ソニー・新〈ブラビア〉のココがすごい! オーディオビジュアル評論家 麻倉 怜士 ハイクォリティへの挑戦、再び!新高画質回路「X-Reality PRO」にソニーのこだわりをみた
ソニーの新高画質回路「X-Reality PRO」をもっと知る

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「複数枚で超解像処理を行なっているからです」と本江氏は明かした。超解像はすでに広く知られているが、これまでのものは、すべて垂直、水平方向で演算するワンフレーム処理であった。別の言い方をするとリアルタイム処理だ。ソニーの新超解像は「複数枚」であるのが、特筆すべきである。従来の二次元方向に加え、メモリー蓄積により時間軸方向でも画素参照を行ない、新たな画素情報を形成する。加えて、処理をサブピクセル単位で行なう。実際の映像の動きは1画素以下の精度でゆっくり動くことがある。1画素単位の動き補正では、本当にキレイな動きは再現できない。ソニーはそこもしっかり研究したということだ。

 構造的に説明すると、一般モデルに搭載される「X-Reality」は1枚超解像を行なう。ハイエンドモデル、「HX920」ではそれに複数枚超解像の「XCA7」が加わる。その目的について本江氏はふたつを上げた。

ひとつは動画解像度の向上です。被写体の速い動きに対しては、倍速駆動などで有効に対策されますが、ゆっくりとした動きの時にぼけが目立つのです。それを動画対応の超解像でたたき直す――というわけです」。

もうひとつが、画面に映すコンテンツの多様化への対応だ。

「かつてはSDとHDの2つのモードを考えていればよかったのですが、今後、ネットからの低品位画像もテレビで見るようになる。ネット動画などの低画素数画像を大画面に、それこそフルHDまで拡大しなければなりません。そんな場合でも、できる限り破綻や不都合の少ないスムーズな画像を見せてあげたいのです」。
業界初! ソニーの複数枚超解像処理
▲ 入力画像を複数フレームにより水平・垂直・時間軸でパターン解析し、最適なデータベースを選択、数千パターンからなるデータベースに画像パターンを参照し、オリジナルが持っていた高精細な画像を作り出す
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本江 寿史
ソニー株式会社
コンスーマー・プロフェッショナル&デバイスグループ
ホームエンタテインメント事業本部
ホームエンタテインメント開発部門1部
バックエンドシステム担当部長

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 この複数枚超解像技術の導入は、ソニーが画質に力点を置いていることが分かる。その解釈は、高精細をコントロールする機能名称「リアリティクリエーション」が問わず語りしている。もう察しがよい読者は分かったと思うが、かつて、ソニーのワン・アンド・オンリーの高画質技術として一世を風靡したDRC(デジタル・リアリティ・クリエーション)が大幅に進化し、第7世代としてここに復活したのである。このところ、ソニーはネットワーク機能に重きを置いていたが、しっかりと画質に対してもこだわり続けているのである。

 「しかし、われわれの中では画質はテレビでもっとも重要な本質であるという認識は以前から、まったく変わっていません。特に昨今の、入力信号が多様化する時代には、より高画質要請が高くなると思っています。そのソーシャルなニーズに応えるのが、『X-Reality PRO』なのです」(本江氏)
「X-Reality PRO」によって変貌した画像描写
「DRC」は09年モデルでは一時、商品から外されたが、その間も開発は粛々と続いていた。「超解像にもいろいろなやり方がありますが、私は『DRC』による超解像は、1:1のダイレクト変換が最大の強みだと認識しています。他のアルゴリズムも検討しましたが、解像度感を出すことができるケースがある一方で、必ずしも解像度感が出せないケースがあることも分かってきました」と言う。
「DRC」は「デジタル・リアリティ・クリエーション」の略。98年、ブラウン管テレビの“ベガ”に採用されたのが始まりだった。それまでSD画像信号を倍速化するには、走査線の間を「補間」して、新しい信号をつくっていたのだが、実際には変換がうまくいかずに、ぼけが生じていた。

 ソニーの発想はまるで違っていた。標準画像信号での再生波形にいちばん近いハイビジョンの波形を、予め用意したデータベースから持ってきて、置き換えるというものなのである。この画期的なメソッドがブラウン管テレビの画質を飛躍的に向上させ、“ベガ”を大ヒットに導いた。とにかく映像の精細さがまるで違った。

 それから約10年に渡って「DRC」はソニーのテレビの技術の屋台骨になった。今回、名称はDRCとは言わないものの、まさに紛う方無きDRCの発想が、さらに強力な複数枚超解像として復活したことを、私は大いに喜ぶ
90年代後半〜「X-Reality」以前を支えた「DRC」技術
▲ 1997年5月に開発され、同年7月発売の“ベガ”シリーズより搭載された「DRC」技術。写真は2008年8月に発表され、〈ブラビア〉の「XR1シリーズ/X1シリーズ」などに採用された「DRC-MF v3」チップのイメージ写真だ
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