LC-52LX3の視聴に取り組む小原鉄人
Photo:Takayuki Kono
Illurstlation:Ryugo Ito

各社各様に絵づくりを推し進めている現代のテレビ。では、どのテレビの映し出している映像が原画に対して忠実なのだろうか。そのひとつの判断材料が、「THXディスプレイ・プログラム・レギュレーション」である。同規格に準拠したアクオス「クアトロン」LC−52LX3は、現代テレビの在るべき姿を真摯に突き詰めたモデルといえるかもしれない。話題のBD「かいじゅうたちのいるところ」でそれを検証するとしよう。
第6巻 SHARP AQUOS LC-52LB3×かいじゅうたちのいるところ 私たちでも思わず和んでしまう、優しさと慈愛を引き出したTHXの画質 小原由夫
●LC-52LX3に大接近!

小原鉄人がHDMIケーブルを接続
LC-52LX3にブルーレイディスクレコーダーからのHDMIケーブルを接続する小原鉄人。液晶テレビに重みのあるHDMIケーブルを使う時は、テレビ台やテレビそのものに寄り添わせるなどして、端子部分にかかる重みの負荷を軽くしよう
入力信号情報表示画面
最新テレビの多くでは、入力されている映像信号の種類や仕様が詳しく表示される。「かいじゅうたちのいるところ」は、HDMI接続のとき、1080p/24Hzで送られていた。THXモードを利用するなら、極力原信号に忠実な状態で視聴したい
視聴は画素変換の入らないDot By Dotで
「画面サイズ切換」機能にも注意したい。HiViで視聴しているときは、ほとんどの場合,写真のDot by Dotを選んでいる。これは原画1画素に対して、表示パネル1画素が対応している状態。画素変換が入らないので素直な映像になる
LC-52LX3の付属リモコン
LX3シリーズは、3D対応機でも、BDレコーダー内蔵機でもないシンプルなクアトロンなので、リモコンのボタン数が少なく使いやすい。映像イコライジングは、リモコン右下方にある「ツール」ボタンから入るといい
LC-52LX3のここがすごい!
  • R,G,Bに加えてY:黄色のサブ画素を追加し、色再現範囲を大幅に拡大した
  • 1つのメイン画素が4つのサブ画素によって構成されることになり、映像の滑らかさと精密感が向上
  • LEDバックライトの光を効率よく映像に反映させるUV²A技術を搭載
  • 液晶パネルの倍速駆動、撮影カメラのパンニングボケ検出機能、LEDバックライトの高速オン/オフにより、どんな映像もクッキリハッキリ
  • コントラストは一気に5,000,000対1へ、煌めく黄金から闇の漆黒まで幅広く再現
  • ノスタルジックに映画を楽しめる「クラシックモード」がおもしろい!
  • 外付けのUSBハードディスクにテレビ番組を保存できる
  • 液晶画面を囲むように配置したARSS(アラウンドスピーカーシステム)で映像と音の一体感を実現
  • 2つのウーファーを対向配置して、低振動かつパワフルな低音を楽しまてくれるDuo Bass搭載

 LXシリーズの位置付けは、3D機能を省いたLVシリーズだ。3Dコンテンツは見ないという人にとって、本機はたいへんお買い得なテレビといっても過言でない。なぜならば、3D適合力を高めるためにLVシリーズに投入された高画質技術がほぼそっくり搭載されているからである。具体的には、「RGB+Y」の4原色技術や、光の利用効率を大きく改善した「UV²A」などだ。

 つまり、LXシリーズは、テレビとしてひじょうに真面目に、真正面から正攻法でつくられたモデルといえるのだ。

 その一端は、LXシリーズがTHXのディスプレイ・プログラム・レギュレーションの認証を取得していることからも伺える(LVシリーズも同様)。

 シャープにとっては、THX認証テレビは2シリーズ目になるが、今回ばかりは勝手が違ったはずだ。なぜならば、THXの規格は明るさやガンマ特性、色温度などのスペックを厳しく管理しており、THXマークが付くということは、いわば検査をパスした証だから、メーカーなり、エンジニアの絵づくりの特徴が打ち出しにくいはずなのだ。すなわち、映像イコライジング等の脚色や演出はご法度ということなのだが、LXシリーズの真骨頂は、前記の通り、Yのサブピクセルを活かした「クアトロン」のコンセプトにある。ウーム、難しい問題だ……。

