HOME > レビュー > マランツ PM-10レビュー:不気味なほどの実在感を描く、次世代を象徴するプリメインアンプの秀作である
[HiVi 2017年4月号レビュー]マランツ PM-10
マランツのアンプ技術を集結させた、フラッグシップ・プリメインアンプ
このPM-10は筐体から新設計されたプリメインアンプ。本機の凄いところはプリメイン形式にてチャンネルあたり400W(4Ω、1kHz)という途方もない大出力をひねり出すことだ。それはすなわちデジタルパワーアンプが見せる魔法なのである。
本機は横幅440mmという標準サイズだが、そこに400WのBTL大出力アンプ2チャンネル分を搭載するスペースがあるのか心配になるほどだ。内部を眺めると中央に4つのデジタルアンプ基板が集中配置され、小さな放熱器が取り付けられているのみ。パワーアンプ段の電源はLRで独立給電されている。プリアンプ部にはOFC巻線のトロイダル電源トランスが使われていて、たしかに独立したプリ+パワーアンプという設計である。
パワーアンプはHypex社製スイッチングアンプモジュールNCore NC500であり、マランツ製品ではすでにUSB DAC内蔵プリメインアンプのHD-AMP1に、同社の別モジュールが採用されている。本機のモジュールは高いゲインのバランスアンプで駆動する必要があるのだが、マランツはディスクリートのアンプモジュールHDAMシリーズを長らく使ってきたのだから腕の見せ所だろう。
プリアンプ部には同社流の回路技術がふんだんに用いられている。たとえばHDAM SA3を用いたフルバランス構成であり、音量調整ICにはMAS6116をチャンネルごとに1個使用して、バランス型高精度デジタル制御電子ボリュウムを構成している。
パワーアンプ部。アンプモジュールには、フィリップスのエンジニアが創業したハイペックス社の製品を、左右合計4基のBTL構成で搭載。マランツのアナログアンプ技術を最大限に活かせること、小型で大出力を可能にすることが、採用の決め手になったという
フォノイコライザーアンプも意欲的だ。イコライジングカーブを得るために、出力特性をRIAAとしたアンプを用い、そこからRIAA特性のNFBを掛けるのだ。これはNFB量を周波数に関わらず一定に保つ工夫である。
ノイズ対策が徹底されているのも特徴だ。フォノイコライザー部には銅メッキ鋼板に磁気シールド効果を持つケイ素鋼板を加えた厳重なシールドを施している。こうしたシールド対策はトロイダル電源トランスにも見られ、さらにシャーシやリアパネルも銅メッキ鋼板によって高周波ノイズを減じている。
アナログ入力はバランス2系統、アンバランス4系統を搭載。CD入力/フォノ入力/スピーカー出力は、高い電導性を誇る純銅削り出しの端子を採用している。パワーアンプ入力も備えているため、外部プリアンプやAVセンターとのスムーズな連携も可能だ
まずは同社製のSACD/CDプレーヤーSA-10と組み合わせて、各ディスクを試聴する。スピーカーにはモニターオーディオのPL300IIを使用した。接続はバランスの方が良好。“大出力アンプなのにこんなに緻密で豊かな音色、そして三次元音場がたやすく得られては困る”というほどの描写性能に唖然とした。そこで活気のあるサンバ歌謡のCDを聴くと、鳴りものや撥弦楽器が繰り出す音のつぶてが飛びかかってきてまた驚かされる。なんという過渡特性か! ただし低くしっかりとした裏ビートを刻む太鼓については、量感はあるが律動感がもっとほしい。『ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマン』のジャズヴォーカルは声もサックスも実在感が不気味なほど。SACDの弦楽合奏となると音像というより響きの塊が実体的に三次元空間に存在し、繊細な美音の饗宴に息をのむ。
ハイレゾ音源はPCからSA-10経由で試聴。これもフラメンコギターや歌謡曲が細部まで実体感のある音を聴かせる。ただしアストル・ピアソラのタンゴでは、太く体躯にしみいるような重厚なリズムがやや淡白になる。これはデジタルパワーアンプ一般の傾向であり、出力端からアナログNFBを掛けにくいのが主たる要因ではないかと思う。しかし“これが本当に歪みのない低音だ”という意見もある。
ところがBDの『9〈ナイン〉~9番目の奇妙な人形~』を2chで聴くと、じわりと迫る低音弦の圧迫感や打撃音の鋭さ、振る舞いが克明な重低音など見事な表現域を見せる。ならばF.C.B.S(フローティング・コントロール・バス・システム)にて本機を最大4台まで連動できる機能を活用すれば、スピーカーをバイアンプ駆動できて満足度が高まるはず。これは次世代を象徴するプリメインアンプの秀作だ。
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INTEGRATED AMPLIFIER
MARANTZ
PM-10
¥600,000(税別)
●定格出力:400W×2(4Ω)、200W×2(8Ω)
●接続端子:アナログ音声入力6系統(RCA×4、XLR×2)、MM/MC対応フォノ入力1系統、パワーアンプ入力1系統(RCA)、ヘッドホン出力1系統(6.3mm標準フォーン)他
●消費電力:270W(待機時0.3W)
●寸法/質量:W440×H168×D453mm/21.5kg
【問合せ先】
デノン・マランツ・D&Mインポートオーディオお客様相談センター
電話番号:0570-666-112
>>マランツのWEBページ
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