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 HiVi2012年8月号(48ページ参照)で「JAWS/ジョーズ」の修復責任者マイク・ダルティ氏と彼のチームによる修復至芸を紹介したが、あらためてその工程に触れながらブルーレイ・ディスク(BD)「ジョーズ」の魅力を追いかけてみよう。ここで紹介する特典映像「フィルムの修復」(下部動画映像参照)を併せてご覧いただければ、さらなる本盤の魅力を発見できるはずだ。
修復作業には1年4ヵ月もの時間を要した
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「ジョーズ」はBD化に併せてオリジナルネガから丹念な修復作業が行なわれた。写真はカラー・コレクションのレストア前(写真上)とレストア後の比較映像だが、その違いは一目瞭然だろう。黄ばみが払拭されて、今まさに封切られたフィルムのように、鮮明な映像に仕上がった

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「ジョーズ」のオリジナルネガは、場面によってはネガが破れていたり、縦傷が目立つシーンがあったりと経年劣化も見られたが、それらもひとつずつ綺麗に修復が施された
 オリジナルの姿や製作意図を可能な限り再現しながら、作品の品質向上を目指す。そしてそれを現代のメディアに反映する。これが彼らの修復テーマである。「ジョーズ」では、高品位な素材探し、ネガのスキャンテストを経て、ニューヨークのシネリック現像所で約179,000フレームを洗浄、4Kスキャン。4Kワークフロー(カラー・コレクション、フリッカー除去、グレイン・マネジメント、パラ消し、フィルムのダメージ加工)は、L.A.のユニバーサルスタジオ・デジタルサービスで行なわれた。

 その間、サウンド修復作業はユニバーサルスタジオ・サウンド部門で実施。絵と音の修復作業にはスティーヴン・スピルバーグ監督自身が立ち会い、確認を行なっている。彼が最終承認を出したのは今年3月。およそ1年4ヵ月の工程であった。

 スキャンではネガ素材が持つ全情報を抽出することで、カラリストや修復技術者は能力を最大限に発揮できる。「デジタル化に細心の注意を払うために4K工程は必須」とダルティ氏は語るが、そこには上映・販売用途のみならず、映画資産の修復・保存という重要な目的があることを忘れてはならない。

 「ジョーズ」は娯楽作としてだけ語られがちだが、実に細やかで手の込んだカメラ美術が息づいている。映像技術のあらゆるエッセンスが詰った最高級の映像教本であり、ここにHi-Def鑑賞の醍醐味がある。まずはオリジナル・シネスコサイズで蘇ったことを喜ぼう。画面の両端をトリミングしたハイビジョン放送版とは、絶対的な差異がある。

 とりわけ本作は動きを特徴とする映画の大傑作だ。アクションは陽気さと恐怖の感覚で満たされており、多用される手持ちカメラ撮影を含むどのショットも、ひたすら前へと突き進む感覚を含んでいる。それはまるで、人食い鮫の出現でコントロール不能となった出来事によって押し流されていく感覚だ。

 揺るぎのない色彩とまろやかな光彩の表情が素晴らしく、フィルムの粒状性が息づく陰影には緊張と不安が滲む。加えてHi-Def化の恩恵は、特定の状況に対するさまざまな奥行表現のアプローチをも明快にする。

 まずスピルバーグが固守したのは徹底した広角レンズによる演出法。さらに当時は望遠ショットでも汎用的なアナモフィック方式が使用可能となっており、望遠レンズを標準的な撮影方法の中に取り入れている(チャプター11冒頭/群衆シーン他/写真参照)。この被写界深度差による映像リズムは必見だ。

 陽光降り注ぐシーンでは、その利点に加えて海面や砂浜の反射光を利用できるため、たとえば1940年代をしのばせるローアングルの長廻しを、シネスコ構図の奥行の中で展開できた(50分23秒からのショット後半/写真参照)。ここでは、カットを刻むことなく、前景(人物)と後景(巨大な看板)の距離感のみで緊張感の演出に成功しており、派手さはないが全編を通じての観どころのひとつとなっている。

 こうした奥行演出の伝統に敬意を払うかのような場面も微笑ましい。映画の中でフーパーは迫りくる巨大鮫の写真を撮る時にブロディを船首に立たせ、こう叫ぶのだ(83分06秒/写真参照)。「I need something in the forground to give it some scale」——スケール感を出すために、前景に何か欲しいんだ、と。このあたりの妙味はBDでなければ伝わってこない。

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スピルバーグの徹底したオリジナルへのこだわり
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 サウンドに関してスピルバーグは「2000年の5.1ch化(DVD)で新たに加えられた効果音を、すべて劇場公開時のオリジナル素材に差し替えてほしい」と要望しており、音に関してもオリジナルへのこだわりが感じられる。

 オリジナル音声は、経年変化に伴なうノイズ除去から、効果音に埋没した声の明瞭化に至るまで全編に渡り修復。たとえば、43分29秒の霧笛、93分09の鯨の鳴き声、クライマックスのライフルのボルト音、ボンベへの着弾音、死んだ鮫の唸音といったオリジナルの効果音が修復されて初披露されている。修復オリジナル音声素材は、ロスレス7.1chリミックスにも使用されたが、ロッシー音声ながらオリジナル劇場公開モノーラル(2.0ch)も映画通には嬉しい仕上りとなっている。

 その7.1chリミックスにも配慮を忘れていない。「マルチチャンネル化では明確な理由づけがあり、オリジナルの意図を補強するためでなくてはならない」と語るダルティ氏によれば、忘れ難いジョン・ウィリアムズのスコアはもちろん、水音や環境音などを周波数操演して、サスペンス効果の一助としたという。

 ダルティ氏へのメール・インタビューでもっとも感心したのは、「作品を技術的に修復すると同時に、作品が観客に与えるパワーを修復した」と語ってくれたことだ。この言葉だけで本盤を購入する価値があろう。 
 「すべての場面がとてもよく仕上がった」と自負するダルティ氏の修復至芸で蘇りし、大脳をスルーし直接はらわたに訴える往時の巨匠作品を彷彿させる名画BD「ジョーズ」。37年前に生み出された映画の楽しさ、スリル、恐怖といったすべての同じ感動を、今日この日に家庭劇場で味わっていただきたい。これこそが、ユニバーサルとこの作品に関わったすべての人々の望みなのである。
photo BD-ROM
「ジョーズ コレクターズ・エディション」


(ジェネオン・ユニバーサルGNXF-1655)¥5,040
●1975年アメリカ作品●片面2層●本編124分●カラー(16:9/スコープ)●映像圧縮方式:MPEG4 AVC●収録音声:DTS-HDマスターオーディオ7.1ch(英語)、DTS5.1ch(日本語)、ドルビーデジタル2.0ch(英語モノーラル)
<スタッフ>
●監督:スティーヴン・スピルバーグ●音楽:ジョン・ウィリアムズ
<キャスト>
ロイ・シャイダー、ロバート・ショウ、リチャード・ドレイファス 他
E.T.
UNIVERSAL
©1975 UNIVERSAL STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.


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