Stereo Sound ONLINE ホーム > 特集 > シネマの秘密はスクリーンにある! by 藤原陽祐

feat. VICTOR / JVC D-ILA PROJECTOR シネマの秘密はスクリーンにある! Text by Yosuke Fujiwara
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かたくなに高コントラスト化を追い求め、引き締まった黒で存在感を示している
ビクターのD-ILAプロジェクター。
ダイナミックレンジの拡大はそのまま表現力の向上につながるが、
最新のDLA-X7/9ではこの資源を映画鑑賞用の画質に生かした
「フィルム」モードを新設。
さらにスクリーンに対して94種類の最適な補正を行なう新機能まで搭載してきた。
ここでは家庭用プロジェクターが追求するフィルム画質と、
プロジェクターとスクリーンの関係について考えてみたい。


劇場(映写機)で見るフィルム映像と、ホームシアターで見る電子映像。いずれもスクリーンに投映される光と影によって再現されるわけだが、その画質の特性は大きく異なる。ポジフィルムの画像をキセノンランプによってそのまま投映する前者に対して、後者はR/G/B構成の電子画像からフルカラー画像を再構築して、スクリーンに描きだす。
 上映フィルムは光を部分的に遮ることで画像を再現する減法混色であるのに対して、家庭用プロジェクターは液晶であれ、DLPであれ、R/G/Bの画像をスクリーン上で重ね合わせる加法混色。両者の違いは、色調や階調性、あるいは明るさに対する発色の反応など、そのまま映像の表現方法に表れ、実際の画質傾向も大きく変ってくるという。
 BD、DVDなどに収録された映画ソフトを、劇場のスクリーンに描きだされるフィルム映像に近い質感で描きだしたい。そんな発想から誕生したのが、DLA-HD750で初搭載された「シネマ1」モード。さらに最新モデルとなるDLA-X7/9では、フィルムにキセノンランプを当てたときの色をそのまま再現するというXenon(キセノン)ランプ光源モードを実用化し、さらにコダックとフジ、両者のフィルム特性を徹底して追求したカラープロファイル「フィルム1/2」を用意してきた。
 今回はビクタープロジェクター絵づくりのキーマン、中越亮佑氏をわが家の“とことんシアター”にお迎えし、実際にDLA-X9の映像を一緒に観ながら、フィルムモードの画質設計や、スクリーンによる画質の違いなど、存分に語ってもらった。
進化を続ける「とことんシアター」
藤原: 中越さんとは以前、DLA-HD750の取材でお会いしていますが、もともと映像のエンジニアというわけではないんですね。
中越: 大学は物理の分野なんですが、量子力学が専門でした。ただ、ビクターには光学エンジニアとして研究所に入っています。2007年当時、D-ILAのリアプロ画質を担当していたんですが、当時は明るさ命の絵作りがまかり通っていた時代で、色については、人のイメージの中にある記憶色くらいしか注目されていませんでした。
藤原: 店頭モードの明るさで、画質の善し悪しが判断されてしまう。辛いね。
中越: そこで劇場(フィルム)の減法混色とビデオの加法混色の色表現の違いに着目し、カラーマネージメントを駆使してフィルム画質を目指していたんですが、ちょうどその頃、投写型プロジェクターで、同技術の採用を検討していて白羽の矢が立ったわけです。
藤原: でもテレビのように使われるリアプロよりも、真っ暗な部屋で映画を中心に楽しむ投写型の方が、中越さんの提案にはマッチしますね。
中越: そうなんです。投射型プロジェクターが使われる環境は劇場とほとんど変りませんから。その初めての提案がHD750で実用化した「シネマ1」です。
藤原: フィルムとビデオの画質の違いは以前から気になっていたんですか。
中越: 学生の頃から映画好きで単館や名画座通いをしていたんですが、DVDをリアプロで観てもどうもピンとこない。そこでもう一度、自分なりにDVD画質と劇場の画質を比較してみようと思いつき、名画座通いを再開しました。
藤原: それはDVDとフィルムの画質を比較するために?
