HOME > レビュー > 藤原陽祐さんの最速リポート。ソニーの最新AVセンター STR-DN1040の音を聴いた
5月10日に発表された、ソニーAVセンターの2013年春モデルは、定価で4万円台〜6万円台後半というエントリーゾーンを中心にしたラインナップだ。既に上位モデルのSTR-DN1040の詳細や弟モデルとのスペック比較等はリポートしたが、今回、藤原陽祐さんが試作機の音をチェックしたとのことで、その感想を寄せてくれた。
読者諸氏も気になるであろうSTR-DN1040のハイレゾ&BDに関するインプレッションをお楽しみ下さい。(編集部)
ソニーからAVセンターのエントリーラインとなる3モデルが発表された。各種ネットワーク機能(無線LAN機能装備)を充実させながら、ESシリーズ譲りの高音質化技術を投入したSTR-DN1040、上位モデル同等のネットワーク機能を装備したDN840、そしてネットワーク機能を省いたDH740というラインナップで、いずれもパワーアンプは7ch仕様、独自の自動音場補正機能、D.C.A.Cも搭載済みだ(DH740はスピーカー間の位相特性の補正は非対応)。
ここで注目されるのは、3機種すべてに高剛性、耐震性を追求したNEW FB(frame and beam)シャーシが投じられたことだ。これは従来からのFBシャーシを進化させたもので、エンボス加工で設けたビーム(梁)幅を左右両端まで伸ばし、トランスの重量を確実に支え、音質劣化につながる振動を軽減するというもの。
あわせてインシュレーターについても、固有振動を抑えるオフセット設計にリブ補強を追加。さらに上位機となるDN1040については、トップケースにより厚い鉄板(従来比で約3割重い)を投じ、高剛性化を徹底させている。
リニア広帯域パワーアンプはもちろん完全ディスクリート構成で、200Hzオーバーの周波数特性(従来日で約20%の広帯域化)を獲得。そして回路基板はガラスエポキシを奢っているのも、このクラスとしては異例だ。一般的なフェノール素材の素材に比べると剛性が高いため、強度を気にすることなく理想的な配線が可能だという。
試作機のレベルながら、DN1040の音を聴くことができたので、ここでそのインプレッションを紹介しよう。そのサウンドは明るく、しなやか。刺々しい感じがまったくと言っていいほどない。ヴォーカル、ストリングス、オーケストラと、ゆったりと、温かく、上品に聴かせる。このあたりの質感は、明らかに最高峰となるTA-DA5800ESの血統を感じさせるテイストだ。
ハレイゾ音源の再生でも、この傾向は変わらず、S/Nのよさが際立つ。藤田恵美が歌う「あざみ嬢のララバイ」はその声が実に艶かしく、良質な響きが空間にしみこむように消えていく。やや低音が膨らみ気味だが、それなりにボディ感があり、表情が大げさになるようなことはない。
続いて映画BD「アメイジング・スパクダーマン」。音場処理のないAFD(オート・フォーマット・デコード)再生は、どちらかと言えばマイルドな音調で、音場の拡がりもスムーズ。基本的な情報量をしっかりと抑えながら、セリフを中心に、効果音、音楽と冷静に描き分けていくスタンスだ。
これはこれで悪くないが、映画の楽しさということなら、自慢の音場モード、HD-D.C.S の「シアター」(米国ソニー・ピクチャーズ内のケリーグラントシアターの音場をシミュレーションしたもの)モードががぜん魅力的だ。「オン」に切り替えた瞬間に、音がスピーカーからスッと離れて、目の前の空間がにわかに拡張される。まるで空気が呼吸しているかのように、シーン、シーンで目の前の空間が伸縮し、しかもセリフはもとより、効果音、音楽がぼけない。
まさに良質な劇場に居合わせているかのような不思議な感覚。空間の深さ、緻密さといった部分では、さすがに物量を投じたDA5800ESの表現力には及ばないが、観ていて、聴いていて、思わずにやけてしまいそうになるくらい楽しい。もちろんソースに応じてダイナミック/シアター/スタジオの3段階の効果から選べる。
「エントリー機の位置づけですが、内容はESシリーズに限りなく近い」(開発担当者)。このコメントも充分納得がいくパフォーマンスだった。
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