要とされる数は本当にマチマチですから。たとえライブに特化した仕様にしたとしても、現場では急遽追加のチャンネルが必要になることが多々ある。従って、どれだけ冗長性を持っているかというのが、そのコンソールの実力だったりするんです。これまでコンソールで補えない部分は、サブ卓やプロセッサーを追加して凌ぐか、あるいは最初から大規模なコンソールを使うかという二択だったわけですが、O·H·R·C·Aなら内部の仕様を変えてあげることで、どんな現場にも対応することができる。見た目はポータブルで、普及価格帯のコンソールではあるんですけど、中身は1千万円以上のハイエンド・コンソールに引けを取らないというか。これは凄いコンソールになるなと興奮しました。

─── 内部構成を自由に定義できるというのは、デジタルであることの利点を活かしたすばらしい設計だと思うのですが、なぜこれまで、普及価格帯ではこのような設計のコンソールが登場しなかったのでしょうか。

野中 やっぱりソフトウェアの開発が難しい。どんな構成でも問題なく動作するようにしなければなりませんから、検証も含め、ソフトウェアの開発には時間がかかります。固定されたものよりも、自由なものの方がつくるのは難しいということです(笑)。

─── 自由に定義できる128chのシグナル・パスというのは、すべて同じ機能を持っているのでしょうか?

内山 基本的には同じです。ハイパス/ローパス・フィルター、2基のダイナミクス、4バンド・パラメトリックEQ、シグナル・ディレイを備え、2個目のダイナミクスとEQは順番を入れ替えることもできます。また、AUXエフェクトなどを挿入できるインサート・ポイントも2つ用意されています。

─── 内部構成を現場で変えるという使い方も現実的ですか?

内山 まったく問題ありません。再起動することなく、電源を入れたままで内部構成を変えることができます。

辰井 一度この自由さに慣れてしまったら、従来のコンソールは不自由に感じると思いますよ。本当にそれくらい快適な仕様です。

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