HOME > レビュー > 【HiVi編集部によるPCオーディオ実践レビュー 第3回】RMEのオーディオインターフェースを使ってあんなこともこんなことも!
Step 3〜応用編①〜
オーディオインターフェースでマルチチャンネル再生に取り組む
PCオーディオにおけるオーディオインターフェースの活用は、単にUSB DACの代替とすることにとどまらない。その多機能ぶりについては連載1回目に記した通りだが、音楽試聴用としてもおおいに利用したい機能がいくつかある。そのひとつが、マルチチャンネルの再生だ。
PCで再生できるマルチチャンネルのソフトと言えば、まずはDVDオーディオのディスク。12cmメディアを何でも再生できるユニバーサルプレーヤーを持っていればいいが、そうでない場合は、こうした機器を使って再生環境を整える手もある。この環境で再生するメディアはもうひとつ。先ごろe-onkyo music storeで配信開始となった、「ハイレゾ サラウンド」のデジタルファイルがそれ。
PCで再生できるサラウンド音源
このファイルは、ドルビートゥルーHD、WAV、FLACで配信され、ドルビートゥルーHDのファイルは、オンキヨー製の最新AVセンターのネットワークプレーヤー機能で再生できる。WAV、FLACも同様だが、このふたつはPCでも再生が可能で、マルチトラック(マルチチャンネル)対応のオーディオインターフェースを用いれば、サラウンドサウンドが楽しめる。このように、ネットワークオーディオを含んだデジタルファイル再生の波はいよいよサラウンドの音源まできている。これを積極的に楽しむ方法のひとつが、オーディオインターフェースという選択になるわけだ。
最大8chのアナログ出力に対応する
Fireface UCX
ここで登場してもらうのがFireface UCX。フラグシップモデルに位置するFireface UFXの遺伝子を受け継いだJr.版といったところ。先行する記事の通り、RME製品にはグレードの差異が設けられていないため、UFX、UCX、Babyfaceの大きな違いは端子や扱える音声の入出力数ということになる。前回までのBabyfaceは最大4chのアナログ音声が同時出力可能だったが、こちらは最大8chまでの出力に対応しているのだ。接続の便宜を図ることもあり、ここからはUCXを使ってマルチチャンネル再生を実験していくことにしたい。もちろん、4.0ch構成のサラウンドシステムであればBabyfaceでも対応可能。Babyfaceユーザーは本記事とシンタックスジャパンのホームページを参考にしていただきたい。
http://www.synthax.jp/tutorials/articles/babyface-surround-setup.html
PCで再生したデータをストリーミングする方法は2chと変らないので、USBでの接続は前回までとまったく同じ。Fireface UCXにはFireWireも用意されているので、Macユーザーはこちらも便利に使えることだろう。
特別に必要となるのは、ソフト側のマルチチャンネル出力設定だ。ここでもfoobar2000を再生ソフトに用い、設定を試みた。ASIOプラグインを入れて設定を行なうのだが、詳細は以下、シンタックスジャパンのブログを参照いただきたい。これを見ながらセッティングをしたので……
http://synthaxjapan.blogspot.jp/2010/01/dvd-audio.html
4.0chシステム用に
専用ソフトを使ってダウンミックスの設定を行う
ここで5.1chシステムを構築しているのであれば、ほぼ順繰りに設定をするだけで事足りるのだが、今日用意したのは4.0chのシステム。センターおよびLFEチャンネルはL/Rへダウンミックスして出力したい。そうなると必要なのが専用ソフト「TotalMix(トータルミックス)」によるルーティング(アサイン)作業。このソフトはドライバーと一緒にインストールされ、最新版がシンタックスジャパンのホームページで無償ダウンロードできる。
http://www.synthax.jp/drivers.html
PCでの音楽再生に特化して言えば、青緑のフチが付いた「Software Playback」と「Hardware Outputs」を見ればOK。前者がソフトで再生している音楽のメーターで、後者が各チャンネルの出力ボリュウム。foobar2000での設定で「Software Playback」の「AN 1/2」はフロントL/R、「AN 3/4」はセンターとLFE、「AN 5/6」がサラウンドL/Rとなった。
次に、「Hardware Outputs」のAN 1/2と書いてある部分をクリック。このチャンネルがグレーにかわったところで「Software Playback」の「AN 1/2」「AN 3/4」のフェーダーを0dBに上げる。これは、「Hardware Outputs」の「AN 1/2」(今回はフロントL/Rを接続している)からはフロントLRに加えてセンターとLFEチャンネルの音も(バイパスして)出力するという設定。
接続ができたら、「Hardware Output」のゲインだけは確認しておきたい。左下、スパナのマークをクリックするとセッティングメニューが表れる。スタジオユースということで、デフォルトでは「+4dBu」だが、これを「-10dBV」に変更
それと同様に「Hardware Outputs」の「AN 5/6」(サラウンドL/Rを接続している)をクリックしてから、「Software Outputs」の「AN 5/6」のフェーダーが0dBになっていることを確認。ダウンミックスの設定は完了だ。
レベル調整機能を持ったパワードスピーカーとの組合せでない場合は、チャンネル毎のレベル調整を「Hardware Outputs」のフェーダーで行なう。これらのフェーダーはシフトキーを押しながらクリックすることで色が変わりグルーピングされ、どちらか一方のボリュウムを調整すればそれに追従する。サラウンド設定時には必須機能のひとつだ。
試聴音源 Chaotic Planet〜Special Master Edition/HYPS
音源はe-onkyo musicよりダウンロード
→ http://music.e-onkyo.com/
鮮烈なアタック感と余韻のある
濃密なサラウンド サウンド
かくしてサラウンドの設定が済んだのだが、肝心の再生はどうか。今回はFireface UCXをプリアンプとし、ステレオパワーアンプへはフォン(TRS)→XLR変換ケーブルにて接続している。試聴したソフトはe-onkyo music storeからダウンロードした「HYPS/Chaotic Planet」。パーカッショニスト はたけやま裕による96kHz/24ビットの5.0chサラウンドファイルだ。foobar2000での再生は通常の音楽ファイルとまったく変らない。プレイリストからタイトルをクリックすれば、ビブラフォンの響きが空間を満たす。鮮烈なアタック感とその余韻は、良質なBDに収録されたハイレゾのサラウンドサウンドと同様の濃密さ。
正直なところ、TotalMixを使った操作には自信が無かったのだが、数時間もあれこれと触っていればすぐに慣れる。インターフェース自体が洗練され、直感的に操作できるので、基本ルールさえ覚えてしまえばオーディオ機器としてスムーズに使えそうだ。Fireface UCXはPCとつながずともスタンドアローンで動くため、マルチチャンネル対応のプリアンプとしても使用できる。AVセンターとは違い、音場補正機能などを持たないことをよしとすれば、これを核に本格的にAVシステムを構築するのも面白そう。
さて、今回までで音楽再生機能の実験は終了。次回、最終回は録音編。
次回は7/31のアップを予定しています
▼使用機材▼
オーディオインターフェース
RME Fireface UCX
オープン価格(実勢価格 14万円前後)
●USB&FireWire対応サンプリング周波数/量子化ビット数:〜192kHz/24ビット
●寸法/質量:W218×H 44×D155mm/1.5kg
●問合せ先:(株)シンタックスジャパン 03-3560-6645
http://audio.synthax.jp/
※シンタックスジャパンでは、PCオーディオ向けの情報を掲載した特設Webサイトを7/13より公開している(上記リンク)。こちらのサイトもぜひ参考にしてほしい。
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