HOME > レビュー > 【HiVi編集部の目】3つのポイントで考察。シャープが初の家庭用8K液晶テレビ、アクオス「LC-70X500」を投入したインパクト
昨日速報をお届けしたアクオス8K「LC-70X500」。世界で初めての家庭用8Kパネル搭載テレビの発表会ということもあり、テレビ放送局をはじめとするひじょうに多くの媒体各社の記者・カメラマン等が集まり、熱気に満ちた催しとなった。
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本機のポイントは次の3つに整理できるだろう。
ひとつは、8Kパネル搭載の家庭用モデルが、業界内で想定していた時期よりも大幅に早く登場したことだ。この2017年秋というタイミングは、業界にいる誰もが予想していたよりも大幅に早い時期でのアナウンスなのである。個人的な予想では、4K・8K実用放送が始まる2018年冬の直前に発表されるケースが最速ではないかと予想していたので、本機は実に「1年も早い」タイミングでのリリースとなる。どんな要因でこのタイミングが決定されたのかは知るよしもないが(発表会ではいろいろ語られたが、とてもシャープの本心とは思えない)、高価格帯の大画面テレビの市場で、「有機ELテレビ」の存在感が高まっている時期だけに、液晶陣営からの強烈なカウンターパンチといえる。あるいは鴻海からの意向が強く作用したのか、など想像が働く。
ふたつめのポイントは、驚異的な「価格競争力」だ。なにせ今年4月に発表された業務用70インチのHDR対応8Kモニター、LV-7002が実勢800万円前後であるのに対し、本機は同じ70インチで実勢100万円であるのだから驚く。発表会では、「業務用途ならではの個別対応、サポート体制構築が不要であること」から実現できたとのことだが、聞くと「8Kパネル自体は同一と考えてよい」のだから、それが途端に7分の1になったのにはびっくりするしかない。発表会の質疑応答では、「市場で先行するための赤字販売なのか」との質問に、「そうではない」と答える場面もあった。
記者の想像では大阪・堺工場で生産されていると思われる8Kパネルの生産性が向上→パネル製造原価の低減が飛躍的に進行→ならば有機ELテレビ対抗という側面も踏まえての戦略プライスでの展開、という判断だと考える。ただし、当初月産台数の見込みが200台ということもあり、一般的な4K液晶と比べて限定的な製造に留まるのは間違いない。今後の8Kパネル製造コストがどれほど急激に低減するかはなかなか読めない部分であるが、本機がシャープ(≒鴻海)の8K戦略の第一歩だと捉えるべきなのだろう。
加えて、来年開始予定の4K・8K実用放送用チューナーは内蔵されていない点にも留意すべきで、これは8K放送を観るには、来年発売される予定の同チューナーを購入し、HDMIを4本用いて8K信号を外部から送る必要があることを示している。本機で8K放送を観るには、単体8KチューナーとHDMIケーブル4本が別途必要になるわけだ。4K・8Kチューナーが内蔵されていないのは、今年発売のテレビとしては当然の仕様であるし、また本機が市販されるからには、HDMI4本出力機能付き単体チューナーの市販が確定したわけだが、そのチューナーが果たして「いくらになるのか?」は不透明である。
そして3つめのポイントは、「画質レベル」だ。今回は(1)8Kコンテンツでの動画表示、(2)同じく8Kの静止画表示、(3)4K/60p&HDRコンテンツを本機内部でのアップコンバートした状態の、3パターンでのデモを行なっていた。説明員によると、液晶パネル方式は、VA方式の10ビット駆動仕様。バックライトは直下型LEDで部分駆動付きとのことだ(分割エリア数は明かされず)。8K解像度の静止画を表示していたときの細部の切れ味はさすが8Kパネルという印象で、この解像感が家庭でもうすぐ楽しめると思うととても興奮した。
市販のUHDブルーレイを使った(2)のデモでは、UHDブルーレイ対応アクオスレコーダーからHDMIで4K&HDR映像を入力するという、いまもっとも再生頻度が高そうな状態での映像デモで、階調性やユニフォミティ(画面ムラの度合い)などでまだ開発途中かなと思う部分はあったものの、確かにいままで気が付かない細部の情報がすっと浮き上がっており、目を見張った。アップコンバート処理は、「4K→8Kに解像度変換したのち、シャープネス等の画像処理を行なう」とのことで、比較対照用に設置されていた60インチ4Kテレビと明白な違いが感じられるようなレベルにすでに仕上がっていた感触は得られた。開発のピッチが上がれば相当な画質レベルに達するかもしれない、そんな潜在能力が感じられた。
BDや地デジ等の2Kコンテンツ(あるいはいまだにパッケージメディアの主流であるDVD)などの4K未満の解像度の映像をアップコンバートしたときにいかに品位を確保するのかが、おそらくもっとも難しい処理になるはずで、しかも実用上での肝になるかとは思う。本機は、まだ全貌を把握しきれない、いわば底知れぬ大器だと思うが、なにはともあれ「家庭用8K対応テレビ」という大きな一歩を踏み出したシャープの心意気に大きな拍手を贈りたい。
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