HOME > レビュー > ソナス・ファベール新作スピーカー「SF16」速攻インプレッション:低音に力があり透明感の高いサウンド
昨年 6月、欧州有数の高級リゾート地であるイタリア・サルデーニャ島で開催されたワールド・オブ・マッキントッシュ(ファイン・サウンズ・グループの新名称)の製品発表会に招かれ、参加した。
そこでお披露目されたのが、昨日(4月18日)都内のホテルで日本市場への導入が発表されたソナス・ファベール(伊)のSF16だ(SFはソナス・ファベールの頭文字、16は2016年の意)。
“All-in-One Solution>”コンセプトを掲げて開発されたこの製品は、DTS 社(米国)が提案する「DTS Play-Fi」と呼ばれるWi-Fi伝送方式を採用した、ネットワークオーディオ時代にふさわしい一体型高級ミュージック・システムと言っていいだろう。
スマートフォンやタブレット、PCなどに「Play-Fi」アプリ/ソフトをインストールすることで、それら機器に取り込んだ音源だけでなく、日本でもお馴染みとなったSpotifyやTIDALなどの定額制音楽ストリーミングサービスの音源も自在に楽しめるわけだ(TIDALはCDクォリティの音質が楽しめるが、残念ながら日本での正式スタートはまだ)。
もちろんDLNA準拠のミュージックサーバーの再生にも対応しており、RCA アナログ入力や同軸/ 光のデジタル入力も備えているので、ディスクプレーヤー等との有線接続も可能だ。
本機を企画したのは、同グループのデザイン・センター長のリヴィオ・ククッツァ、製品をまとめたのはソナス・ファベールのスピーカーデザイナーで同グループのR&Dセンター長、パオロ・テッツォンという若き俊英ふたりである。
リヴィオによれば、本機着想の元になったのは、ソナス・ファベールの創設者フランコ・セルブリンの最初の作品である3Dシステムの「SNAIL」(カタツムリの意)だそうだ。
高級家具に用いられるプライウッド(積層合板)製の楕円形本体ボディには、ソナス・ファベール伝統の木材曲げ加工・接合加工技術が採用されており、その仕上げの美しさは息をのむほど。カタログ写真には同じくプライウッドを用いたイームズのラウンジチェアが一緒に写っているが、まさにそんなレベルの高級品なのである。
本体内部にはトータル1,400Wのデジタルアンプと、120mmウーファーが前後にビルトインされており、電源を入れると、アームの先に取り付けられた50mmミッドレンジドライバーと15mmトゥイーターで構成された、2つの流線型サテライト・スピーカーが、左右にするすると飛び出してくるという仕掛け。驚きに満ちた、とてもチャーミングなシステムである(アームの動作音が少しうるさく感じられるかもしれないが、そんなことを指摘するのは日本人だけかもしれない)。
2基の120mmウーファーは1本のパイプの両端に取り付けられ、同相駆動することで歪みや共振をキャンセルする仕組み。興味深いのは、サテライト・スピーカーも前後に同一ユニットが取り付けられており、ダイポール(双指向性)型の放射パターンを持たせていることだ。
パオロによれば、どこに置いても部屋中を音で満たせることができ、シリアスに音楽と向き合いたいときには、後方の壁の反射を利用して、奥行の深い豊かなステレオイメージを構築できるという二つのメリットがあるという。
サルディーニャ島のコテージ、輸入元の試聴室、そして昨日の発表会場のホテルと 3ヵ所でSF16の音を聴いてみたが、一体型ミュージック・システムの常識を打ち破る超本格的な音を楽しむことができた。
とくに驚かされたのは、低音のマッシヴな力感と透明感の高さ、そして広々としたステレオイメージの秀逸さだ。プライベート・リスニングというよりは、リビングルームなどのパーティ・シーンで活躍するリッチ・ピープル向けのライフスタイル指向のオーディオ機器と理解すべき製品だろうが、オーディオファイルをアッと言わせる実力の高さを内に秘めているところが痛快だ。さすがソナス・ファベールだと思う。
お洒落なバーに友だちに誘われて出かけ、B&B Italiaやアルフレックスの高級家具の上に安っぽいCDラジオが載っていて、なんとまあ……とガッカリしたことが何度かある。やはりそれはオーディオが、音が、音楽が世間一般で軽視されているからだろうし、多くの人がこういうすばらしいオーディオ機器を知る機会が少ないからだろう。
煩雑で複雑怪奇な旧来のハイファイ・システムの軛(くびき)から逃れた、ネットワーク時代の清新な高級ミュージック・システム。上質な生活を目指す多くの人に、ぜひSF16の提案する音楽世界を体験していただきたいと思う。ぼくはやっぱり軽井沢の別荘に置くかな(残念ながら今のところ別荘を買う予定はありませんが……)。
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