 THX準拠のパフォーマンスは、メニューのAVポジション「映画THX」で確認することができるが、果してその時には、「クアトロン」のクアトロンらしさは薄れてしまうのだろうか。それを確かめるのが、今回のBD「かいじゅうたちのいるところ」である。

「映画THX」モードのデフォルトで素直に観よう!

 映画「かいじゅうたちのいるところ」は、世界中でベストセラーとなった同名の絵本がベース。私はその絵本をまったく知らなかったが、原作者のモーリス・センダックは、映画化に当たって「アダプテーション」「マルコヴィッチの穴」のスパイク・ジョーンズ監督の起用を熱望したという。

 物語の主人公は、いたずら好きだけれども孤独な少年マックス。ある晩母親に怒られて家を飛び出したマックスは、川岸に停泊していた帆船に乗り、やがて海に出、かいじゅうたちの住む島に辿り着く。彼らと仲良くなり、王様となったマックスは、かいじゅうたちと砦を造り始めるが、だんだん統率できなくなり……。奇妙で愛くるしいクリーチャーたちの声は、ジェームズ・ガンドルフィーニやフォレスト・ウィテカーなど、著名な役者が当たっている。 

 BD「かいじゅうたち〜」のメインとなる島の映像の画調は、茶褐色の暖色系。砂漠や森、土、木の枝で作ったドームなど、ザラッとした質感が支配的だ。こうしたシーンでYのサブピクセルが生きるのではと考えがちだが、「映画THX」モードでは、Yのサブピクセルの恩恵はほとんどゼロ。だが、その資源は高精細感と明るさに確実に貢献しており、クリーチャーたちの体毛のリアリティやハイライトの眩しさに伺うことができる。Ch(チャプター)12のどろんこ合戦で、土埃の様子と陽光の当り方にそれが見て取れるのだ。〈右下へ続く〉

視聴中の小原由夫先生
じっくりと映画に向きあう鉄人。小原さんは、「かいじゅうたちのいるところ」全編をこのLC-52LX3で視聴。「映画THXモード」なら、素直に映画の作品世界のなかに入り込めたという
「かいじゅうたちのいるところ」場面1

「かいじゅうたちのいるところ」場面2
【写真上】かいじゅうたちの毛皮の質感や、全体としてややアンバーな色調をうまく再現する「映画THXモード」 フィクションだからといって、どんな再現になってもよいというわけではない。【写真下】逆光のようなシチュエーションの光になっても暗部がつぶれることなく表現されている。実際に視聴した印象では、背景となる砂漠の丘と登場キャラクターとの重なりに奥行感を感じることができた

 〈左上より続く〉「映画THX」の映像イコライジングのデフォルト値は別掲の通りで、色温度6500K、ガンマカーブ2.2乗が厳守。「QS駆動(120Hz)」もスタンダード、「フルハイプラス」や「アクティブコントラスト」はオフといった感じで、あらゆる補正はオフ、またはフラットになっている。

 マックスが船に乗って島に辿り着くまでのCh3は、ほぼ真っ暗闇の嵐の大海原。「明るさ」または「黒レベル」を下げたくなるのも人情だが、それをしてしまうと、後のシーンで破綻が生じることも。私は「黒レベル/−2」に止めた。

 物語はところどころにハッとする鮮やかな色使いがある。屋根の部分にあしらった橙色の花や、時折見える青い海がそう。だが、それとてほんのわずかの時間。大半がプリミティブな土色の世界である。そんな中でも、クリチャーたちの豊かな表情や仕草が、着ぐるみにCG処理を施したものとわかっているものの、大人の私たちでも思わず和んでしまう優しさと慈愛に溢れているのだ。


