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さらに磨きがかかったヴィエナ・アコースティクスの音 和田博巳
スピーカーの存在がフッと消え、音楽だけが生々しく眼前に残った。聴いているこちらの気持ちが演奏にどんどん高まってゆく。 photo  創業は1989年と比較的若いヴィエナ・アコースティクス社は、オーストリア本国で開発と設計そして製造を行うスピーカーメーカーである。そのヴィエナ・アコースティクス社の創設者で、開発・設計の総責任者でもあるピーター・ガンシュテラーは現在まだ40代半ば。幼少の頃から音楽教育を受け、大学では哲学と音響工学を専攻した人物だ。

 ヴィエナ・アコースティクス社はドライバー自体の生産は行っていないが、供給を受ける北欧やドイツのドライバーメーカーのユニットには、ピーター・ガンシュテラーの特許や改良が加えられて、ヴィエナ・アコースティクス専用のカスタムドライバーとして納入されている。キャビネット材も北イタリア産の高級材を選別したものが使われる。

 このヴィエナ・アコースティクス社のスピーカーの中でも特に注目したいのが、この春に発表となったモーツァルト・グランド・シンフォニーエディション及びハイドン・グランド・シンフォニーエディションの2モデルである。どちらも初代のモデルから数えて第3世代となり、数多いこのクラスのスピーカーの中でも両モデルの完成度は極めて高いという印象だ。

 そのモーツァルト・グランド・シンフォニーエディションとハイドン・グランド・シンフォニーエディションの両モデルを、今回特別に1週間ほど自宅に借りてじっくりと聴くことが叶った。その印象をここにご報告しよう。

 その前にひとつ。我が家のリスニングルームには現在YGアナットIIIというアルミの塊からなる重厚なスピーカーが鎮座している。このアナットIIIは1本の重量が約130kgもあって、とてもではないが一人で動かすことは不可能。というわけで、モーツァルト・グランド・シンフォニーエディションとハイドン・グランド・シンフォニーエディションの両モデルを一緒に並べて、気分で切り替えて楽しむということはスペース的にどう考えても無理であった。したがって最初にトールボーイタイプのモーツァルト・グランド・シンフォニーエディションを聴き、4日目にブックシェルフタイプのハイドン・グランド・シンフォニーエディションに入れ替えて聴いている。

 モーツァルト・グランド・シンフォニーエディションは、中低域用ドライバーに新開発の15.2cmX3Pスパイダーコーンを搭載し、もう1基の15.2cmX3Pノーマルコーン・タイプとスタガー動作させた2.5ウェイのトールボーイタイプとなっている。トゥイーターは2.8cmシルクドーム・トゥイーターで、リア側にはバスレフポートがふたつと、さらに前モデルで好評だったモーツァルトのシルエットとレプリカサインが刻印されたプレートも見ることができる。色は美しいチェリー仕上げだが、他にもピアノブラック、ローズ・ウッド、ピアノホワイトの3色が用意されている。それからこのトールボーイタイプにはスピーカーベースが付属していて、本体底板に組み付ける仕組みだが、このスピーカーベースが重量級の実にしっかりしたもので、これはきっと音に効くと思う。

 YGアナットIIIをドライヴしていたパワーアンプ TAD-M600をこのモーツァルト・グランド・シンフォニーエディションに繋ぎ替え、さっそく音を聴いてみる。最初はいつもこれからという曲、ビル・エヴァンスの「ワルツ・フォー・デビー」だ。40年以上にわたってそれこそいろんなスピーカーでどれだけ繰り返し聴いたか分からない1曲だが、最初のピアノの1音からとても瑞々しい音色で、これぞビル・エヴァンスというデリカシー溢れるピアノ・タッチが堪能できた。右にピアノ、左にスコット・ラファロのベース、その少し後ろにポール・モチアンのブラシによる繊細なスネアが空間を埋めるという構図は、サウンドステージがたいそう広大で、仕上げの美しいスピーカーはその存在がフッと消え、音楽だけが生々しく眼前に残った。観客のざわめきもまた驚くほど生々しく、常套句ではあるが、まるで自分が50年前のヴィレッジ・ヴァンガードの観客席に居ると錯覚するほどだった。

photo 『ステレオサウンド・リファレンス・レコード/ノンサッチ編』から聴いたk.d.ラング「アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ」は、背筋をピンと伸ばした、彼女の凛とした歌声が実に爽快。そしてよく伸びるヴォーカルと同じく、アコースティック・ギターやストリングスも硬質にも輝かしくも傾かない、艶やかな倍音をフワリと振りまいた。

 ポール・ルイスのピアノによる『ベートーヴェン・ピアノ・コンチェルト第5番』も、豊かな空間にピアノの一音一音がたっぷりとした余韻を伴ってスーッと伸び、そしてゆっくり消えてゆく。その余韻の滞空時間の長さには感心させられた。本機はオーソドックスな木でできたスピーカーゆえに、冷徹な響きというよりはほのかな温かさを感じさせるところが特徴だが、しかしそこに決してにぶさはなく、たいそう清澄な音色であることは忘れずお伝えしておきたい。