中越: そうです、まずDVDで画質の見どころをチェックして、そのシーンを劇場で確認してみるんです。これがまったく違うんですね。劇場のクォリティはまちまちですが、DVDとは醸し出すものが明らかに違う。
藤原: 具体的にはどんな感じでしょう。
中越: 簡単に言えば、雑誌の写真とテレビの画質というイメージでしょうか。減法混色、つまり雑誌などの色は自然界の実物を見る感覚に近い。これに対して加法混色は光源色を見ているので、テレビやネオンのような特殊なものしか存在しません。
藤原: 実際にX9で「フィルム1」の画質を見て、私がもっとも感じることは、明るさに対する色の表現の違いです。例えば「恋におちたシェイクスピア」の一幕で、ヒロインのパルトロウが黄色いドレスでパーティに出かけるんですが、この時の黄色の見え方がシーン毎に大きく変ります。暗いと茶色よりに、明るくなると、赤から緑に振られる。この変化はホームシアターでは初めての体験でした。考えてみればごく自然な見え方の違いです。家庭用テレビの画質は何故、こうした部分に踏み込んでいかないのでしょう。
中越: もともとテレビは輝度と色差の発想で、明るさが第一という強い思い込みがあります。これに対してフィルムは感光した映像をいかに忠実に再現するかという歴史ですから、この文化の違いが大きいと思います。
藤原: 最近の映画はネガ撮影し、それをスキャンしてデジタル信号として取り込み、ポジフィルムに焼くというデジタル・インターメディエイト(DI)という制作手法が多くなっています。BD制作でもそのデジタルデータがそのまま使われるケースと、さらに味付けしてパッケージ化されるケースとあるようですね。
中越: ご指摘の通り、BDでもオリジナルマスターに忠実な作品と、見るからにフィルムルックに仕上げている作品があります。X9で言うと、前者は「フィルム1/2」で劇場の画質が楽しめますが、後者については「シネマ」「THX」などのモードの方がベストマッチするケースがあります。そのあたりの情報は「IMDb」(※1)という映画のデータベースを提供するウェブサイトで確認することができます。
藤原: その映像自体から判断するのは難しい。
中越: 具体的な判断方法としては、映像の中の白と字幕の白、これが似ている場合は「フィルム1/2」でまず問題ありません。逆にフィルムっぽいトーンでパッケージ化されていると、映像の中の色温度が低くなるため、字幕だけが青白くなる。こうした場合は「シネマ2」がお勧めです。
藤原: そのあたりの考え方は映画会社によって変るのでしょうか。
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中越 亮佑 さん
日本ビクター株式会社
プロジェクター統括部
プロジェクター技術部 開発グループ
エンジニア
日本ビクターに入社以来、映画館で観る絵を
追い求めて画質を研究する中越亮佑さん。
DLA-X7/9では、世界各国のスクリーン特有の
クセに合せて映像調整を行なう「新スクリーン
調整」機能を投入。90以上ものスクリーンを
実際に計測し、それらに合せ込むという大
きな仕事に注力した
映画館のスクリーン映像をホームシアターで再現!
VICTOR/JVC D-ILA Projector DLA-X9 ¥1,050,000
●使用デバイス:0.7型D-ILAデバイス×3 ●解像度:水平1920×垂直1080 ●輝度:1300lm ●コントラスト比:100,000対1 ●接続端子:HDMI入力2系統、色差コンポーネント入力1系統(3RCA)、D-sub15ピン1系統、他 ●寸法/質量:W455×H179×D472mm/15.1kg ●オプション:3DメガネPK-AG1-B¥17,850、3DシンクロエミッターPK-EM1¥9,450 ●問合せ先:JVCケンウッドカスタマーサポートセンター 電話番号 0120-2727-87
DLA-X7/9が最終的に目指したのは、良質な劇場で見るフィルム画質だ。そこでまずフィルムにキセノンランプを当てたときの色再現を実現するために、Xenon(キセノン)ランプ光源モードを搭載した。これは映画館で使われる映写機や業務用プロジェクターがキセノンランプを採用しているため。キセノンを当てると、どんな色で見えるのか、厳密にシミュレートして、色域を広げるカラーフィルターと高精度なカラーマネージメントの合わせ技で実現したのだ。
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▲DLA-X7/9にはコダックとフジのフィルム特性を再現するフィルム1/2という「カラープロファイル」機能を実装。とことんまで映画館の絵にこだわっている
さらに94種類ものスクリーン補正モードの搭載に踏み切った。各スクリーンのRGBの反射特性を細かく分析し、理想に近いRGBバランスが得られるように6軸のきめ細かな補正をしている。目指したのは、劇場リファレンスとして広く採用されているHD130(スチュワート)で見る画質だ。
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▲ スクリーン調整機能には多くのプリセットが用意されるが、キクチ、オーエスの新スクリーンは未対応。キクチの新スクリーンはまだ検証できていないが、オーエスについては、No.7(Da-Lite社製Matte White)とNo.52(OS社製サニーホワイト)などの特性が良く似ているので、好みで選んでほしいとのこと。X7/9と本スクリーンを導入された方はお試しあれ