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PROSOUND REVIEW 新時代を切り拓く Roland M-5000C
常設機材としての「M-5000C」
 次いで、演劇の音響でツアーにいった際の劇場、ホールの音響卓に置き換えて考えた。いくつかの劇場・ホールの設計アドバイザーを行なってきた経験から、劇場における音響基地は多くの場合次の3ヶ所に分けられる。①音響室(ここにコンソールが置かれ、操作、信号配信の中心となる)、②舞台袖(舞台上の回線がここに集まり、また舞台監督がいるポジションであることから催し物運営の中心となる)、③パワーアンプ室(出力系が集中し、ここから各所のスピーカーへ配信される)。

図1 テスト用に組んだシステム
 これら3ヶ所にはI/Oが常設され、客席内の仮設ブース設置場所も含め、LANコネクターが各所に配置されれば、コンパクトな「M-5000C」も劇場の常設機材として充分活用できる。この場合「ローランド」独自規格REAC仕様I/Oである「S-4000S」を常設あるいは移動機器として併用すると良いだろう。ただし出力についてはスピーカー群が60系統近くになることもあるため、REACの40chでは足りなくなるかもしれないが、その場合はMADI回線増設などで対処すれば済む。今のところ劇場やホールでは24bit48kHzクオリティが一般的なスペックだが、録音やコンシューマーの分野では24bit96kHzへの移行がかなり進んでいる。「M-5000C」の採用によって劇場やホールでも24bit96kHzの高規格環境を良好なコストパフォーマンスで手に入れられるのは大きな魅力だし劇場にとっての財産になると思う。

 さらに、すべての回線の2重化が可能で、今後コンソールのミラー動作が可能になれば、完璧に近い安全な動作環境の提供も可能になっていくだろう。当然のことながら「M-5000C」にはモニターシステム「M-48」がREACで接続でき、スプリッター「S-4000D」を使用することで任意に増設できる。それぞれの「M-48」の機能は「M-5000C」の画面からリモート管理が可能であるため、その機能を活かして「M-48」を楽屋エリアや照明室(調光室)、フォロースポット室などを幅広くサポートするモニターミックス用にも利用できないかと考えた。

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 劇場では通常、舞台袖あるいは音響室に運営連絡設備用のミキシング卓を置き、各モニターバランスは別系統で調整する。楽屋エリア向けのモニターであれば調整はそのエリアへ行って音を確認しながら行なうもので、単独かつリアルタイムで調整を行なうのは困難を伴う。確かに1度調整してしまえば変更する必要はさほどないものだが、例えば当日にリハーサルや本番を控えた乗り込みスタッフが、PA系統の回線とエアモニターの回線、演出用のガナリ回線、舞台監督の進行用アナウンス回線などを「M-5000C」に入力するだけで調整室からコントロールできるとなれば相当にありがたい。「M-48」の需要もかなり高まるはずだ。このように多機能で簡易な一括集中制御に加えて今後iPadによるリモート管理機能を活用できるようになれば、私にとってさらに「やってみたいこと」と「実現できること」の間にあった溝が、小さいことからでも確実に埋めていけるようになる、そんな期待がさらに高まった。

 さて、そんなことを考えながら「M-5000C」のシステム構築例を、実験的ではあるが私のスタジオに組んでみたのが図1である(今回はリダンダント接続はしていない)。ここで「M-5000C」の基本I/Oを振り返ってみると、アナログインプット16ch、AES/EBUインプット4ch、アナログアウト8ch、AES/EBUアウト4chである。このAES/EBUはS.R.C無しなので動作CLOCKに注意が必要だが、USBで16chのIN/OUTが接続可能なのは嬉しいところ。演劇やダンスの現場で頻繁に求められるパソコンとのセットアップに重宝するからだ。一般的に多く用いられる再生ソフト「Ableton Live」は出力設定を96kHzにすれば音源データを変換しなくても96kHzで再生されるため、「M-5000C」との融合面でも安心して使用できるだろう。

 次に3つの端子が装備されたREACポートのうちPrimaryを「S-4000S」に接続、これを舞台袖集中盤と設定、Secondaryは「S-4000D」を介して3台の「M-48」を接続、それぞれ楽屋事務所、照明室、フォロースポット室を想定して各所にパワードスピーカーを接続した。また今回は「M-5000C」の2つのEXPANSION SLOTの1つにXI-REAC カードを、もう1つにXI-DANTEカードを装着してある。REACカードには「S-1608」を接続、下手袖のI/Oと考えた。

総評
 以上のような接続でシステムを構築し、各パラメーターやシーン記憶、再生あるいはUserアサイナブルセクションの動作、リモートコントロールソフトの動作などを、現場のオペレーターにも参加してもらいながら検討した。
 その中でパラメーターについては必要充分、あるいはそれ以上の結果が期待できる。シーン記憶については新しいシーンが必ず後に作られるのではなく、小数点を持つシーンが自動的に形成されるのは現場で使いやすい機能だと思う。ただし、シーン再生がサーチして現出するまで時間がかかりすぎているような気がする。ミュージカルなどフレーズでチェンジさせることが多い現場では不安が残る。

 Userアサイナブルセクションはかなりの完成度を見せているから、例えば「EQ操作で使用したい場合、ノブをグループ化して複数のボタンに割り当てられないか」といった新たなアイデアがいくつも出てきそうだ。「M-5000RCS」というリモートソフトはONライン、OFFラインでも本体の画面と全く同じ動作でわかりやすく、使いやすい。このソフトでパラメーター操作といったオペレーションの学習もできそうだ。もうひとつリクエストするなら、独立したメーターブリッジが大画面で表示できるともっと使いやすくなると思う。

 最後に、この原稿を書いている間にも完成を待っていたiPadアプリがつい先日リリースされたとのニュースが届いた。早く試してみたいと、もうしばらく「M-5000C」の返却を躊躇ってしまう。これだから良いマシンとの出会いは後を引くのだ(笑)

 「M-5000/5000C」はこれからも進化を続けていくだろう。REACに留まらない、柔軟なベクトルを持った卓として、また自身が1つの新たなプラットフォームとしても今後成長していってほしいと思う。24bit96kHzスタンダードの扉は、ここ劇場においても確実に開かれたのだから。

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