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HOME > 大阪芸術大学に見るローランド M-5000の運用

大阪芸術大学に見るローランド M-5000の運用

取材協力:学校法人塚本学院 大阪芸術大学、株式会社ワタナベ楽器店、ローランド株式会社 写真:河上良
1964年に創立された西日本最大規模の総合芸術大学、「大阪芸術大学」。2018年現在、芸術学部/15学科、大学院芸術研究科、通信教育部を擁し、在籍する学生の数は実に6,000人を超える。各方面で活躍する卒業生も多く、日本を代表する芸術大学と言っていいだろう。 そんな「大阪芸術大学」の音楽学科 音楽・音響デザインコースでは昨年、コンサートSRの授業で使用する機材として「ローランド」の「O・H・R・C・A M-5000(以下、M-5000)」を導入した。同学科では、いわゆるライブ・コンソールを導入したのはこの「M-5000」が初めてとのことで、授業や実習だけでなく、学生たちが出演するコンサートなどでも使用されるという。そこで本誌では同大学にお邪魔し、数あるコンソールの中から「M-5000」を選定した理由について話を伺ってみることにした。取材に応じてくださったのは、「大阪芸術大学」音楽学科 音楽・音響デザインコースの教授、芹澤秀近氏である。

1964年創立の総合芸術大学、大阪芸術大学

PS まずは「大阪芸術大学」さんについて伺いたいのですが、現在音楽系の学科はいくつあるのですか。

芹澤 音楽学科と演奏学科の2つです。音楽学科では音楽制作や音楽教育について学び、演奏学科では文字どおりクラシック音楽の演奏やポピュラー音楽について学びます。私が担当しているのは音楽学科の"音楽・音響デザインコース"で、ここでは音楽学をはじめ、作曲/音響制作、レコーディング、コンサートSRなどが学べます。音響制作と言っても、いわゆる電子音響音楽だけでなく、例えば"スーパーで買い物をしたくなる音"をテーマに音を制作したり、その内容は多岐にわたっていますね。

昨年、「大阪芸術大学」が導入したライブ・ミキシング・コンソール「ローランド O・H・R・C・A M-5000」(写真右手前)。左奥に見えるのはアナログ・シンセサイザーの歴史的名機「ローランド SYSTEM-700」
昨年、「大阪芸術大学」が導入したライブ・ミキシング・コンソール「ローランド O・H・R・C・A M-5000」(写真右手前)。左奥に見えるのはアナログ・シンセサイザーの歴史的名機「ローランド SYSTEM-700」
PS プロサウンドではここ数年、音楽/音響系の教育機関を取材させていただくことが多いんですが、いろいろな学校がある中で、「大阪芸術大学」さんの音楽学科/演奏学科の特徴と言うと?

芹澤 譜面の読み書きとイヤー・トレーニングをしっかりやっていることですね。音楽学科、演奏学科ともに、音楽の基礎ということでソルフェージュをまずやるんですが、意外と譜面が読めないんですよ。それと最近の学生は、スピーカーで音楽を聴くということをしないんです。そのためか左右に2本スピーカーを置いて、音を真ん中に定位させて再生しても、"どのスピーカーから音が鳴るんですか?"と質問してきたりします。本当にスピーカーで音を聴くということに馴れていない子が多いんです。ですからいわゆる聴音に加えて、音源を聴きながら譜面で音を追いかけるといったイヤー・トレーニングもやっています。普通、音楽大学のイヤー・トレーニングというと演奏家としての耳を鍛えるためのものなんですけど、私達はそれに加え譜面と音の対応ということに力を入れているんです。ですからレコーディングの授業でも譜面を見ながらやっていますね。例えばオペラなどでは、照明さんも譜面を見ながら操作しますし、譜面はしっかり読めるようにならないと。音源が無くても譜面だけで音楽を理解できるようになるのが理想です。

PS 先生が受け持っている"音楽・音響デザインコース"でメインとなる教材は、やはりコンピューターとソフトウェアですか?

芹澤 音響作品制作の7〜8割はコンピューターで、ソフトウェアは「Cycling '74 Max」や「Avid Pro Tools」などを使っています。演習室には「Pro Tools」が入ったコンピューターが40台程あります。でもコンピューターだけというわけではなくて、アナログ・コンソールやオープン・リールのATR、アナログ・シンセサイザーなども使っています。レコーディングの授業では「Calrec UA8000/32」や「SSL」のアナログ・コンソールを使っていますし、小型のデジタル・コンソールもいくつかありますね。

「大阪芸術大学」の「SYSTEM-700」。特注製作された“大阪芸大仕様”のシステムだ。数年前に大修理を実施し、9割方直ったという
「大阪芸術大学」の「SYSTEM-700」。特注製作された“大阪芸大仕様”のシステムだ。数年前に大修理を実施し、9割方直ったという
「大阪芸術大学」の「SYSTEM-700」。特注製作された“大阪芸大仕様”のシステムだ。数年前に大修理を実施し、9割方直ったという
PS オープン・リールのATRを授業で使用するのですか?

芹澤 使いますよ。ちょっと前まではテープが入手困難だったんですけど、最近また手に入るようになったので、テープを切ったり貼ったりということをやってますね。あとはアナログ・シンセサイザー。1970年代、「ローランド」さんの本社が大阪市内にあったので、当時の教授が大阪芸大仕様の「SYSTEM-700」を製作してもらったんです。VCAが7台とか必要なモジュールを選んで、特別なサイズのシャーシに収めてもらって。シーケンサーは不要だったので、入ってなかったりとか。その「SYSTEM-700」は、ある時期からしばらく使わなくなっていたんですが、でもやっぱり本物を使った方がいいだろうということで、数年前に大修理をしてもらいました。部品の問題でどうしても直せなかった部分もあるんですけど、90%くらいは直ったと思います。新品を購入するよりもお金がかかりましたけどね(笑)。今の学生は、アナログ・シンセサイザーをシミュレーションでしか知らないわけですよ。"音が太い"という言葉でしか知らない。でも、本物の「SYSTEM-700」があれば、その音の豊かさや旋律を積み重ねていくことの大変さを、身をもって知ってもらえると思ったんです。

「大阪芸術大学」音楽学科 音楽・音響デザインコースの教授、芹澤秀近氏
「大阪芸術大学」音楽学科 音楽・音響デザインコースの教授、芹澤秀近氏
PS ライブ・コンソールはどのようなものを?

芹澤 いや、つい最近まで、いわゆるライブ・コンソールはありませんでした。なかなか大学で使うのに良いコンソールが無かったので、ポータブルなレコーディング用コンソールをライブの授業でも使っていましたね。ただ、芸術情報センターという施設の中に、"実験ドーム"という直径が約16メートルあるプラネタリウムのようなホールがありまして、そこにはメーカーに特注して製作した音声卓が3台あります。"実験ドーム"が建造されたのは1981年のことで、建築的な部分はもちろん建築設計事務所にお願いしたんですが、音響システムの設計は私が手がけました。オリジナルのミキシング・コンソールの設計に関しては、当時かなり無茶な要望を出しましたね。例えば、F特を100kHzまで出したかったので、"10kHzの矩形波を再生できるようにしてほしい"と要望を出したり(笑)。そんな仕様のコンソールを、ドーム内に運んで使う音像制御卓と常設のメイン卓、あとはドーム内にスピーカーが20個くらい付いているんですけど、それによって作られる音場を変化させるための音場制御卓と3種類製作してもらったわけです。当時はマルチメディアと呼んでいましたけど、音と映像を絡めたいろいろな作品制作やイベントで使用しました。

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