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DRAGON FORCEのライブで活躍するローランド V-Mixer M-200i
 スラッシュ・メタルに近い高速で手数の多い演奏に、パワー・メタルの叙情的なメロディを融合した
メロディック・スピード・メタル。世界中に熱狂的ファンを生み出している音楽スタイルだが、
この世界を代表するバンドの一つがイングランド出身のDRAGON FORCEだ。DRAGON FORCEは、
メロディック・スピード・メタルの中でも最も高速なバンドとされており、
ファンの間では“No.1スピード・スター”とリスペクトされている。
 そんなDRAGON FORCEの日本公演が先頃、東京・赤坂の赤坂BLITZで開催された。
会場に入って驚いたのが、メタル系バンドのステージ・セットと言ってもいい“アンプの壁”が無いこと。
何とギターの出力は「KEMPER」などのモデリング・アンプでプロセッシングされ、そのままPAに送られるという。
またステージ袖には「ローランド」のデジタル・ミキサー「V-Mixer M-200i」がステージ側を向いて置かれており、
モニター・バランスはメンバー自身の手で調整するようなシステムが組まれているのだ(つまり、
モニターのオペレーターがいないということ)。
世界各地を飛び回るバンドならではの効率を第一に考えた音響システムと言えるだろう。
果たしてこのユニークなシステムはどのようなアイディアから生まれたものなのか、
DRAGON FORCEの専属エンジニアであるジョン・ウォルシュ(John J Walsh)氏と、
メンバーのハーマン・リ(Herman Li)氏に話を訊いてみた。
取材協力:ローランド株式会社
写真:辻内真理
ステージ袖にV-Mixer M-200iを置き、モニター・バランスはメンバー自身の手で調整
――まずはジョンさんの経歴をおしえていただけますでしょうか。

ジョン・ウォルシュ (以下、JW) 私は若い頃からエンジニアという仕事に興味を持っていて、80年代後半にコンサート・ツアーのクルーとして働き始めました。1988年には、ポール・マッカートニーやプリンスといった大物アーティストのコンサートでクルーとして働いていましたね。そのときの仕事は機材を運んだりする程度だったんですが、トップ・エンジニアからいろいろ話を聞くことができて、私にとっては非常に有意義な時間でした。そして1989年に真剣にエンジニアリングを学ぼうと思い、大学に入って勉強することにしたんです。1991年頃にはクラブ・サーキットを行うアーティストのエンジニアとして現場に出始めました。FOHとモニターの両方はもちろんのこと、ツアー・マネージャーやプロダクション・マネージャーなどの仕事もこなしていましたね(笑)。
DRAGON FORCEが赤坂BLITZにモニター・コンソールとして持ち込んだ「ローランド V-Mixer M-200i」。ステージ袖に設置され、メンバー自身の手でモニター・バランスが調整できるようになっている
DRAGON FORCEが赤坂BLITZにモニター・コンソールとして持ち込んだ「ローランド V-Mixer M-200i」。ステージ袖に設置され、メンバー自身の手でモニター・バランスが調整できるようになっている
 その後、メジャーなバンドの仕事も多く手がけるようになり、Alabama 3というイギリスのグループの専属エンジニアを約10年間務めました。また、トリオ編成のパワー・ロック・バンド Biffy Clyroや、アイリッシュ・ロック・バンド Therapy?の仕事も何年か手がけましたよ。こういったグループとは、契約というよりも互いの信頼関係で仕事をしてきた感じです。DRAGON FORCEとは2006年から仕事を共にしていて、FOHエンジニアとしてだけでなく、ツアー・マネージャーとしての仕事もこなしています。最近、彼らはツアーが多いので、2014年9月以降で自宅に戻れたのはたった2ヶ月ですね(笑)。

――今回の赤坂BLITZでのライブでは、FOHはハウス・コンソールの「DiGiCo D5」がそのまま使用されたようですが、モニター・コンソールは持ち込みだったようですね。

JW はい、そのとおりです。以前はモニターに関しても会場常設のコンソールを使っていましたが、2015年1月からは「ローランド」の「V-Mixer M-200i」をバンド専用のモニター・コンソールとして持ち込んでいます。

――モニター・コンソールを持ち込むようにしたのはなぜですか?

