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Inside Report 堺から世界へ 世界唯一! 第10世代マザーガラスによる大型液晶ディスプレイ工場を直撃取材 麻倉怜士
堺ディスプレイプロダクト㈱ 2009年4月にシャープディスプレイプロダクト㈱として設立。同年10月世界初の第10世代マザーガラスを使った大型液晶パネル工場として稼働を開始する。2012年、シャープから大型液晶事業を譲渡され、さらに鴻海グループとの共同運営がスタート、社名を堺ディスプレイプロダクト㈱と改称した。2013年には、80型液晶ディスプレイの量産、4K液晶ディスプレイの量産、120型の液晶ディスプレイの実現など、大型液晶ディスプレイのリーディングカンパニーとして意欲的な開発と安定した製造を続けている。360×400mにおよぶ巨大な液晶パネル工場は、グリーンフロント堺(約38.5万坪、甲子園球場約32個分)というコンビナート内にあり、自社設備のカラーフィルター工場のほか、ガラス、薬液、電気、ガス等の関連企業が集結している
堺ディスプレイプロダクト㈱
2009年4月にシャープディスプレイプロダクト㈱として設立。同年10月世界初の第10世代マザーガラスを使った大型液晶パネル工場として稼働を開始する。2012年、シャープから大型液晶事業を譲渡され、さらに鴻海グループとの共同運営がスタート、社名を堺ディスプレイプロダクト㈱と改称した。2013年には、80型液晶ディスプレイの量産、4K液晶ディスプレイの量産、120型の液晶ディスプレイの実現など、大型液晶ディスプレイのリーディングカンパニーとして意欲的な開発と安定した製造を続けている。360×400mにおよぶ巨大な液晶パネル工場は、グリーンフロント堺(約38.5万坪、甲子園球場約32個分)というコンビナート内にあり、自社設備のカラーフィルター工場のほか、ガラス、薬液、電気、ガス等の関連企業が集結している
SDPでは、第10世代(G10)と呼ばれる世界最大のマザーガラスを使って、液晶パネルを生産している。1枚のマザーガラスは、なんと313×288cmという巨大なサイズ。60インチで8枚、70インチで6枚、120インチで2枚が取れる
↑SDPでは、第10世代(G10)と呼ばれる世界最大のマザーガラスを使って、液晶パネルを生産している。1枚のマザーガラスは、なんと313×288cmという巨大なサイズ。60インチで8枚、70インチで6枚、120インチで2枚が取れる
液晶パネルは、 ➊電極がプリントされたガラス基板と ➋液晶、 ➌カラーフィルター基板を貼り合わせて作られる。写真は、ガラス基板に絶縁膜や半導体膜を成膜するCVD装置。ガラス基板が313×288cmという大きさなので装置も巨大だ
↑液晶パネルは、 ➊電極がプリントされたガラス基板と ➋液晶、 ➌カラーフィルター基板を貼り合わせて作られる。写真は、ガラス基板に絶縁膜や半導体膜を成膜するCVD装置。ガラス基板が313×288cmという大きさなので装置も巨大だ
ガラス基板に電極を作るためのベースとなる金属膜をつける(成膜)スパッタという装置だ
↑ガラス基板に電極を作るためのベースとなる金属膜をつける(成膜)スパッタという装置だ
 かつて、日本が世界のディスプレイパネル製造のリーダーとして日の出の勢いだった頃、日本国内のさまざまな工場を取材したことがあった。

 ディスプレイを語るにはパネルを識らなければならない。パネルを識るには、製造現場を識らなければならないをモットーとしている私として、ひとつ気がかりだったのが、噂のシャープの堺工場(正確にはシャープディスプレイプロダクト[SDP]。当時)を訪問する機会がなかったことだ。

 SDPは2009年4月にスタートした時はシャープの完全子会社だったが、2012年に台湾鴻海精密工業会長である郭台銘氏の投資会社SIO International Holdings Limitedからの出資を受け入れ、名称も堺ディスプレイプロダクトに変更された。それ以降は、その技術開発や製造活動の内実がほとんど報道されなかったこともあり、いったい何をしているのか、外部からは掴めなかったのである。

 幸運にも取材のチャンスが訪れた。そこで初めて知ったのは、SDPは単なる大型パネル製造工場ではなく、世界初の画質技術を数々実用化する開発拠点であり、それら新機軸の技術が、結果としてシャープ製品の洛陽の紙価を高めていたことだ。ハードメーカーのシャープ側からは「垂直統合の起点」として、製品自身からすると、性能をとことん追求するプラットフォームとして、SDPが機能している。アクティブに研究開発を推進し、セットメーカーの画質の屋台骨を支える技術基地になっていたのだから、驚きであった。