Hiromi’s  REFFERENCE DISCs
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「ワルツ・フォー・デビー」
ビル・エヴァンス
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「ベストサウンド・セレクション ノンサッチ編」
ステレオサウンド・リファレンス・レコード
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「ベートーヴェン・ピアノ・コンチェルト第5番」
ポール・ルイス
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「シンフォニシティズ」
スティング
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「サムデイ・マイ・プリンス・ウェル・カム」
ジェリー・ゴンザレス
 もうひとつのスピーカー、ハイドン・グランド・シンフォニーエディションは、1基の15.2cmX3Pスパイダーコーン・ウーファーと2.5cmのソフトドーム・トゥイーターによるオーソドックスな2ウェイ・ブックシェルフタイプだ。特徴的なのはトゥイーターを取り付ける部分がバスレフポートを兼ねる構造となっていることで、これはかなりユニークと言える。

 専用スピーカースタンドと組み合わせて聴いたが、このスタンドの天板には落下防止用の穴が2個空けられている。スピーカーの底板とボルトで連結する仕組みだが、連日これだけ地震や余震が頻発している状況ではぜひスタンドとスピーカーは連結して使うべきだろう。ただし、その際はあまり硬くボルトを締め過ぎないようにしたい。締めすぎると音が死んでしまうので。

 ピアノブラック仕上げのシックな外観を持つブックシェルフタイプは、いろんな音楽を聴いたが、どれもサイズ以上のスケール感を感じさせてこれは驚きだった。スティングがドイツ・グラモフォンから出した『シンフォニシティズ』から「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」では、クラシックのオーケストラのゴージャスな演奏をバックにスティングが朗々と歌い、パーカッションはやや華やいだ感じだが、全体としては品位を感じさせる音であり演奏。特に低域は豊かにバランスしてとても感心させられた。クラリネット・ソロや弦のピチカートも硬質感の無い滑らかさで、とてもよくできた小型スピーカーという印象だ。

 これならジャズもきっといいだろうと取り出したのがサルサ界の重鎮、ジェリー・ゴザレスの最新ラテン・ジャズ・アルバム。1曲目「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」は、マイルスばりのミュート・トランペットが胸に一直線に突き刺さるという、実に痺れるいい音となった。この曲でも中高域は程よい明快さがあって、ピアノやトランペットがスポットライトを浴びて輝く感じが実にいい。ベースもよく弾んで、パーカッションはスピーカーにまとわりつかず、外側まで広大に拡散する。後半に行くにしたがってじわじわと熱くなるラテン特有の演奏に、聴いているこちらの気持ちもどんどん高まってゆく。

 2つのスピーカーはどちらも1.5mほどのニアフィールドリスニングだったが、照明を落として聴くと、まるで自分が宇宙にポッと浮かんでいるような気分となった。アコースティック楽器やヴォーカルには特に価格以上の見事な音を聴かせるヴィエナ・アコースティクスのニューモデル、要注目である。

Vienna Acoustics Mozart Grand Symphony Edition
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Vienna Acoustics
Mozart Grand Symphony Edition
(写真はチェリー)中低域用ドライバーに新開発した15.2cmX3Pスパイダーコーンを搭載
→製品情報
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Vienna Acoustics
Haydn Grand Symphony Edition
(写真はピアノブラック)トゥイーターを取り付け部がバスレフポートを兼ねるユニーク構造
→製品情報
Vienna Acoustics
Mozart Grand Symphony Edition (写真・右上)
 チェリー、ピアノブラック:¥417,900
 ローズウッド、ピアノホワイト:¥438,900
 *いずれも税込・ペア価格

●型式:2.5ウェイ・リアツィンポート方式●使用ユニット:2.8cmカステムメードシルクドームトゥイーター、15.2cmX3Pスパイーダーコーンミッドウーファー、15.2cmX3Pコーンミッドウーファー※スタガードのため●クロスオーバー周波数:200Hz、2.6kHz●インピーダンス:4Ω●寸法/重量:216mm(W)x 972mm(H) x 343mm(D) *スパイクスタンド含む/18.3kg(1台)



Vienna Acoustics
Haydn Grand Symphony Edition (写真・右下)
 チェリー、ピアノブラック:¥231,000
 ローズウッド、ピアノホワイト:¥247,800
 *いずれも税込・ペア価格

●型式:2ウェイ・フロントポート方式●使用ユニット:2.5cm3層コーティングネオジウムマグネットトゥイーター、15.2cmX3Pスパイーダーコーンウーファー●クロスオーバー周波数:2.8kHzz●インピーダンス:4Ω●寸法/重量:174mm(W) x 361mm(H) x 264mm(D)/10.0kg(1台)



■問い合わせ先
 株式会社アルファメガ Tel: 03(5812)4527

■ブランドオフィシャルサイト
 Vienna Acoustics(アルファメガ)