HOME > レビュー > 藤原陽祐のCES 2017総括:有機ELテレビの本格的復活と、さらに進化する液晶技術に注目
米国ネバダ州ラスベガスの地で開催された、世界最大級のエレクトロニクス機器の展示会「CES 2017」。全体を俯瞰してみると、テレビ、オーディオ、白物といった、いわゆる家電単品の展示はまだまだ健在だが、そのいっぽうで、太陽光パネルを利用した発電から始まり、各家電製品の高度なネットワーク化、インターネットによる遠隔操作、エネルギー消費の一元管理、そして住民を危険から守るセキュリティまで、大手メーカーを中心に近未来の家、いや、暮らし方の提案が積極的に行なわれていた。
そこにはウェアラブル機器を始め、ドローン、ロボット、自動運転対応の車など、これまでの常識を超えた新時代の製品が数多く登場し、その連携によって、これまでにない便利な生活を実現していこうというわけだ。
新しい道具が続々と実用化され、世の中が大きく変わっていくことは間違いないが、私自身、その暮らしぶりを一所懸命に想像してみても、なかなかリアルなイメージが湧いてこない。古い人間、といってしまえばそれまでだが、不便をまったく感じさせないような完璧に管理されたスマートな暮らしが、本当に楽しいものなのだろうか。
実際に始まった時、その快適さを拒否できるのかと、言われると、そこまでの自信はないのだが、現時点では自ら進んで、その世界に入っていきたいとは思わない。人間の感性を刺激するような、何かが、不足しているように思えてならない。
Stereo Sound ONLINEなのでテレビの話題をひとつ。さまざまなメディアがすでにお伝えしている通り、LGディスプレイが供給する有機ELパネルをソニー、パナソニックが採用し、いよいよ家庭用テレビの世界に自発光表示のディスプレイが本格的に復活することになった(編註:ソニーはパネル供給元を明かしていない)。
世界的に見ると、縮小傾向にある日本市場をホームグラウンドとする2社の採用は、それほど大きなインパクトを持たないようにも思えるが、さにあらず。世界の家庭用テレビ市場において、サムスン電子のトップシェアは揺るがないが、昨今、北米市場においてはソニーが猛追し、高価な大画面のクラスでは、一部逆転したというデータもある。いっぽうで、パナソニックは北米では精彩を欠くものの、欧州での人気は根強く、高級機を中心に一定のシェアをキープしている。
つまりソニー、パナソニックが有機ELテレビに本格参入することで、世界の高級テレビの市場が大きく揺れ動く可能性があるというわけだ。それを察してか、サムスン電子は今回のCESで新世代の液晶パネル技術として、有機ELを示す「OLED」ならぬ「QLED」を大々的にデビューさせた。
巨大な展示ブースの一角に大きなスペースを割いて、既存品との比較展示を行っていた。ところが説明員の技術的な説明は、ほとんどなし。実はこの技術、量子ドットと言われる既存技術の改良版で、正直言って内容は薄い。王者、サムスンの焦りを感じずにはいられない。
ということで、テレビ関連の話題としては、有機ELが独占してしまった格好だが、家庭用テレビの標準として浸透している液晶パネルにも新しい動きが見られた。なかでも私の目をもっとも強くひきつけたのが、次世代のIPS液晶技術だった。
サムスンの永遠のライバルとも言える、LGが提案したもので、元来、視野角の広いIPS液晶は、さまざまな視聴シーンが想定される家庭用テレビとしては、実に魅力的な表示素子だが、透過率が高く、省エネ性能に優れる反面、黒が締まりにくい(=コントラストが低い)という問題を抱えていた。
今回のU-IPSというトランジスターの透明度を高めてさらに液晶のUV配光を組み合せわせた技術、およびNano Cell Displayという一種のフィルター技術で、この問題に真正面から取り組み、確かな成果をもたらしたのである。
詳しくは、HIVi本誌か、あるいはStereo Sound ONLINEで紹介したいと思うが、透過率、色再現、ユニフォミティ、そしてコントラストと、その基本性能の改善ぶりには目をみはるものがある。特に注目されるのが、IPS液晶の泣き所だったコントラスト比が約11%向上したという。現状のIPSパネルの実力(1,600~1,700対1)からすると、2,000対1前後のコントラスト比を達成している計算になる。
たった11%と思われるかもしれないが、私の経験からすると、テレビの画質は2,000対1を超えたところで、にわかに向上し、その表現力は俄然、豊かになる。合わせて、絵柄に応じてバックライトの明暗をきめ細かく制御するローカルディミングの自由度も上がるため、見た目のコントラスト感は、数値以上のものとなる。
この技術、もともとは競争の激しいモバイル用として開発されたものだが、大画面への展開となると、生産面(量産化)、コスト面で、ハードルが高く、なかなか実用化できなかった。今回の開発の背景には、サムスンのQLEDへの対抗心があったとみて間違いないだろう。既に量産がスタートしており、今年の春モデル(ボーナス商戦向けモデル)には導入される模様。有機ELと共に、新型IPS液晶パネルを用いた新型テレビの画質に注目したい。
サムソンブースにて撮影。55インチの4Kパネルを使って、QLEDパネル(上)とコンベンショナルなVAパネル(下)とを比較していた。写真ではあまり変わらないが、肉眼ではQLEDが少し明るく、色再現も鮮やかに見えた。バックライトの条件を係員に聞いたが、ノーコメントだった
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