 2009年に操業を始めた時は、SDPはパネル製造専門だった。もともといかに効率的に、安価に作るかを徹底的に追求していたが、資本構成と社名が変わった2012年にSDPは大きく変わったのである。亀山工場の大型液晶パネル開発部門がシャープから移管され、さらにそれまでは敷地内にある凸版印刷と大日本印刷の工場で製造したカラーフィルターを用いていたが、このタイミングで、その工場自体をSDP傘下に取り込んだのである。

 この時、SDPは、ひじょうに大規模な(間口360m、奥行400m)パネル工場にて、畳5畳分のG10マザーガラスで大型液晶パネルを効率的に生み出す製造会社というだけのステイタスから大きく脱皮し、研究開発の源流から下流モジュール工程まで一貫して取り組む垂直統合型の総合パネルメーカーとして再出発を切ったのである。

工場のエントランスに置かれたアスペクト比22:9の104型パネルを縦に6枚並べた、幅約6×高さ約2.5mの巨大液晶ディスプレイの展示。家庭用テレビ以外での液晶パネルの使用提案のひとつだ
↑工場のエントランスに置かれたアスペクト比22:9の104型パネルを縦に6枚並べた、幅約6×高さ約2.5mの巨大液晶ディスプレイの展示。家庭用テレビ以外での液晶パネルの使用提案のひとつだ
生産ラインおよびショールームの説明をしていただいた、大河原淳平さん(研究開発本部 技術戦略室 室長)
↑生産ラインおよびショールームの説明をしていただいた、大河原淳平さん(研究開発本部 技術戦略室 室長)
左から入江健太郎さん(研究開発本部 要素技術開発室 主事)、藤井利夫さん(研究開発本部 開発センター 第一開発部 副参事)、大坪友和さん(研究開発本部 開発センター 第二開発部 係長)、髙橋佳久さん(研究開発本部 開発センター 第一開発部 主事)
↑左から入江健太郎さん(研究開発本部 要素技術開発室 主事)、藤井利夫さん(研究開発本部 開発センター 第一開発部 副参事)、大坪友和さん(研究開発本部 開発センター 第二開発部 係長)、髙橋佳久さん(研究開発本部 開発センター 第一開発部 主事)
昨年発売されたシャープのAQUOS4K NEXT、LC-70XG35。4原色仕様の4Kパネルを使い、超解像 分割駆動回路により、8K相当の解像度を実現した。本機採用の70型パネルはまさに堺ディスプレイプロダクトで生産されるものだ。シリーズの大画面サイズ機、LC-80XU30はHiViグランプリ2015で〔シルバーアウォード〕を獲得している
↑昨年発売されたシャープのAQUOS 4K NEXT、LC-70XG35。4原色仕様の4Kパネルを使い、超解像 分割駆動回路により、8K相当の解像度を実現した。本機採用の70型パネルはまさに堺ディスプレイプロダクトで生産されるものだ。シリーズの大画面サイズ機、LC-80XU30はHiViグランプリ2015で〔シルバーアウォード〕を獲得している
総合パネルメーカーだからこそ実現した大きな成果
 それから3年以上経過し、大きな成果が上がった。そのひとつが、本誌主催のHiViグランプリ2015で見事、[シルバーアウォード]を授賞したシャープのLCー80XU30「4Kネクスト」だ。RGBのサブピクセルにYを加えた4原色方式+マルチ画素構造のサブピクセルを巧みに分割駆動することにより、見た目の解像感を上げるこの技術のポイントは、まさにカラーフィルターなのである。

 「すでに、2009年からのクアトロン(RGBYにて色再現範囲を拡大)パネルを製造していました。この時から、4色のカラーフィルターをいかに効率的に製造するかに、こだわってきました」と言うのは、藤井利夫さんだ。「1色増えるので、工程もひとつ増えます。そのままではその分、製造時間が掛かります。そこで、カラーフィルター製造プロセスでは、4色を1ユニットとして扱い、フォトリソ(露光)工程において高感度材を開発しフィルターを素早く形成するよう工夫しました。カラーフィルター工場との一体運用が、効率的なモノづくりに大いに効きました」

 このほか、SDPが最終セット製品の性能向上に貢献した例は、4原色パネルの駆動方法や表面処理の「Nブラック・コーティング」の開発など数多くの要素におよぶが、SDP発の画期的画質技術として2009年のスタート時点で開発した「光配向技術」にも注目したい。

 今後、新たなカラーフィルターを使ったBT2020広色域の実現、8Kパネルの開発、有機ELへの挑戦……など、時代を画すディスプレイ技術は待ったなしだ。

 それこそが、研究開発からモジュールまで、川上から川下までの開発・実用化機能を手中にした、SDPにかける期待が大きい所以である。


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