ご覧のように「V-Mixer M-200i」は、サーフェースがステージ側を向く形で設置されている
ご覧のように「V-Mixer M-200i」は、サーフェースがステージ側を向く形で設置されている
JW DRAGON FORCEのライブでは6人のメンバー全員がインイヤー・モニターを使用しており、それだったらメンバー自身の手でモニター・バランスを調整できるようにしたらいいんじゃないかと考えたんです。そうすれば演奏中でもモニター・バランスを微調整することができ、彼らはプレイに集中することができます。DRAGON FORCEはフェスティヴァルに出演することも多いのですが、そういったイベントではバンドの転換時間は30分くらいしかありません。その間はサウンド・チェックをすることもできないのですが、メンバーが自分たちでモニター・バランスを調整できるようにしておけば、演奏が入ってからでも対処できます。このようなアイディアから「V-Mixer M-200i」を導入し、モニター・コンソールとしてライブ会場に持ち込むようになったのです。

――つまりモニター・エンジニアがいないということですか?

JW そのとおりです。最初に私がゲイン・ストラクチャーなどのセットアップを行い、各メンバーの基本的なモニター・バランスを設定します。「V-Mixer M-200i」はステージ袖に、メンバーの方を向けて置いてあるので、後はメンバー自身の手で微調整してもらいます。そして私はハウス・コンソールのオペレートを行うわけですが、「V-Mixer M-200i」なら何かあってもiPadを使ってリモート・コントロールできますからね。また、今回のツアーに帯同しているスタッフは私を含めたった3名です。ご存じかと思いますが、ツアー・ビジネスはますます予算を抑える必要に迫られています。以前は専任のモニター・エンジニアを雇い、6名のスタッフが帯同していたこともあったのですが、最近はできるだけ人数を抑えてツアーを回りたいとを考えています。これは特に我々に限ったことではなく、ツアー・ビジネスの最近の傾向と言えるでしょう。それに何より、モニター・バランスの調整をメンバーに委ねることで、私はハウスのオペレートに集中できます(笑)。

DRAGON FORCEのリード・ギタリスト、ハーマン・リ(Herman Li)氏
DRAGON FORCEの専属エンジニアであるジョン・ウォルシュ(John J Walsh)氏
DRAGON FORCEの専属エンジニアであるジョン・ウォルシュ(John J Walsh)氏
DRAGON FORCEのリード・ギタリスト、ハーマン・リ(Herman Li)氏
ハーマン・リ(以下、HL) バンドとしても自分たちでモニター・バランスや音質を調整できる方がハッピーです。以前は専任のモニター・エンジニアがいた時期もあったのですが、我々の意図が理解してもらえなかったり、いろいろな問題がありました。もちろん、モニター・エンジニアという存在を否定しているわけではありません。我々にはこのスタイルの方が合っているということです。

――とてもユニークなシステムですね。

HL しっかりした演奏をするためには、モニター・バランスというのはとても重要です。音量が大きすぎても小さすぎてもダメで、常に一定のレベルが保たれている必要があります。特にボーカルのマークにベストなパフォーマンスをしてもらうためには、繊細なモニター・バランスの調整が必須なんです。そういったことを総合的に考えると、メンバー自身の手でモニター・バランスを調整できるようにするのがベストなんです。メンバーそれぞれ、別のメーカーのインイヤー・モニターを使用していますし、モニター・エンジニアに細かく調整してもらうよりも自分たちでやった方が効率的なんですよ。「V-Mixer M-200i」を導入してからは、モニター・バランスを調整してもらうためにオペレーターに向かって叫ぶ必要もなくなり、本番中でも微調整できるようになりました。今は非常に平穏でリラックスした状態で本番の演奏に臨むことができます。何かあってもオペレーターに向かって身振り手振りでシグナルを送る必要はありませんからね(笑)。ほとんどフラストレーションがありません。今はドラムのジーが、何かあったときにドラム・テックを呼ぶくらいです。「V-Mixer M-200i」によって最小限の人数でツアーを回れるようになりましたし、本当に様々な点で助かっていますよ。
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