 それにしても、マックスとキャロル(かいじゅうたちのリーダー的存在)の性格はよく似ている。おそらくは、キャロルを反面教師としてのマックスの精神的成長が隠されたテーマなのだろう。それは、マックスが母親から浴びせられた叱責のまったく同じ言葉を、マックスがキャロルに投げ付けるところからも推察できる。あるいは、キャロルはマックスの心象に住むもう一人の自分では……。それとも、この旅(出来事)は、家を飛び出して彷徨い、疲れ果てたマックスが見た夢だったのかもしれない。

 そんなことまで空想させる素敵なファンタジーは、ほぼデフォルトでいい絵が見られる「映画THX」モードにて、あれこれ難しく考えずに素直に観るのがいい。


ブルーレイディスクとDVDのコンボ版として発売されている。映像特典は、BDが71分、DVDが14分という内容。本編は101分と比較的短いが、BDは2層タイプで製造されている。
ブルーレイ & DVDセット「かいじゅうたちのいるところ」¥3,980

●発売日:2010年5月19日
●製作年度:2009年(COLOR)
●本編:約101分 BD映像特典:約71分 DVD映像特典:約14分
●映像仕様:シネマスコープサイズ スクイーズ(BD、DVDとも)
●BD音声仕様:DTS−HDマスターオーディオ 5.1ch(英語)、5.1ch ドルビーサラウンド(日本語)
●字幕:日本語,英語、吹替え用
●ディスク:2枚 (片面2層BD+DVD)
〈スタッフ〉
●監督:スパイク・ジョーンズ
●製作:トム・ハンクス
●脚本:スパイク・ジョーンズ、デイブ・エッガーズ
●原作:モーリス・センダック
〈キャスト〉
●マックス:マックス・レコーズ
●キャロル:ジェイムズ・ガンドルフィーニ
●KW:ローレン・アンブローズ
●ママ:キャサリン・キーナー
●ママの恋人:マーク・ラファロ、他

●公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/wherethewildthingsare/
●HiVi WEBでの作品紹介:業界初、BD+DVDセットのみ発売の「かいじゅうたちのいるところ」
●鉄人の調整大公開
映像ポジションは「映画THX」に設定
LC-52LX3の多彩な映像ポジション
黒レベルを-2に設定
色温度をいろいろ試す
今回はクアトロンの鮮やかさではなく、「映画THX」で実現するハイファイ映像を重視した。その選択モードへはリモコンのツールボタンから入ることができる
シャープの液晶TVアクオスシリーズは、豊富なAVポジションを持っている。映画クラシックについては、「テレビの鉄人 第4巻 シャーロック・ホームズ」でフィーチャー
今回の視聴は、映画THXモードが基本。しかし小原鉄人はわずかに黒を沈めていた。調整はわずかマイナス2。しかしこれで映像全体が引き締まり、色乗りもよくなった
映画THXモードでは、色温度はもっとも低い「低」になっていた。小原鉄人は「中」や「中低」も試しながら視聴していたが、結局最後は標準の「低」に落ち着いた
オーディオビジュアル評論家 小原由夫先生

小原由夫
おばらよしお・電気測定機メーカーのエンジニアから、オーディオビジュアル専門誌の編集者を経て、フリーライターへ。親しみやすい語り口と素朴なテーマで多くの読者をひきつけた連載「AV奮闘記」で一躍スター(!)の座を築く。海辺のがけっぷちに構えたAVルームも今は昔。現在では場所を移して「開国シアター」として大幅グレードアップしている。
アクオス クアトロン LC-52LX3
quatron.png液晶テレビ
SHARP AQUOS LC-52LX3 オープン価格(実勢価格 ¥400,000前後)
http://www.sharp.co.jp/aquos/
■第1巻 SHARP AQUOS LC-46DX2×GOEMON
■第2巻 SHARP AQUOS LC-46DX2×ココ・アヴァン・シャネル
■第3巻 SHARP AQUOS LC-46DX2×グッド・バッド・ウィアード
■第4巻 SHARP AQUOS LC-52LX3×シャーロック・ホームズ
■第5巻 SHARP AQUOS LC-46LV3×タイタンの戦い【3D】

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