feat.VICTOR / JVC D-ILA PROJECTOR シネマの秘密はスクリーンにある! Text by Yosuke Fujiwara
中越: 作品によりますが、ワーナー系はスキャンしたデータをそのままオリジナルにする傾向が強く、逆にソニーピクチャーズの作品はフィルムルックでパッケージ化される作品が多いように思います。藤原さんがよくご覧になる「恋におちたシェイクスピア」は映像も字幕もD65(※2)で白をとっていますので、コダックの色調を追求した「フィルム1」でドンピシャです。
藤原: デジタルシネマの再生は、どう考えたらいいのでしょうか。
中越: DCI(※3)の色域で撮られた作品はBD化される時にBT.709(※4)の色域に圧縮されてしまいます。それを解くのが「シネマ2」で、BT.709からDCI拡張を行ないます。ソニーピクチャーズの作品はこのケースに当てはまることが多いですね。ただ初めからデジタルカメラで録っている作品は、全てBT.709の色域になりますので、「THX」モードがベストです。
藤原: 話をスクリーンに移したいのですが、ユーザーからしてみると、スクリーンはマット、ビーズ、パールといった素材と、明るさを表すゲインなどのデータが示される程度で、その本質がなかなか見極めにくい。同じマットスクリーンで、ゲインが同一でも、画質は違う。何を基準に選んだらいいか、非常に難しい。
中越: 確かに。スクリーンは最終的な画質を決める、きわめて重要な製品ですが、黒に対するハイライトの伸び方であったり、発色の質感だったり、実際に映像を映してみないと、パフォーマンスを完全に把握することは難しいですね。
藤原: そういった画質の違いはどんなことろからくると思いますか。
中越: これはあくまでも私の個人的な見解ですが、スクリーン素材が画質に与える影響はかなり大きいと思います。それは単にマットやパールということではなくで、映像を受け止める生地の素材です。例えば、“とことんシアター”のスノーマット(スチュワート)は文字通りマットスクリーンですが、近くで見るとわずかにキラキラした質感ですし、素材の塩ビも厚く、ゴムに近い質感があります。こうした素材の特質が一定の厚みを感じさせる、落ち着きのある映像表現につながっていると思います。
藤原: 今日はオーエスのピュアマットII eXとキクチのグレースマットという2種類の新しいスクリーンを用意していますので、X9との組み合わせでその映像を観てみたいと思います。いずれも完全拡散型のマットタイプで、ゲイン1.0前後と、スペックはよく似ています。でも実際に「恋におちたシェイクスピア」を見比べてみると、その画質傾向はかなり違いますね。
中越: これがスクリーンなんですよ。サイズが違うので、一概には言えませんが、切れ味鋭く、スッキリ描きだすピュアマットII eXに対して、一定のトルクを伴なったコクのある映像を楽しませるグレースマットという関係でしょうか。ただこれも“とことんシアター"での印象であって、視聴環境しだいで、見え方が変わってしまう可能性もあります。
藤原: X9の「フィルム」画質の場合、不思議とスクリーンの違いがより明確になるように感じるんですが。
中越: 減法混色による画像表示では、スクリーンは写真をプリントする印画紙に例えられます。確かに藤原さんが感じているような傾向はあると思います。
藤原: スクリーン選びでは、まずどんな視聴環境で、どんなソフトを楽しみたいか、イメージすることが重要ですね。白壁のリビングで、手元灯を残して楽しみたいような場合は、マットよりもビーズという選択になります。
中越: 私も最近のビーズスクリーンの画質向上ぶりが気になっています。黄ばんで、ざらつくというかつての悪いイメージはありません。3D表示も含めて、ホームシアター用途では、大きな可能性をもったスクリーンだと思います。
藤原: ビーズの指向性を巧く利用したいとところですね。今日はありがとうございました。
(※2)D65…国際照明委員会による標準的な光源の規格。白色点の色温度はおよそ6500K
(※3)DCI…大手映画会社によるデジタルシネマの規格を定める団体。また、本団体によって定められた規格
(※4) ITU-R BT.709…ハイビジョン放送で使用される国際規格


(参考サイズ表)スクリーンを導入するなら、サイズ確認も忘れずに!

前へ
▲ AVに夢中のふたりの話は尽きない。中越さんは、もともとは音楽を志していたとのことで、ウエストレイクのダブルウーファーを前に音楽好きの血が騒いでソワソワ。低音に合せてエア・ベースをプレイしそうな空気さえ醸し出していた。そして、とことんシアターの160インチシネスコで観るBD「インセプション」に感激することしきり。「この絵と音で観たら160インチが欲しくなっちゃいますよ......(笑)」と中越さん。映画好きはもちろん今も変らず、最近では近所のシネコンに足繁く通っているそうだ。自宅の地下に設えたホームシアターで、昼夜を問わずエンタテインメントとしての映像、音響のあり方を研究する藤原さんからは3Dの話題も。「目下のテーマは、3D再生の最適サイズ。小さいのはもちろんだけど、あまりに大きいのもフェイクっぽく感じられる。やはり、立ち姿が等身大に映る120インチ前後が一番リアリティを感じるようにぼくは思う。そういう意味でも、3Dは、まさしくホームシアターのための技術と言えるんじゃないかな」
今回視聴したオーエスのピュアマットII eX(エックス)の顕微鏡拡大写真。繊維がランダムに折り重なっているのがおわかりになるだろうか。ポリエステル生地を2種類の織り方を混合した構造で、モアレを防止する効果があるという
オーエスのビーズタイプ、ウルトラビーズ・プレミアムグレーの顕微鏡拡大写真オーエスのビーズタイプ、ウルトラビーズ・プレミアムグレーの顕微鏡拡大写真。ゲインは1.5で、比較的明るい環境下での使用を想定している。このスクリーンのビーズは約20ミクロン程度と極小のため、表面のざらつきは少ない
▲ スクリーンは表面の加工、裏地を含めた生地の材質で様々な特性を持つ。 表面の仕上げによって、現在の主流はマットとビーズタイプの大きくふたつに分類される。一般的に、ガラスビーズを塗布したビーズタイプは入射した光を同じ方向に直進的に戻すため、マットタイプよりもゲインが高い
視聴した3種類のスクリーン
スチュワート スノーマット 100
リファレンススクリーンとして定番のスノーマット 100。癖の少ないマットタイプの良さの中に薄化粧のきらびやかさが同居している、とは藤原さんの談 ●ゲイン : 1.0 ●半値角 : 85°以上 ●問合せ先 : マルチフォニック・サウンド(株)電話番号 03(3557)4311
オーエスピュアマットII eX
オーエスを代表するマットタイプ「ピュアマット」を改良した最新作。裏面 はブラックでコーティングされており、光の透過を防ぐことでよりシャープ な画質を追求している ●ゲイン : 0.97 ●半値角 : 60°以上 ●問合せ先:(株)オーエスプラス e 電話番号 0120-380-495
キクチ グレースマット 100
同社の定番マットタイプ、ホワイトマットアドバンスをベースに開発された リファレンスモデル。技術者が手作業で表面塗装を施すという手の込んだ逸品 ●ゲイン : 1.0 ●半値角 : 85°以上 ●問合せ先:(株)キクチ科学研究所 ラージディスプレイ事業部 電話番号 03(5979)9890

ビクターDLC-X9についてもっと知る