HOME > 新製品レビュー > 新製品レビュー:エソテリックのSACDトランスポート「P-05X」、D/Aコンバーター「D-05X」を聴いた
2017年3月24日/木村雅人
今回はエソテリックから3月に発売されたばかりの、SACDトランスポート「P-05X」と、D/Aコンバーター「D-05X」を紹介する。いずれも、今年で30周年を迎えるエソテリックが、アニバーサリーイヤーに合わせて、満を持してリリースしたモデル。気になっている人も多いのではないだろうか。
P-05X とD-05X は、2007年にエソテリック20周年記念モデルとして発売された「P-05」と「D-05」の後継機となり、10年の間にエソテリックが積み重ねてきた技術を惜しげもなく投入している。まずは、これら2機種に詰め込まれた機能の一部を簡単に紹介していこう。
P-05Xは同社の伝統とも言えるドライブメカVRDS(VRDS-NEO VMK-5)を踏襲。ピックアップには、同社SACDトランポート最上位モデルの「Grandioso P1」(グランディオーゾ P1)と同じ軸摺動型ピックアップを用い、高精度な信号読み取りを実現している。デジタル伝送は、ESOTERIC独自のLVDS(Low Voltage Differential Signaling)デジタルインターフェースで、HDMIケーブルで機器を接続するES-LINK4端子、従来のバージョンのES-LINK対応デュアルXLR端子、同軸デジタル出力端子と豊富に用意されている。もちろんワードシンク入力端子もある。
D-05Xはデュアルモノーラル構成のD/Aコンバーターで、DAC 素子にはハイエンド製品への搭載が増えている旭化成エレクトロニクス製の32bitステレオDAC「AK4497」が4基装備され、1ch当たり4回路のパラレル駆動となっている。PCM信号は独自プロセスの34bit解像度でアナログ変換が行なわれる(DSDはダイレクト処理)。アップサンプリングにも対応し、最大8倍までコンバート可能。PCM信号のDSD変換時は最大で22.5MHzへの変換もサポートしている。
P-05XとD-05Xによる組み合わせでは、ES-LINK4同士によるデジタル伝送が可能となり、44.1kHz/16bitのCD信号は、P-05X側でサンプリング周波数は8倍の352.8kHzに、ビットレートは42ビットにアップコンバートされてから、D-05Xに送られる。SACDはコンバートされずに伝送される。トランスポート側でデジタルコンバートが行われるのは、Grandioso P1/D1で採用されたDAC側での処理を減らし、高音質を目指す「Pure D/A思想」によるものだ。
筐体は厚みのあるアルミニウム製で仕上げもとても美しい。内部がスチールシャーシなのは、剛性の確保と固有振動の低減を狙っているのだろう。近年のエソテリックのデザインを踏襲した格調高い造形は、所有者に大きな悦びを与えてくれるはずだ。
それぞれの詳しい内容やその他の機能はここでは割愛させていただく。下記をご参照頂きたい。
【関連リンク】
●エソテリック/「P-05X」「D-05X」紹介ページ
●エソテリックから30周年記念機、SACDトランスポート「P-05X」、D/Aコンバーター「D-05X」発売
試聴環境はいつも通り筆者の部屋で、リファレンスシステムに本機を追加した状態で行っている。接続方法は上述のHDMIケーブルによるES-LINK4を選択した。さらにD-05Xのクロックジェネレーター出力を、P-05Xのワードシンク入力に接続した(マスタークロックは22MHzとなる)。
試聴ソフトはCDが保科洋作品集の『風紋』と『古祀』、SACDはマリス・ヤンソンス/ロイヤルコンセルトヘボウの「ラフマニノフ/シンフォニックダンス」(RCO LIVE)を使った。
エソテリックP-05X とD-05Xによるサウンドは、同社らしい精細な響きを出しつつ、音楽のダイナミズムを感じさせる空気感が印象的だ。「風紋」では管楽器のタンギングが明瞭で、ティンパニーは懐の深さというよりも“広さ”の表現力が秀逸。
「シフォニックダンス」(SACD)は躍動感のある低音の旋律を少し落ち着かせるような、堂々としたサウンドで楽しませてくれた。エソテリックらしいバランスの取れたサウンドと言えるだろう。この価格なので一定水準以上のクォリティは当然ながら担保されているが、同ブランド愛好家ならさらに上質な製品を求めるかもしれない。そんな方にはあの本体デザインとネーミングから雄大なイメージ連想する「Grandioso」シリーズをオススメしたい。
なお、ES-LINK4接続時にCDを再生すると、P-05Xから8倍アップサンプリング、48ビット信号が出力される。さらに、D-05X側で受け取った信号をリニアPCMで処理するか、DSDにしてからアナログ変換するかを選べる。
今回PCMとDSD変換両方試してみたが、筆者の好みは初期設定値でもあるPCMであった。もちろんDSD変換で聴く『古祀』は潤いのあるしなやかなサウンドが確かに心地よかったのは事実だ。しかし管楽器のタンギングの立ち上がりの良さや、スッキリとした高音域はPCMが圧倒的だ。これを体験してしまうと、DSDのややフォーカス感の甘いサウンドが気になってしまった。
他のエソテリック製品同様、本機にはアース端子が用意されている。これは機器間のシャーシ電位を合わせる事によって、より高品位な再生を目的としたもの。試しに自作のアースケーブルで、P-05X とD-05Xのアース端子に接続して試聴してみた。そのサウンドに音数が増えたような印象を受けた。しかし、目に見えた効果があったかと聞かれれば、今回の試聴においてはそこまでではなかったのをお伝えてしておきたい。
とはいえ、アース接続は電源環境やシステム構成、ケーブルの種類によって効果の差が出やすく試す価値はある。まずは、余っているスピーカーケーブル等で聴いてみて、その効果を確認した方がいいだろう。
エソテリックP-05X、D-05Xはエソテリックの世界観を見事に表現しながら、重厚で落ち着きのあるサウンドなのが印象的だ。エソテリックブランドとしてはこれでもエントリークラスにあたる製品だが、だからといって手抜きのいっさい感じられない仕上がりはさすが。それは一度試聴すればお分かりいただけるだろう。
<SPECIFICATIONS>
ESOTERIC
SACD/CD Transport P-05X ¥700,000(税別)
●再生可能ディスク:SACD/CD/CD-R/CD-RW
●接続端子:デジタル出力(S-LINK4、XLR、同軸)、クロック入力
●寸法/質量:W445×H131×D359mm/約13.5kg
D/A Converter D-05X ¥700,000(税別)
●再生可能ファイル:PCM・最大768kHz/32bit、DSD・22.5MHz/1bit
●接続端子:デジタル入力(ES-LINK4、XLR、USBタイプB、同軸、光)、アナログ出力(RCA、XLR)、クロック入力、クロック出力
●寸法/質量:W445×H131×D360mm/約14kg
筆者・木村雅人氏の試聴/視聴ポリシーはこちらからご覧ください
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